今回は,コンティンジェンシー理論に分類されるSL理論を紹介します。
SL理論は,フィードラー理論と同じくコンティンジェンシー理論なので,適切なリーダーシップは,状況によって変化するという基本的理解が必要です。
SL理論のSLは,Situational Leadership(状況によるリーダーシップ)の頭文字を取ったものです。この言葉を見るだけで,コンティンジェンシー理論であることがイメージできることでしょう。
SL理論が着目しているのは,メンバーの仕事(タスク)に対する習熟度と意欲です。
この図の矢印は,メンバーの習熟度と意欲を表わしています。
<メンバーの習熟度と意欲>
低い → 教示的リーダーシップ
高い → 委任的リーダーシップ
この過渡期にあるものが,説得的リーダーシップであり,参加的リーダーシップです。
それでは今日の問題です。
第28回・問題122 新設の介護老人福祉施設では,多くの介護職員(以下,「職員」という。)が新人であった。開設当初,職員たちは知識や技術がまだ不十分で,自信もなかった。
この段階では,リーダーのFさんは,仕事で何をすべきか明確に伝えて細かく指示を出すようにした。職員たちの意欲は高まったが,知識や技術を状況に合わせて使うには不安のある段階では,Fさんは,なぜある行動が望ましいかといった理由を職員たちに説明し話し合ったか積極的に質問するように促した。
さらに,職員たちが十分な知識・技術を身につけ,自信も持てるようになった段階になると,Fさんは職員自身が仕事の進め方について考え,決めるよう促した。
このように,部下の成熟度に合わせたリーダーシップ行動の変容に関する理論として,次のうちから最も適切なものを1つ選びなさい。
1 リーダーシップの行動理論
2 状況リーダーシップ(ハーシー(Hersey,P.)とブランチャード(Blanchard,K.)による)
3 PM理論(三隅二不二による)
4 変革型リーダーシップ
5 カリスマ的リーダーシップ
この問題は,事例のスタイルをとっていますが,事例がなくても「このように」の以下を読むだけで,十分理解できます。
社会福祉士の国試にはこのスタイルの問題はあまりありません。
しかし,精神保健福祉士の長文事例問題の多くは,このスタイルです。
さて,この問題の正解は
2 状況リーダーシップ(ハーシー(Hersey,P.)とブランチャード(Blanchard,K.)による)
それほど難しくはないと思います。
もし,これが「状況リーダーシップ」ではなく,「SL理論」と出題していたら,勉強不足の人はほとんど正解できなかったのではないかと思います。
しかし,この問題はそうではなかったので,知識不足でも正解できた人はいたのではないかと想像しています。
それでは,ほかの選択肢も見ていきましょう。
1 リーダーシップの行動理論
行動理論は,リーダーの行動を研究するものです。
行動理論とコンティンジェンシー理論の違いは,行動理論は,「最もよいリーダーシップのスタイルは〇〇だ」と提示するものに対し,コンティンジェンシー理論は,最も良いリーダーシップのスタイルは状況によって変化するものだ,ととらえている点です。
3 PM理論(三隅二不二による)
PM理論では,PM(ラージP・ラージM)型のリーダーシップのスタイルが最も優れているとされます。
つまりコンティンジェンシー理論ではありません。
4 変革型リーダーシップ
またまた変革型リーダーシップが出題されました。
前回の問題では,
変革型リーダーシップは,安定した環境において効力を発輝するといわれている。
と出題されていました。間違いでしたね,「安定した環境」ではなく,「変化の大きな環境」です。
このように変革型リーダーシップは,環境変化に対応するためのリーダーシップです。
コンティンジェンシー理論ではありません。
5 カリスマ的リーダーシップ
カリスマ的リーダーシップは,ウェーバーの支配システムの類型です。
ウェーバーの支配システムは,
①伝統的支配
②カリスマ的支配(ここでは,カリスマ的のリーダーシップ)
③合法的支配
伝統的支配とカリスマ的支配は,コンティンジェンシー理論よりも,リーダーの資質を重視した「特性理論」に位置づけることができるでしょう。
リーダーシップ研究では,特性理論でリーダーシップを説明することがうまくできなかったために,行動理論が誕生してきたという背景があります。
<今日の一言>
代表的なコンティンジェンシー理論には,フィードラー理論,SL理論,パスゴール理論等があります。
これまでは,コンティンジェンシー理論が2つ以上重なって出題されたことはありませんでした。
しかし,第31回国試では,パスゴール理論とフィードラー理論が重なって出題されました。
今後は,そのような出題がされることがあると思います。
しかし,リーダーシップ理論は,以下を押さえておけば,ほとんどの問題に対応可能です。
ポイントさえ押さえることができれば,決して難しくありません。絶対ですよ。
(再 掲)
リーダーシップ理論には,3つの流れがあります。
①特性理論
②行動理論
③状況適合理論(コンティンジェンシー理論)
特性理論は,昔のリーダーシップ理論です。
端的に言えば,優れた能力が持つ者がリーダーとなる。
リーダーシップは,生得的だというものです。
優れたリーダーはどのような資質を持っているのか,ということを研究していきます。
しかし,結論は出ることなく,特性理論にとって代わったのが「行動理論」です。
この理論では,優れたリーダーは資質によるものではなく,行動が優れていると考えます。
PM理論,レヴィンらのリーダーシップ理論,マネジリアル・グリッドなどが行動理論となります。
行動理論の特徴は,優れたリーダーシップ行動は「〇〇だ」と提示していることです。
行動理論をもう一歩進めたものが「状況適合理論(コンティンジェンシー理論)」です。
これは,特定のリーダーシップ行動が優れているとするとするのではなく,適切なリーダーシップ行動は,状況によって変わると考えるものです。
フィードラー理論,SL理論,パスゴール理論などがコンティンジェンシー理論となります。
コンティンジェンシー理論の特徴は,先述のように,適切なリーダーシップ行動は状況によって変わるものなので,優れたリーダーシップ行動は「〇〇だ」とは言いません。
2019年8月19日月曜日
2019年8月17日土曜日
福祉サービスの組織と経営に係る基礎理論~フィードラー理論とは~
前回,リーダーシップ研究の歴史的発展について紹介しました。
第1段階 特性理論 リーダーとしての資質を持った者がリーダーとなる。
第2段階 行動理論 優れたリーダーは行動が優れている。
第3段階 状況適合理論(コンティンジェンシー理論) 状況に合わせて,適切なリーダーシップのスタイルは変わる。
行動理論が誕生した背景は,特性理論で,優れたリーダーの資質を研究してもうまく説明できなかったことによります。
ここから,リーダーシップに対する研究視点は,優れた資質を持った者がリーダーとなるという考え方から,優れたリーダーシップは訓練によって身につけられるものであることに変わっていきます。
