2022年9月15日木曜日

丁度可知差異~物理心理学

丁度可知差異は,超難読です。

 

ちょうどかちさい

 

と読みます。

 

光や音などの刺激,重さなどの違いを感じ取ることができる最小の違いが,丁度可知差異といいます。

 

厳密に言えば異なるのかもしれませんが,弁別閾(べんべついき)とも言います。

 

例えば,紙の重さで,100グラムの紙の束に1枚加えても重さの違いを感じませんが,2枚,3枚と重ねていき,5枚加えたところで重さの違いを感じ取ることができたとします。1枚1グラムだとすれば,100グラムに対して,5グラムが丁度可知差異となります。

 

ところで,100グラムの場合,5グラムが丁度可知差異だとしたら,1キログラムの紙の場合の丁度可知差異は何グラムになると思いますか。

 

「重さと丁度可知差異は比例する」と考える「ヴェーバーの法則」によると,1キログラムの場合の丁度可知差異は,50グラムになります。

 

このヴェーバーは,社会学のM.ヴェーバーとは別人です。「ヴェーバーの法則」は社会福祉士の国家試験で出題されたことがありません。

 

さて,それでは今日の問題です。

 

第22回・問題8 感覚・知覚に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。

1 口を閉じた状態で,眼球を軽く圧迫すると明るさの変化を感じるのは,眼球圧迫が視覚に対する適刺激だからである。

2 2つの刺激の明るさや大きさなどの物理的特性の違いを区別することができる最小差異を,刺激閾という。

3 朝,暗い部屋で目覚めたときに,カーテンを開けると非常にまぶしいが,しばらく経つと普通に見えるようになるのは,暗順応の働きである。

4 滝をじっと見つめていて,その後に他の風景に目を向けると上方向に動いていように見えるのは,視覚の体制化とよばれる現象である。

5 映画のフィルムは1コマごとの静止画像なのに,連続して提示すると動いて見るのは,仮現運動によるものである。

 

さすがにもう慣れてきたのではないでしょうか。

 

正解は,選択肢5です。

5 映画のフィルムは1コマごとの静止画像なのに,連続して提示すると動いて見るのは,仮現運動によるものである。

 

仮現運動は,この問題でわかるように,映画の原理です。

 

パソコンで映像のエンコードをしている人はなじみがあると思いますが,デジタルの映像データも実は仮現運動を応用したものです。

 

フレームレートと呼ばれる1秒間に何コマの画像で構成するかの単位があります。

 

コマ数が少なければ,動きがカクカクした映像になり,コマ数が多くなれば,動きがスムーズな映像になります。

 

コマ数が多くなれば,データが大きくなります。

デジタルの世界でも仮現運動が活用されているのがすごいと思います。

 

仮現運動ではありませんが,デジタルの世界では,MP3という音楽データも心理学を活用してデータを小さくしています。

 

それでは,ほかの選択肢の解説です。

 

1 口を閉じた状態で,眼球を軽く圧迫すると明るさの変化を感じるのは,眼球圧迫が視覚に対する適刺激だからである。


視覚に対する適刺激は,光です。

これと同じ文章は何度も出題されていますが,一度も正解になったことはありません。

 

2 2つの刺激の明るさや大きさなどの物理的特性の違いを区別することができる最小差異を,刺激閾という。

 

2つの刺激の明るさや大きさなどの物理的特性の違いを区別することができる最小差異は,今日のテーマである丁度可知差異であることがわかると思います。

 

それでは,刺激閾とは何だと思いますか。

 

刺激閾は,刺激を感じ取ることができる最小値です。

 

音の場合は,無音から徐々に音を大きくしていって,音を感じることができる値が刺激閾となります。

 

光の場合も,真っ暗の状態から光を徐々に強くしていって,光を感じることができる値が刺激閾となります。

 

丁度可知差異は,もともと刺激を感じていて,その刺激の変化を感じることができる最小値です。

 

丁度可知差異と刺激閾の違いがわかりましたか。

 

3 朝,暗い部屋で目覚めたときに,カーテンを開けると非常にまぶしいが,しばらく経つと普通に見えるようになるのは,暗順応の働きである。

 

まぶしいのに目が慣れるのは,明順応です。暗順応は暗さに目が慣れることです。

 

4 滝をじっと見つめていて,その後に他の風景に目を向けると上方向に動いていように見えるのは,視覚の体制化とよばれる現象である。

 

