2018年10月2日火曜日

福祉事務所の徹底理解~その2

今回も福祉事務所に取り組んでいきましょう。

まずは,指揮監督について確認しましょう。

都道府県が設置する福祉事務所の長は,都道府県知事の指揮監督を受けて,所務を掌理(福祉事務所の仕事を管理)します。

市町村が設置する福祉事務所の長は,市町村長の指揮監督を受けて,所務を掌理(福祉事務所の仕事を管理)します。

指導監督を行う所員(査察指導員)は,所の長の指揮監督を受けて,現業事務の指導監督をつかさどります。

現業を行う所員(現業員=ケースワーカー)は,所の長の指揮監督を受けて,現業業務をつかさどります。

査察指導員及び現業員の上司は,所の長です。所の長の管理下にあるのは当然です。

同じく,所の長も設置者の管理下にあるのは,当然のことです。

査察指導員及び現業員が指揮監督を受けるのは,所の長であって,都道府県知事あるいは市町村長ではありません。

それを押さえたところで,今日の問題です。

第26回・問題67 福祉事務所に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。

1 福祉事務所の現業を行う所員の定数については,特に法令上の定めはない。

2 指導監督を行う所員,現業を行う所員,事務を行う所員はいずれも社会福祉法で定める社会福祉主事でなければならない。

3 市の設置する福祉事務所の長は,市長の指揮監督を受けて,所務を掌理する。

4 都道府県及び市町村は,福祉事務所を設置しなければならない。

5 福祉事務所に置かれる社会福祉主事は,18歳以上の者でなければならない。

前回の問題と偶然の一致とは思えないくらいにそっくりです。

第21回の選択肢1
福祉事務所の現業を行う所員の定数については,特に法令上の定めはない。

第26回の選択肢1
福祉事務所の現業を行う所員の定数については,特に法令上の定めはない。

まったく一緒です。

第21回の選択肢2
福祉事務所の現業を行う所員,現業事務の指導監督を行う所員,所の長は,社会福祉主事でなければならない。

第26回の選択肢2
指導監督を行う所員,現業を行う所員,事務を行う所員はいずれも社会福祉法で定める社会福祉主事でなければならない。

所の長と,事務を行う所員の部分が違うだけで,内容はほぼ一緒です。


「低所得者に対する支援と生活保護制度」は,同じような出題を繰り返しているとは言え,ここまで一緒なのはとても珍しいことです。

第26回国試は,その前から試験委員長を含めて,試験委員が半分入れ替わったので,作問に慣れていなかったのでしょう。

こういう出題を見ると,試験委員は国試問題を作るのは本当に大変だということがよく分かります。

第31回国試の試験委員は,第30回のメンバーとほとんど入れ替わっていません。

同じように作問すると,第30回と同じようになってしまうので,そのプレッシャーは,第26回とは比べ物にならないことでしょう。

さてさて第31回はどんな作問をしてくることでしょうか。

どのように変化しても,基礎をしっかり身につけておけば,何の問題もないことと言うまでもありません。

それでは,解説です。


1 福祉事務所の現業を行う所員の定数については,特に法令上の定めはない。

前回紹介した通り,間違いです。

基準を標準として,条例で定めます。

標準数は・・・

都道府県福祉事務所 → 被保護世帯数65世帯につき1名。

市町村福祉事務所 →  被保護世帯数80世帯につき1名。


2 指導監督を行う所員,現業を行う所員,事務を行う所員はいずれも社会福祉法で定める社会福祉主事でなければならない。

これも前回紹介したとおりです。

社会福祉主事でなければならないのは,指導監督を行う所員,現業を行う所員です。


3 市の設置する福祉事務所の長は,市長の指揮監督を受けて,所務を掌理する。

これが正解です。

市の設置する福祉事務所の長は,市長の指揮監督を受けます。


4 都道府県及び市町村は,福祉事務所を設置しなければならない。

よく見たら,これも第21回とそっくりですね。


福祉事務所を設置しなければならないのは,都道府県及び市です。

町村は,任意で設置することができます。よって間違いです。


5 福祉事務所に置かれる社会福祉主事は,18歳以上の者でなければならない。

これも間違いです。

これを知らなくても答えは選択肢3なので,何の問題もありませんが,年齢は20歳以上と規定されています。


<今日の一言>

社会福祉士の国試は,今までに30回も実施されています。

まったく同じ表現で出題されることはほとんど見たことがありません。

しかし,出題ポイントはいつもそんなに変わるものではありません。

自動車免許は,今はどうなっているか分かりませんが,かつては出題される問題はいつも同じでした。

たとえば,

「青は進めである」といった出題です。これは間違いです。自動車学校の先生は,何度も「青は進め,ではなく,進むことができる,ですよ」と指導していました。

