2020年3月10日火曜日

新カリキュラムの概要~②心理学と心理的支援

現時点(2020年3月10日),第32回国家試験を受験された方でこの学習部屋に訪れている方は,合格発表を目前にして,センシティブになっているところでしょう。

新しいカリキュラムによる国家試験は,ずっとずっと先である第37回であるにもかかわらず,その概要を紹介することに申し訳なく思っています。

しかし,学習部屋は,第32回国家試験直後から,既に次回の国家試験に向けて動き出しています。

次回以降の国家試験は以下のように推移します。


回
国家試験の内容
第33回
今と同じ
第34回
↓
第35回
↓
第36回
↓
第37回以降
新しいもの


大学では,令和3年から新しいカリキュラムによる教育が始まります。
その人たちが卒業するときに,新しいカリキュラムでの国家試験となります。


さて,今回は,「②心理学と心理的支援」です。

現在は,「心理学理論と心理的支援」なので,新カリキュラムでは「理論」が抜けています。

「③社会学と社会システム」の名称とそろった感じです。



心理学と心理的支援(30時間)
ねらい(目標)
①人の心の基本的な仕組みと機能を理解し、環境との相互作用の中で生じる心理的反応を理解する。
②人の成長・発達段階の各期に特有な心理的課題を理解する。
③日常生活と心の健康との関係について理解する。
④心理学の理論を基礎としたアセスメントの方法と支援について理解する。
教育に含むべき事項(内容)
教育に含むべき事項
想定される教育内容の例
①心理学の視点
1 心理学の歴史と対象
・心理学の起源
・心理学の発展と対象
2 心を探究する方法の発展
・生態学的心理学
・進化心理学的アプローチ
・認知行動科学
・行動遺伝学
②人の心の基本的な仕組みと機能
1 心の生物学的基盤
・脳の構造
・神経機能
・遺伝
2 感情・動機づけ・欲求
・感情の仕組み・機能
・動機づけ理論
3 感覚・知覚
・知覚の情報処理過程
・感覚モダリティ
・アフォーダンス
4 学習・行動
・馴化・鋭敏化
・古典的条件づけ
・道具的条件づけ
5 認知
・記憶・注意
・思考
・認知バイアス
6 個人差
・知能
・パーソナリティ
7人と環境
・対人関係
・集団・組織
・自己
③人の心の発達過程
1 生涯発達
・発達の定義
・ライフステージと発達課題
2 心の発達の基盤
・認知発達理論
・言語発達
・アタッチメント理論
・道徳性の発達
④日常生活と心の健康
1 心の不適応
・不適応の理論
・ストレス理論(コーピングを含む)
・燃え尽き症候群
・トラウマ
・依存症
2 健康生成論
・レジリエンス
・首尾一貫感覚(SOC)
⑤心理学の理論を基礎としたアセスメントと支援の基本
1 心理アセスメント
・心理アセスメントの方法
・事例定式化
2 心理的支援の基本的技法
・ソーシャルワークにおける心理的支援
・支持的精神療法
・マイクロカウンセリング
・動機づけ面接
3 心理療法におけるアセスメントと介入技法の概要
・精神分析
・認知行動療法(SST を含む)
・応用行動分析
・家族療法
・ブリーフ・セラピー
・対人関係療法
4 心理の専門職
・公認心理師


