2020年3月18日水曜日

新カリキュラムの概要~⑤地域福祉と包括的支援体制

社会福祉士の国家試験は,第36回までは,今のカリキュラムで実施され,第37回から新しいカリキュラムになります。

今回は,「⑤地域福祉と包括的支援体制」です。

科目名から想像できると思いますが,この科目は「地域福祉の理論と方法」から移行するものです。

しかし,内容が思いっきり変わり,難易度が上がります。

現行カリキュラムでも苦手にしている人が多い科目かもしれませんが,そんなレベルではありません。



地域福祉と包括的支援体制(60時間)
ねらい(目標)
①地域福祉の基本的な考え方、展開、動向について理解する。
②地域福祉における主体と対象を理解し、住民の主体形成の概念を理解する。
③地域福祉を推進するための、福祉行財政の実施体制と果たす役割について理解する。
④地域福祉計画をはじめとした福祉計画の意義・目的及び展開を理解する。
⑤包括的支援体制の考え方と、多職種及び多機関協働の意義と実際について理解する。
⑥地域生活課題の変化と現状を踏まえ、包括的支援体制における社会福祉士及び精神保健福祉士の役割を理解する。
教育に含むべき事項(内容)
教育に含むべき事項
想定される教育内容の例
①地域福祉の基本的な考え方
1 地域福祉の概念と理論
・地域福祉の概念、地域福祉の構造と機能
・福祉コミュニティ論、在宅福祉サービス論、ボランティア・市民活動論
・共生社会
2 地域福祉の歴史
・セツルメント、COS、社会事業、社会福祉協議会、民生委員、児童委員、共同募金、在宅福祉、施設の社会化、地方分権、社会福祉基礎構造改革、地域自立生活、地域包括ケア、地域共生社会
3 地域福祉の動向
・コミュニティソーシャルワーク、コミュニティサービス、地域再生、ケアリングコミュニティ
4 地域福祉の推進主体
・地方自治体
NPO、市民活動組織、中間支援組織
・町内会、自治会等地縁組織
・民生委員、児童委員、主任児童委員、保護司
・当事者団体
・社会福祉協議会
・共同募金
・企業
5 地域福祉の主体と形成
・当事者、代弁者
・ボランティア
・市民活動、住民自治、住民主体
・参加と協働、エンパワメント、アドボカシー
・福祉教育
②福祉行財政システム
1 国の役割
・法定受託事務と自治事務
2 都道府県の役割
・福祉行政の広域的調整、事業者の指導監督
3 市町村の役割
・サービスの運営主体
・条例
・社会福祉審議会
4 国と地方の関係
・地方分権、地方自治、地域主権、地方創生
5 福祉行政の組織及び専門職の役割
・福祉事務所、児童相談所、身体障害者更生相談所、知的障害者更生相談所、精神保健福祉センター、婦人相談所、地域包括支援センター 等
・福祉事務所の現業員・査察指導員、児童福祉司、身体障害者福祉司、知的障害者福祉司、精神保健福祉相談員 等
6 福祉における財源
・国の財源、地方の財源、保険料財源
・民間の財源
1 福祉計画の意義・目的と展開
・福祉行財政と福祉計画の関係
・福祉計画の歴史
・福祉計画の種類(地域福祉計画、老人福祉計画、介護保険事業計画、障害福祉計画、子ども・子育て支援事業計画、民間の福祉計画等)
2市町村地域福祉計画・都道府県地域福祉支援計画の内容
・地域福祉と計画行政の関係
・市町村地域福祉計画及び都道府県地域福祉支援計画の定義、機能
・地域福祉活動計画との関係
3 福祉計画の策定過程と方法
・課題把握・分析
・協議と合意形成
4 福祉計画の実施と評価
・モニタリング
・サービス評価
・プログラム評価
④地域社会の変化と多様化・複雑化した地域生活課題
1 地域社会の概念と理論
・地域社会の概念
・地域社会の理論
2 地域社会の変化
・世帯数、世帯構成
・過疎化、都市化、地域間格差
・外国人住民の増加
3 多様化・複雑化した地域生活課題の現状とニーズ
・ひきこもり、ニート、8050問題、ダブルケア、依存症、多文化共生、自殺、災害 等
4 地域福祉と社会的孤立
・社会的孤立、社会的排除
・セルフネグレクト
⑤地域共生社会の実現に向けた包括的支援体制
1 包括的支援体制
・包括的支援体制の考え方
・包括的支援体制の展開
2 地域包括ケアシステム
・地域包括ケアシステムの考え方
・地域包括ケアシステムの展開
・精神障害にも対応した地域包括ケアシステムの展開
・子育て世代包括支援センター
3 生活困窮者自立支援の考え方
・生活困窮者自立支援制度と理念
・自立相談支援機関による支援過程と方法、実際
・伴走型の支援と対象者横断的な包括的相談支援
・個人および世帯の支援
・居住支援、就労支援、家計支援、子どもの学習・生活支援
4 地域共生社会の実現に向けた各種施策
・多機関協働による包括的支援体制
・住民に身近な圏域における相談支援体制
⑥地域共生の実現に向けた多機関協働
1 多機関協働を促進する仕組み
・総合相談
・各種相談機関の連携
・協議体
・地域ケア会議
・地域包括支援センター運営協議会
・要保護児童対策地域協議会
・障害者自立支援協議会

