2020年3月5日木曜日

合格・不合格は紙一重~その3 歴史

受験生の多くは,歴史と人名が苦手です。

そのため,たとえ正解できなくても,ほかの受験生とは差がつきにくいものです。

さて,今日の問題です。


第32回・問題57 障害者福祉制度の発展過程に関する次の記述のうち,最も適切なものを1つ選びなさい。

1 1960年(昭和35年)に成立した精神薄弱者福祉法は,ノーマライゼーションを法の理念とし,脱施設化を推進した。

2 1981年(昭和56年)の国際障害者年で主題として掲げられたのは,合理的配慮であった。

3 1995年(平成7年)に精神保健法が精神保健及び精神障害者福祉に関する法律に改正され,保護者制度が廃止された。

4 2013年(平成25年)に成立した「障害者差別解消法」では,障害者を医学モデルに基づいて定義している。

5 2018年(平成30年)に閣議決定された障害者基本計画(第4次)では,命の重さは障害によって変わることはないという価値観を社会全体で共有できる共生社会の実現に寄与することが期待されている。

(注) 「障害者差別解消法」とは,「障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律」のことである。


この問題は,歴史問題の形を借りて,今のことを説いているものです。

現在の社会福祉士の国家試験には,しばしば見られます。

この問題の正解は,選択肢5です。

5 2018年(平成30年)に閣議決定された障害者基本計画(第4次)では,命の重さは障害によって変わることはないという価値観を社会全体で共有できる共生社会の実現に寄与することが期待されている。

この問題を読んだ人は,おそらく2016年に神奈川県で起きた悲しくおぞましい事件を思い出したのではないでしょうか。

事件のことには触れずに,社会に語り掛けるこの問題は,試験委員のメッセージです。

ほかの選択肢も見てみましょう。


1 1960年(昭和35年)に成立した精神薄弱者福祉法は,ノーマライゼーションを法の理念とし,脱施設化を推進した。

精神薄弱者福祉法(現・知的障害者福祉法)は,脱施設化ではなく,逆に障害者福祉における施設化の始まりとなったものです。

ノーマライゼーション思想は,1950年代にデンマークで始まったものです。
日本でその思想が本格的に広まったのは,1981年の国際障害者年以降のことです。


2 1981年(昭和56年)の国際障害者年で主題として掲げられたのは,合理的配慮であった。

合理的配慮が初めて示されたのは,1990年のADA法(障害をもつアメリカ人法)です。

1981年の国際障害者年のずっと後のことです。
国際障害者年のテーマは「完全参加と平等」でした。


3 1995年(平成7年)に精神保健法が精神保健及び精神障害者福祉に関する法律に改正され,保護者制度が廃止された。

社会福祉士を受験する人にとっては,この選択肢はちょっと手ごわいものでしょう。
精神保健福祉法は,精神保健福祉士との差別化のためなのか,今までほとんど出題されることがありませんでした。

保護者制度が廃止されたのは,2013年のことです。

精神保健福祉士の専門科目では,こんな問題が出題されています。

問題11 精神保健に関する次の記述のうち,正しいものを2つ選びなさい。
1 歴史的に精神衛生を発展させた概念である。
2 精神疾患の一次予防を目的とした活動を意味し,治療を目的とする精神医療に対比する言葉として用いられる。
3 精神医学の領域に初めて予防の概念を取り入れたのはアメリカのビアーズ(Beers,C.)である。
4 精神疾患に罹患している人を対象とした訪問指導は,吉川武彦が提唱した3側面のうちの積極的精神保健に含まれる活動である。
5 全ての人々の精神的健康を保持・増進させていく活動を含む。

正解は,選択肢1と5です。
覚えておきたいのは,現在の精神保健福祉法は,

精神衛生法(1950)
 ↓ ↓
精神保健法(1987)
 ↓ ↓
精神保健福祉法(1995)