第32回国家試験を受験した人は,「あれっ?」と思ったところがあると思います。


4 学習・行動
・馴化・鋭敏化
・古典的条件づけ
・道具的条件づけ


馴化(じゅんか)が第32回国家試験で出題されています。


第32回・問題8 次のうち,馴化による行動の記述として,適切なものを1つ選びなさい。
1 同じ大きな音が繰り返されるにつれて,驚愕反応が小さくなった。

2 乳児に新しいおもちゃを見せたら,古いおもちゃよりも長く注視した。

3 まぶたにストローで空気を吹き付けると,思わずまばたきした。

4 食あたりした後に,その食べ物を見るだけで吐き気がするようになった。

5 うまくできたら褒めることで,ピアノの練習に取り組むようになった。


この問題の正解は,1です。

前回紹介した「医学一般」のICFの問題も同様ですが,新しいカリキュラムで示されているものの出題です。

そういう面で,安直ですが,「鋭敏化」も近い将来には,出題されることでしょう。

鋭敏化とは,馴化とは逆に,強い刺激に過敏になることです。

同じ大きな音が繰り返されるにつれて,驚愕反応が小さくなった。

が馴化ですが,鋭敏化は

同じ大きな音が繰り返されるにつれて,恐怖が強くなった。

心理学的には,このようになるのだと思います。


<新カリに向けて>


現在の心理学理論と心理的支援は


 心理学
  ↓
心理学理論と心理的支援
  ↓
心理学と心理的支援


と変遷しています。

現在の科目でも難しいですが,新カリキュラムでは,心理学をしっかり学ぶことになります。

「想定される教育内容の例」に示されていますが,この科目にも歴史が出題されてくることでしょう。

人名も今よりもしっかり覚えなければならないように思います。


第8回・問題101 心理学史に関する次の記述のうち,誤っているものを一つ選びなさい。
1 心理学に関する組織的研究は,ロック(Locke,J.)など18世紀のイギリス経験論の哲学者たちが取り上げた実験心理学に始まる。
2 ゴールトン(Galton,F.)は,19 世紀後半に傑出人の出現頻度を調べたり,双生児を比較して心的遺伝の研究を行い,個人差研究の基礎をつくった。
3 1879年に,世界で最初の心理学の実験室をつくり,心理学に独立した地位を与えたのはヴント(Wundt,W. M.)である。
4 エビングハウス(Ebbinghaus,H.)は,19 世紀の後半に,無意味綴りを記憶材料として記憶に関する最初の科学的研究を行った。
5 我が国に西欧の心理学が伝えられたのは比較的早く,明治初年にはpsychology が,心理学と訳され,1888年には東京帝国大学で元良勇次郎が精神物理学の講義を始めた。

こういった問題も出題されることになるでしょう。

この当時と今の国家試験の大きな違いは,現在は,「誤っているもの」を選ぶ問題はないことです。

この問題の答えは,1です。

ロックは思想家であり,心理学者ではありません。

難しそうに見えても,それほど難しくはないです。

しかし,今は,正しいもの(適切なもの)を選ぶ問題です。

「誤っているものを選ぶ」のと「正しいものを選ぶ」では,「正しいものを選ぶ」のほうが難しいです。

新カリキュラムの「心理学と心理的支援」では,しばらく出題されて来なかった歴史(心理学史)も出題されてくると思うので,歴史や人の名前を覚えるのが苦手だとは言っていられなくなります。

しかし,それは次のカリキュラムでの国家試験です。

現在の「心理学理論と心理的支援」を苦手だとしている人は多いと思います。

しかし,旧カリや次のカリキュラムと比べると,今の科目の方が,確実にやさしめです。

今,受験資格を持っている人は,カリキュラムが変わっても受験資格がなくなりません。しかし,今のカリキュラムのうちに資格を取得しておいた方がよいです。

心理学理論と心理的支援は,心理学をベースにした心理的支援という感じです。

心理学と心理的支援は,心理学を本格的に学んぶことと心理的支援が並立している感じです。

2020年3月9日月曜日

新カリキュラムの概要~①医学一般

今後の国家試験は,第33~36回までは,現在のカリキュラムで実施され,第37回から,新カリキュラムで実施されます。

第37回の国家試験は,2025年2月に実施されるので,まだまだ先のことですが,一応どのような内容になるのかを見ていきたいと思います。

なお,カリキュラムが変わっても,一度手にした受験資格はなくなりませんので,安心してください。

まずは,医学一般です。

現行の「人体の構造と機能及び疾病」からのこの名称に変わります。

医学一般(30時間)
ねらい(目標)
①人のライフステージにおける心身の変化と健康課題について理解する。
②健康・疾病の捉え方について理解する。
③人の身体構造と心身機能について理解する。
④疾病と障害の成り立ち及び回復過程について理解する。
⑤公衆衛生の観点から,人々の健康に影響を及ぼす要因や健康課題を解決するための対策を理解する。
教育に含むべき事項(内容)
教育に含むべき事項
想定される教育内容の例
①ライフステージにおける心身の変化と健康課題
1 ライフステージにおける心身の変化と健康課題

