2018年12月5日水曜日

行政手続法の徹底理解~その1

行政手続法は,平成5年に制定された法です。

法の目的は,

処分,行政指導及び届出に関する手続並びに命令等を定める手続に関して,共通する事項を定めることによって,行政運営における公正の確保と透明性の向上を図ることで,国民の権利利益の保護に資することを目的としています。

ただし,他法で定められているときは,その定めが優先されます。

旧カリキュラムの時代にはかなり出題頻度が高いものでしたが,現行カリキュラムで出題されたのは,第27回の一回のみです。

今回はその行政手続法について学びましょう。

行政手続法の用語

行政処分
行政庁の処分その他公権力の行使に当たる行為

行政指導
行政機関がその任務又は所掌事務の範囲内で,特定の者に一定の作為(行うこと)又は不作為(行わないこと)を求めるための指導,勧告,助言その他の行為。行政指導は行政指導に該当しない。

不利益処分
行政庁が,法令に基づいて,特定の者に義務を課すこと,又はその権利を制限する処分


さて,それでは今日の問題です。

第21回・問題68 行政手続に関する次の記述のうち,正しいものを一つ選びなさい。

1 行政手続法は,国及び地方公共団体が法律や条例などに基づいて行う処分や行政指導などに関し,共通事項を定め,行政運営における公正の確保と透明性の向上を図ることを目的としている。

2 裁判の執行としてされる処分は,行政手続法の適用除外とされているが,不服申立てに対する行政庁の裁決,決定その他の処分には,行政手続法が適用される。

3 意見公募手続は,行政機関が命令等を制定するに当たって,事前に命令等の案及び関連資料を公示し,広く一般の意見を求めるために,行政手続法の改正によって導入された制度である。

4 不利益処分をする場合の意見陳述のための手続きには,「聴聞」と「弁明の機会の付与」とがあり,いずれの場合も口頭で行われることを原則としている。

5 行政庁が申請に対する処分の「審査基準」と不利益処分に対する「処分基準」を作成し公表することは,努力義務ではなく法律上の義務である。


旧カリキュラムの「法学」という科目で出題された問題です。かなり言い回しの難易度が高い問題ですね。

しかし言い回しが難しくなればなるほど,文章にほころびが出るのも事実です。

現在はこれほど難易度が高い言い回しの問題は出題されません。だからといって,問題自体の難易度が下がっているわけではないことに注意が必要です。


それでは解説です。


1 行政手続法は,国及び地方公共団体が法律や条例などに基づいて行う処分や行政指導などに関し,共通事項を定め,行政運営における公正の確保と透明性の向上を図ることを目的としている。

これは間違いです。

しかし,難しすぎです。出題当時はこれを正解にした人も多かったと考えられます。

どこが間違いかと言えば,行政手続法は,行政処分等を定めたものであることは正しいですが,ほかの法に定めがある場合は,その法の定めにしたがうからです。


2 裁判の執行としてされる処分は,行政手続法の適用除外とされているが,不服申立てに対する行政庁の裁決,決定その他の処分には,行政手続法が適用される。

これも間違いです。

行政手続法の適用は,裁判所の処分,不服申立ても適用除外です。

文章のほころびというのは,この選択肢を指しています。

裁判の執行としてされる処分は,行政手続法の適用除外とされているが,不服申立てに対する行政庁の裁決,決定その他の処分には,行政手続法が適用される。

●●は。●●だが,●●は●●ではない

というスタイルの文章です。

このスタイルの文章による出題は避ける傾向にあります。


3 意見公募手続は,行政機関が命令等を制定するに当たって,事前に命令等の案及び関連資料を公示し,広く一般の意見を求めるために,行政手続法の改正によって導入された制度である。

