2020年3月20日金曜日

新カリキュラムの概要~⑥社会保障

福祉系大学は,令和3(2021)年度から新しいカリキュラムが導入されます。

その年に入学した人たちが国家試験を受験する第37回国家試験から,新しい国家試験に変わります。

今のカリキュラムに切り替わったときには,前のカリキュラムで勉強した人が国家試験では新しいカリキュラムで受験するという現象が生じました。

これは,社会福祉士のカリキュラムは,一般養成施設(つまり1年課程)が標準だからです。

福祉系大学は,各大学で開講している科目を個別に社会福祉士の受験に必要な科目に読み替えて受験資格が得られます。

(参考)
受験資格別合格率~第32回
https://fukufuku21.blogspot.com/2020/03/32_16.html

次のカリキュラムでは,前回のようなひずみが生じないように,配慮されています。

そのおかげで,国家試験に関する対策は十分できるようになります。

さて,今回は,「⑥社会保障」を取り上げます。


社会保障(60時間)
ねらい(目標)
①社会保障の概念や対象及びその理念について、社会保障制度の展開過程も含めて理解する。
②現代社会における社会保障制度の役割と意義、取り組むべき課題について理解する。
③社会保障制度の財政について理解する。
④公的保険制度と民間保険制度の関係について理解する。
⑤社会保障制度の体系と概要について理解する。
⑥諸外国における社会保障制度の概要について理解する。
教育に含むべき事項(内容)
教育に含むべき事項
想定される教育内容の例
①現代社会における社会保障制度の現状(少子高齢化と社会保障制度の関係を含む。)
1 人口動態の変化
・少子高齢化、人口減少社会
2 経済環境の変化
・低成長社会と社会保障の持続可能性
3 労働環境の変化
・正規雇用と非正規雇用
・労働関係法規(男女雇用機会均等法、障害者雇用促進法)
・ワーク・ライフ・バランス
②社会保障の概念や対象及びその理念
1 社会保障の概念と範囲

2 社会保障の役割と意義
・セーフティネット
3 社会保障の理念

4 社会保障の対象

5 社会保障制度の展開
・社会保障制度の歴史的変遷
③社会保障と財政
1 社会保障の財源
・一般会計
・地方経費
・社会保険料
・利用者負担
・財政調整
2 社会保障給付費
・内訳
・動向
3 国民負担率

4 社会保障と経済

④社会保険と社会扶助の関係
1 社会保険の概念と範囲

2 社会扶助の概念と範囲

⑤公的保険制度と民間保険制度の関係
1 公的保険と民間保険の現状
・公的保険と民間保険の主な種類
・公的保険と民間保険の違い
⑥社会保障制度の体系
1 医療保険制度等の概要
・制度の目的、対象、給付内容、財源構成
・公費負担医療
2 介護保険制度の概要
・制度の目的、対象、給付内容、財源構成
3 年金保険制度の概要
・制度の目的、対象、給付内容、財源構成
4 労災保険制度と雇用保険制度の概要
・制度の目的、対象、給付内容、財源構成
5 生活保護制度の概要
・制度の目的、対象、給付内容、財源構成
6 社会手当制度の概要
・制度の目的、対象、給付内容、財源構成
7 社会福祉制度の概要
・制度の目的、対象、給付内容、財源構成
⑦諸外国における社会保障制度
1 諸外国における社会保障制度の概要
・先進諸国の社会保障制度の歴史と概要
2 社会保障制度の国際比較
・高齢化と社会保障の給付規模
・社会保障給付費の内訳

この科目に関しては,ほとんど内容は変わっていませんが,以下の部分が新しく加わっています。

追加されている部分
①現代社会における社会保障制度の現状(少子高齢化と社会保障制度の関係を含む。)
2 経済環境の変化
・低成長社会と社会保障の持続可能性


社会保障は,資本主義の欠陥を補うための制度です。

資本主義で得られた果実を財源とします。

経済が成長している時なら,社会保障にかける費用が増大しても不都合が生じません。

すでに日本は,人口減少社会に移行しています。
これからは,明治以降の近代日本が経験したことがない時代となっていきます。

SDGsも同じですが,現在の重要なキーワードは「持続可能性」です。


社会福祉士に求められるのは,クライエントに対するわかりやすい説明です。


批判することや要求することは簡単です。

しかし,実際に制度を作って運用することは,決して簡単なことではありません。

「社会保障」では,わが国だけではなく,ほかの国との比較も学びます。


第32回・問題50 「平成28年度社会保障費用統計」(国立社会保障・人口問題研究所)に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。

1 2016年度(平成28年度)の社会保障給付費は,150兆円を超過した。

2 2016年度(平成28年度)の社会保障給付費を部門別(「医療」,「年金」,「福祉その他」)にみると,「福祉その他」の割合は1割に満たない。

3 2016年度(平成28年度)の社会保障給付費を機能別(「高齢」,「保健医療」,「家族」,「失業」など)にみると,「家族」の割合は1割に満たない。

4 2016年度(平成28年度)の社会保障財源における公費負担の割合は,社会保険料の割合よりも大きい。

5 2015年度(平成27年度)における社会支出の国際比較によれば,日本の社会支出の対国内総生産比は,フランスよりも高い。

この問題は,「社会保障」の中でも最もスタンダードな問題です。
勉強している人にとっては,ものすごく簡単な問題です。

しかし,勉強していない人にとっては,ほとんど正解することはできない問題です。

正解は,選択肢3です。

3 2016年度(平成28年度)の社会保障給付費を機能別(「高齢」,「保健医療」,「家族」,「失業」など)にみると,「家族」の割合は1割に満たない。

家族の割合は,約6%です。


この問題で伝えたいのは,

5 2015年度(平成27年度)における社会支出の国際比較によれば,日本の社会支出の対国内総生産比は,フランスよりも高い。

日本の社会保障にかかる必要は年々増大していますが,主要各国と比べると,決して多くありません。


<今日の一言>

社会福祉士には,社会福祉のプロフェッショナルとして,全体を俯瞰する力が求められています。

そして,クライエントに分かりやすく説明することができることです。

難解な行政資料をかみ砕いて,クライエントに説明することもあるでしょう。

国家試験勉強は,その訓練の場だと言えます。

丸暗記するのではなく,自分のことばで説明できるくらいの理解まで落とし込むと,国家試験での得点力は確実に上がります。

行政資料をかみ砕くことなく,そのままクライエントに説明するような社会福祉士は,クライエントの信用を得ることもできないでしょうし,クライエントの真のニーズを引き出すこともできないと言えるでしょう。


さすが社会福祉士を持っている人は違う

と思うことがあると思います。

今の勉強は苦しいと思いますが,一歩差がつくための試練です。

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