さて,今回はフィードラー理論を取り上げたいと思います。
フィードラー理論は,状況適合理論(コンティンジェンシー理論)に分類されます。
第31回国試では,パスゴール理論について,その内容が出題されたので,コンティンジェンシー理論も詳しく出題される可能性がなくはないですが,コンティンジェンシー理論は,適切なリーダーシップは,状況によって変わるものであると考える理論である,という理解は最低でも必要です。
ちょっと踏み込んでみたいと思います。
フィードラー理論はリーダーシップのスタイルを「タスク(仕事)志向型」と「人間関係志向型」に分類しました。
ここまでは,PM理論とほぼ同じです。
PM理論は,PM型のリーダーシップが最も優れたものである,と位置付けています。
フィードラー理論は,コンティンジェンシー理論ですから,「タスク(仕事)志向型」と「人間関係志向型」のリーダーシップは,状況によって変わると考えるところに特徴があります。
フィードラー理論を図示すると,こういった図になります。
これでわかるように,状況には「人間関係」「タスク(仕事)内容」「リーダー権限」の3種類があります。
PM理論に比べると複雑なので,詳細は出題されても,正解にはなり得ないだろうと思います。
それでは今日の問題です。
第23回・問題115 リーダーシップ理論に関する次の記述のうち,正しいものを一つ選びなさい。
1 リーダーシップとは,組織の上位者が,下位にある個人や集団に対して影響を及ぼして,組織目標の達成を促すプロセスである。
2 リーダーシップとは,組織の理念やあるべき姿を示し,個人や集団を統率し,導くことであり,部下に対する配慮やネットワークづくりといったものは含まれない。
3 リーダーシップは,「行動」からではうまく説明できず,それを発揮する人の能力・資質などの「特性」に着目する方がよく説明できる。
4 オハイオ州立大学の研究によれば,リーダーシップ行動は「構造づくり」と「配慮」から説明でき,「構造づくり」と「配慮」の両方が高いリーダーの下で,メンバーの業績度と満足度が高まる可能性が高いとした。
5 フィードラー理論によれば,リーダーとメンバーの関係が良好で,仕事の内容・手順が明確な場合は,「タスク志向型」のリーダーより,「人間関係志向型」のリーダーの方が,よい業績が得られるとした。
今なら,参考書に記載されているので,ある程度勉強が進んでいる人ならそれほど難しくはないかもしれません。
しかし,この国試を受験した人は,本当に難しかったことでしょう。
それでも,この国試の前年の問題が手がかりとなり,何とか正解に近づく道はあります。
さて,この問題の正解は
4 オハイオ州立大学の研究によれば,リーダーシップ行動は「構造づくり」と「配慮」から説明でき,「構造づくり」と「配慮」の両方が高いリーダーの下で,メンバーの業績度と満足度が高まる可能性が高いとした。
これを正解にすることは,ほとんど不可能です。しかし,ほかの選択肢をうまく消去できれば,この選択肢が何とか残るというスタイルの問題です。
それでは,ほかの選択肢も確認していきましょう。
確実に消去できるのは,以下の2つです。
2 リーダーシップとは,組織の理念やあるべき姿を示し,個人や集団を統率し,導くことであり,部下に対する配慮やネットワークづくりといったものは含まれない。
5 フィードラー理論によれば,リーダーとメンバーの関係が良好で,仕事の内容・手順が明確な場合は,「タスク志向型」のリーダーより,「人間関係志向型」のリーダーの方が,よい業績が得られるとした。
2 リーダーシップとは,組織の理念やあるべき姿を示し,個人や集団を統率し,導くことであり,部下に対する配慮やネットワークづくりといったものは含まれない。
これが不正解だと判断できるポイントは,「含まれない」という表現が含まれた選択肢は,正解になりにくい傾向があることです。
この選択肢を国試の常連さんであるPM理論に当てはめて考えてみたいと思います。
部下に対する配慮は,M機能(集団維持機能)に当たります。
ネットワークづくりは,クライエントのニーズを充足するために行うと考えると,PM理論では,P機能(目標達成機能)に当たります。
いずれもリーダーシップに含まれます。
5 フィードラー理論によれば,リーダーとメンバーの関係が良好で,仕事の内容・手順が明確な場合は,「タスク志向型」のリーダーより,「人間関係志向型」のリーダーの方が,よい業績が得られるとした。
フィードラー理論では,人間関係が良好,タスク内容が単純な場合は,タスク志向型の方が良い業績を得られるとしています。
しかし,フィードラー理論は,コンティンジェンシー理論ですから,ここまでの知識がなくても,リーダーシップスタイルには,決まった型がないという理解をしていれば,消去できることでしょう。
実際にこの後に,フィードラー理論は何回か出題されていますが,ここまで詳細な出題はされたことがありません。
1 リーダーシップとは,組織の上位者が,下位にある個人や集団に対して影響を及ぼして,組織目標の達成を促すプロセスである。
リーダーシップのイメージは,上位者から下位者に対するものである,思われがちです。しかし,実際には,メンバー同士,下位者から上位者,部門間,など様々なリーダーシップが存在します。
3 リーダーシップは,「行動」からではうまく説明できず,それを発揮する人の能力・資質などの「特性」に着目する方がよく説明できる。
この問題で正解にたどりつくために,最も重要な選択肢です。
前説のように,リーダーシップ研究には「特性理論」と「行動理論」があります。
特性理論ではリーダーシップをうまく説明できなかったために,行動理論が誕生しました。
この選択肢がうまく消去できれば,
4 オハイオ州立大学の研究によれば,リーダーシップ行動は「構造づくり」と「配慮」から説明でき,「構造づくり」と「配慮」の両方が高いリーダーの下で,メンバーの業績度と満足度が高まる可能性が高いとした。
が残って,正解することができます。
オハイオ州立大学研究の特徴は,ここで述べられているように「構造づくり」(ゴールに至る道筋をつくることなど)と「配慮」を適切に行うリーダーが良いリーダーシップであるところです。
ここから創造できると思いますが,オハイオ州立大学研究は,コンティンジェンシー理論に含まれません。
<今日の一言>
第23回国試で出題されたオハイオ州立大学研究に関する問題は,時を超えて,第31回国試では
2 フィードラー理論に代表される「条件適合理論」において,リーダーの行動は「構造づくり」と「配慮」に集約される。
と出題されました。
先述のように,オハイオ州立大学研究は,コンティンジェンシー理論ではありません。
第1段階 特性理論 リーダーとしての資質を持った者がリーダーとなる。
第2段階 行動理論 優れたリーダーは行動が優れている。
第3段階 状況適合理論(コンティンジェンシー理論) 状況に合わせて,適切なリーダーシップのスタイルは変わる。
行動理論が誕生した背景は,特性理論で,優れたリーダーの資質を研究してもうまく説明できなかったことによります。