2 心身の加齢・老化

3 ライフステージ別の健康課題
・乳幼児期,学童期,思春期,青年期,壮年期,前期高齢期,後期高齢期
②健康及び疾病の捉え方
1 健康の概念
・WHO憲章
2 疾病の概念
・疾患,疾病,病気の違い
3 国際生活機能分類(ICF)
・国際生活機能分類(ICF)の概要(コーディング,活用事例を含む)
③身体構造と心身機能
1 人体部位の名称

2 基幹系と臓器の役割

④疾病と障害の成り立ち及び回復過程
1 疾病の発生原因
・外的要因
・内的要因
2 病変の成立機序
・炎症,変性,虚血,発癌,免疫反応 等
3 障害の概要
・視覚障害,聴覚障害,平衡機能障害,肢体不自由,内部障害,知的障害,精神障害(DSMを含む)発達障害,認知症,高次脳機能障害 等
4 リハビリテーションの概要と範囲
・リハビリテーションの定義,目的,対象,方法
5 疾病と障害及びその予防・治療・予後・
リハビリテーション
・悪性腫瘍,生活習慣病,脳血管疾患,心疾患
・感染症
・神経疾患
・先天性疾患
・肺疾患
・腎・泌尿器疾患
・消化器疾患
・骨・関節の疾患
・血液疾患
・目・耳の疾患
・精神疾患
・高齢者に多い疾患
⑤公衆衛生
1 公衆衛生の概要
・公衆衛生の考え方
・健康の社会的決定要因(SDH)
2 健康増進と保健医療対策
・母子保健対策,成人保健対策(生活習慣病予防対策及びがん対策),高齢者保健対策,精神保健対策,感染症対策 等


第32回国家試験では,この内容からすでに出題されています。

問題4 事例を読んで,国際生活機能分類(ICF)に基づいて分類する場合,正しいものを1つ選びなさい。
〔事 例〕
 Aさん(50歳男性)は,脳出血により片麻痺を残したが,リハビリテーションによって杖と下肢装具を用いた自立歩行を獲得し,復職を達成した。混雑時の通勤の負担と,思うようにならない気分の落ち込みから仕事を休みがちとなったが,職場より出勤時間の調整が図られ,仕事を再開するに至った。
1 片麻痺は,「活動」に分類される。
2 歩行は,「心身機能・身体構造」に分類される。
3 歩行に用いた杖と下肢装具は,「個人因子」に分類される。
4 気分の落ち込みは,「活動」に分類される。
5 出勤時間調整の職場の配慮は,「環境因子」に分類される。

正解は,5です。

事例になっていて,びっくりした人もいたかもしれません。

この問題は,想定される教育内容の例の「国際生活機能分類(ICF)の概要(コーディング,活用事例を含む)」にあたると考えられます。

新カリキュラムに向けて,既に国家試験も準備し始めているようです。

現行カリキュラムと新カリキュラムの内容は重なっているところもありますが,新しく加わる部分もあります。

そういう部分を新カリキュラムに入る前に,今の出題基準から外れない範囲で,小出しにしていくことで,新しいカリキュラムにスムーズに移行させようとしているのかもしれません。

2020年3月8日日曜日

新カリキュラムによる国家試験は,第37回から実施されます

2020年3月6日に厚生労働省から,社会福祉士養成課程における教育内容等の見直しに関する各種法令・通知が発表されました。

https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/seikatsuhogo/shakai-kaigo-yousei/index_00012.html