どのように間違いポイントが作られるか熟知しているので,確実な指導ができるのです。

社会福祉士の国試問題は,表現は違えど,基本はそんなに変わるものではないです。大きく変わってしまっては,合格基準は6割程度を保てなくなります。

基本を押さえたら,合格基準では超えられるように国試問題は作られています。

合格は,ひたすら基本を押さえていくことにほかなりません。

応用が必要な問題は,社会福祉士の国試には存在しません。

基本を押さえたら,合格基準点を超えられます。

合格する実力をつけるのは,実は極めて単純明快なことです。

実際に国試ではどのように出題されるかをよく知ることです。

福祉事務所を設置しなければならないのは,都道府県と市であり,町村は任意である,といったことです。

「市町村」となっていないかどうかに着目して問題文を読みます。

ケアレスミスはかなり減らすことができるでしょう。

応用が必要な問題は,社会福祉士の国試には存在しません。

基本をひたすら覚えていきましょう。

2018年10月1日月曜日

福祉事務所の徹底理解~その1

今日から福祉事務所に取り組んでいきたいと思います。

福祉事務所は,「低所得者に対する支援と生活保護制度」だけではなく,ほかの科目でも出題されます。

福祉事務所は,保護を実施しますが,そのほかの法も取り扱っているからです。

福祉事務所は,社会福祉法では「福祉に関する事務所」と規定されています。

「〇〇福祉事務所」という名称になっている自治体もありますが,多くの自治体は「〇〇課〇〇係」といった名称になっています。


都道府県福祉事務所が取り扱うのは
「生活保護法」「児童福祉法」「母子及び父子並びに寡婦福祉法」の三法です。


市町村福祉事務所が取り扱うのは
「生活保護法」「児童福祉法」「母子及び父子並びに寡婦福祉法」「老人福祉法」「身体障害者福祉法」「知的障害者福祉法」の六法です。


もともとは都道府県も六法を取り扱っていましたが,権限委譲で現在は先述の三法だけを取り扱います。


福祉事務所に置かれる職員は次のとおりです。

所の長
指導監督を行う所員(査察指導員)
現業を行う所員(現業員)
事務を行う所員

このうち,指導監督を行う所員(査察指導員)と現業を行う所員(現業員)は,社会福祉主事でなければなりません。

社会福祉士ではありませんので,注意が必要です。

所の長と事務を行う所員は社会福祉主事である必要はありません。

所の長は,多くの場合「〇〇課長」なので,人事異動で福祉事務所に配置されるので,社会福祉主事でなければならないといろいろ不都合があるからでしょう。

指導監督を行う所員(査察指導員)は,現業を行う所員(現業員)のスーパーバイザーです。

そのため「相談援助の理論と方法」で学ぶスーパービジョンの機能である「教育的機能」「支持的機能」「管理的機能」を発揮して,現業員に関わります。


それでは今日の問題です。


第21回・問題29 生活保護の実施機関である福祉事務所に関する次の記述のうち,正しいものを一つ選びなさい。

1 福祉事務所の現業を行う所員の定数については,特に法令上の定めはない。

2 福祉事務所の現業を行う所員,現業事務の指導監督を行う所員,所の長は,社会福祉主事でなければならない。

3 民生委員は,法令上,市町村長,福祉事務所長の生活保護業務の執行を補助することになっている。

4 都道府県,市(特別区を含む)は,条例で,福祉事務所を設置しなければならない。

5 都道府県に設置される福祉事務所は,生活保護法に基づく保護の決定のほか,児童福祉法及び老人福祉法に定める措置を行う。


勉強している人は,そんなに難しくはないと思いますが,勉強していない人は,このような問題でも難しいはずです。でも大丈夫!! 国試までに理解できていれば良いのです。



それでは解説です。


1 福祉事務所の現業を行う所員の定数については,特に法令上の定めはない。

これは内容が分からなくても正解にする人は少ないでしょう。

法令上の定めがないのだったら,わざわざ出題する意味がないからです。

今ならこんな問題は作られないはずです。

現業員の定数は,社会福祉法で「標準数」が定められています。

都道府県事務所は,被保護世帯数65世帯につき1人。
市町村福祉事務所は,被保護世帯数80世帯につき1人。

現業員の定数は,この基準を標準として,条例で定めます。

国が定めて,自治体が条例で定める場合,拘束力の強弱で3つの種類に分けることができます。

<基準として> 

最も拘束力が強く,国が定める基準から外れることは基本的に認められません。
職員配置数,施設建築基準などに用いられます。


<基準を標準として> 

拘束力は中くらいで,自治体の状況によって多少変えることができます。現業員のほかには,児童相談所に配置される児童福祉司も同様です。
施設の入所定員,通所定員などに用いられます。