滝をじっと見つめていて,その後に他の風景に目を向けると上方向に動いていように見えるのは,運動残効の代表例である「滝の錯視」と呼ばれるものです。

2022年9月14日水曜日

明順応と暗順応

今回は,明順応と暗順応を取り上げます。


明順応は,目が明るさに慣れることをいいます。

暗いところから明るいところに行くと最初はまぶしくて何も見えませんが,徐々に目が慣れて見えてくるようになります。これが明順応です。


暗順応は,目が暗さに慣れることをいいます。

明るいところから暗いところに行くと最初は暗くて何も見えませんが,徐々に目が慣れて見えてくるようになります。これが暗順応です。


それでは,今日の問題です。


第24回・問題8 次の記述のうち,知覚の恒常性を説明する日常における事例として,最も適切なものを1つ選びなさい。

1 映画やテレビの動画,ネオンサインのように,視覚刺激の提示時間間隔に適度な時間差がある場合,両刺激は連続し動いているように見える。

2 左側に+,右側に黒色で塗りつぶした円の記号が措かれた用紙を,左目を閉じて右目で+の記号を見つめ,用紙を前後に動かすと,あるところで黒円が消失する。

3 暗闇で過ごす時間が長くなるにつれて瞳孔が拡大し,見える範囲が次第に狭まって,初め見えなかったものが見えるようになる。

4 渦巻き模様を右方向に回転すると模様全体が拡大するように見えるが,しばらく観察した後で渦巻きの回転を止めると,今までとは逆の方向の回転が見られる。

5 斜め上からコーヒーカップのふちを見たとき,その人の網膜像は楕円であるにもかかわらず,その人は「そのコーヒーカップのふちは円形をしている」と見る。


知覚の恒常性は,前回取り上げました。


知覚の恒常性には,いくつかの種類がありますが,社会福祉士の国家試験に出題されているのは,大きさの恒常性と形の恒常性です。


大きさの恒常性は,網膜に映るものの大きさが異なっても同じ大きさに知覚する現象です。

形の恒常性は,網膜に映る形が変わっても同じ形のものとして認知することです。


つまり正解は,選択肢5です。

5 斜め上からコーヒーカップのふちを見たとき,その人の網膜像は楕円であるにもかかわらず,その人は「そのコーヒーカップのふちは円形をしている」と見る。


これは,知覚の恒常性のうちの形の恒常性です。


それでは,ほかのものも解説します。


1 映画やテレビの動画,ネオンサインのように,視覚刺激の提示時間間隔に適度な時間差がある場合,両刺激は連続し動いているように見える。


本来は止まっているものが,動いて見えるのは,仮現運動です。


2 左側に+,右側に黒色で塗りつぶした円の記号が措かれた用紙を,左目を閉じて右目で+の記号を見つめ,用紙を前後に動かすと,あるところで黒円が消失する。


これは,この時しか出題されたことはありません。何のことを言っていると思いますか?


実は盲点のことです。国家試験は,このように勉強したことがないものを含めて出題します。


この時慌てて答えを出すと間違えることとなるので,ほかの選択肢に正解がないか,慎重に考えてみるようにすることが大切です。


3 暗闇で過ごす時間が長くなるにつれて瞳孔が拡大し,見える範囲が次第に狭まって,初め見えなかったものが見えるようになる。


これが今日のテーマの一つである「暗順応」です。


この出題でわかるように,明順応と暗順応が起こるのは,光の量によって瞳孔が開いたり閉じたりして調節しているためです。


4 渦巻き模様を右方向に回転すると模様全体が拡大するように見えるが,しばらく観察した後で渦巻きの回転を止めると,今までとは逆の方向の回転が見られる。


これは,運動残効といいます。運動残効の例として有名な「渦巻効果」と呼ばれるものです。


国家試験では,運動残効の例として,以下のようものが出題されています。


・滝をじっと見つめていて,その後に他の風景に目を向けると上方向に動いていように見える。


これは,運動残効の中でも「滝の錯視」と呼ばれる有名な現象です。


2022年9月13日火曜日

感覚・知覚(認知心理学)