「社会福祉士学校及び介護福祉士学校の設置及び運営に係る指針について」の一部改正について 

1.改正の趣旨
社会福祉士養成課程については、「ソーシャルワーク専門職である社会福祉士に求められる役割等について」(平成30年3月27日社会保障審議会福祉人材確保専門委員会報告書。以下、「報告書)という。において、「地域共生社会の実現に向けて求められる、複合化・複雑化した課題を受け止める多機関の協働による包括的な相談支援体制や地域住民等が主体的に地域課題を把握して解決を試みる体制の構築に必要なソーシャルワークの機能を社会福祉士が担うために必要な実践能力を明らかにし、その能力を身につけることができるよう、社会福祉士の養成カリキュラム等の見直しを検討すべきである。」とされた。
これを踏まえ、社会状況等の移り変わりや制度改正等を踏まえた内容に充実するとともに、必要な実践能力を習得できる内容となるよう、社会福祉士養成課程の教育内容の見直しを行った。
併せて、地方分権改革における令和元年の地方からの提言等の対応方針に基づき、必要な措置を講じた。

2.改正の内容
①社会福祉士養成課程の教育内容の見直しについて
「報告書」及び平成19年度カリキュラム改正以降の社会状況の変化や法制度の創設等を踏まえ、ソーシャルワーク機能を発揮できる実践能力の習得が図られるよう、具体的に主に以下の点について、教育内容の見直しを行った。

ア 養成カリキュラムの内容、実習及び演習の充実
○地域共生社会に関する科目の創設
地域共生社会の実現に向けて求められる社会福祉士が担うべき役割を理解し、多機関の協働による包括的な相談支援体制の仕組み等の知識を習得するための科目として「地域福祉と包括的支援体制」を創設した。

○ソーシャルワーク機能を学ぶ科目の再構築
ソーシャルワーク機能の実践能力を有する社会福祉士を養成するため、「講義-演習-実習」の学習循環を作るとともに、ソーシャルワークの専門職である社会福祉士と精神保健福祉士の養成課程において共通して学ぶべき内容(共通科目)と、社会福祉士として専門的に学ぶべき内容が明確になるよう、科目を再構築し、また、実習演習科目のうち、共通科目となる「ソーシャルワーク演習」については、精神保健福祉士養成課程との合同授業を可能とした。

○司法領域に関する教育内容の見直し及び時間数の拡充
司法と福祉の更なる連携を促進し、司法領域において社会福祉士が求められる役割を果たすことができるよう、現行の「更生保護」を基礎として教育内容の見直しを行うとともに、時間数を拡充し、社会福祉士と精神保健福祉士の共通科目として「刑事司法と福祉」を創設した。

○社会福祉に関する指定科目、基礎科目の必修化
社会福祉士として求められる知識等を適切に学ぶ観点から、複数の科目のうち1科目を履修することとしている現行の仕組み(※)を見直し、全ての科目の履修を必修化する。

○実習時間の免除の実施
福祉の専門職である介護福祉士、精神保健福祉士の資格を有する者(履修中の者を含む)が、社会福祉士の養成課程において実習を行う場合、社会福祉士の資格を取得することを希望する者の負担の軽減を図るため、60時間を上限に実習を免除する。

イ 共通科目の拡充
○精神保健福祉士養成課程の教育内容との共通科目の拡充
ソーシャルワークの専門職である社会福祉士と精神保健福祉士の養成課程において、相互に資格を取得することを希望する者の負担の軽減を図るため、それぞれの専門性に留意しつつ、共通となる科目数・時間数を拡充する。

②地方分権改革の係る対応について
地方からの提言「看護師等が、介護福祉士実務者研修を受講する際に、一部科目(医療的ケア)の受講を免除すること」に対して、関係団体等と協議を行い、看護師、准看護師の資格を有する者について、医療的ケアの科目の履修を免除することを可能とする。