と発展してきたことです。

精神衛生法では,現在の医療保護入院につながる「同意入院」が規定され,精神保健法では,任意入院が規定されています。

さて,続けます。


4 2013年(平成25年)に成立した「障害者差別解消法」では,障害者を医学モデルに基づいて定義している。

障害者差別解消法は,障害者権利条約を批准するために国内法を整備した中の一つです。

社会的障壁という用語を用いた社会モデルに基づいて定義されています。


<今日の一言>

歴史が苦手な人は,年号などを覚えることが先に来ているように思います。

しかし,国家試験では,年号を知らなければ解けない問題はほとんどありません。

だいたいの時代を押さえることで十分です。

歴史を学ぶときに必要なのは,断片を切り取ることなく,全体の流れをつかむことが大切です。

そうすると,多くの歴史問題に対応できる知識となります。

2020年3月4日水曜日

合格・不合格は紙一重~その2 福祉計画

現時点(2020/03/04)は,国家試験が終わって1か月が経ったところです。
かなり冷静に試験を振り返ることができてくる頃でしょう。

試験当日は,あれだけ難しいと思った問題なのに,今,改めて見てみると,「なんでこの問題を間違ったのか」と思うものもあるでしょう。

そういう思いをしたくないから,国家試験の後には,国家試験のことは考えない,という人もいます。

しかし,資格取得を採用条件として,内定をもらっている新卒学生にとっては,合格・不合格は死活問題です。

だからこそ,ボーダーラインが気になることでしょう。

この学習部屋に訪室いただいたすべての人が合格されることを心から願っております。

さて,「福祉行財政と福祉計画」は,多くの受験生が苦手とする科目です。


第32回・問題45 次の計画のうち,定めたとき,又は変更したときに内閣総理大臣に提出しなければならないものを1つ選びなさい。

1 都道府県介護保険事業支援計画

2 都道府県における子どもの貧困対策についての計画

3 都道府県障害福祉計画

4 都道府県老人福祉計画

5 都道府県子ども・子育て支援事業支援計画

社会福祉士の国家試験には,数多くの法制度が出題されます。

その多くは,厚生労働省が所掌しています。
主だったもので,内閣府が所掌するものには,障害者基本法と子ども・子育て支援法があります。

これらを内閣府が所掌する意味は,複数の省庁の協力があって,施策の推進が可能となるからです。

障害者基本法に関して言えば,一般企業の協力は欠かせません。

例えば,

就労では経済産業省
移動では国土交通省

といったところです。

子ども・子育て支援法も一般企業の理解と協力は必須でしょう。

ということで,問題45の答えは,5ということになります。

第32回国家試験では,福祉計画の策定について,以下のような出題があります。


問題22 4 都道府県は,都道府県地域福祉支援計画を策定しなければならない。

都道府県地域福祉支援計画の策定は努力義務です。


問題36 2 市町村は,市町村地域福祉計画を市町村社会福祉協議会が策定する地域福祉活動計画と一体的に策定しなければならない。

このような規定はありません。


問題46 次の各計画の策定を規定している法律に,計画の実績について評価を行うと明記されているものを1つ選びなさい。
1 市町村自殺対策計画
2 市町村介護保険事業計画
3 市町村障害者計画
4 市町村子ども・子育て支援事業計画
5 市町村老人福祉計画

正解は,2です。これは正解できなくてもそれほど問題ではありません。


問題59 3 市町村障害福祉計画を策定するよう努めなければならない。

障害者福祉計画の策定は義務です。

ほかにも福祉計画の策定について出題されているものがありますが,主だったものは,この4問です。


<今日の一言>

福祉行財政と福祉計画で,福祉計画に関するものが正解できなくても,1点や2点です。

しかし,他科目でも出題されるので,きちっと覚えていなければ,こういった問題で,3・4点を失うことになります。

社会の動きにも気を向けなければならないのかもしれませんが,合格・不合格を分ける1・2点は,案外こういった極めてスタンダードな問題で得点できるか,できないかにかかっているように思います。

