2022年9月20日火曜日

エリクソンの発達理論

 エリクソンによる発達段階の発達課題vs危機 

乳児期(0~1歳) 基本的信頼 vs 基本的不信

幼児前期(1~3歳) 自立性 vs 恥・疑惑

幼児後期(3~6歳) 自主性 vs 罪悪感

児童期(7~11歳) 勤勉性 vs 劣等感

青年期(12~20歳) 同一性獲得vs 同一性拡散

前成人期(20~30歳) 親密 vs 孤立

成人期(30~65歳) 世代性 vs 停滞

老年期(65歳以降) 統合 vs 絶望

 

青年期の同一性とは,アイデンティティのことです。

 

それでは,今日の問題です。

  

第31回・問題1 次の年齢のうち,エリクソン(Erikson,E.)の発達段階に関する理論にいう「アイデンティティ」が発達課題となる年齢として,最も適切なものを1つ選びなさい。

1 3歳

2 7歳

3 15歳

4 30歳

5 50歳

 

アイデンティティは青年期の発達課題であることはよく知られていますが,肝心の青年期は,何歳のことなのかわからなかった人は多かったのではないかと思います。

 

意外な盲点を突かれた問題のように思います。

 

正解は,表にあるように「3 15歳」です。

 

青年期は,12~20歳です。この問題が18歳くらいなら,迷うことなく青年期だと思えますが,現代の15歳はまだまだ子どもなので,青年期のイメージがありません。

 

18~20歳ではなく,15歳と出題するのが,珍しくいやらしい問題のように感じます。

 

エリクソンの発達理論は,危機介入アプローチに影響を与えた

 

「危機」というと自然災害などの「状況における危機」のイメージが強いですが,もう一つの危機として発達課題に対する「発達における危機」があるので,エリクソンの出題頻度が高いように思います。

 

せっかくなので,各アプローチに影響を与えた基礎理論等をまとめておきます。

アプローチ名

影響を与えた主な理論など

心理社会的アプローチ

精神分析理論

機能的アプローチ

意志心理学(自我心理学の一派)

問題解決アプローチ

役割理論,コミュニケーション理論

課題中心アプローチ

精神分析理論,役割理論,学習理論

危機介入アプローチ

発達理論,危機理論

行動変容アプローチ

学習理論

エンパワメントアプローチ

ソーシャルアクション

ナラティブアプローチ

物語理論

解決志向アプローチ

短期療法(ブリーフセラピー)

フェミニストアプローチ

女性主義(フェミニズム)

実存主義アプローチ

実存主義

エコロジカルアプローチ

システム理論


エンパワメントアプローチ,フェミニストアプローチ,実存主義アプローチ,エコロジカルアプローチは基礎理論について問われたことはありません。

2022年9月19日月曜日

防衛機制(適応機制)とは

防衛機制(適応機制)を研究したのは,アンナ・フロイトです。


精神分析で知られるジークムント・フロイトの子どもです。


コーピングは,意識的に行うものであるのに対し,防衛機制は,無意識に行うものです。



それでは,今日の問題です。


第31回・問題11 防衛機制に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。

1 父から叱られ腹が立ったので弟に八つ当たりした。これを置き換えという。

2 攻撃衝動を解消するためにボクシングを始めた。これを補償という。

3 苦手な人に対していつもより過剰に優しくした。これを投影という。

4 飛行機事故の確率を調べたら低かったので安心した。これを合理化という。

5 失敗した体験は苦痛なので意識から締め出した。これを昇華という。


知識があいまいだと正解するのは難しい問題です。


それでは,解説です。


1 父から叱られ腹が立ったので弟に八つ当たりした。これを置き換えという。


これが正解です。置き換えの例として,八つ当たりがあることを覚えておきたいです。


2 攻撃衝動を解消するためにボクシングを始めた。これを補償という。


これは,昇華のことを述べたものです。

補償は,苦手なものを得意なもので補うことです。


3 苦手な人に対していつもより過剰に優しくした。これを投影という。


これは,反動形成のことを述べたものです。


4 飛行機事故の確率を調べたら低かったので安心した。これを合理化という。


これは,知性化のことを述べたものです。


5 失敗した体験は苦痛なので意識から締め出した。これを昇華という。


これは,抑圧のことを述べたものです。


もう一問です。


第26回・問題13 クライエントの行動特徴と防衛機制に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。