<基準を参酌として> 

拘束力は最も弱く,標準を参考にして,自治体の状況によって変えることができます。
民生委員がこのスタイルを用いています。

参酌とは,「参考にして」という意味です。


話は戻って,現業員は社会福祉法によって標準数が定められているので間違いです。


2 福祉事務所の現業を行う所員,現業事務の指導監督を行う所員,所の長は,社会福祉主事でなければならない。

これも間違いです。

社会福祉主事でなければならないのは,現業を行う所員と指導監督を行う所員です。

所の長は社会福祉主事である必要はありません。


3 民生委員は,法令上,市町村長,福祉事務所長の生活保護業務の執行を補助することになっている。

民生委員は,1918年に大阪で作られた方面委員制度が戦後民生委員に変更されたものです。

★救護法では 方面委員は補助機関

★旧生活保護法では,民生委員は補助機関

★現生活保護法では,民生委員は協力機関

 ➡ 民生委員は,協力機関なので間違いです。


現行法では,民生委員に変わって,社会福祉主事が補助機関となっています。


4 都道府県,市(特別区を含む)は,条例で,福祉事務所を設置しなければならない。

これが正解です。

福祉事務所を設置しなければならないのは,都道府県と市です。町村は任意で設置することができます。


5 都道府県に設置される福祉事務所は,生活保護法に基づく保護の決定のほか,児童福祉法及び老人福祉法に定める措置を行う。

これも間違いです。都道府県福祉事務所の取り扱う法は,「生活保護法」「児童福祉法」「母子及び父子並びに寡婦福祉法」の三法です。

老人福祉法は1990年の福祉関係八法改正で,入所措置が町村に移譲されたことで都道府県では取り扱いません。身体障害者福祉法も同様です。



<今日の一言>

試験にはケアレスミスはつきものです。

しかし,ケアレスミスは,問題を見るときのポイントをしっかりもつことで減らすことができます。

国試では,変えてくるポイントは,あまり変わらないので,そこをケアすればよいのです。

ケアすべきポイントが分かっていないと,ケアレスミスを犯します。
ケアすべきポイントが分かっていれば,ケアレスミスを防ぐことができます。

例えば・・・

現業員の定数は「標準として」。

ここが「基準として」となっていれば間違いです。

たった一文字「標」と「基」の違いだけです。


民生委員は「協力」。

ここが「補助」となっていれば間違いです。

協力機関,補助機関とは出題してくれません。


福祉事務所の設置が義務付けられているのは「都道府県」と「市」です。

ここが「市町村」となれば間違いです。


ほかの科目ではNPO法人を設立があります。


NPO法人設立には所轄庁の「認定」を受ける必要があります。

「認可」となっていれば間違いです。

たった一文字「定」と「可」が違うだけです。


ケアレスミスは命取りになります。

どのように出題されているのか,分かってもらうために,このブロクでは丁寧に過去問を紹介しています。

敵を知って,戦いに臨めば,有利に立てるのは,国試も一緒です。

私たちチームfukufuku21と一緒にそれらを見つけていきましょう。

2018年9月30日日曜日

生活保護法の徹底理解~国・都道府県・市町村の役割~その2

福祉事務所は,都道府県・市には設置義務があり,町村は任意で設置できます。

全国に約900町村ありますが,そのうち福祉事務所を設置しているのは,43町村です。

とても数が少なく感じると思いますが,2000年以前はわずか2町村でした。

その後設置数が増えてきています。

都道府県別にみると島根県と鳥取県の町村が多く設置しています。

逆に都道府県の設置する福祉事務所は減少しています。

なぜなら平成の大合併によって,郡部の町村の中で市になったところがあるからです。

それはさておき,福祉事務所は町村の任意設置なので,大半の町村は設置していません。

第27回と第29回で,福祉事務所を設置していない町村に関する選択肢が続けざまに出題されました。

第30回ではとうとう一問丸ごと福祉事務所を設置していない町村が出題されています。

試験委員は意識しているのか,していないのか分かりませんが,鳥瞰してみると,毎回の国試に何らかのつながりがあるように思います。

さて,それでは第30回国試問題です。

第30回・問題66 福祉事務所を設置していない町村の役割・機能に関する次の記述のうち,最も適切なものを1つ選びなさい。

1 町村は,社会福祉主事を置くことができる。

2 町村は,生活保護法における保護の変更の申請を受け取ったときは,保護の変更を決定することができる。

