2020年3月12日木曜日

新カリキュラムの概要~④社会福祉の原理と政策

新しいカリキュラムによる国家試験は,第37回から実施されます。

今回は,「社会福祉の原理と政策」を取り上げます。

この科目は,現在の「現代社会と福祉」から移行するものです。


社会福祉の原理と政策(60時間)
ねらい(目標)
①社会福祉の原理をめぐる思想・哲学と理論を理解する。
②社会福祉の歴史的展開の過程と社会福祉の理論を踏まえ、欧米との比較によって日本の社会福祉の特性を理解する。
③社会問題と社会構造の関係の視点から、現代の社会問題について理解する。
④福祉政策を捉える基本的な視点として、概念や理念を理解するとともに、人々の生活上のニーズと福祉政策の過程を結びつけて理解する。
⑤福祉政策の動向と課題を踏まえた上で、関連施策や包括的支援について理解する。
⑥福祉サービスの供給と利用の過程について理解する。
⑦福祉政策の国際比較の視点から、日本の福祉政策の特性について理解する。
教育に含むべき事項(内容)
教育に含むべき事項
想定される教育内容の例
①社会福祉の原理
1 社会福祉の原理を学ぶ視点
・社会福祉の歴史、思想・哲学、理論、社会福祉の原理と実践
・社会福祉学の構造と特徴
②社会福祉の歴史
1 社会福祉の歴史を学ぶ視点
・歴史観、政策史、実践史、発達史、時代区分
・日本と欧米の社会福祉の比較史の視点
2 日本の社会福祉の歴史的展開
・慈善事業、博愛事業
・社会事業
・社会福祉事業
・社会福祉
3 欧米の社会福祉の歴史的展開
・救貧法
・慈善事業、博愛事業
・社会事業、社会保険
・福祉国家、福祉社会
・国際的潮流
③社会福祉の思想・哲学、理論
1 社会福祉の思想・哲学
・社会福祉の思想・哲学の考え方
・人間の尊厳
・社会正義
・平和主義 等
2 社会福祉の理論
・社会福祉の理論の基本的な考え方
・戦後社会福祉の展開と社会福祉理論
・社会福祉の理論(政策論、技術論、固有論、統合論、運動論、経営論)
・欧米の社会福祉の理論
3 社会福祉の論点
・公私関係、効率性と公平性、普遍主義と選別主義、自立と依存、自己選択・自己決定とパターナリズム、参加とエンパワメント、ジェンダー、社会的承認
4 社会福祉の対象とニーズ
・ニーズと需要の概念
・社会福祉の対象とニーズ
・ニーズの種類と次元
・ニーズの理論とその課題
④社会問題と社会構造
1 現代における社会問題
・貧困、孤立、失業、要援護性、偏見と差別、社会的排除、ヴァルネラビリティ、ニューリスク、依存症、自殺
2 社会問題の構造的背景
・低成長経済、グローバル化、少子高齢化、人口減少社会、格差、貧困、社会意識・価値観の変化
⑤福祉政策の基本的な視点
1福祉政策の概念・理念
・現代の社会問題と福祉政策
・福祉政策の概念・理念
・福祉政策と社会保障、社会政策
・福祉レジームと福祉政策
⑥福祉政策におけるニーズと資源
1 ニーズ
・種類と内容
・把握方法
2 資源
・種類と内容
・把握方法
・開発方法
⑦福祉政策の構成要素と過程
1 福祉政策の構成要素
・福祉政策の構成要素とその役割・機能
・政府、市場(経済市場、準市場、社会市場)、事業者、国民(利用者を含む)
・措置制度
・多元化する福祉サービス提供方式
2 福祉政策の過程
・政策決定、実施、評価
・福祉政策の方法・手段
・福祉政策の政策評価・行政評価
・福祉政策と福祉計画


現在のカリキュラムの「現代社会と福祉」の前の科目であった「社会福祉原論」に近い内容だと言えます。


第32回の国家試験では,以下の問題が出題されています。

第32回・問題24 1950年代から1970年代にかけての社会福祉の理論に関する次の記述のうち,最も適切なものを1つ選びなさい。

1 木田徹郎は,社会事業を,資本主義の維持という側面から,賃金労働の再生産機構における「社会的問題」の緩和・解決の一形式と捉えた。

2 三浦文夫は,政策範疇としての社会福祉へのアプローチの方法として,ニード論や供給体制論を展開した。

3 岡村重夫は,生活権を起点に据えた実践論・運動論を組み入れた社会福祉学が総合的に体系化されなければならないと論じた。

4 孝橋正ーは,社会福祉の固有の機能を,個人とそれを取り巻く環境との間の不均衡を調整し,環境への適応を促すことと論じた。

5 一番ヶ瀬康子は,政策論よりも援助技術論を重視すべきと論じた。


この問題は,

2 社会福祉の理論
・社会福祉の理論の基本的な考え方
・戦後社会福祉の展開と社会福祉理論
・社会福祉の理論(政策論、技術論、固有論、統合論、運動論、経営論)
・欧米の社会福祉の理論

の「・社会福祉の理論(政策論、技術論、固有論、統合論、運動論、経営論)」に当たります。

この問題の正解は,2です。

2 三浦文夫は,政策範疇としての社会福祉へのアプローチの方法として,ニード論や供給体制論を展開した。

三浦文夫は,「経営論」の人です。


1 木田徹郎は,社会事業を,資本主義の維持という側面から,賃金労働の再生産機構における「社会的問題」の緩和・解決の一形式と捉えた。

木田徹郎は,「統合論」の人です。

3 岡村重夫は,生活権を起点に据えた実践論・運動論を組み入れた社会福祉学が総合的に体系化されなければならないと論じた。

岡村重夫は,「固有論」の人です。


4 孝橋正ーは,社会福祉の固有の機能を,個人とそれを取り巻く環境との間の不均衡を調整し,環境への適応を促すことと論じた。

孝橋正一は,「政策論」の人です。


5 一番ヶ瀬康子は,政策論よりも援助技術論を重視すべきと論じた。

一番ヶ瀬康子は,「運動論」の人です。


<今日のまとめ>

まとめると以下のようになります。

人物名
系譜
竹内愛二
技術論
孝橋正一
政策論
三浦文夫
経営論
木田徹郎
統合論
岡村重夫
固有論
一番ヶ瀬康子
運動論

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