1 大学生B男さんは,女性Cさんに心を惹かれ強い衝動を抱いたが,Cさんに対しては恋愛や女性の職業の自由について高尚な考えを述べた。これは転換と考えられる。

2 保育園児のD子ちゃんは,不安感に脅かされているが,しばしば自分は強くて万能な人間だというファンタジーを作り出す。これは同一化と考えられる。

3 不登校中の中学生E男さんは,学校に行けない理由として「眠れなかったから」とか,「朝,熱が出たから」と言ったりする。これは投影と考えられる。

4 5歳児のF男ちゃんは,弟が生まれ母親が弟に付きっきりになったとき,とっくにやめていた指しゃぶりをまた始めた。これは昇華と考えられる。

5 父親に対する憎しみの感情を抑えた高校生のG男さんは,ときに父親に対して極端な気遣いや過剰な配慮を示すことがある。これは反動形成と考えられる。


この頃は,まだ問題の文字数が多い時代です。文字数が多くても試験時間は変わらないので,受験生にとっては大変です。


この当時は,最後まで解けなかったという受験生が多く出た時代です。

その辺りからだんだん文字数が減っていきましたが,近年はまた増加しています。


そのため,また問題が最後まで解けなかったという人も出てきているようです。

問題を確実に,しかも早く読むということはとても難しいものです。


それでは,解説です。


1 大学生B男さんは,女性Cさんに心を惹かれ強い衝動を抱いたが,Cさんに対しては恋愛や女性の職業の自由について高尚な考えを述べた。これは転換と考えられる。


これは,知性化のことを述べたものです。転換は,心理的な問題が身体症状を引き起こすものです。


2 保育園児のD子ちゃんは,不安感に脅かされているが,しばしば自分は強くて万能な人間だというファンタジーを作り出す。これは同一化と考えられる。


これは打消のことを述べたものです。

同一化は,自分の好きなアイドルや尊敬する人のまねをすることで欲求を満たすことです。


3 不登校中の中学生E男さんは,学校に行けない理由として「眠れなかったから」とか,「朝,熱が出たから」と言ったりする。これは投影と考えられる。


これは,合理化のことを述べたものです。


投影は,受け入れがたい自分の感情などをほかの人の感情などと思って攻撃することです。


たとえば,「Aさんは私のことを嫌っている」と思う場合,実は「私がAさんのことを嫌っている」のかもしれません。


これが投影です。


4 5歳児のF男ちゃんは,弟が生まれ母親が弟に付きっきりになったとき,とっくにやめていた指しゃぶりをまた始めた。これは昇華と考えられる。


これは,退行のことを述べたものです。


昇華は,社会では受け入れられないものを社会で受け入れられるものに置き換えることで欲望を満たすものです。


例えば,人を攻撃したいという欲望をボクシングで満たすといったものが昇華の例です。


5 父親に対する憎しみの感情を抑えた高校生のG男さんは,ときに父親に対して極端な気遣いや過剰な配慮を示すことがある。これは反動形成と考えられる。


これが正解です。


〈今日の一言〉


防衛機制の中では,反動形成,補償,置き換え,投影など,言葉から意味を推測しにくいもものが多くあります。


だからこそ,出題されるのだと思います。


こういったものを確実に正解することこそが合格に必要です。

2022年9月18日日曜日

集団~社会心理学

 心理学が難しいと感じる人は多いようです。

その理由は,心理学という一つの学問にまとめられていますが,その領域は多岐にわたることもあるのかもしれません。


今回は,そのうちの社会心理学です。出題される内容はかなり限定的です。

広げると難しくなるためでしょう。


まずは,1問目です。


第22回・問題9 社会的な行動に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。

1 緊急の援助を必要としている人がいる場面で,目撃者が多数いることによって援助の手が差し伸べられにくくなる現象をピグマリオン効果という。

2 教師が生徒に対して成績向上の期待をもつことによって,実際にその生徒の成績が向上していく現象を傍観者効果という。

3 周囲で見ている人がいると作業が早くなるなど,個人の作業成績が向上する現象を同調という。