3 保護の実施機関は,町村に対し被保護者への保護金品の交付を求めることはできない。

4 町村は,被保護者に対し必要な指導又は指示をすることができる。

5 保護の開始の申請は,町村を経由して行うことができない。

保護の実施機関は,都道府県知事,市長,福祉事務所を設置する町村長です。

保護の実施機関と福祉事務所を設置していない町村長では明らかに違うことがあります。


保護の実施機関は,決定権を持つ

保護の実施機関ではない町村長は,決定権を持たない

しっかりその点は押さえておきましょう。

つまり・・・

機関とは,決定権を持つもの,という意味です。

この問題は,第30回国試ではありますが,その割に洗練されていない印象があります。

とてもマニアックな話ですが,それは以下の理由によります。

①表現がそろっていない。

②問題文の長さがバラバラ。

問題文によって,統一するのは難しいとは思いますが,せめて「できる」と「できない」は混在させず,

1 できる
2 できる
3 できる
4 できない
5 できない

に並べ替えるだけで,問題文としては少し整って見えます。

このことによって,勉強不足の人は,混乱しやすくなります。

同じリズムの文章を見ると,それに〇×をつけるのは,かなり難しくなります。

それでは,解説です。


1 町村は,社会福祉主事を置くことができる。

これが正解です。

福祉事務所を設置していなくても,任意で社会福祉主事を置くことができます。


2 町村は,生活保護法における保護の変更の申請を受け取ったときは,保護の変更を決定することができる。

福祉事務所を設置していない町村長は,決定権を持ちません。

よって保護の決定も変更もすることができません。

間違いです。


3 保護の実施機関は,町村に対し被保護者への保護金品の交付を求めることはできない。

これも間違いです。

「保護の実施機関又は福祉事務所長から求められた場合において,被保護者等に対して,保護金品を交付すること」と規定されています。


4 町村は,被保護者に対し必要な指導又は指示をすることができる。

これも間違いです。

指導又は支持をすることができるのは,保護の実施機関です。


5 保護の開始の申請は,町村を経由して行うことができない。

これも間違いです。

「保護の開始又は変更の申請を受け取った場合において,これを保護の実施機関に送付すること」と規定されています。


<今日の一言>

国試会場は,とにかく緊張します。

平静心を保つのは本当に難しいです。
実は,この問題は実はちょっとしたほころびがあります。


2 町村は,生活保護法における保護の変更の申請を受け取ったときは,保護の変更を決定することができる。
5 保護の開始の申請は,町村を経由して行うことができない。

この2つの選択肢です。

申請と変更という違いはありますが,町村が申請及び変更申請を受け取ることがテーマになります。

受け取ることができれば,選択肢5は間違いになります。
受け取ることができなければ,選択肢2は間違いになります。

このように,他の選択肢から類推できる問題は,問題文としての質はあまり高いとは言えません。

国試会場でこのような問題を見たとき,「問題を作るのが下手」と心の中で笑いましょう。それによって,気持ちがかなり楽になるはずです。

実力通りの力を国試で発揮するのは決して簡単なことではありません。
雰囲気に呑まれないのは,言うほど簡単ではありません。

後から落ち着いて読めば解けた,ではだめなのです。

しっかり勉強した人なら,合格点に到達できなくても,その後に落ち着いて読めば,合格点に到達できる点数が取れる方が多いはずです。

それだけ国試会場で実力を発揮するのは,簡単ではないということなのでしょう。

試験委員を笑えるくらいの気持ちをもって,国試に臨みたいものです。

2018年9月29日土曜日

生活保護法の徹底理解~国・都道府県・市町村の役割~その2

保護の実施機関は,都道府県知事,市長,福祉事務所を設置する町村長です。

国・都道府県・市町村の役割が少しややこしいのは,福祉事務所を設置しない町村の役割があるからです。

まずは復習です。


福祉事務所を設置しない町村長

その町村の区域内において特に急迫した事由により放置することができない状況にある要保護者に対して,応急的処置として,必要な保護を行うものとする。

保護の実施機関又は福祉事務所の長が行う保護事務の執行を適切ならしめるため,次に掲げる事項を行うものとする。

一 要保護者を発見し,又は被保護者の生計その他の状況の変動を発見した場合において,速やかに,保護の実施機関又は福祉事務所長にその旨を通報すること。