2 多職種連携
・保健・医療・福祉に関わる多職種連携
・生活支援全般に関わるネットワーク
・多職種連携等における個人情報保護

3 福祉以外の分野との機関協働の実際
・社会的企業
・農福連携
・観光、商工労働等との連携
・地方創生
⑦災害時における総合的かつ包括的な支援体制
1 非常時や災害時における法制度
・災害対策基本法、災害救助法
・各自治体等の避難計画
2 非常時や災害時における総合的かつ包括的な支援
・災害時要援護者支援
BCP(事業継続計画)
・福祉避難所運営
・災害ボランティア
⑧地域福祉と包括的支援体制の課題と展望
1 地域福祉ガバナンス
・ガバナンスの考え方
・多様化・複雑化した課題と多機関協働の必要性
・社会福祉法における包括的な支援体制づくり
・住民の参加と協働、住民自治
・プラットフォームの形成と運営
2 地域共生社会の構築
・地域共生社会
・地域力の強化、包括的支援体制

勉強している人ならわかると思いますが,現在のカリキュラムの「地域福祉の理論と経営」に加えて「福祉行財政と福祉計画」を含んだ内容です。

第32回国家試験では,以下の問題が出題されています。


第32回・問題47 福祉計画に関して,1990年(平成2年)の福祉関係八法改正より以前の記述として,正しいものを1つ選びなさい。

1 「エンゼルプラン」が策定された。

2 障害福祉計画が障害者自立支援法に規定された。

3 社会福祉施設緊急整備5か年計画が策定された。

4 「新ゴールドプラン」が策定された。

5 地域福祉計画が社会福祉法に規定された。

(注)1 「エンゼルプラン」とは,「今後の子育て支援のための施策の基本的方向について」のことである。
   2 「新ゴールドプラン」とは,「新・高齢者保健福祉推進十か年戦略」のことである。

これまでの「福祉行財政と福祉計画」には,みられなかった問題です。

これは,以下に対応していると考えられます。





③福祉計画の意義と種類、策定と運用
1 福祉計画の意義・目的と展開
・福祉行財政と福祉計画の関係
・福祉計画の歴史
・福祉計画の種類(地域福祉計画、老人福祉計画、介護保険事業計画、障害福祉計画、子ども・子育て支援事業計画、民間の福祉計画等)


歴史を苦手としている人は多いと思いますが,福祉計画もいよいよ歴史が出題されるようになりました。

さて,問題の答えは,3です。
3 社会福祉施設緊急整備5か年計画が策定された。


1970(昭和45)年
社会福祉施設緊急整備5か年計画
1990(平成2)年
福祉関係八法改正
1994(平成6)年
エンゼルプラン
新ゴールドプラン
2000(平成12)年
地域福祉計画
2005(平成17)年
障害福祉計画


<今日の一言>

歴史は,その部分を切り取って覚えるというよりも流れを押さえることがコツです。

この場合,大切なことは,福祉関係八法改正は,潮目になっていることを押さえていることです。

最新の記事

児童手当法と児童手当

  今回は児童手当法と児童手当を学びます。 児童手当法,児童扶養手当法,特別児童扶養手当法は,児童扶養手当法(1961年),特別児童扶養手当法(1964年),児童手当法(1971年)の順で成立していきました。 児童手当法の児童の定義は,18歳に達する日以後の最初の3月31日までの...

過去一週間でよく読まれている記事