4 集団の成員の多くが個人の利益を追求することで,集団全体として大きな不利の結果が生じることを社会的ジレンマという。

5 集団の多数派の意見や期待に影響されて,同じ意見や行動をとることを社会的促進という。


正解は,選択肢4です。


4 集団の成員の多くが個人の利益を追求することで,集団全体として大きな不利の結果が生じることを社会的ジレンマという。


さすがは,第22回国試問題だと思います。社会的ジレンマはこの後に幾度も出題されてきていますが,この出題によって今後の方向性を示したものとなっています。


社会的ジレンマの例としては


フリーライダー

共有地の悲劇

囚人のジレンマ


が出題されています。これらはまた別の機会に詳しく紹介したいと思います。


そのほかも解説します。


1 緊急の援助を必要としている人がいる場面で,目撃者が多数いることによって援助の手が差し伸べられにくくなる現象をピグマリオン効果という。


これは。傍観者効果のことを述べたものです。


2 教師が生徒に対して成績向上の期待をもつことによって,実際にその生徒の成績が向上していく現象を傍観者効果という。


これは,ピグマリオン効果のことを述べたものです。


3 周囲で見ている人がいると作業が早くなるなど,個人の作業成績が向上する現象を同調という。


これは,社会的促進のことを述べたものです。


作業の内容は,単純で慣れたものなら,より促進します。


5 集団の多数派の意見や期待に影響されて,同じ意見や行動をとることを社会的促進という。


これは,同調のことを述べたものです。


それでは2問目です。


第33回・問題10 社会的関係において生じる現象に関する次の記述のうち,最も適切なものを1つ選びなさい。

1 初対面の人の職業によって,一定のイメージを抱いてしまうことを,同調という。

2 相手に能力があると期待すると,実際に期待どおりになっていくことを,ハロー効果という。

3 頻繁に接触する人に対して,好意を持ちやすくなることを,単純接触効果という。

4 外見が良いことによって,能力や性格など他の特性も高評価を下しやすくなることを,ピグマリオン効果という。

5 集団の多数の人が同じ意見を主張すると,自分の意見を多数派の意見に合わせて変えてしまうことを,ステレオタイプという。


正解は,選択肢3です。


3 頻繁に接触する人に対して,好意を持ちやすくなることを,単純接触効果という。


単純接触効果が出題されたのは,第20回以来です。

一般的な過去問では,うかがい知ることができないものです。


3年間の過去問を3回やれば合格できると豪語する人がいますが,近年の国家試験はそんなようにはつくられていません。


そんな勉強で合格できるなら,90点以上取れる人が3割程度に収まるということはないはずです。


それでは,このほかの選択肢も解説します。


1 初対面の人の職業によって,一定のイメージを抱いてしまうことを,同調という。


これは,ステレオタイプのことを述べたものです。


2 相手に能力があると期待すると,実際に期待どおりになっていくことを,ハロー効果という。


これは,ピグマリオン効果のことを述べたものです。


4 外見が良いことによって,能力や性格など他の特性も高評価を下しやすくなることを,ピグマリオン効果という。


これは,ハロー効果のことを述べたものです。


5 集団の多数の人が同じ意見を主張すると,自分の意見を多数派の意見に合わせて変えてしまうことを,ステレオタイプという。


これは,同調のことを述べたものです。


〈今日の一言〉


今日の問題でわかるかもしれませんが,この科目は,入れ替え問題が多い傾向にあります。


これらのようにすべてが入れ替えになっていれば,答えがわからなくても,どこか一か所でも攻めどころがあれば,正解にたどり着く可能性が高まります。


どれがどれに対応しているのかを追っていくと,どんどん消去できるからです。


入れ替えに気づく人と気づかない人では,おのずと確実性が変わります。

2022年9月17日土曜日

パーソナリティについて~特にビッグファイブ

パーソナリティは,人格と訳されますが,日本語の人格は,品格という意味も含まれることもあり,近年では人格とは呼ばず,そのままパーソナリティと表現することが多くなってきているようです。