さて,これを受けて,「新カリキュラム導入への道」を以下のようにまとめました。


教育課程
年度
大学等
短大等
一般養成施設等
短期養成施設等
2020年度
(令和2)
現行
現行
現行
現行
2021年度
(令和3)
新カリ
↓
↓
↓
2022年度
(令和4)
↓
新カリ
↓
↓
2023年度
(令和5)
↓
↓
新カリ
↓
2024年度
(令和6)
↓
↓
↓
新カリ

これによって,国家試験は以下のように実施されることになります。

国家試験の実施
年度
回
カリキュラム
2020年度
(2021年2月実施)
第33回
現行カリキュラム
2021年度
(2022年2月実施)
第34回
↓
2022年度
(2023年2月実施)
第35回
↓
2023年度
(2024年2月実施)
第36回
↓
2024年度以降
(2025年2月実施)
第37回以降
新カリキュラム

教育課程では,令和3年から順次変更されていき,国家試験は,全施設が新カリキュラムで足並みがそろった第37回国家試験から,新しい科目により実施されることになります。

前回の変更のときには,このように順次変更しなかったため,教育課程は旧カリ,国試は新カリというねじれが発生しました。

今回は,そういうことがないように配慮されています。

科目
共通科目
医学概論
心理学と心理的支援
社会学と社会システム
社会福祉の原理と政策
地域福祉と包括的支援体制
社会保障
障害者福祉
権利擁護を支える法制度
刑事司法と福祉
社会福祉調査の基礎
ソーシャルワークの基盤と専門職
ソーシャルワークの理論と方法
専門科目
(社会福祉士)
高齢者福祉
児童・家庭福祉
貧困に対する支援
保健医療と福祉
福祉サービスの組織と経営
ソーシャルワークの基盤と専門職(専門)
ソーシャルワークの理論と方法(専門)

現行カリキュラムと科目数は一緒の19科目です。

なくなる科目
福祉行財政と福祉計画
就労支援サービス

これらの内容がなくなるわけではなく,そのほかの科目の内容に組み込まれます。

新しい科目
ソーシャルワークの基盤と専門職(専門)
ソーシャルワークの理論と方法(専門)

前回のように,本当に新しい領域の科目は加わっていません。

そのほかの主だった変更点

共通科目 → 専門科目
貧困に対する支援
保健医療と福祉

専門科目 → 共通科目
刑事司法と福祉
社会福祉調査の基礎


教育課程に関して

実習時間
180時間 → 240時間


<今日の一言>

新しいカリキュラムによる国家試験の実施は,第37回からであることが正式に決定しました。

現時点(2020年3月)では,現行カリキュラムによる国家試験は,あと4回実施されます。

第22回から現行カリキュラムによる国家試験が実施されてきましたが,受験対策としては,今が一番良い時です。

なぜなら,どの科目についても出題される内容がほぼ固まってきているからです。

次回のカリキュラムは,科目の大幅な改正は行われていないことと,新カリで出題される内容は,第33~36回国試で小出しにされていくと考えられるので,前回の移行期よりも対応は困難ではないかと思います。

しかし,できれば現行カリキュラムで勉強した人は,現行カリキュラムで実施される第33~36回国試で資格取得を目指してほしいと思います。

実習について

これから,受験資格を取ろうと思っている人の中で,実習をしなければならない人は,今のうちに受験資格を取った方が良いです。

実習時間が,現行よりも60時間も多くなるからです。1日7.5時間だと8日間も多く,実習をしなければなりません。


2020年3月7日土曜日

合格・不合格は紙一重~その5 財政

国家試験が終わると

時事問題などに目を向けなければ合格できないと思った

といった感想が聞かれます。

もちろん目を向けた方がよいに決まっています。

しかし,目を向けたからといって問題が解けることは限りません。

それよりも国家試験に合格するために必要なことは,覚えるべきことをきっちり覚えることです。

受験生の多くが勉強していないだろうと思う問題は,受験生に差が生じにくいものです。

差が生じるのは,参考書や過去問にはあるのだけれど,覚えにくいものです。
その一つが財政についての問題です。

それでは,今日の問題です。

第32回・問題50 「平成28年度社会保障費用統計」(国立社会保障・人口問題研究所)に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。

