2020年3月11日水曜日

新カリキュラムの概要~③社会学と社会システム

第37回国家試験(令和7年2月実施)から,新しいカリキュラムで実施されます。

今回は,社会学と社会システムを見ていきたいと思います。

現在の「社会理論と社会システム」から移行する科目です。


社会学と社会システム(30時間)
ねらい(目標)
①現代社会の特性を理解する。
②生活の多様性について理解する。
③人と社会の関係について理解する。
④社会問題とその背景について理解する。
教育に含むべき事項(内容)
教育に含むべき事項
想定される教育内容の例
①社会学の視点
1 社会学の歴史と対象
・社会学の発展と対象
②社会構造と変動
1 社会システム
・社会システムの概念
・文化・規範、社会意識、産業と職業、社会階級と社会階層、社会指標
2 組織と集団
・社会集団の概念
・第一次集団、第二次集団
・組織の概念、官僚制
・企業、学校、病院、施設(全制的施設)、NPO
3 人口
・人口の概念
・人口構造、人口動態、人口減少、人口問題、少子高齢化、超高齢社会
4 グローバリゼーション
・国境を超える移動(人・モノ・資本・情報等)
・エスニシティ、移民、多文化、国籍
・グローバル
・エイジング
5 社会変動
・社会変動の概念
・近代化、産業化、情報化
6 地域
・地域の概念、コミュニティの概念
・コミュニティの再生、ソーシャルキャピタル
・都市化と地域社会、過疎化と地域社会、中山間地域の課題
・地域社会の集団・組織
7 環境
・気候変動
・環境破壊
・持続可能性
③市民社会と公共性
1 社会的格差
・所得、教育、健康
2 社会政策と社会問題
・福祉国家と福祉社会
・社会運動
・公共空間
3 差別と偏見
・ラベリング理論、逸脱
・マイノリティ(LGBT 等を含む)
・社会的排除、排斥
4 災害と復興
・避難計画、生活破壊、生活再建
・災害時要援護者
・ボランティア
④生活と人生
1 家族とジェンダー
・家族の概念、家族の変容
・世帯の概念
・男女共同参画
・ひとり親、子育て、介護、8050 問題
・虐待、DV
2 健康



・心身の障害、慢性疾患
・治療と仕事の両立
・依存症
・自殺
3 労働
・ワークライフバランス
・女性の活躍推進
・正規雇用、非正規雇用
・失業
・過労死
4 世代
・ライフステージ、ライフコース
・世代間交流
・個人化
・いじめ、ハラスメント
・社会的孤立と孤独
⑤自己と他者
1 自己と他者
・相互作用、間主観性
・社会的自我
2 社会化
・役割取得、アイデンティティ
・生涯発達
3相互行為
・シンボリック相互作用論
・親密性
・コミュニケーション(SNSを含む)
・ひきこもり

第32回国家試験では,既にこの内容が反映したものがいくつか出題されています。

その一つが「シンボリック相互作用論」などです。

第32回・問題19 次のうち,パーソンズ(Parsons,T.)の社会的行為論として,正しいものを1つ選びなさい。

1 コミュニケーション的行為論

2 交換理論

3 集合行動論

4 象徴的相互作用論

5 主意主義的行為理論


正解は,5の「主意主義的行為理論」です。

とても難しい問題ですが,第31回から引き続き出題されているので,正解できた人もいるでしょう。


第31回・問題20 社会的行為の主観的意味を理解することを通して,その過程及び結果を説明しようとする考え方を表す用語として,最も適切なものを1つ選びなさい。

1 合理的選択理論

2 主意主義的行為

3 理解社会学

4 コミュニケーション的行為

5 社会システム論


この正解は,3の「理解社会学」です。

さて,第32回の問題に戻ります。


「象徴的相互作用論」が,「シンボリック相互作用論」のことです。


象徴的相互作用論,あるいはシンボリック相互作用論とは,

簡潔に言えば,人の行為は,社会との相互作用の中で,意味を持つものとなる,ととらえます。

そして,その意味は,社会との相互作用の中で,変化していきます。



<今日のまとめ>

「社会学と社会システム」は,社会を理解するための科目です。

科目のねらいには,それが色濃く出ています。

その中でも「②生活の多様性について理解する」は,ソーシャルワークのグローバル定義にの「多様性の尊重」につながります。

社会は,往々にして,社会規範とずれた者を逸脱者とみなします。


ソーシャルワーク専門職のグローバル定義

ソーシャルワークは,社会変革と社会開発,社会的結束,および人々のエンパワメントと解放を促進する,実践に基づいた専門職であり学問である。社会正義,人権,集団的責任,および多様性尊重の諸原理は,ソーシャルワークの中核をなす。ソーシャルワークの理論,社会科学,人文学,および地域・民族固有の知を基盤として,ソーシャルワークは,生活課題に取り組みウェルビーイングを高めるよう,人々やさまざまな構造に働きかける。
この定義は,各国および世界の各地域で展開してもよい。


社会福祉士のカリキュラムでは,今までソーシャルワークという言葉は使われず,旧カリキュラムでは「社会福祉援助」,現在のカリキュラムでは「相談援助」と表現されています。

次のカリキュラムでは,いよいよ「ソーシャルワーク」が使われます。

社会にコミットする社会福祉士が求められているように思います。

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