ここから,リーダーシップに対する研究視点は,優れた資質を持った者がリーダーとなるという考え方から,優れたリーダーシップは訓練によって身につけられるものであることに変わっていきます。
さて,今回はフィードラー理論を取り上げたいと思います。
フィードラー理論は,状況適合理論(コンティンジェンシー理論)に分類されます。
第31回国試では,パスゴール理論について,その内容が出題されたので,コンティンジェンシー理論も詳しく出題される可能性がなくはないですが,コンティンジェンシー理論は,適切なリーダーシップは,状況によって変わるものであると考える理論である,という理解は最低でも必要です。
ちょっと踏み込んでみたいと思います。
フィードラー理論はリーダーシップのスタイルを「タスク(仕事)志向型」と「人間関係志向型」に分類しました。
ここまでは,PM理論とほぼ同じです。
PM理論は,PM型のリーダーシップが最も優れたものである,と位置付けています。
フィードラー理論は,コンティンジェンシー理論ですから,「タスク(仕事)志向型」と「人間関係志向型」のリーダーシップは,状況によって変わると考えるところに特徴があります。
![]() |
| フィードラー理論 |
フィードラー理論を図示すると,こういった図になります。
これでわかるように,状況には「人間関係」「タスク(仕事)内容」「リーダー権限」の3種類があります。
PM理論に比べると複雑なので,詳細は出題されても,正解にはなり得ないだろうと思います。
それでは今日の問題です。
第23回・問題115 リーダーシップ理論に関する次の記述のうち,正しいものを一つ選びなさい。
1 リーダーシップとは,組織の上位者が,下位にある個人や集団に対して影響を及ぼして,組織目標の達成を促すプロセスである。
2 リーダーシップとは,組織の理念やあるべき姿を示し,個人や集団を統率し,導くことであり,部下に対する配慮やネットワークづくりといったものは含まれない。
3 リーダーシップは,「行動」からではうまく説明できず,それを発揮する人の能力・資質などの「特性」に着目する方がよく説明できる。
4 オハイオ州立大学の研究によれば,リーダーシップ行動は「構造づくり」と「配慮」から説明でき,「構造づくり」と「配慮」の両方が高いリーダーの下で,メンバーの業績度と満足度が高まる可能性が高いとした。
5 フィードラー理論によれば,リーダーとメンバーの関係が良好で,仕事の内容・手順が明確な場合は,「タスク志向型」のリーダーより,「人間関係志向型」のリーダーの方が,よい業績が得られるとした。
今なら,参考書に記載されているので,ある程度勉強が進んでいる人ならそれほど難しくはないかもしれません。
しかし,この国試を受験した人は,本当に難しかったことでしょう。
それでも,この国試の前年の問題が手がかりとなり,何とか正解に近づく道はあります。
さて,この問題の正解は
4 オハイオ州立大学の研究によれば,リーダーシップ行動は「構造づくり」と「配慮」から説明でき,「構造づくり」と「配慮」の両方が高いリーダーの下で,メンバーの業績度と満足度が高まる可能性が高いとした。
これを正解にすることは,ほとんど不可能です。しかし,ほかの選択肢をうまく消去できれば,この選択肢が何とか残るというスタイルの問題です。
それでは,ほかの選択肢も確認していきましょう。
確実に消去できるのは,以下の2つです。
2 リーダーシップとは,組織の理念やあるべき姿を示し,個人や集団を統率し,導くことであり,部下に対する配慮やネットワークづくりといったものは含まれない。
5 フィードラー理論によれば,リーダーとメンバーの関係が良好で,仕事の内容・手順が明確な場合は,「タスク志向型」のリーダーより,「人間関係志向型」のリーダーの方が,よい業績が得られるとした。
2 リーダーシップとは,組織の理念やあるべき姿を示し,個人や集団を統率し,導くことであり,部下に対する配慮やネットワークづくりといったものは含まれない。
これが不正解だと判断できるポイントは,「含まれない」という表現が含まれた選択肢は,正解になりにくい傾向があることです。
この選択肢を国試の常連さんであるPM理論に当てはめて考えてみたいと思います。
部下に対する配慮は,M機能(集団維持機能)に当たります。
ネットワークづくりは,クライエントのニーズを充足するために行うと考えると,PM理論では,P機能(目標達成機能)に当たります。
いずれもリーダーシップに含まれます。
5 フィードラー理論によれば,リーダーとメンバーの関係が良好で,仕事の内容・手順が明確な場合は,「タスク志向型」のリーダーより,「人間関係志向型」のリーダーの方が,よい業績が得られるとした。
フィードラー理論では,人間関係が良好,タスク内容が単純な場合は,タスク志向型の方が良い業績を得られるとしています。
しかし,フィードラー理論は,コンティンジェンシー理論ですから,ここまでの知識がなくても,リーダーシップスタイルには,決まった型がないという理解をしていれば,消去できることでしょう。
実際にこの後に,フィードラー理論は何回か出題されていますが,ここまで詳細な出題はされたことがありません。
1 リーダーシップとは,組織の上位者が,下位にある個人や集団に対して影響を及ぼして,組織目標の達成を促すプロセスである。
リーダーシップのイメージは,上位者から下位者に対するものである,思われがちです。しかし,実際には,メンバー同士,下位者から上位者,部門間,など様々なリーダーシップが存在します。
3 リーダーシップは,「行動」からではうまく説明できず,それを発揮する人の能力・資質などの「特性」に着目する方がよく説明できる。
この問題で正解にたどりつくために,最も重要な選択肢です。
前説のように,リーダーシップ研究には「特性理論」と「行動理論」があります。
特性理論ではリーダーシップをうまく説明できなかったために,行動理論が誕生しました。
この選択肢がうまく消去できれば,
4 オハイオ州立大学の研究によれば,リーダーシップ行動は「構造づくり」と「配慮」から説明でき,「構造づくり」と「配慮」の両方が高いリーダーの下で,メンバーの業績度と満足度が高まる可能性が高いとした。
が残って,正解することができます。
オハイオ州立大学研究の特徴は,ここで述べられているように「構造づくり」(ゴールに至る道筋をつくることなど)と「配慮」を適切に行うリーダーが良いリーダーシップであるところです。
ここから創造できると思いますが,オハイオ州立大学研究は,コンティンジェンシー理論に含まれません。
<今日の一言>
第23回国試で出題されたオハイオ州立大学研究に関する問題は,時を超えて,第31回国試では
2 フィードラー理論に代表される「条件適合理論」において,リーダーの行動は「構造づくり」と「配慮」に集約される。
と出題されました。
先述のように,オハイオ州立大学研究は,コンティンジェンシー理論ではありません。
2019年8月16日金曜日
福祉サービスの組織と経営に係る基礎理論~リーダーシップ理論~PM理論
リーダーシップ理論は,第22回,第23回,第26回,第28回,第29回,第31回国試に出題されています。
出題確率は,60%!!