1 2016年度(平成28年度)の社会保障給付費は,150兆円を超過した。

2 2016年度(平成28年度)の社会保障給付費を部門別(「医療」,「年金」,「福祉その他」)にみると,「福祉その他」の割合は1割に満たない。

3 2016年度(平成28年度)の社会保障給付費を機能別(「高齢」,「保健医療」,「家族」,「失業」など)にみると,「家族」の割合は1割に満たない。

4 2016年度(平成28年度)の社会保障財源における公費負担の割合は,社会保険料の割合よりも大きい。

5 2015年度(平成27年度)における社会支出の国際比較によれば,日本の社会支出の対国内総生産比は,フランスよりも高い。


知識がないと絶対に解けない問題です。

しかも覚えにくいものです。

こういった問題が,国家試験に向きます。

<理想的な問題>
 勉強した人は解ける
 勉強不足の人は解けない


<最悪な問題>
 勉強した人が解けない
 勉強不足の人も解ける

時事問題タイプの問題の中には,後者に当たる問題もあります。

さて,今日の問題は,以前も取り上げたように,正解は,選択肢3です。

3 2016年度(平成28年度)の社会保障給付費を機能別(「高齢」,「保健医療」,「家族」,「失業」など)にみると,「家族」の割合は1割に満たない。

ソ教連(日本ソーシャルワーク教育学校連盟)の模擬試験では,「第三位は,家族である」という問題が出題され,出題としてはナンセンスだと感じた人も多かったと思います。第三位は,家族で正解なのですが,第4位の「遺族」との差は,わずか0.3%しかないからです。

日総研模試では,「家族が約20%を占める」(これは間違い)と出題されていました。

この出題のほうが,家族は20%もないのだ,とインプットできます。ソ教連模試では,順位は覚えられても割合は頭に入りにくいです。

模擬試験は,複数受験して国家試験に臨むことは大切なのだと感じた問題です。

社会保障給付費は,過去に何度も出題されてしており,絶対に覚えておかなければならないものの一つです。

内訳は

①高齢 約50%
②保健医療 約30%
③家族 約6%

という割合です。ここで重要なのは,①高齢,②保健医療を合わせると80%を超えることです。

①高齢,②保健医療の2つで80%もあり,ほかのものは10%を超えるものはありません。

ほかのものの詳しく覚える必要性は一切ありません。

まともに覚えようとすると難しいですが,シンプルに覚えることで頭に残りやすくなります。

ほかのものとは,以下のものです。

家族
遺族
障害
生活保護その他
失業
労働災害
住宅

これらはいずれも10%未満です。

それでは,ほかの選択肢も見てみましょう。


1 2016年度(平成28年度)の社会保障給付費は,150兆円を超過した。

社会保障給付費は,約117兆円です。


2 2016年度(平成28年度)の社会保障給付費を部門別(「医療」,「年金」,「福祉その他」)にみると,「福祉その他」の割合は1割に満たない。

年金:5
医療:3
福祉その他 2

この割合は,1994年の「21世紀福祉ビジョン」で提言されたもので,それに合わせて今日の制度設計がなされています。


4 2016年度(平成28年度)の社会保障財源における公費負担の割合は,社会保険料の割合よりも大きい。

社会保障制度は,社会保険制度と社会扶助制度があります。

社会扶助制度は,もともとは救貧政策だったものが,派生して,現在では,生活保護制度(公的扶助)と社会福祉制度に分かれます。

日本は,1950年の社会保障審議会勧告で,社会保障の中心は社会保険とすることを提言され,それに沿って制度設計がなされています。

そのため,財源として,公費(税)が,社会保険料を超えるようにはなりません。
もしそうなると,日本の社会保障制度の中心は,もはや社会保険制度ではなくなってしまいます。