これが正解です。

意見公募手続とは,いわゆるパブリックコメント(パブコメ)のことをいいます。

平成17年の改正で法制化されました。


4 不利益処分をする場合の意見陳述のための手続きには,「聴聞」と「弁明の機会の付与」とがあり,いずれの場合も口頭で行われることを原則としている。

これも間違いです。

聴聞は「聴聞」ということば通り,口頭によってその言い分を聴きます。

弁明の機会は,文書で行うのが原則です。

5 行政庁が申請に対する処分の「審査基準」と不利益処分に対する「処分基準」を作成し公表することは,努力義務ではなく法律上の義務である。

これは間違いです。

審査基準を定めることは努力義務,処分基準は義務規定となっています。


<今日の一言>

今日の問題はとても難しいレベルのものだったと思います。

しかし,正解選択肢となったのは,意見公募手続(パブリックコメント)でした。

正解選択肢には,メッセージ性があります。

この問題で伝えたかったのは,この制度だったと思われます。

ここに気がつくようになると,国家試験の得点力は格段に上がります。

それが,正解選択肢がキラキラして見えてくるということです。

2018年12月4日火曜日

不法行為による損害賠償の徹底理解~その2

不法行為とは,他人の利益を侵すことです。
損害賠償請求の対象となるのは,故意もしくは過失による場合です。
損害賠償請求の対象とならないのは,不可抗力による場合です。
業務中の不法行為があった場合には,使用者,監督者も使用者責任を問われることもあります。

これまでは前回書いたことと同じです。

前回の最後に書いたように,公務員はまた別の話です。

それは国家賠償法です。

国家賠償法第一条

国又は公共団体の公権力の行使に当る公務員が、その職務を行うについて、故意又は過失によつて違法に他人に損害を加えたときは、国又は公共団体が、これを賠償する責に任ずる。
2 前項の場合において、公務員に故意又は重大な過失があつたときは、国又は公共団体は、その公務員に対して求償権を有する。

国家賠償法は,公務員の公務中の不法行為については,国または地方公共団体に損害賠償請求してね。本人には損害賠償でできませんよ。と規定しているのです。

それでは今日の問題です。

第29回・問題80 国家賠償法に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。

1 公立の福祉施設の職員の過失により加えられた利用者への損害に対して,国家賠償法に基づく損害賠償請求はできない。

2 公務員の違法な公権力行使により損害を被った者は,国家賠償責任に加えて,公務員個人の民法上の不法行為,責任も問うことができる。

3 公務員が適切に公権力を行使しなかったことによる損害に対して,国家賠償法に基づく損害賠償請求はできない。

4 公務員が家族旅行に行った先で,誤って器物を損壊したことに対して,国家賠償法に基づく損害賠償請求はできない。

5 非番の警察官が制服を着用して行った行為による損害に対して,国家賠償法に基づく損害賠償請求はできない。

この問題を解く時のポイントは,公務中か公務中でないかです。


1 公立の福祉施設の職員の過失により加えられた利用者への損害に対して,国家賠償法に基づく損害賠償請求はできない。

これは間違いです。

過失によって被った損害は,国家賠償法により,設置者に損害賠償することになります。


2 公務員の違法な公権力行使により損害を被った者は,国家賠償責任に加えて,公務員個人の民法上の不法行為,責任も問うことができる。

これも間違いです。

本人には,民法上の不法行為による責任は問われることはありません。その代わりに故意又は重大な過失があった場合は,国家賠償法によって,国又は地方公共団体が本人に賠償請求を行うことができます。


3 公務員が適切に公権力を行使しなかったことによる損害に対して,国家賠償法に基づく損害賠償請求はできない。

これも間違いです。

もちろん,国家賠償法によって,損害賠償請求ができます。


4 公務員が家族旅行に行った先で,誤って器物を損壊したことに対して,国家賠償法に基づく損害賠償請求はできない。

これが正解です。

公務中ではありませんので,国家賠償法の対象ではありません。必要な場合は,民法によって損害賠償請求を行うことになります。


5 非番の警察官が制服を着用して行った行為による損害に対して,国家賠償法に基づく損害賠償請求はできない。

これは間違いです。

公務中であることは4と同じです。違うのは制服を着用していることです。

このような場合は,公務中であろうとなかろうが,公務中だとみなします。見た目が大切であるということです。

人は見た目です。

制服を着ていたら,周りの人は公務中であるかどうかは判断できません。そのため面倒なので公務中でなくても,制服を着ていたら公務中とみなされて,国家賠償法の対象となります。