かなり高率です。
リーダーシップ理論には,3つの流れがあります。
①特性理論
②行動理論
③状況適合理論(コンティンジェンシー理論)
特性理論は,昔のリーダーシップ理論です。
端的に言えば,優れた能力が持つ者がリーダーとなる。
リーダーシップは,生得的だというものです。
優れたリーダーはどのような資質を持っているのか,ということを研究していきます。
しかし,結論は出ることなく,特性理論にとって代わったのが「行動理論」です。
この理論では,優れたリーダーは資質によるものではなく,行動が優れていると考えます。
PM理論,レヴィンらのリーダーシップ理論,マネジリアル・グリッドなどが行動理論となります。
行動理論の特徴は,優れたリーダーシップ行動は「〇〇だ」と提示していることです。
行動理論をもう一歩進めたものが「状況適合理論(コンティンジェンシー理論)」です。
これは,特定のリーダーシップ行動が優れているとするとするのではなく,適切なリーダーシップ行動は,状況によって変わると考えるものです。
フィードラー理論,SL理論,パスゴール理論などがコンティンジェンシー理論となります。
コンティンジェンシー理論の特徴は,先述のように,適切なリーダーシップ行動は状況によって変わるものなので,優れたリーダーシップ行動は「〇〇だ」とは言いません。
今回は,数あるリーダーシップ理論のうちのPM理論を取り上げます。
この理論の提唱者は,大阪大学教授などを務められた三隅二不二先生(故人)です。
リーダーシップ行動の2つの側面に着目したものです。
P行動(目標達成に向けた行動)=P機能
M行動(集団維持に向けた行動)=M機能
PM理論では,それぞれの行動の強弱によって,pm型,Pm型,pM型,PM型に分類し,そのうちP行動もM行動も強いPM型のリーダーシップが最も優れているとされています。
それでは今日の問題です。
第22回・問題114 リーダーシップに関する次の記述のうち,正しいものを一つ選びなさい。
1 三隅二不二によれば,リーダーシップM行動は,集団の目標達成に志向したリーダーシップ行動である。
2 三隅二不二によれば,リーダーシップP行動は,集団や組織の中で生じた人間関係の緊張を解消するリーダーシップ行動である。
3 三隅二不二のリーダーシップPM論によれば,一つのリーダーシップの行動には,その程度の相違はあっても,PとMが同時に含まれている。
4 フィードラー(Fiedler,F.E.)によれば,有効なリーダーシップのスタイルは,達成すべき課題の構造や,リーダーとメンバーの関係には影響されないことが望ましい。
5 ヴェーバー(Weber,M.)によれば,すべてのリーダーシップにはカリスマ性が必要である。
この問題は,現在のカリキュラムの第1回の国試である第22回に出題されたものです。
「福祉サービスの組織と経営」は,現在のカリキュラムで加わった科目なので,どんな問題3が出題されるのかわからず,この時受験した人はとても大変だったと思います。
正解は,選択3
3 三隅二不二のリーダーシップPM論によれば,一つのリーダーシップの行動には,その程度の相違はあっても,PとMが同時に含まれている。
リーダーシップ理論は,旧カリキュラム時代には心理学などで出題されていました。
結局,正解だったのは,旧カリ時代も出題されていたPM理論です。
PM理論では,それぞれの行動の強弱によって,pm型,Pm型,pM型,PM型に分類しますが,いずれにもPもMも含まれています。
とんちみたいな問題だと思いませんか?
それでは,ほかの選択肢はどこが間違っているのかを確認していきましょう。
1 三隅二不二によれば,リーダーシップM行動は,集団の目標達成に志向したリーダーシップ行動である。
目標達成は,P行動です。
集団維持が,M行動です。
Pは,performanceのP
Mは,maintenanceのM
パフォーマンス=目標達成機能だと覚えるのは難しいと思いますが,メンテナンス=集団維持機能は覚えやすいでしょう。
2 三隅二不二によれば,リーダーシップP行動は,集団や組織の中で生じた人間関係の緊張を解消するリーダーシップ行動である。
人間関係の緊張を解消するのは,集団維持機能だと思えるので,M行動です。
4 フィードラー(Fiedler,F.E.)によれば,有効なリーダーシップのスタイルは,達成すべき課題の構造や,リーダーとメンバーの関係には影響されないことが望ましい。
この問題では,この選択肢が最も難しかったものだと思います。
フィードラー・・・???
と思ってしまったら,深みにはまります。
フィードラー理論が状況適合理論(コンティンジェンシー理論)であるということがわからなくても,この文章を慎重に読めば,正解になりにくいものであることに気が付きます。
というのは,「望ましい」「望ましくない」という表現です。
この表現がされる選択肢は,要注意なのです。
5 ヴェーバー(Weber,M.)によれば,すべてのリーダーシップにはカリスマ性が必要である。
ヴェーバーは,近年は,ウェーバーと出題されるようになってきました。
ウェーバーの支配システムの類型は
伝統的支配
カリスマ的支配
合法的支配
の3つの類型があります。
特別な資質によるリーダーシップ,ここでいうカリスマ性は,伝統的支配とカリスマ的支配です。
合法的支配は,ルールによる支配です。
カリスマ性は必要とされません。
<今日の一言>
この問題は,先述のように,現行カリキュラムの初回のものです。
そのため,かなり慎重に問題を作ったのではないかと思います。
口の悪い人は,国試は重箱の隅をつつくような出題がされる,という人がいます。
重箱の隅をつつくような出題があったとしたら,それは正解にならないものです。
もしそれが正解になるとしたら,ほかの選択肢を消去できるものです。
ほかの選択肢が消去できないものだったとしたら,それは誰も正解できないものです。
合格・不合格には影響を与えるものではありません。
今日の問題は,ちょこっととんちのような内容のものが正解になりましたが,第1回にふさわしい問題だと思います。
その後のリーダーシップ理論に関する出題のすべての方向性を定めたものとなりました。
ここから少しずつ変化していき,第31回国試に至ります。
出題確率は,60%!!