二 第二十四条第十項の規定により保護の開始又は変更の申請を受け取った場合において,これを保護の実施機関に送付すること。

三 保護の実施機関又は福祉事務所長から求められた場合において,被保護者等に対して,保護金品を交付すること。

四 保護の実施機関又は福祉事務所長から求められた場合において,要保護者に関する調査を行うこと。


それでは今日の問題です。

第29回・問題63 生活保護制度について,国,都道府県及び市町村の役割に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。

1 国は,居住地がないか,又は明らかでない被保護者の保護に要する費用の全額を負担する。

2 厚生労働大臣以外の者は,生活保護法に基づく医療機関を指定することができない。

3 都道府県知事は,生活保護法に定める職権の一部をその管理に属する行政庁に委任することができない。

4 人口5万人未満の市は,福祉事務所を設置しなくてもよい。

5 福祉事務所を設置していない町村の長は,特に急迫した事由により放置することができない状況にある要保護者に対して応急的な処置として必要な保護を行う。

すぐ答えは分かると思いますが,解説です。


1 国は,居住地がないか,又は明らかでない被保護者の保護に要する費用の全額を負担する。

これは間違いです。

居住地がないか,又は明らかでない被保護者の保護に要する費用は,国が4分の3,都道府県が4分の1を負担します。


2 厚生労働大臣以外の者は,生活保護法に基づく医療機関を指定することができない。
これも間違いです。

指定は,厚生労働大臣,都道府県知事が行います。


3 都道府県知事は,生活保護法に定める職権の一部をその管理に属する行政庁に委任することができない。

これも間違いです。

法では「都道府県知事は、この法律に定めるその職権の一部を、その管理に属する行政庁に委任することができる」と規定しています。


4 人口5万人未満の市は,福祉事務所を設置しなくてもよい。

これも間違いです。規模に関わりなく,市には設置義務があります。

5 福祉事務所を設置していない町村の長は,特に急迫した事由により放置することができない状況にある要保護者に対して応急的な処置として必要な保護を行う。

これが正解です。

結局極めて基本的なものが正解になっています。


<今日の一言>

国試は,

少しずつ重なっていて,少しずつ違う

少しずつ重なっている部分が正解選択肢になります。
少しずつ違うところが間違い選択肢になります。

知らないものが出題されても,落ち着いて読めば,多くの場合はそこには答えはないものです。

つまり,基礎的なものをしっかり押さえることができれば,必ず得点力になります。

そこには応用も何もありません。ひたすら基礎力をつけていきましょう。

まだまだ時間はあります。

あきらめちゃだめです。

2018年9月28日金曜日

生活保護法の徹底理解~国・都道府県・市町村の役割~その1

今回から,国・都道府県・市町村の役割を押さえていきたいと思います。

国家試験では,第27回,第29回,第30回と出題されているので,第31回には出題されない可能性が高いですが,一応押さえていきたいと思います。

保護の実施機関は,都道府県知事,市長,福祉事務所を設置している町村長です。

補助機関は社会福祉主事,協力機関は民生委員です。


複雑なのは,福祉事務所を設置していない町村にも保護の役割があることです。


福祉事務所を設置しない町村長

その町村の区域内において特に急迫した事由により放置することができない状況にある要保護者に対して,応急的処置として,必要な保護を行うものとする。

保護の実施機関又は福祉事務所の長が行う保護事務の執行を適切ならしめるため,次に掲げる事項を行うものとする。

一 要保護者を発見し,又は被保護者の生計その他の状況の変動を発見した場合において,速やかに,保護の実施機関又は福祉事務所長にその旨を通報すること。

二 第二十四条第十項の規定により保護の開始又は変更の申請を受け取った場合において,これを保護の実施機関に送付すること。

三 保護の実施機関又は福祉事務所長から求められた場合において,被保護者等に対して,保護金品を交付すること。

四 保護の実施機関又は福祉事務所長から求められた場合において,要保護者に関する調査を行うこと。

驚くほどたくさんありますね。

それでは今日の問題です。


第27回・問題66 生活保護制度について,国,都道府県及び市町村の役割とその運用に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。