福祉計画は,ますます重要になってくるので,今後受験される方は,苦手意識は捨てて,確実に覚えることを強くおすすめします。

2020年3月3日火曜日

合格・不合格は紙一重~その1 事例問題

社会福祉士の国家試験の合格基準

問題の総得点の60%程度を基準として,問題の難易度で補正した点数以上の得点の者。


問題の難易度によって,合格基準点(ボーダーライン)は,上下します。

受験者がどのくらいの点数が取れているのかは,社会福祉士の国家試験の実施機関である「公益財団法人 社会福祉振興・試験センター」は一切発表していません。

しかし,わかるのは,いわゆるボーダーラインを超える点数を超えるのは,わずか3割程度であることです。

受験者の得点分布がどのようになっているのか,興味深いものです。

仮にボーダーラインを90点だと考えると,平均点は,80点は超えていないのではないでしょうか。

さらに仮定の話をすすめると,平均が80点だとすると,2割の人は,10点以内の差で不合格になっていることになります。

10点というととても大きいように感じるかもしれませんが,19科目のうち,半数程度の科目でプラス1点を上乗せするだけで合格する可能性があります。

つまらないミスを重ねていけば不合格になりますし,つまらないミスを極力なくすことで合格します。

さて,今日の問題です。

問題102 事例を読んで,Kソーシャルワーカー(社会福祉士)の援助の初回面接における応答として,適切なものを2つ選びなさい。

〔事 例〕
 Ⅹ小児がん拠点病院のKソーシャルワーカーは医師からの依頼で,これからの治療や生活に対する支援実施のため,同院の血液腫瘍科で小児がんと告知された女児(3歳)の両親と面談することになった。面接の冒頭,目を真っ赤にした母親は,「先生から娘の病気の説明は受けましたが,現実味がありません。ただ,なぜと繰り返し考えてしまいます。私たちの娘はなぜ3歳でがんになったのですか。できることなら私が代わってあげたい」と訴えた。

1 「今は混乱しているでしょうが,そのうち冷静に考えることができますよ」

2 「同じ経験をされている方はたくさんいます。その方々と会ってみませんか」

3 「ご心配が募る中でも娘さんの病気に向き合おうと努めておられるのですね」

4 「今は治療も進歩しているので大丈夫。安心して治療に専念しましょう」

5 「これからの治療や生活について,ご一緒に考えていきたいと思います」


正解は,選択肢3と5です。

決して難しい問題ではないですが,確実に正解するのは,そんなに簡単なことではありません。

こういった問題を確実に正解することで,10点の差は簡単についていきます。

2020年3月2日月曜日

国家試験に合格するということ

社会福祉士の国家試験は,1年に1回実施されています。

そのため,不合格になると1年待たなければなりません。

1年というのは,とても長いようですが,決してそれほど長い期間ではありません。

国家試験は,社会福祉士に期待されている力を問います。


国家試験を通して感じることは,

知識偏重の社会福祉士は求められていない

国家試験に合格するには,最低限の知識は必要ですが,それだけではボーダーラインを超えることはできません。


知識を使って,考えて考えて考え抜いて,答えを引き出す力が必要です。

しかも,これは,限られた時間内で行わなければなりません。

それでは今日の問題です。


第32回・問題63 2000年度(平成12年度)以降の生活保護の全国的な動向(年次推移)に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。

1 住宅扶助費の生活保護費全体に占める割合は,一貫して減少している。

2 被保護世帯及び被保護人員共に,2011年(平成23年)の東日本大震災を契機に増加に転じた。

3 世帯類型別にみた被保護世帯の構成比をみると,「母子世帯」の割合が一貫して増加している。

4 保護の開始理由別の被保護世帯数の推移をみると,「傷病」が一貫して増加している。

5 介護扶助人員は,一貫して増加している。


動向関連の問題は,たとえ基礎データに目を通していたとしても,正解できるとは限りません。

なぜなら,目を通しておくことと覚えていることは同じではないからです。

学校の先生や試験対策の講師などは,「●●白書に目を通しておきましょう」と言います。
しかし,実際に正解するのはとても難しいものです。

先生方は,その分野の専門家ですから,動向を読み取ることができます。

今日の問題のような,生活保護の動向は何度も出題されているので,ある程度の情報は,参考書に書いてあります。

しかし,すべては書いてありません。

参考書に書いてある内容から出題されるのであれば,記憶力の優れた人が有利です。

しかししかし・・・

知識偏重の社会福祉士は求められていない


そのために,考えて答えを見つけ出すように問題は作られます。

この問題を考えるために必要なポイントは「一貫して」です。

「一貫して」,増加や減少する背景には,明確な理由があります。

まずは,選択肢2

2 被保護世帯及び被保護人員共に,2011年(平成23年)の東日本大震災を契機に増加に転じた。

どの参考書にも書かれていますが,増加に転じたのは,平成7年のことです。
この問題で正解するために,最低限必要な知識は,平成7年を機に増加に転じたということです。

そのほかは,「一貫して」を考えることです。

この問題の正解は,選択肢5です。

5 介護扶助人員は,一貫して増加している。

高齢化が進展する中,近年は高齢者世帯が増加しています。

これは参考書で手に入れられる情報です。

これに比べると

1 住宅扶助費の生活保護費全体に占める割合は,一貫して減少している。
3 世帯類型別にみた被保護世帯の構成比をみると,「母子世帯」の割合が一貫して増加している。
4 保護の開始理由別の被保護世帯数の推移をみると,「傷病」が一貫して増加している。