かなり高率です。
リーダーシップ理論には,3つの流れがあります。
①特性理論
②行動理論
③状況適合理論(コンティンジェンシー理論)
特性理論は,昔のリーダーシップ理論です。
端的に言えば,優れた能力が持つ者がリーダーとなる。
リーダーシップは,生得的だというものです。
優れたリーダーはどのような資質を持っているのか,ということを研究していきます。
しかし,結論は出ることなく,特性理論にとって代わったのが「行動理論」です。
この理論では,優れたリーダーは資質によるものではなく,行動が優れていると考えます。
PM理論,レヴィンらのリーダーシップ理論,マネジリアル・グリッドなどが行動理論となります。
行動理論の特徴は,優れたリーダーシップ行動は「〇〇だ」と提示していることです。
行動理論をもう一歩進めたものが「状況適合理論(コンティンジェンシー理論)」です。
これは,特定のリーダーシップ行動が優れているとするとするのではなく,適切なリーダーシップ行動は,状況によって変わると考えるものです。
フィードラー理論,SL理論,パスゴール理論などがコンティンジェンシー理論となります。
コンティンジェンシー理論の特徴は,先述のように,適切なリーダーシップ行動は状況によって変わるものなので,優れたリーダーシップ行動は「〇〇だ」とは言いません。
今回は,数あるリーダーシップ理論のうちのPM理論を取り上げます。
この理論の提唱者は,大阪大学教授などを務められた三隅二不二先生(故人)です。
リーダーシップ行動の2つの側面に着目したものです。
P行動(目標達成に向けた行動)=P機能
M行動(集団維持に向けた行動)=M機能
PM理論では,それぞれの行動の強弱によって,pm型,Pm型,pM型,PM型に分類し,そのうちP行動もM行動も強いPM型のリーダーシップが最も優れているとされています。
それでは今日の問題です。
第22回・問題114 リーダーシップに関する次の記述のうち,正しいものを一つ選びなさい。
1 三隅二不二によれば,リーダーシップM行動は,集団の目標達成に志向したリーダーシップ行動である。
2 三隅二不二によれば,リーダーシップP行動は,集団や組織の中で生じた人間関係の緊張を解消するリーダーシップ行動である。
3 三隅二不二のリーダーシップPM論によれば,一つのリーダーシップの行動には,その程度の相違はあっても,PとMが同時に含まれている。
4 フィードラー(Fiedler,F.E.)によれば,有効なリーダーシップのスタイルは,達成すべき課題の構造や,リーダーとメンバーの関係には影響されないことが望ましい。
5 ヴェーバー(Weber,M.)によれば,すべてのリーダーシップにはカリスマ性が必要である。
この問題は,現在のカリキュラムの第1回の国試である第22回に出題されたものです。
「福祉サービスの組織と経営」は,現在のカリキュラムで加わった科目なので,どんな問題3が出題されるのかわからず,この時受験した人はとても大変だったと思います。
正解は,選択3
3 三隅二不二のリーダーシップPM論によれば,一つのリーダーシップの行動には,その程度の相違はあっても,PとMが同時に含まれている。
リーダーシップ理論は,旧カリキュラム時代には心理学などで出題されていました。
結局,正解だったのは,旧カリ時代も出題されていたPM理論です。
PM理論では,それぞれの行動の強弱によって,pm型,Pm型,pM型,PM型に分類しますが,いずれにもPもMも含まれています。
とんちみたいな問題だと思いませんか?
それでは,ほかの選択肢はどこが間違っているのかを確認していきましょう。
1 三隅二不二によれば,リーダーシップM行動は,集団の目標達成に志向したリーダーシップ行動である。
目標達成は,P行動です。
集団維持が,M行動です。
Pは,performanceのP
Mは,maintenanceのM
パフォーマンス=目標達成機能だと覚えるのは難しいと思いますが,メンテナンス=集団維持機能は覚えやすいでしょう。
2 三隅二不二によれば,リーダーシップP行動は,集団や組織の中で生じた人間関係の緊張を解消するリーダーシップ行動である。
人間関係の緊張を解消するのは,集団維持機能だと思えるので,M行動です。
4 フィードラー(Fiedler,F.E.)によれば,有効なリーダーシップのスタイルは,達成すべき課題の構造や,リーダーとメンバーの関係には影響されないことが望ましい。
この問題では,この選択肢が最も難しかったものだと思います。
フィードラー・・・???
と思ってしまったら,深みにはまります。
フィードラー理論が状況適合理論(コンティンジェンシー理論)であるということがわからなくても,この文章を慎重に読めば,正解になりにくいものであることに気が付きます。
というのは,「望ましい」「望ましくない」という表現です。
この表現がされる選択肢は,要注意なのです。
5 ヴェーバー(Weber,M.)によれば,すべてのリーダーシップにはカリスマ性が必要である。
ヴェーバーは,近年は,ウェーバーと出題されるようになってきました。
ウェーバーの支配システムの類型は
伝統的支配
カリスマ的支配
合法的支配
の3つの類型があります。
特別な資質によるリーダーシップ,ここでいうカリスマ性は,伝統的支配とカリスマ的支配です。
合法的支配は,ルールによる支配です。
カリスマ性は必要とされません。
<今日の一言>
この問題は,先述のように,現行カリキュラムの初回のものです。
そのため,かなり慎重に問題を作ったのではないかと思います。
口の悪い人は,国試は重箱の隅をつつくような出題がされる,という人がいます。
重箱の隅をつつくような出題があったとしたら,それは正解にならないものです。
もしそれが正解になるとしたら,ほかの選択肢を消去できるものです。
ほかの選択肢が消去できないものだったとしたら,それは誰も正解できないものです。
合格・不合格には影響を与えるものではありません。
今日の問題は,ちょこっととんちのような内容のものが正解になりましたが,第1回にふさわしい問題だと思います。
その後のリーダーシップ理論に関する出題のすべての方向性を定めたものとなりました。
ここから少しずつ変化していき,第31回国試に至ります。
2019年8月15日木曜日
経営に関する基礎知識~経営戦略は長期ビジョン
「戦略」(strategy=ストラテジー)はもともと軍事用語でしたが,それをビジネスの世界に持ち込んだのは,アンゾフ(Ansoff,I.)です。
その業績で,アンゾフは「経営戦略の父」と呼ばれるそうです。
さて,経営戦略を復習してみたいと思います。
経営戦略は,長期ビジョンに立って作られます。
経営戦術は,場面に合わせた作戦です。
二の手,三の手も同時に作られることがあります。
ビジネスの世界では,失敗しても命まで取られることありませんが,実際の戦争では,先述の失敗は死ぬことを意味します。
失敗は許されません。
それでは,今日の問題です。