1 都道府県知事は,市町村の行う生活保護に関する事務について監査を実施することができない。

2 福祉事務所を設置していない町村の長は,保護の実施機関ではないことから,生活保護の決定及び実施に関する事務を行わない。

3 市町村長は,保護施設の運営について,必要な指導をしなければならない。

4 都道府県は,居住地がないか,又は明らかでない被保護者の保護につき市町村が支弁した保護費,保護施設事務費及び委託事務費の4分の1を負担する。

5 国,都道府県及び市町村以外は,保護施設を設置することができない。

第27回の国試問題ですが,問題文にばらつきがあります。

1 できない。
2 行わない。
3 しなければならない。
4 負担する。
5 できない。

選択肢4が少し趣きが違います。

答えは,選択肢4「負担する」です。

試験センターは,このように表現にばらつきがあると,それがヒントになることにとうとう気がついてしまったようです。

現在は,表現はそろえるようになっています。

つまり,肯定形なら肯定形で統一,否定形なら否定形で統一,というように工夫してきているようです。ただしそれが徹底されているわけではありませんので,突破口は残っています。

おそらくこの出題傾向は,今後も変わることはないと思いますので,勘で「答えはこれかな?」と選ぶことはほとんどできないでしょう。

しかし,基本的な知識があれは,必ず対処可能です。

それでは,答えは分かっていますが,解説します。


1 都道府県知事は,市町村の行う生活保護に関する事務について監査を実施することができない。

都道府県知事は,監査を実施しなければなりません。

よって間違いです。


2 福祉事務所を設置していない町村の長は,保護の実施機関ではないことから,生活保護の決定及び実施に関する事務を行わない。

前説のように,福祉事務所を設置していない町村の長も行うべき事務はたくさんあります。

よって間違いです。


3 市町村長は,保護施設の運営について,必要な指導をしなければならない。

保護施設の保護施設に配置する職員及びその員数などは,厚生労働大臣が定める基準に従って,都道府県が条例で定めます。

つまり保護施設は都道府県が所轄庁なので,必要な指導は都道府県が行います。

よって間違いです。

保護施設は,最も多い救護施設でさえ,全国には約180しかありません。
市町村がかかわるほどのものではないことは分かるでしょう。


4 都道府県は,居住地がないか,又は明らかでない被保護者の保護につき市町村が支弁した保護費,保護施設事務費及び委託事務費の4分の1を負担する。

これが正解です。保護に要する費用は,国が4分の3,福祉事務所を設置する自治体が4分の1を支弁します。

しかし,居住地がないか,又は明らかでない被保護者の保護に要する費用は,都道府県が負担します。


5 国,都道府県及び市町村以外は,保護施設を設置することができない。

保護施設については,後日改めて詳しく紹介していきますが,設置できるのは極めて限定されています。

保護施設の設置主体

都道府県
市町村
地方独立行政法人
社会福祉法人
日本赤十字社

この5つのみです。

よって間違いです。また改めて紹介しますが,最後の部分を医療法人,特定非営利活動法人などど変えて出題されています。

保護施設の設置主体の出題があったときは,一番最後の部分を特に注意してみればよいということになります。


<今日の一言>

保護の費用の負担についてです。

国の費用負担は,4分の3です。制度ができたときは,10分の8だったので,それから比べると少なくなっています。しかし,それでも他制度よりも国の負担率は高いです。

これは「国家責任の原理」に関係していると考えられます。

国の費用負担が4分の3なのは,生活困窮者自立支援法の必須事業である「自立相談支援事業」と「住宅確保給付金」も同じです。

そのほかの事業では,費用負担が5割を超えるものは,おそらくないのではないでしょうか。少なくとも国試で出題されるものについてはありません。

もちろん,保護観察のように,地方の費用負担はなく,国がすべてを負担するものはあります。

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