今回は,ソーシャルワークの理論と方法です。現在のカリキュラムの「相談援助の理論と方法」が共通科目の「ソーシャルワークの理論と方法」と専門科目の「ソーシャルワークの理論と方法(専門)」に分かれます。
ソーシャルワークの理論と方法(60時間)
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ねらい(目標)
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①人と環境との交互作用に関する理論とミクロ・メゾ・マクロレベルにおけるソーシャルワークについて理解する。
②ソーシャルワークの様々な実践モデルとアプローチについて理解する。
③ソーシャルワークの過程とそれに係る知識と技術について理解する。
④コミュニティワークの概念とその展開について理解する。
⑤ソーシャルワークにおけるスーパービジョンについて理解する。
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教育に含むべき事項(内容)
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教育に含むべき事項
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想定される教育内容の例
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①人と環境との交互作用に関する理論とミクロ・メゾ・マクロレベルにおけるソーシャルワーク
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1 システム理論
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・一般システム理論、サイバネティックス、自己組織性
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2 生態学理論
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3 バイオ・サイコ・ソーシャルモデル
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4 ミクロ・メゾ・マクロレベルにおけるソーシャルワーク
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②ソーシャルワークの実践モデルとアプローチ
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1 ソーシャルワークの様々な実践モデルとアプローチ
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・医学モデル
・生活モデル
・ストレングスモデル
・心理社会的アプローチ
・機能的アプローチ
・問題解決アプローチ
・課題中心アプローチ
・危機介入アプローチ
・行動変容アプローチ
・エンパワメントアプローチ
・ナラティヴアプローチ
・解決志向アプローチ
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③ソーシャルワークの過程
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1 ケースの発見
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・アウトリーチ
・スクリーニング
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2 インテーク
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・インテークの意義、目的、方法、留意点
・契約
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3 アセスメント
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・アセスメントの意義、目的、方法、留意点
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4 プランニング
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・プランニングの意義、目的、方法、留意点
・効果と限界の予測
・支援方針・内容の説明・同意
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5 支援の実施
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・支援の意義、目的、方法、留意点
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6 モニタリング
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・モニタリングの意義、目的、方法、留意点
・効果測定
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7 支援の終結と事後評価
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・支援の終結と事後評価の目的、方法、留意点
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8 アフターケア
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・アフターケアの目的、方法、留意点
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④ソーシャルワークの記録
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1 記録の意義と目的
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・ソーシャルワークの質の向上
・支援の継続性、一貫性
・機関の運営管理
・教育、研究
・アカウンタビリティ
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2 記録の方法と実際
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・記録の文体(叙述体、要約体、説明体等)
・項目式(フェースシート等)
・図表式(ジェノグラム、エコマップ等)
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⑤ケアマネジメント
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1 ケアマネジメントの原則
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・ケアマネジメントの歴史
・適用と対象
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2 ケアマネジメントの意義と方法
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・ケアマネジメントの意義
・ケアマネジメントのプロセス
・ケアマネジメントのモデル
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⑥集団を活用した支援
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1 グループワークの意義と目的
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・グループダイナミクス
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2 グループワークの原則
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・個別化の原則、受容の原則、参加の原則、体験の原則、葛藤解決の原則、制限の原則、継続評価の原則
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3 グループワークの展開過程
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・準備期、開始期、作業期、終結期
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4 セルフヘルプグループ
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・共感性、分かち合い
・ヘルパーセラピー原則
・体験的知識
・役割モデルの習得
・援助者の役割
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⑦コミュニティワーク
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1 コミュニティワークの意義と目的
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・ソーシャルインクルージョン
・住民参加
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2 コミュニティワークの展開
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・地域アセスメント
・地域課題の発見・認識
・実施計画とモニタリング
・組織化
・社会資源の開発
・評価と実施計画の更新
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⑧スーパービジョンとコンサルテーション
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1 スーパービジョンの意義、目的、方法
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・スーパービジョンの定義
・スーパーバイザーとスーパーバイジーの関係
・スーパービジョンの機能
・スーパービジョンの形態と方法
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2 コンサルテーションの意義、目的、方法
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・コンサルテーションの定義
・コンサルタントとコンサルティーの関係
・コンサルテーションの方法
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現在には含まれていないものが散見されます。
その中で,ひときわ目を引くのが以下の部分です。
⑦コミュニティワーク
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1 コミュニティワークの意義と目的
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・ソーシャルインクルージョン
・住民参加
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2 コミュニティワークの展開
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・地域アセスメント
・地域課題の発見・認識
・実施計画とモニタリング
・組織化
・社会資源の開発
・評価と実施計画の更新
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現在のカリキュラムの「社会資源の活用」を拡充しています。
例のごとく,第32回国試で出題されています。
第32回・問題118 T市役所で地域福祉計画を担当する職員であるK社会福祉士は,次期の地域福祉計画の策定に向けて,2017年(平成29年)に改正された社会福祉法の内容を踏まえ,策定の準備に取り組むこととなった。
次のうち,K社会福祉士が取り組む内容として,適切なものを2つ選びなさい。
1 現行の計画を評価するために評価委員会を立ち上げ,数値化できる,定量的な事項に限定して客観的に評価を行う。
2 地域住民,福祉・保健・医療関係者,市役所内で計画に係る複数の部局の職員等が参加する地域福祉計画策定委員会を組織する。
3 地域福祉計画に地域住民の意見を反映させるために各地区の公民館等を会場として地域住民が主体的に参加する懇談会を開催する。
4 計画に対する地域住民の意見は,前回の計画の策定時におけるアンケート調査結果のデータを基にして計画の策定を進める。
5 計画の策定には専門的な知識と技術が必要になるため,市内の社会福祉法人に策定の作業を委託することを検討する。
この科目にこのような内容が出題されて,違和感のあった人もいたと思います。
次のカリキュラムを視野に入れた出題であることは明白でしょう。
この問題の正解は,選択肢2と3です。
選択肢1が正解にならないのは,「定量的な事項に限定して」ではないからです。
選択肢4が正解にならないのは,「前回の計画の策定時におけるアンケート調査結果のデータを基にして」では状況が変わっているからです。
選択肢5が正解にならないのは,「策定の作業を委託する」のであれば他人任せになってしまうからです。
<今日の一言>
どうやら,地域福祉計画の策定及び評価は,コミュニティワークの第一歩としてとらえることができるみたいです。
地域福祉計画は,平成30年の社会福祉法の改正によって,従来,策定は任意だったものが,努力義務化されています。
地域福祉計画は,ますます目が離せないものとなることでしょう。