第24回・問題114 福祉サービス提供組織の経営を考える上で基礎となる戦略や経営理論に関する次の記述のうち,正しいものを一つ選びなさい。
1 アンゾフ(Ansoff,I.)は,経営における意思決定を,日常業務的意思決定,管理的意思決定,戦略的意思決定の3層に区分した。
2 チャンドラー(Chandler.A.)は,経営戦略を,短期の基本目標を定めた上で,その目標を実現するために行動を起こしたり,経営資源を配分したりすることと定義した。
3 アンドルーズ(Amdrews,K.)は,戦略を形成するプロセスとして,外部環境の機会と脅威を重要視し,組織内部の弱みや強みについての評価は必要でないとした。
4 ミンツバーグ(Mintzberg.H.)は,戦略は,当初に明確に意図する必要があり,当初に明確に意図しなかったものが実現しても,それは戦略ではないとした。
5 ユヌス(Yunus,M.)は,「ソーシャルビジネス」の利益は,不測の事態に備えるために必要であるが,利益をビジネスの拡大に再投資してはならないとした。
人の名前が並んでいます。
こういった問題では,人の名前がわからなければ正解できない,という問題はほとんどありません。
そのため,以下のように読み替えることができます。
1 経営における意思決定は,日常業務的意思決定,管理的意思決定,戦略的意思決定の3層に区分することができる。
2 経営戦略は,短期の基本目標を定めた上で,その目標を実現するために行動を起こしたり,経営資源を配分したりすることをいう。
3 戦略を形成するプロセスでは,外部環境の機会と脅威を重要視し,組織内部の弱みや強みについての評価は必要ではない。
4 戦略は,当初に明確に意図する必要があり,当初に明確に意図しなかったものが実現しても,それは戦略ではない。
5 「ソーシャルビジネス」の利益は,不測の事態に備えるために必要であるが,利益をビジネスの拡大に再投資してはならない。
人の名前を合わせて出題する理由は,問題にあいまいさを生じさせないためです。
しかしそれは,国試という性格のためであり,受験生には関係ないことです。
そういった意味で,知らない人名が出題されても,それに動揺しなければ正解できる糸口を見つけ出せます。
この問題の正解は,
1 アンゾフ(Ansoff,I.)は,経営における意思決定を,日常業務的意思決定,管理的意思決定,戦略的意思決定の3層に区分した。
しかしこれを正解にするすることは,難しいです。しかしほかの選択肢を消去していくことでこの選択肢が残ります。
国試は2種類の問題があります。
1.正解はこれしかないと思える問題
2.ほかの選択肢を消去していくことで,正解できる問題
今日の問題は,2のタイプです。
1のタイプは,ほかの選択肢を消去することができず,というか,意味不明のものもあり,正解の選択肢を選ぶことができなければ,正解することはほとんどできません。
それでは,ほかの選択肢はどこが間違っているのか確認していきましょう。
2 チャンドラー(Chandler.A.)は,経営戦略を,短期の基本目標を定めた上で,その目標を実現するために行動を起こしたり,経営資源を配分したりすることと定義した。
戦略は,長期ビジョンに立ったものです。
3 アンドルーズ(Amdrews,K.)は,戦略を形成するプロセスとして,外部環境の機会と脅威を重要視し,組織内部の弱みや強みについての評価は必要でないとした。
経営資源を分析する手法には,SWOT分析があります。
SWOT分析を知らなくても,文章的に消去できるものでしょう。
〇〇は含まれるが,△△は含まれない。
というタイプの文章は,間違い選択肢を作るときの常套手段です。
この選択肢では,「組織内部の弱みや強みについての評価は必要でないとした」の部分が「△△は含まれない」に当たります。必要でないものをわさわざ述べる必然性がありません。
それなのにこのような文章を出題することになる理由は,もともとは「含まれる」という文章を「含まれない」に変更して間違い選択肢を生成しているからです。
こういったところに気がつけば,つまらないミスはかなり減らすことができるようになるでしょう。
4 ミンツバーグ(Mintzberg.H.)は,戦略は,当初に明確に意図する必要があり,当初に明確に意図しなかったものが実現しても,それは戦略ではないとした。
これも選択肢3と同じく
〇〇は含まれるが,△△は含まれない。
というロジックで組み立てられた文章です。
5 ユヌス(Yunus,M.)は,「ソーシャルビジネス」の利益は,不測の事態に備えるために必要であるが,利益をビジネスの拡大に再投資してはならないとした。
これも選択肢3と4と同じく
〇〇は含まれるが,△△は含まれない。
というロジックで組み立てられた文章です。
ということで選択肢1が残ります。
この問題で,正解にたどり着くポイントは,戦略は長期のものである,ということを知っていることです。
これはとても重要なことです。
<今日の一言>
先述のように,国試には
1.正解はこれしかないと思える問題
2.ほかの選択肢を消去していくことで,正解できる問題
のタイプがあります。
今日の問題は,2のタイプです。
このタイプの問題は,「解けた」という実感がほとんど得られることはありません。
試験が終わってから,家路までの足取りが重くなる理由は,こういった問題が出題されるからです。
多くの問題は,この2つのタイプの折衷的なものです。
折衷タイプは,1のタイプと違うのは,間違い選択肢も間違っているポイントがわかることです。
こういった問題が多ければ,国試が終わったあとに解けた実感が得られますが,そうではないのが国試の難しいところです。
2のタイプは,解答速報の模範解答を見て,初めて正解できたことを知ります。
2のタイプが多ければ,手ごたえがないので,国試が終わったあとには「難しかった。落ちた」という気持ちになります。
午前中の科目の共通科目には,こういったタイプの問題が多くあります。
解けた実感がなくても,気持ちを切り替えて,午後の問題に取り組むことが大切です。
その業績で,アンゾフは「経営戦略の父」と呼ばれるそうです。
さて,経営戦略を復習してみたいと思います。
経営戦略は,長期ビジョンに立って作られます。
経営戦術は,場面に合わせた作戦です。
二の手,三の手も同時に作られることがあります。
ビジネスの世界では,失敗しても命まで取られることありませんが,実際の戦争では,先述の失敗は死ぬことを意味します。
失敗は許されません。
それでは,今日の問題です。
第24回・問題114 福祉サービス提供組織の経営を考える上で基礎となる戦略や経営理論に関する次の記述のうち,正しいものを一つ選びなさい。
1 アンゾフ(Ansoff,I.)は,経営における意思決定を,日常業務的意思決定,管理的意思決定,戦略的意思決定の3層に区分した。
2 チャンドラー(Chandler.A.)は,経営戦略を,短期の基本目標を定めた上で,その目標を実現するために行動を起こしたり,経営資源を配分したりすることと定義した。