人格検査というと,自分の人としての品格を調べられるのか,と思いませんか。

パーソナリティ検査と呼ぶと抵抗感はそれほどないように思います。


パーソナリティには,類型論と特性論があります。


類型論は,パーソナリティをタイプ分けするものです。わかりやすいのが特徴です。


特性論は,複数の因子が合わさって,その人のパーソナリティとなることを示したものです。


特性論の代表は,ビッグファイブです。


現代では,パーソナリティは5つの因子の組み合わせだとされています。


〈ビッグファイブの5因子〉

1.外向性

2.神経症傾向

3.誠実性

4.調和性

5.(経験への)開放性


類型論はわかりやすいですが,特性論のほうが奥が深そうなのでもう出題されることはないと思っていましたが,第32回国家試験でも出題されています。


第32回・問題9 パーソナリティの理論に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。

1 クレッチマー(Kretschmer,E.)は,特性論に基づき,体格と気質の関係を示した。

2 ユング(Jung,C.)は,外向型と内向型の二つの類型を示した。

3 オールポート(Allport,G.)は,パーソナリティの特性を生物学的特性と個人的特性の二つに分けた。

4 キャッテル(Cattell,R.)は,パーソナリティをリビドーにより説明した。

5 5因子モデル(ビッグファイブ)では,外向性,内向性,神経症傾向,開放性,協調性の5つの特性が示されている。


簡単に解説します。


1 クレッチマー(Kretschmer,E.)は,特性論に基づき,体格と気質の関係を示した。


クレッチマーが,体格と気質の関係を示しましたが,類型論であるのが誤りです。


2 ユング(Jung,C.)は,外向型と内向型の二つの類型を示した。


これが正解です。

リビドーの向きによって,外向型と内向型に分けました。

類型論は,このようにパーソナリティをタイプ分けするのが特徴です。


3 オールポート(Allport,G.)は,パーソナリティの特性を生物学的特性と個人的特性の二つに分けた。


オールポートは,特性論者であることは正解です。しかし特性は,人に共通している共通特性とその人特有の個別特性の2つがあることを示しています。


4 キャッテル(Cattell,R.)は,パーソナリティをリビドーにより説明した。


先述のように,パーソナリティをリビドーで説明したのは,ユングです。


キャッテルもオールポートと同じ特性論者です。


キャッテルは,辞書からパーソナリティに関連する用語を抜き出し,それを分析して,12因子に分けています。ビッグファイブの5因子に比べるとまだ多いです。


5 5因子モデル(ビッグファイブ)では,外向性,内向性,神経症傾向,開放性,協調性の5つの特性が示されている。


ビッグファイブは,特性論の代表です。


内向性が,誠実性なら正しい5因子となります。


さて,ここからが本来の今日の問題です。



第27回・問題9 パーソナリティに関する次の記述のうち,特性論の説明として,最も適切なものを1つ選びなさい。

1 エス・自我・超自我の区別と相互作用説は,特性論の1つの証拠となっている。

2 体格や価値に基づく生活様式などの違いでカテゴリー化し,特性をとらえる。

3 外向性・神経症傾向・誠実性・調和性・経験への開放性から成るビッグファイブ(5因子説)は,特性論の一例である。

4 典型例が明示され,パーソナリティを直感的・全体的に把握するのに役立つ。

5 パーソナリティ全体をいくつかの層の積み重なった構造としてとらえる。


難易度がとても高い問題です。


正解は,選択肢3です。


3 外向性・神経症傾向・誠実性・調和性・経験への開放性から成るビッグファイブ(5因子説)は,特性論の一例である。


ビッグファイブが出題されたのは,この時が初めてです。第32回の問題と異なり,5因子の組み合わせは変えられていません。


ビッグファイブが特性論の代表だということだけがわかっていれば,正解できた問題でしょう。


しかし,第32回の問題でわかるように,一度出題されると,ひねって出題されるので,5因子はより慎重に覚えることが必要です。

がい(外向性)

