2024年5月5日日曜日

問題を解くには,柔らか頭が欠かせません!!

国試会場で最も避けたいのは,周りの雰囲気に飲まれて,普段通りの力を発揮できないことです。


以前・・・


ルーティーンを作ろう


と呼びかけました。


具体的には,普段勉強する時から,同じパターンの行動を癖にすることです。


それと同じ行動を試験当日にも行うことで,緊張感を和らげよう,というものです。


実力があっても得点できるとは限らない,過酷な試験です。

なるべくプレッシャーが少ない状態で臨めるようにしたいものです。



さて,今日の問題も社会福祉調査の基礎です。


今日取り上げる問題は,「えっ? こんな問題が出題されるの?」と思ってしまうような変わった出題です。


それでは問題を見てみましょう。


第26回・問題88 

事例を読んで,調査結果の読み方に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。

〔事 例〕

 Y市社会福祉協議会に勤める社会福祉士は,「いきいきサロン」を利用している高齢者100人へのアンケートで,日頃どのようなスポーツを行っているのかを尋ね,100人すべてから有効回答を得た。選択肢として,(a)ウォーキング,(b)水泳,(c)テニス,(d)その他のスポーツの4つを用意して,普段行っているものにすべて〇を付けてもらった。〇の数の集計結果は,(a)30,(b)15,(c)10,(d)25となった。

 この結果について,K社会福祉士は次のように考えた。

1 ここから,100人中80人は普段何らかのスポーツを行っていると分かる。

2 スポーツを行っている人に限ると,(c)のテニスをする人は8分の1である。

3 この100人の中で,普段何もスポーツを行っていない人は少なくとも20人いてもっと多い可能性もある。

4 卓球は明記されていないので,実際はウォーキングより多かったかもしれない。

5 (d)その他のスポーツに〇を付けた25人のうち,ゲートボールをする人が15人いた場合には,エアロビクスをする人は10人以下になる。


とても変わった問題だと思いませんか? 


しかし実は大学の入学試験では,データをどのように読み取るのか,といった問題が出題されます。学校でもそれを学んでいます。


落ち着いて問題を読めば,決して答えを引き出すのは難しいものではないでしょう。

しかし,先述のように,試験会場の独特の雰囲気は,普段ならできることができなくなるものです。


だからこそ・・・


問題を解く訓練が欠かせない


今日の問題を解く時のコツは,字面だけを追うのではなく,どのような可能性があるのか,を想像することです。


創造力が豊富なのは,ソーシャルワーカーにとってとても大切なことです。


国家試験で社会福祉調査の基礎を担当する試験委員は,社会福祉調査の専門家ではありません。社会学や社会福祉学の先生方が作問しています。


そのため,社会福祉調査を学ぶための出題ではなく,社会福祉士に求められるものを必ず出題の中に込めていると考えられます。


それでは詳しく見ましょう。


1 ここから,100人中80人は普段何らかのスポーツを行っていると分かる。


問題文の中に,普段行っているものにすべて〇を付けてもらったという表記があるので,一人が複数選択している可能性があることが想像できます。


そうなると80人が何らかのスポーツをしている,ということにはならないかもしれません。


よって×。


2 スポーツを行っている人に限ると,(c)のテニスをする人は8分の1である。



1で述べたように複数回答している人がいる可能性を考えるとスポーツを行っている人数は分かりません。


テニスをしているのが10人であることは分かりますが,分母が不明です。


そのため8分の1であるかは分かりません。


よって×。


3 この100人の中で,普段何もスポーツを行っていない人は少なくとも20人いてもっと多い可能性もある。


複数回答している人はいないと仮定すると,80名が何らかのスポーツをしていることになります。


つまりスポーツをしていない人は20名となります。


複数回答した人が多くなればなるほど,80名から減っていきますので,スポーツをしていない人数は20名よりも増えて行きます。


よって正解です。


4 卓球は明記されていないので,実際はウォーキングより多かったかもしれない。


卓球は,選択肢の中にはないので,卓球を行っている人がいた場合は,「その他のスポーツ」を選択することになります。


ところが,ウォーキングは30名,その他のスポーツは25名なので,その他のスポーツがすべて卓球だとしてもウォーキングの30名を上回ることはありません。


よって×。


5 (d)その他のスポーツに〇を付けた25人のうち,ゲートボールをする人が15人いた場合には,エアロビクスをする人は10人以下になる。


「その他のスポーツ」は25名です。ゲートボールとエアロビクスの両方を行う人がいた場合は,10名ではなくてもっと多い可能性があります。


よって×。



今日の問題はかなり奇異な問題です。

毎年このような新奇な出題があると考えておくと良いと思います。


今日のお題「頭を柔らかく」というのは,このような問題に対応するために必要です。



<今日のおまけ問題>


第27回・問題23

社会的リスクに関する次の記述のうち,「ベヴァリッジ報告」で想定されていなかったものを1つ選びなさい。

1 疾病により労働者の収入が途絶えるおそれ

2 勤務先の倒産や解雇により生計の維持が困難になるおそれ

3 老齢による退職のために,稼働収入が途絶えるおそれ

4 保育や介護の社会化が不充分なため,仕事と家庭の両立が困難になるおそれ

5 稼得者の退職や死亡により被扶養者の生活が困窮するおそれ


この問題もかなり新奇だったと思います。ベヴァリッジ報告の「5つの巨人」とはなんだっけ? と考えるだけで答えを出すのは簡単ではありません。


この問題を解くために必要なのは,第二次世界大戦の時代と現在では社会構造が変わったことは何だろう,と考える想像力です。


4以外はどれも5つの巨人のうちの経済的な問題,つまりは窮乏です。


そう考えると答えは4しかあり得ません。4の子育て問題,介護問題は新しいリスクです。

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