3 アンドルーズ(Amdrews,K.)は,戦略を形成するプロセスとして,外部環境の機会と脅威を重要視し,組織内部の弱みや強みについての評価は必要でないとした。
4 ミンツバーグ(Mintzberg.H.)は,戦略は,当初に明確に意図する必要があり,当初に明確に意図しなかったものが実現しても,それは戦略ではないとした。
5 ユヌス(Yunus,M.)は,「ソーシャルビジネス」の利益は,不測の事態に備えるために必要であるが,利益をビジネスの拡大に再投資してはならないとした。
人の名前が並んでいます。
こういった問題では,人の名前がわからなければ正解できない,という問題はほとんどありません。
そのため,以下のように読み替えることができます。
1 経営における意思決定は,日常業務的意思決定,管理的意思決定,戦略的意思決定の3層に区分することができる。
2 経営戦略は,短期の基本目標を定めた上で,その目標を実現するために行動を起こしたり,経営資源を配分したりすることをいう。
3 戦略を形成するプロセスでは,外部環境の機会と脅威を重要視し,組織内部の弱みや強みについての評価は必要ではない。
4 戦略は,当初に明確に意図する必要があり,当初に明確に意図しなかったものが実現しても,それは戦略ではない。
5 「ソーシャルビジネス」の利益は,不測の事態に備えるために必要であるが,利益をビジネスの拡大に再投資してはならない。
人の名前を合わせて出題する理由は,問題にあいまいさを生じさせないためです。
しかしそれは,国試という性格のためであり,受験生には関係ないことです。
そういった意味で,知らない人名が出題されても,それに動揺しなければ正解できる糸口を見つけ出せます。
この問題の正解は,
1 アンゾフ(Ansoff,I.)は,経営における意思決定を,日常業務的意思決定,管理的意思決定,戦略的意思決定の3層に区分した。
しかしこれを正解にするすることは,難しいです。しかしほかの選択肢を消去していくことでこの選択肢が残ります。
国試は2種類の問題があります。
1.正解はこれしかないと思える問題
2.ほかの選択肢を消去していくことで,正解できる問題
今日の問題は,2のタイプです。
1のタイプは,ほかの選択肢を消去することができず,というか,意味不明のものもあり,正解の選択肢を選ぶことができなければ,正解することはほとんどできません。
それでは,ほかの選択肢はどこが間違っているのか確認していきましょう。
2 チャンドラー(Chandler.A.)は,経営戦略を,短期の基本目標を定めた上で,その目標を実現するために行動を起こしたり,経営資源を配分したりすることと定義した。
戦略は,長期ビジョンに立ったものです。
3 アンドルーズ(Amdrews,K.)は,戦略を形成するプロセスとして,外部環境の機会と脅威を重要視し,組織内部の弱みや強みについての評価は必要でないとした。
経営資源を分析する手法には,SWOT分析があります。
SWOT分析を知らなくても,文章的に消去できるものでしょう。
〇〇は含まれるが,△△は含まれない。
というタイプの文章は,間違い選択肢を作るときの常套手段です。
この選択肢では,「組織内部の弱みや強みについての評価は必要でないとした」の部分が「△△は含まれない」に当たります。必要でないものをわさわざ述べる必然性がありません。
それなのにこのような文章を出題することになる理由は,もともとは「含まれる」という文章を「含まれない」に変更して間違い選択肢を生成しているからです。
こういったところに気がつけば,つまらないミスはかなり減らすことができるようになるでしょう。
4 ミンツバーグ(Mintzberg.H.)は,戦略は,当初に明確に意図する必要があり,当初に明確に意図しなかったものが実現しても,それは戦略ではないとした。
これも選択肢3と同じく
〇〇は含まれるが,△△は含まれない。
というロジックで組み立てられた文章です。
5 ユヌス(Yunus,M.)は,「ソーシャルビジネス」の利益は,不測の事態に備えるために必要であるが,利益をビジネスの拡大に再投資してはならないとした。
これも選択肢3と4と同じく
〇〇は含まれるが,△△は含まれない。
というロジックで組み立てられた文章です。
ということで選択肢1が残ります。
この問題で,正解にたどり着くポイントは,戦略は長期のものである,ということを知っていることです。
これはとても重要なことです。
<今日の一言>
先述のように,国試には
1.正解はこれしかないと思える問題
2.ほかの選択肢を消去していくことで,正解できる問題
のタイプがあります。
今日の問題は,2のタイプです。
このタイプの問題は,「解けた」という実感がほとんど得られることはありません。
試験が終わってから,家路までの足取りが重くなる理由は,こういった問題が出題されるからです。
多くの問題は,この2つのタイプの折衷的なものです。
折衷タイプは,1のタイプと違うのは,間違い選択肢も間違っているポイントがわかることです。
こういった問題が多ければ,国試が終わったあとに解けた実感が得られますが,そうではないのが国試の難しいところです。
2のタイプは,解答速報の模範解答を見て,初めて正解できたことを知ります。
2のタイプが多ければ,手ごたえがないので,国試が終わったあとには「難しかった。落ちた」という気持ちになります。
午前中の科目の共通科目には,こういったタイプの問題が多くあります。
解けた実感がなくても,気持ちを切り替えて,午後の問題に取り組むことが大切です。
2019年8月13日火曜日
経営に関する基礎知識~経営戦略
経営というと現役学生にとっては,とても遠い世界に感じる人もいるかもしれません。
しかし,仕事をしていく中で,必ず経営のことは意識させられることがあると思います。
会社によっては,新入社員研修で社是を何度も復唱させられることもあるでしょう。
社是は,一般的には「経営理念」をいいます。
使命から個人目標までの階層性を図示すると以下のようになります。
「理念」は,方向性を示すもの。
「経営目標」は,理念を具現化していくものです。
左記の図は,上から下へとつながっていきます。
企業を起業する時には,使命(ミッション)があり,その使命や経営理念,経営戦略に賛同した人から資金が集まり,人が集まり,日々の活動になっていきます。
上が長期的で抽象的,下が短期的で具体的なものとなります。
このようになる理由は,例えば,経営戦略を具体的な行動に置き換えるのが経営戦術だからです。
新人研修のときに,社是を復唱させられるのは,日々の行動につながるからです。
会社によっては,使命(ミッション)を復唱させることもあるでしょう。それは,企業の存在価値を表しているからです。
それでは,今日の問題です。
第28回・問題120 経営に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。