<今日の一言>

今日の問題は,

・・・できない。
・・・できる。
・・・できない。
・・・できない。
・・・できない。

と語尾がそろっていません。

問題の内容が分からないと,ほかと一つだけ違う「・・・できる」を文章的に選択しがちです。

実際に,かつてはそういったものが正解になっていることが多くありました。

しかし今はそういったことに気がついたみたいで,極力そうならないように意識して作られているようです。

勘の良い人がその勘を活かして正解できる問題はほとんどないと言っても良いかと思います。

<理想的な国試>

勉強した人は解ける。
勉強が足りない人は解けない。

<最低な国試>

勉強した人でも解けない。
勘の良い人は勘を働かせると解ける。

「国家試験は日本語の問題だ」と言った人がいます。

それは過去のこと。

今は,勘の良し悪しで解ける問題ではありません。
たとえ勘で解けたとしてもそれはほんの数問です。

国試は決して難しい試験ではありませんが,勉強不足でも合格できるような試験ではなくなっています。

逆に地道に勉強してきた人は,高い得点ができるようになっています。

国の方針が変わったとしても,国試で合格できる秘訣はたったの一つしかありません。
出題基準で示されている内容をひたすら勉強することです。

合格には遠回りはいくらでもできますが,近道はありません。

努力は報われるのが今の国試です。模試の結果が届き始めていると思います。
模試で良い成績だった人は,それは今までの努力の結果です。自信を持って良いです。

国試を解く勘も必要ですが,それは基礎力を養ってこそ活きます。

2018年12月3日月曜日

不法行為による損害賠償の徹底理解

不法行為とは,他人の利益を侵すことです。

損害賠償請求の対象となるのは,故意もしくは過失による場合です。

損害賠償請求の対象とならないのは,不可抗力による場合です。

業務中の不法行為があった場合には,使用者,監督者も使用者責任を問われることもあります。

これを頭に入れて,今日の問題を解きましょう。

第24回・問題72事例を読んで,不法行為と損害賠償責任に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。

〔事 例〕

訪問介護事業者P法人の正職員であるA訪問介護員が,食事の準備ができたので,利用者Bさんをベッドのある居室から食卓のある居間に車いすで移動させたとき,利用者Bさんが転倒・骨折した。

1 P法人は,転倒・骨折が不可抗力であったとしても不法行為責任を負う。

2 P法人は,A訪問介護員に故意又は過失があれば不法行為責任を負う。

3 P法人がBさんとの契約で,A訪問介護員の故意又は過失を問わず一切の不法行為責任を免れると定めることは有効である。

4 P法人がBさんとの契約で,A訪問介護員に故意がある場合にのみ不法行為責任を負うと定めることは有効である。

5 Bさんは,A訪問介護員の故意又は過失を理由として,A訪問介護員の不法行為責任を追及していくことはできない。

ポイントが整理されていれば,答えをかぎ分けることができると思います。

それでは,解説です。


1 P法人は,転倒・骨折が不可抗力であったとしても不法行為責任を負う。

これは間違いです。

不可抗力の場合は,不法行為に対する責任は問われません。


2 P法人は,A訪問介護員に故意又は過失があれば不法行為責任を負う。

これが正解です。

不法行為が故意・過失の場合は,A訪問介護員は損害賠償請求の対象となります。P法人も使用者責任により不法行為責任があります。


3 P法人がBさんとの契約で,A訪問介護員の故意又は過失を問わず一切の不法行為責任を免れると定めることは有効である。

これは間違いです。

このような契約は認められません。労働契約は労使は対等な立場で結ばれるものであり,一方が有利になるようなものは無効です。


4 P法人がBさんとの契約で,A訪問介護員に故意がある場合にのみ不法行為責任を負うと定めることは有効である。

これも間違いです。

このような契約は認められません。労働契約は労使は対等な立場で結ばれるものであり,一方が有利になるようなものは無効です。


5 Bさんは,A訪問介護員の故意又は過失を理由として,A訪問介護員の不法行為責任を追及していくことはできない。

これももちろん間違いです。

ただしこれは民間法人の場合です。A訪問介護員が公務員の場合は,国家賠償法の対象となるので,BさんはA訪問介護員ではなく,国もしくは地方公共団体に損害賠償を行うことになります。