認知心理学は,脳の情報処理を明らかにする学問領域です。


感覚と知覚は出題頻度が高いので,確実に覚えておきたいものです。


覚えるものの種類は多いですが,試験に出るものの種類は固定的です。


それでは,実際の問題をみてみたいと思います。


第31回・問題9 感覚・知覚に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。

1 体制化における閉合の要因は,錯視の1つである。

2 形として知覚される部分を地,背景となる部分を図という。

3 仮現運動は,知覚的補完の1つである。

4 大きさの恒常性とは,網膜に映し出されたとおりに大きさを知覚することである。

5 圧刺激によって光を感じ取る場合,この刺激を適刺激という。


かなり手ごわいです。


少なくとも日本語的には答えを探すことはほとんどできません。

こんな問題を見ると,国家試験は難しいなぁ,と思うかもしれません。


難しいものですが,こういった出題頻度が高いものを確実に覚えることが得点力を上げることにつながります。


それでは解説です。


1 体制化における閉合の要因は,錯視の1つである。


閉合は,知覚の体制化の一つであることは適切です。


知覚の体制化とは,本来は意味のないものを意味のあるものとして知覚することをいいます。


閉合の例としてよく使われるのは,


( ) ( ) ( )

【 】 【 】 【 】


といったものです。形の向きによって,閉じているように見えます。不思議です。これがまとまりのあるものとして見えるという意味です。


錯視は,本来の形とは異なって見えることです。脳が誤動作(勘違い)するために生じる現象です。本当は直線なのに,曲線に見える,などの例があります。


ネットで錯視の例を検索するとたくさん出てくるので,実際に見てみると良いでしょう。


2 形として知覚される部分を地,背景となる部分を図という。


形として知覚される部分は,「図」

背景となる部分は「地」


このように聞けば,何となくわかるように思いませんか。


この知覚によって,物の形を認識します。


3 仮現運動は,知覚的補完の1つである。


これが正解です。


仮現運動は,静止している画像が連続すると,動いて見える現象です。原始的なものとしては,パラパラ漫画があります。


知覚的補完は,本来は見えていないものを,今までの経験を脳が覚えていて,きっとこうだろうと脳が処理することです。


パラパラ漫画も,つながっていない動きを脳が処理して,あたかも動いているように見えるものです。


4 大きさの恒常性とは,網膜に映し出されたとおりに大きさを知覚することである。


知覚の恒常性には,いくつかの種類がありますが,社会福祉士の国家試験に出題されているのは,大きさの恒常性と形の恒常性です。


大きさの恒常性は,網膜に映るものの大きさが異なっても同じ大きさに知覚する現象です。


例えば,人が自分の方に向かって歩いてくることを考えてみます。


遠くにいるときは,網膜には小さく映っています。

だんだん近づいているのにしたがって,網膜に映る人も大きくなります。


しかし,小さく映っても小さい人,大きく映っても大きい人,と認知するのではなく,同じ大きさの人に見えるように脳が処理します。これが大きさの恒常性です。


形の恒常性は,網膜に映る形が変わっても同じ形のものとして認知することです。


国家試験では,コップのふちの形を例に出題されていたことがあります。


丸い形をしているコップは,真上から見た場合,円形ですが,角度を変えると楕円が網膜に映っています。


しかし,脳が丸いコップだと処理して,網膜に映る形が変わっても丸いコップだと認知します。


知覚の恒常性は,脳がコンピュータのように形を自動で補正しているために生じるものです。


5 圧刺激によって光を感じ取る場合,この刺激を適刺激という。


これは,今まで何度も出題されていますが,正解になったことがないものです。


光を感じる器官は,目です。


目を閉じて目を押す(圧刺激)と,光を感じることがあるらしいです。

目を傷めるので,やらないほうが良いと思います。


適刺激と,感覚器官が本来感じる刺激のことです。


例えば,目は光,耳は音,鼻はにおい,といったものが適刺激です。

圧刺激によって光を感じ取ることがあっても,それは目にとって適刺激ではありません。


社会福祉士の国家試験には出題されたことはありませんが,共感覚というものがあります。

これは,色を見るとにおいを感じるといったものです。人の脳は実に不思議です。

2022年9月12日月曜日

内的帰属と外的帰属

今回は,内的帰属と外的帰属です。

 

これは,ある結果の原因を自分に向けるのか,自分以外に向けるのか,に着目したもので,自分に向けるのは「内的帰属」,自分以外に向けるのは「外的帰属」です。

 

それでは,今日の問題です。

 

第30回・問題8 試験に失敗したときに生じる原因帰属に関する次の記述のうち,内的帰属の例として適切なものを1つ選びなさい。

1 勉強不足に原因がある。

2 問題が難しかったことに原因がある。

3 電車が遅れ遅刻したことに原因がある。

4 運が悪かったことに原因がある。

5 教師の指導力不足に原因がある。

 