これらの「一貫して」は,明確な理由を見つけることができません。

たとえば,選択肢4の保護の開始理由の「傷病」が一貫して増加するためには,ケガや病気になる人が増えていなければなりません。

これが明確な理由を見つけることができない,という意味です。


<今日の一言>


本番に弱い

という人がいます。

おそらく思考力を働かせることをしなければ,同じ結果を繰り返します。

思考力とは,想像力とほぼ同意語です。

勉強する際は,常に想像力を働かせるようにしましょう。

それこそが,社会福祉士に求められている姿であるように思います。

2020年3月1日日曜日

第32回国家試験の合格発表について

第32回国家試験の合格発表は,令和2年3月13日(金)に行われます。
社会福祉振興・試験センターのホームページ上では,14:00から閲覧することができます。
郵送はその日にされます。住む地域によって到着に差が生じます。

現在の合格発表は,3月中旬に行われていますが,以前は3月31日に行われていました。

そうなると,自分の合否が分かるのは,4月に入ってからということも生じます。

社会福祉士の資格取得が採用条件として内定をもらっている学生が不合格になってしまうと,4月に入ってから内定取り消しという事態が生じてしまいます。

それを防ぐために,3月中旬に合格発表することになって今に至ります。
4月までの2週間あれば,何とか就職先を見つけることができるだろうということなのでしょう。

新社会人になると,仕事に慣れることが第一優先となり,国家試験は頭の中のどこかにあるかもしれませんが,そのうちどんどん薄れていきます。

2回目の受験は何とかするかもしれませんが,3回目以降はチャレンジすることさえしなくなります。


  第31回国家試験のルート別合格率
受験ルート
既卒合格率
福祉系大学
13.5%
福祉系短大+実務経験
12.4%
短期養成施設
17.6%
一般養成施設
16.5%

このデータは,第31回の追加合格が発表される前のものなので,若干数値が違うかもしれません。

福祉系短大+実務経験ルートは,現役では受験できないので,受験者全員が既卒です。

この比較でわかるのは,福祉系大学ルートの既卒合格率が低く,一般養成施設ルートと短期養成施設ルート(以下,一般養成施設等)の既卒合格率が高いことです。

この2つのルートの既卒合格率の違いは,一般養成施設等は,受験資格を得る時から,働きながら勉強していることです。

そのため,福祉系大学ルートと違って,現役受験と再受験の時では,学習環境に変化がないことです。

現役受験の時は,大学等から様々なレクチャーを得ることができますが,再受験になると,すべて自分で勉強をすすめていかなければなりません。

中には,受験申込みをすることさえも忘れてしまう人も出てきます。

社会福祉士の国家試験の合格率は,残念ながら,3割程度しかありません。7割の人は不合格になります。

合格率の高い大学で,不合格になるとスティグマを与えられたような気持ちになるでしょう。

そのため,現役合格率が高い大学であっても,既卒合格率が低い傾向があります。

合格率が高ければ高い大学ほど,スティグマ感は強くなるかもしれません。

しかし,不合格になるのは,マジョリティです。


不合格になるのは,決して恥ずかしいことでもなく,まして能力が劣っていることではありません。


大切なのは,新卒で合格することではなく,国家資格を得ることです。

卒業してからも在学中と同じように,情報を受けることができる学校もあります。

しかし,多くの場合は,卒業してしまうと,それまでと同じような情報を得ることができなくなります。

学習部屋は,できる限り毎日情報を発信していきます。

もし,合格発表の日に自分の受験番号がなかったとしても,合格通知が届かなかったとしても,「合格」という目標を決して見失うことなく,学習を続けてほしいと切に願っています。

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