5 2015年度(平成27年度)における社会支出の国際比較によれば,日本の社会支出の対国内総生産比は,フランスよりも高い。

日本とイギリスを比べるとどちらが多いか迷ってしまいますが,フランスは特別な国です。

社会支出も国民負担率もフランスは,世界でもトップクラスの国です。


<今日の一言>

今日の問題は,しっかり勉強してきた人なら,そんなに難しくは感じないはずです。
しかし,勉強不足の人は,正解しにくい問題だと言えます。

知識不足の人でも消去できる選択肢がないからです。

国家試験でボーダーラインを超えるためには,今日の問題のような問題で点数を確実に積み上げていくことが大切です。

2020年3月6日金曜日

合格・不合格は紙一重~その4 国&地方公共団体の役割

社会福祉振興・試験センターは,受験生の得点分布を発表していませんが,ボーダーラインを中心として,1点・2点の範囲には,数百人,もしかすると1,000人以上がいるのではないかと思います。

第31回国試では,不適切問題が合格発表後に明らかになり,418人が追加合格したことから推測できます。

正解できる問題で確実に得点することの重要性を実感します。


それでは今日の問題です。

第32回・問題59 「障害者総合支援法」に定められている市町村の役割などに関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。

1 障害支援区分の認定のための調査を,指定一般相談支援事業者等に委託することができる。

2 障害支援区分の認定に関する審査判定業務を行わせるため,協議会を設置する。

3 市町村障害福祉計画を策定するよう努めなければならない。

4 指定障害福祉サービス事業者の指定を行う。

5 高次脳機能障害に対する支援普及事業などの特に専門性の高い相談支援事業を行う。


この問題はとてつもなく難しい問題です。


正解は,選択肢1です。

1 障害支援区分の認定のための調査を,指定一般相談支援事業者等に委託することができる。

もし,この問題が以下だったら,もう少し易しくなったのではないかと思います。

1 障害支援区分の認定のための調査を,指定特定相談支援事業者等に委託することができる。

指定一般相談支援事業者は,地域相談支援を行う事業者なので,介護給付に結びつかないのです。

ほかの選択肢も確認しましょう。


2 障害支援区分の認定に関する審査判定業務を行わせるため,協議会を設置する。

障害支援区分の認定の審査判定のために設置されるのは,市町村審査会です。


3 市町村障害福祉計画を策定するよう努めなければならない。

市町村障害福祉計画は策定しなければなりません。


4 指定障害福祉サービス事業者の指定を行う。

指定障害福祉サービス事業者の指定の指定は,都道府県の役割です。


5 高次脳機能障害に対する支援普及事業などの特に専門性の高い相談支援事業を行う。

地域生活支援事業は,介護保険の地域支援事業と違って,市町村と都道府県,それぞれの役割があります。

そのうち,特に専門性の高い相談支援事業を行うのは,都道府県地域生活支援事業です。



<今日の一言>


事業所指定の基本原則は,都道府県が行う。

介護保険では,地域密着型サービスがあるので,事業所指定は市町村が行いますが,基本的に事業所指定は都道府県の役割です。

例外はもちろんあります。その一つが介護保険の地域密着型サービスです。

これからの勉強の中で,基本原則に反するものが出てきたらまとめておきましょう。

確実にしっかり覚えられるでしょう。

市町村が指定するのは,例外なので数は多くはありません。

覚えるのは市町村が指定するもののみ

都道府県が指定するものを覚える必要はありません。
その他大勢だからです。


市町村が指定するもの
法
事業者
介護保険法
指定居宅介護支援事業者
指定地域密着型サービス事業者
指定介護予防支援事業者
障害者総合支援法
指定特定相談支援事業者
児童福祉法
指定障害児相談支援事業者

※指定一般相談支援事業者の指定は都道府県。

これら以外に,基本原則に反するもの(つまり市町村が指定するもの)があったら,抜き出しておくとよいです。

国と地方公共団体の役割の違いはわかりやかいですが,市町村と都道府県の役割の違いは,その関係ほど明確ではありません。

しかし,市町村と都道府県の役割には,ある一定の原則があります。

これからの勉強でそれを体感していってください。

法制度にかかわる複数の科目で出題されるので,とても重要です。

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