2020年3月2日月曜日

国家試験に合格するということ

社会福祉士の国家試験は,1年に1回実施されています。

そのため,不合格になると1年待たなければなりません。

1年というのは,とても長いようですが,決してそれほど長い期間ではありません。

国家試験は,社会福祉士に期待されている力を問います。


国家試験を通して感じることは,

知識偏重の社会福祉士は求められていない

国家試験に合格するには,最低限の知識は必要ですが,それだけではボーダーラインを超えることはできません。


知識を使って,考えて考えて考え抜いて,答えを引き出す力が必要です。

しかも,これは,限られた時間内で行わなければなりません。

それでは今日の問題です。


第32回・問題63 2000年度(平成12年度)以降の生活保護の全国的な動向(年次推移)に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。

1 住宅扶助費の生活保護費全体に占める割合は,一貫して減少している。

2 被保護世帯及び被保護人員共に,2011年(平成23年)の東日本大震災を契機に増加に転じた。

3 世帯類型別にみた被保護世帯の構成比をみると,「母子世帯」の割合が一貫して増加している。

4 保護の開始理由別の被保護世帯数の推移をみると,「傷病」が一貫して増加している。

5 介護扶助人員は,一貫して増加している。


動向関連の問題は,たとえ基礎データに目を通していたとしても,正解できるとは限りません。

なぜなら,目を通しておくことと覚えていることは同じではないからです。

学校の先生や試験対策の講師などは,「●●白書に目を通しておきましょう」と言います。
しかし,実際に正解するのはとても難しいものです。

先生方は,その分野の専門家ですから,動向を読み取ることができます。

今日の問題のような,生活保護の動向は何度も出題されているので,ある程度の情報は,参考書に書いてあります。

しかし,すべては書いてありません。

参考書に書いてある内容から出題されるのであれば,記憶力の優れた人が有利です。

しかししかし・・・

知識偏重の社会福祉士は求められていない


そのために,考えて答えを見つけ出すように問題は作られます。

この問題を考えるために必要なポイントは「一貫して」です。

「一貫して」,増加や減少する背景には,明確な理由があります。

まずは,選択肢2

2 被保護世帯及び被保護人員共に,2011年(平成23年)の東日本大震災を契機に増加に転じた。

どの参考書にも書かれていますが,増加に転じたのは,平成7年のことです。
この問題で正解するために,最低限必要な知識は,平成7年を機に増加に転じたということです。

そのほかは,「一貫して」を考えることです。

この問題の正解は,選択肢5です。

5 介護扶助人員は,一貫して増加している。

高齢化が進展する中,近年は高齢者世帯が増加しています。

これは参考書で手に入れられる情報です。

これに比べると

1 住宅扶助費の生活保護費全体に占める割合は,一貫して減少している。
3 世帯類型別にみた被保護世帯の構成比をみると,「母子世帯」の割合が一貫して増加している。
4 保護の開始理由別の被保護世帯数の推移をみると,「傷病」が一貫して増加している。

これらの「一貫して」は,明確な理由を見つけることができません。

たとえば,選択肢4の保護の開始理由の「傷病」が一貫して増加するためには,ケガや病気になる人が増えていなければなりません。

これが明確な理由を見つけることができない,という意味です。


<今日の一言>


本番に弱い

という人がいます。

おそらく思考力を働かせることをしなければ,同じ結果を繰り返します。

思考力とは,想像力とほぼ同意語です。

勉強する際は,常に想像力を働かせるようにしましょう。

それこそが,社会福祉士に求められている姿であるように思います。

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