2024年5月12日日曜日

理論系科目は難しいが,覚える意義は大きい!!

 バートレットが「ソーシャルワーク実践の共通基盤」を提唱したのは,1970年のことです。この辺りからソーシャルワークはどんどん進化していきます。


今,取り上げているのは,理論系科目である「ソーシャルワークの理論と方法」です。


何度も同じことを書きますが,「価値」「知識」を身につけるのは,避けて通れません。


頑張りましょう。


さて,今日の問題です。


第26回・問題101 

相談援助におけるエンパワメントアプローチに関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。

1 ソロモン(Solomon,B.)は,問題の外在化を中心にしたエンパワメントアプローチを提唱した。

2 シュワルツ(Schwartz,W.)は,ストレングスはエンパワメントの燃料であると述べた。

3 グテイエレス(Gutierrez, L.)は,エンパワメントアプローチでは集団を通しての体験が重要であると述べた。

4 フレーレ(Freire,P.) は,エンパワメントアプローチに影響を与えたコンピテンスの概念を提唱した。

5 デュボイス(Dubois,B.)とミレイ(Miley,K.)は,問題解決モデルの援助過程に基づいてエンパワメントアプローチを示した。


エンパワメントアプローチの問題です。


第26回国試ではこの問題は最も難しいものだったのではないかと思います。


エンパワメントアプローチは,以前に書いたようにポストモダンに属するものです。ソロモンが1976年に提唱しました。


1950~60年代は,キング牧師に代表される公民権運動が吹き荒れた熱い時代です。


それよりもちょっと遅い感じがすると思いますが,抑圧されたパワーレス状態の黒人がその状況に気づき支援することを求めて提唱したものです。


少し遅めに出てきたというのは,問題は根強く残っていることを裏付けるものと言えます。


さて,それでは詳しく見ていきましょう。



1 ソロモン(Solomon,B.)は,問題の外在化を中心にしたエンパワメントアプローチを提唱した。



ソロモン=エンパワメントアプローチという単純化した知識だと引っ掛けられてしまう問題です。


「問題の外在化」という技法を用いるのは,エンパワメントアプローチとともにポストモダンに位置付けられる「ナラティブアプローチ」です。


ナラティブは「語り」を意味し,語りの中から新しい世界を見出すものです。


問題の外在化とは・・・


問題は自分が原因ではなく,自分の外にあるように置き換える技法です。



例えば,うつ病の患者が「私はうつでやる気ができない」と考えているとします。

外在化すると「うっちゃんが私からやる気を奪っていきます」といった語りになります。


うつ病に名前を付けて,「うっちゃん」としました。


かなり気が楽になると思いませんか?


このように問題の外在化はエンパワメントアプローチではないので×。



2 シュワルツ(Schwartz,W.)は,ストレングスはエンパワメントの燃料であると述べた。


シュワルツはグループワークの「相互作用モデル」を提唱した人です。


そこからストレングスのことは言わないだろうとは想像はつけられるかもしれませんが,かなり難しいものだと思います。


「ストレングスはエンパワメントの燃料である」と述べたのはコウガーという人らしいです。今のところはまだ国試にコウガーそのものの名前が直接出題されたことはありません。


クライエントにストレングス(強味)を見出すことはとても重要なので,しっかり覚えておきましょう。


3 グテイエレス(Gutierrez, L.)は,エンパワメントアプローチでは集団を通しての体験が重要であると述べた。


グテイエレスは,女性のエンパワメントに着目し,小集団活動が重要であると述べています。


よって正解です。


4 フレーレ(Freire,P.)は,エンパワメントアプローチに影響を与えたコンピテンスの概念を提唱した。


フレーレは,エンパワメントアプローチに影響を与えた人には間違いないのですが,福祉そのものの人ではなく,教育分野です。


フレーレのブラジルでの活動は,貧しい農民にその境遇を教えて,読み書き教育を行いました。読み書きができないことは次世代にも貧困が引き継がれる「貧困の再生産」につながります。


彼の活動は資本家から疎まれ一時は国外追放になりますが,その後帰国してスラム街でも識字教育を行いました。


ブラジルが最貧国の一つですが,目先の利益に目を奪われ国外追放してしまうようなところに問題の根源の深さを感じてしまいます。


コンピテンス概念を提唱したのはマルシアという人らしいです。


よって×。


コンピテンスとは能力のことを言います。


マルシアが提唱したコンピテンス概念は,クライエントが周りの環境に適応する能力のことです。


5 デュボイス(Dubois,B.)とミレイ(Miley,K.)は,問題解決モデルの援助過程に基づいてエンパワメントアプローチを示した。


先に答えを述べると,デュボイスとミレイは,問題解決モデルの援助過程に基づいてエンパワメントアプローチを示していません。


よって間違いです。


デュボイスとミレイをネットで調べてもほとんどヒットしません。


ヒットするのは,国試のこの問題に関するものばかりです。


〈今日の一言〉


今日の問題のような難しい問題は,おそらく今後は出題されません。しかし,時にはこういった問題が出題されることがないとは限りません。

そんなときでも,決して焦ることなく,落ち着いて考えて,答えが分からなければ,気持ちを知り変えて,次の問題に進むのが得策です。


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