しん(神経症傾向)

せい(誠実性)

ちょう(調和性)

かい(開放性)

これをつなげて,がいしんせいちょうかい(外診,成長かい?)と覚えるのもよいでしょう。外診とは,内診の逆で身体の外部を診察することです。

このように,頭文字を並べて覚えるのは,頭文字記憶法と呼ばれる方法です。結構使えます。


それでは,ほかの選択肢の解説です。


1 エス・自我・超自我の区別と相互作用説は,特性論の1つの証拠となっている。


エス・自我・超自我は,フロイトが提唱したもので,特性論でも類型論でもなく,精神分析に用いられる概念です。


2 体格や価値に基づく生活様式などの違いでカテゴリー化し,特性をとらえる。


カテゴリー化するのは,類型論です。


体格でカテゴリー化したのは,クレッチマーです。


価値に基づく生活様式によってカテゴリー化したのは,シュプランガーです。


4 典型例が明示され,パーソナリティを直感的・全体的に把握するのに役立つ。


典型例を明示しているのは,類型論です。


パーソナリティがわかりやすいのが特徴です。


5 パーソナリティ全体をいくつかの層の積み重なった構造としてとらえる。


特性論は,いくつかの因子が組み合ってその人のパーソナリティとなるととらえます。


ちょっとわかりにくいものかと思いますが,正解は圧倒的にビッグファイブなので,何の問題もなかったことでしょう。


〈今日の一言〉


パーソナリティを分析する方法には,類型論と特性論があることがわかったと思います。


それぞれの特徴をほかの人に簡単に説明できる程度の理解が必要です。


その上で,主な類型論者と特性論者の提唱した内容を覚えます。

今日の特性論の代表であるビッグファイブを押さえると,パーソナリティは完璧です。

2022年9月16日金曜日

ウェクスラー式の知能検査

平成19年カリキュラム改正以降,出題基準で示されている「知能・創造性」が国家試験に出題されたことはたった1回しかありません。

 

しかし,新しい国家資格である公認心理師が創設されて以来,社会福祉士の心理学が公認心理師を意識した出題になっているので,注意が必要です。

 

今日のテーマから少し離れますが,公認心理師を最も意識したものとして,次の問題が挙げられます。

 

第33回・問題13 心理検査に関する次の記述のうち,最も適切なものを1つ選びなさい。

1 特別支援学級への入級を検討したい子どもの知能検査を学校から依頼されたので,ロールシャッハテストを実施した。

2 改訂長谷川式簡易知能評価スケールの結果がカットオフポイントを下回ったので,発達障害の可能性を考えた。

3 10歳の子どもに知能検査を実施することになり,本人が了解したので,WAIS-Ⅳを実施した。

4 投影法による性格検査を実施することになったので,矢田部ギルフォード(YG)性格検査を実施した。

5 WISC-Ⅳの結果,四つの指標得点間のばらつきが大きかったので,全検査IQ(FSIQ)の数値だけで全知的能力を代表するとは解釈しなかった。

 

公認心理師の問題よりは簡単ですが,びっくりする出題です。

カットオフポイントとは,心理検査で得られた数値を上回るか,下回るか,によって障害等を判断する基準点のことです。

認知症のスクリーニング検査はできることをチェックしていくので,カットオフポイントを下回ると認知症が疑われます。

逆に不安などの心理検査は,症状があることをチェックしていくので,点数が高くなるほど不安等の度合いが強いことを示します。

 

選択肢4はびっくりです。

 

<4つの指標得点>

言語理解

言語の理解の程度をみる指標

知覚推理

非言語的な推理能力をみる指標

ワーキングメモリー

聴覚の記憶の程度をみる指標

処理速度

作業が手際よく処理できるかをみる指標

 

IQは,おおよそ以下のように見ます。

 

130以上:非常に高い

120~129:高い

110~119:平均の上

90~109:平均

80~89:平均の下

70~79:低い

69以下:非常に低い

 