1 ミッションは,経営戦略という意味である。
2 経営理念について,現場の職員が知っている必要はない。
3 経営理念を,日常の経営上考慮する必要はない。
4 経営戦略を立てる際には,内部組織の強みや弱みを検討する必要はない。
5 経営目標は,経営理念に沿って示されねばならない。
国試問題としては。下手なつくり方だと思います。
この中の「必要はない」は,すべて消去できてしまいます。
正解は,選択肢5
5 経営目標は,経営理念に沿って示されねばならない。
それでは,ほかの選択肢はどこが間違っているのか,確認していきましょう。
1 ミッションは,経営戦略という意味である。
ミッションは,「使命」で,最も上に位置します。
戦略は英語で,ストラテジーといいます。
国試では,情報ストラテジーという用語が出題されたことがあります。
2 経営理念について,現場の職員が知っている必要はない。
経営理念は「社是」という形で,社員への徹底を図る組織があることでわかるように,現場の職員が知っていることは,極めて重要です。日々の行動につながるからです。
3 経営理念を,日常の経営上考慮する必要はない。
経営理念は,経営戦略,そして具体的な経営戦術として展開されます。
4 経営戦略を立てる際には,内部組織の強みや弱みを検討する必要はない。
内部環境,外部環境を分析するSWOT分析という手法があります。
<今日の一言>
今日の問題のうち
2 経営理念について,現場の職員が知っている必要はない。
3 経営理念を,日常の経営上考慮する必要はない。
4 経営戦略を立てる際には,内部組織の強みや弱みを検討する必要はない。
の3つは,「必要はない」で構成されています。
本当に必要がないものをわざわざ出題する意味はないと思いませんか?
それにもかかわらず,このような出題がされるのは,先に正しい文章を作って,それを否定形にすることで間違い選択肢を生成しているからです。
つまり,これらの元の文章は
2 経営理念について,現場の職員が知っている必要がある。
3 経営理念を,日常の経営上考慮する必要がある。
4 経営戦略を立てる際には,内部組織の強みや弱みを検討する必要がある。
となります。
そう思えれば,残る選択肢は2つ。正解確率は1/2です。
1 ミッションは,経営戦略という意味である。
5 経営目標は,経営理念に沿って示されねばならない。
ミッションがわからなければ,間違うでしょう。
それでも正解確率は1/2です。
選択肢を一つでも多く消去することができたら,正解確率は上がります。
今,勉強を継続していくのはとても大変だと思います。
国試は,正解だとすぐわかる問題はとても少ないです。
多くは,消去法で正解を導き出します。
今勉強していることは,確実に選択肢を消去することにつながっていきます。
しかし,仕事をしていく中で,必ず経営のことは意識させられることがあると思います。
会社によっては,新入社員研修で社是を何度も復唱させられることもあるでしょう。
社是は,一般的には「経営理念」をいいます。
使命から個人目標までの階層性を図示すると以下のようになります。
「理念」は,方向性を示すもの。
「経営目標」は,理念を具現化していくものです。
左記の図は,上から下へとつながっていきます。
企業を起業する時には,使命(ミッション)があり,その使命や経営理念,経営戦略に賛同した人から資金が集まり,人が集まり,日々の活動になっていきます。
上が長期的で抽象的,下が短期的で具体的なものとなります。
このようになる理由は,例えば,経営戦略を具体的な行動に置き換えるのが経営戦術だからです。
新人研修のときに,社是を復唱させられるのは,日々の行動につながるからです。
会社によっては,使命(ミッション)を復唱させることもあるでしょう。それは,企業の存在価値を表しているからです。
それでは,今日の問題です。
第28回・問題120 経営に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。
1 ミッションは,経営戦略という意味である。
2 経営理念について,現場の職員が知っている必要はない。
3 経営理念を,日常の経営上考慮する必要はない。
4 経営戦略を立てる際には,内部組織の強みや弱みを検討する必要はない。
5 経営目標は,経営理念に沿って示されねばならない。
国試問題としては。下手なつくり方だと思います。
この中の「必要はない」は,すべて消去できてしまいます。
正解は,選択肢5
5 経営目標は,経営理念に沿って示されねばならない。
それでは,ほかの選択肢はどこが間違っているのか,確認していきましょう。
1 ミッションは,経営戦略という意味である。
ミッションは,「使命」で,最も上に位置します。
戦略は英語で,ストラテジーといいます。
国試では,情報ストラテジーという用語が出題されたことがあります。
2 経営理念について,現場の職員が知っている必要はない。
経営理念は「社是」という形で,社員への徹底を図る組織があることでわかるように,現場の職員が知っていることは,極めて重要です。日々の行動につながるからです。
3 経営理念を,日常の経営上考慮する必要はない。
経営理念は,経営戦略,そして具体的な経営戦術として展開されます。
4 経営戦略を立てる際には,内部組織の強みや弱みを検討する必要はない。
内部環境,外部環境を分析するSWOT分析という手法があります。
<今日の一言>
今日の問題のうち
2 経営理念について,現場の職員が知っている必要はない。
3 経営理念を,日常の経営上考慮する必要はない。
4 経営戦略を立てる際には,内部組織の強みや弱みを検討する必要はない。
の3つは,「必要はない」で構成されています。
本当に必要がないものをわざわざ出題する意味はないと思いませんか?
それにもかかわらず,このような出題がされるのは,先に正しい文章を作って,それを否定形にすることで間違い選択肢を生成しているからです。
つまり,これらの元の文章は
2 経営理念について,現場の職員が知っている必要がある。
3 経営理念を,日常の経営上考慮する必要がある。
4 経営戦略を立てる際には,内部組織の強みや弱みを検討する必要がある。
となります。
そう思えれば,残る選択肢は2つ。正解確率は1/2です。
1 ミッションは,経営戦略という意味である。
5 経営目標は,経営理念に沿って示されねばならない。
ミッションがわからなければ,間違うでしょう。
それでも正解確率は1/2です。
選択肢を一つでも多く消去することができたら,正解確率は上がります。
今,勉強を継続していくのはとても大変だと思います。
国試は,正解だとすぐわかる問題はとても少ないです。
多くは,消去法で正解を導き出します。
今勉強していることは,確実に選択肢を消去することにつながっていきます。
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