今回は,社会学と社会システムを見ていきたいと思います。
現在の「社会理論と社会システム」から移行する科目です。
社会学と社会システム(30時間)
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ねらい(目標)
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①現代社会の特性を理解する。
②生活の多様性について理解する。
③人と社会の関係について理解する。
④社会問題とその背景について理解する。
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教育に含むべき事項(内容)
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教育に含むべき事項
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想定される教育内容の例
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①社会学の視点
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1 社会学の歴史と対象
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・社会学の発展と対象
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②社会構造と変動
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1 社会システム
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・社会システムの概念
・文化・規範、社会意識、産業と職業、社会階級と社会階層、社会指標
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2 組織と集団
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・社会集団の概念
・第一次集団、第二次集団
・組織の概念、官僚制
・企業、学校、病院、施設(全制的施設)、NPO
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3 人口
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・人口の概念
・人口構造、人口動態、人口減少、人口問題、少子高齢化、超高齢社会
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4 グローバリゼーション
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・国境を超える移動(人・モノ・資本・情報等)
・エスニシティ、移民、多文化、国籍
・グローバル
・エイジング
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5 社会変動
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・社会変動の概念
・近代化、産業化、情報化
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6 地域
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・地域の概念、コミュニティの概念
・コミュニティの再生、ソーシャルキャピタル
・都市化と地域社会、過疎化と地域社会、中山間地域の課題
・地域社会の集団・組織
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7 環境
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・気候変動
・環境破壊
・持続可能性
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③市民社会と公共性
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1 社会的格差
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・所得、教育、健康
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2 社会政策と社会問題
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・福祉国家と福祉社会
・社会運動
・公共空間
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3 差別と偏見
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・ラベリング理論、逸脱
・マイノリティ(LGBT 等を含む)
・社会的排除、排斥
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4 災害と復興
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・避難計画、生活破壊、生活再建
・災害時要援護者
・ボランティア
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④生活と人生
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1 家族とジェンダー
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・家族の概念、家族の変容
・世帯の概念
・男女共同参画
・ひとり親、子育て、介護、8050 問題
・虐待、DV
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2 健康
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・心身の障害、慢性疾患
・治療と仕事の両立
・依存症
・自殺
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3 労働
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・ワークライフバランス
・女性の活躍推進
・正規雇用、非正規雇用
・失業
・過労死
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4 世代
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・ライフステージ、ライフコース
・世代間交流
・個人化
・いじめ、ハラスメント
・社会的孤立と孤独
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⑤自己と他者
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1 自己と他者
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・相互作用、間主観性
・社会的自我
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2 社会化
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・役割取得、アイデンティティ
・生涯発達
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3相互行為
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・シンボリック相互作用論
・親密性
・コミュニケーション(SNSを含む)
・ひきこもり
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第32回国家試験では,既にこの内容が反映したものがいくつか出題されています。
その一つが「シンボリック相互作用論」などです。
第32回・問題19 次のうち,パーソンズ(Parsons,T.)の社会的行為論として,正しいものを1つ選びなさい。
1 コミュニケーション的行為論
2 交換理論
3 集合行動論
4 象徴的相互作用論
5 主意主義的行為理論
正解は,5の「主意主義的行為理論」です。
とても難しい問題ですが,第31回から引き続き出題されているので,正解できた人もいるでしょう。
第31回・問題20 社会的行為の主観的意味を理解することを通して,その過程及び結果を説明しようとする考え方を表す用語として,最も適切なものを1つ選びなさい。
1 合理的選択理論
2 主意主義的行為
3 理解社会学
4 コミュニケーション的行為
5 社会システム論
この正解は,3の「理解社会学」です。
さて,第32回の問題に戻ります。
「象徴的相互作用論」が,「シンボリック相互作用論」のことです。
象徴的相互作用論,あるいはシンボリック相互作用論とは,
簡潔に言えば,人の行為は,社会との相互作用の中で,意味を持つものとなる,ととらえます。
そして,その意味は,社会との相互作用の中で,変化していきます。
<今日のまとめ>
「社会学と社会システム」は,社会を理解するための科目です。
科目のねらいには,それが色濃く出ています。
その中でも「②生活の多様性について理解する」は,ソーシャルワークのグローバル定義にの「多様性の尊重」につながります。
社会は,往々にして,社会規範とずれた者を逸脱者とみなします。
ソーシャルワーク専門職のグローバル定義
ソーシャルワークは,社会変革と社会開発,社会的結束,および人々のエンパワメントと解放を促進する,実践に基づいた専門職であり学問である。社会正義,人権,集団的責任,および多様性尊重の諸原理は,ソーシャルワークの中核をなす。ソーシャルワークの理論,社会科学,人文学,および地域・民族固有の知を基盤として,ソーシャルワークは,生活課題に取り組みウェルビーイングを高めるよう,人々やさまざまな構造に働きかける。
この定義は,各国および世界の各地域で展開してもよい。
社会福祉士のカリキュラムでは,今までソーシャルワークという言葉は使われず,旧カリキュラムでは「社会福祉援助」,現在のカリキュラムでは「相談援助」と表現されています。
次のカリキュラムでは,いよいよ「ソーシャルワーク」が使われます。
社会にコミットする社会福祉士が求められているように思います。