IQが69以下だと知的能力障害が疑われますが,知能検査は診断のための一つの材料に過ぎず,知能検査の結果で,知的能力障害だと診断されるものではありません。

 

問題の中にあるばらつきとは,たとえば,以下のようなものです。

 

全検査IQ 100

言語理解 85

知覚推理 100

ワーキングメモリー 110

処理速度 105

 

全検査IQだけでは,この子の知的能力はよくわからないことがよくわかるでしょう。ということで正解は,選択肢5です。知らなくてもこれを選べそうです。

 

さて,ここからが今日の本論です。

 

よく使われる知能検査には,ビネー式とウェクスラー式があります。

 

ウェクスラー式の知能検査には,対象の年齢によって,3つの検査があります。

 

低年齢児用:WPPSI(ウイプシ)

子ども用:WISC(ウイスク)

成人用:WAIS(ウェイス)

 

対象年齢は,きっちり決まっていますが,公認心理師ではないので,各知能検査が誰を対象としているのかがわかれば十分です。

 

なお,各検査のWは開発者のウェクスラーを意味しています。

 

それでは,今日の問題です。

 

第30回・問題10 思考や知能に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。

1 拡散的思考とは,問題解決の際に,1つの解答を探索しようとする思考方法である。

2 洞察とは,問題解決のための方法を1つひとつ試して,成功する手法を探していく思考方法である。

3 知能指数(IQ)は,知能検査から得られる生活年齢と暦年齢の比によって計算される。

4 結晶性知能とは,過去の学習や経験を適用して得られた判断力や習慣のことである。

5 成人用知能検査であるWAISは,フランスのビネー(Binet,A)によって開発された。

 

これもかなりびっくりする問題かもしれません。

 

しかし,正解は,選択肢4です。

4 結晶性知能とは,過去の学習や経験を適用して得られた判断力や習慣のことである。

 

知能の種類の分類には,キャッテルによる「結晶性知能」と「流動性知能」があります。

 

そのうち,過去の学習や経験を適用して得られた判断力や習慣は,結晶性知能です。

 

流動性知能は,新しいものに対応する知能です。

 

WISCで述べた4つの指標得点のうち,

結晶性知能をみるのが「言語理解」

流動性知能をみるのが「知覚推理」

です。

 

難しい問題ですが,「結晶性知能」と「流動性知能」は,この当時の参考書にも書いてあったものだと思います。そのため,しっかり勉強した人は確信をもって解けたのではないかと思います。難しそうにみえてもどこかに手がかりはあるものです。

 

それでは,ほかの選択肢も確認します。

 

1 拡散的思考とは,問題解決の際に,1つの解答を探索しようとする思考方法である。

 

思考方法には,「拡散的思考」と「収束的思考」があります。

 

そのうち,1つの解答を探索しようとする思考方法は,「収束的思考」です。

 

「拡散的思考」は,1つのことから,発展させて思考を広げるものです。

 

2 洞察とは,問題解決のための方法を1つひとつ試して,成功する手法を探していく思考方法である。

 

問題解決のための方法を1つひとつ試して,成功する手法を探していく思考方法は,試行錯誤です。

 

洞察は,試行錯誤せずとも答えがひらめくものです。


学習理論で学ぶ試行錯誤学習と洞察学習の知識を応用して考えることが問われています。

 

3 知能指数(IQ)は,知能検査から得られる生活年齢と暦年齢の比によって計算される。

 

知能指数(IQ)は,精神年齢を生活年齢(暦年齢とも言う)で割ったものです。

 

精神年齢が高ければ,IQが高くなります。精神年齢は,ビネー式知能検査で知られるビネーが提唱したものです。

 

5 成人用知能検査であるWAISは,フランスのビネー(Binet,A)によって開発された。

 

WAISを開発したのは,ウェクスラーです。WIPPSI,WISC,WAISのWは,ウェクスラーの頭文字です。

 

ビネーが開発したのは,ビネー式です。

先に紹介した知能指数の100を平均とした数字は,ビネー式とウェクスラー式でほぼ一緒ですが,一部異なる部分があります。

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