正解は,選択肢1です。

 

1 勉強不足に原因がある。

 

これ以外は,すべて外的帰属です。

2022年9月11日日曜日

内発的動機づけと外発的動機づけ

内発的動機づけは,自分の興味などによって動機づけられるものです。

外発的動機づけは,外部からの報酬などによって動機づけられるものです。

 

内発的動機づけによって始めたものが,報酬などによって外発的動機づけになると,動機づけが弱まります。これをアンダーマイニング効果といいます。

 

また,動機づけが持続しやすいのは,外発的動機づけよりも内発的動機づけです。

 

それでは,今日の問題です。

 

第31回・問題8 次の記述のうち,内発的動機づけによる行動として,最も適切なものを1つ選びなさい。

1 観衆から拍手を受けることが楽しくて,駅前での演奏活動を毎週続けた。

2 おこづかいをもらえることが嬉しくて,玄関の掃除を毎日行った。

3 出席するたびにシールをもらえることが楽しくて,ラジオ体操に毎朝通った。

4 絵を描くことが楽しくて,時間を忘れて取り組んだ。

5 成功すれば課長に昇進できると言われ,熱心に仕事に取り組んだ。

 

心理学理論と心理的支援には,このようなタクソノミーⅡ型の問題がよく見られます。

 

タクソノミノーⅡ型の問題とは,知識があることを前提にして,一度思考することで答えを出すタイプの問題です。

 

知識を想起することで答えられるタクソノミーⅠ型よりも難易度が上がります。

 

この問題の場合は,まず内発的動機づけとは何かを想起して,各選択肢に当てはめて考えて答えを出します。

 

それでは解説です。

 

1 観衆から拍手を受けることが楽しくて,駅前での演奏活動を毎週続けた。

 

演奏活動を続けているのは,観衆から拍手を受けることが楽しいからです

 

拍手という外部からの報酬によって動機づけられているので,外発的動機づけです。

 

 

2 おこづかいをもらえることが嬉しくて,玄関の掃除を毎日行った。

 

玄関を掃除しているのは,おこづかいをもらえるためです。

 

おこづかいという外部からの報酬によって動機づけられているので,外発的動機づけです。

 

3 出席するたびにシールをもらえることが楽しくて,ラジオ体操に毎朝通った。

 

ラジオ体操に通っているのは,シールをもらえるからです。

 

シールという外部からの報酬によって動機づけられているので,外発的動機づけです。

 

4 絵を描くことが楽しくて,時間を忘れて取り組んだ。

 

時間を忘れて絵を描いているのは,描くことが楽しいからです。

 

絵を描くこと自体に興味をもっているので,内発的動機づけです。

 

ということで,これが正解です。

 

5 成功すれば課長に昇進できると言われ,熱心に仕事に取り組んだ。

 

熱心に仕事に取り組んでいるのは,成功すれば昇進できるからです。

 

昇進という外部からの報酬によって動機づけられているので,外発的動機づけです。

 

 

この問題の外発的動機づけは,報酬というポジティブなもので構成されていますが,怒られる,おこづかいをもらえない,おやつがもらえないといったネガティブなものによって動機づけられるものも外発的動機づけです。

 

もう一問解いてみましょう。

 

第23回・問題8 次の記述のうち,内発的動機に基づく行動として,最も適切なものを1つ選びなさい。

1 おこづかいをもらえるので,家事の手伝いをした。

2 興味を持ったので,社会保障の勉強を始めた。

3 お腹が減ったので,パンを食べた。

4 暑いので,教室の窓を開けて換気した。

5 叱られるのが嫌なので,仕方なく勉強をした。

 

選択肢5が叱られるのが嫌だ,というネガティブなものによって動機づけられている外発的動機づけです。

 

正解は,選択肢2です。

 

2 興味を持ったので,社会保障の勉強を始めた。

 

「興味を持った」とわかりやすく出題してくれています。

 

一応そのほかも解説します。

 

1 おこづかいをもらえるので,家事の手伝いをした。

 

家事を手伝うのは,おこづかいがもらえるからです。

 

つまり外発的動機づけです。

 

3 お腹が減ったので,パンを食べた。

4 暑いので,教室の窓を開けて換気した。

 

この2つは,内発的動機づけでも外発的動機づけでもありません。

 

マズローの欲求階層説の生理的欲求だと言えるのかもしれません。

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