<今日の一言>

公務員本人が公務中の不法行為の責任を負わないのは,その責任を問われると公務員が委縮していまい,公務が適切に行えなくなるおそれがあるからだそうです。

この問題が,「P法人」ではなく,「町立の」といった出題だった場合は,選択肢5は正解となります。そこまでの引っ掛け問題は出題されないと思いますが,少なくても今日の問題では,P法人がこの問題を成立させるためのキーワードになっていることは事実として知っておきましょう。

2018年12月2日日曜日

不服申立制度の徹底理解~その2

不服申立制度のポイントは,各制度における申立て機関を押さえておくことです。

権利擁護と成年後見制度では,

第22回
第24回
第26回

に出題されています。

第26回の出題です。今日の問題の代わりです。必ず押さえてください。

 ↓    ↓

https://fukufuku21.blogspot.com/2017/07/blog-post_5.html


基本的には,上記3回を押さえておけば,何とかなることでしょう。

特に重要なのは,

不服申立ては,行政処分に対して行うものだということです。

サービスに対しては,不服申立てではなく,苦情申立てを行います。

福祉サービスの苦情申立ては,具体的には

介護保険サービスの場合は,国民健康保険団体連合会(国保連)

社会福祉サービスの場合は,都道府県運営適正化委員会

に行います。

<今日の一言>

今は国試に向けた仕上げの時です。

得点力を上げるには,出題基準に示された内容を丁寧に一つひとつを覚えていくことです。

国試は,決して難しいものではありませんが,3年間の過去問で合格できるほど甘いものではありません。

それにもかかわらず,3年間の過去問の知識だけで戦おうとしている人がどれだけいることでしょうか。

国試合格には決して近道はありません。

国試まであともう一息です。

チームfukufuku21は,遠回りしないための水先案内をしていきますので,ご期待ください。


<今日のおまけ>

第32回国試を受験される方へ

ネットでは,どの参考書を使うとよいか,といった情報があふれています。

それらを参考にするのは良いと思います。

それは情報を提供している人にとっての事実だからです。

しかし,大切なのは,何を使って勉強するか,ではなく,国試に合格できる知識をいかにつけるかです。

多くの人が使っているという参考書を買って満足ということは,決してないように気をつけてください。

勉強の方法は,それぞれです。

社会人の方は,最近受験したのは介護福祉士の国試だけといったような人は,要注意です。
大学生の方は,受験を経験せずに推薦入学やAO入試で入学した人は,要注意です。

いずれも勉強の仕方が身についていないからです。
「国試に合格できる知識をどのようにつけるか」を意識しましょう。

参考書は,知識を与えてくれます。しかし国試に合格できる知識にするためには,個人で展開していかなければなりません。

実際の国試では,どのように出題されているかを確認しながら勉強するのも良い方法だと思います。

遠回りする方法はいくらでもあります。しかし近道は決してありません。それを肝に銘じておきましょう。

2018年12月1日土曜日

不服申立制度の徹底理解~その1

行政処分に対して,不服を申し立てるのが「不服申立制度」です。

福祉サービス等に対してではありません。

この科目で,不服申立てが出題されたのは,

第22回
第24回
第26回

の3回だけですが,他の科目でもほぼ毎回出題されるのでしっかり押さえておきたいです。

第24回の問題です。

https://fukufuku21.blogspot.com/2017/12/25.html

それでは今日の問題です。

第22回・問題72 事例を読んで,Jさんの対応に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。

〔事 例〕
 Jさんは,要介護1の認定を受け,現在,介護保険事業者の通所介護を週2回利用している。だがJさんは,この要介護認定に不満を感じており,また,実際に受けているサービス内容も,契約内容と違うことに不満を感じている。

1 Jさんは,介護保険審査会に置かれている専門調査員に事業者のサービス内容について調査を求めることができる。

2 Jさんは,国民健康保険団体連合会に苦情を申し立てた上で,苦情の解決に向けて「あっせん」を行うことを同連合会に対して求めることができる。

3 Jさんは,契約どおりのサービスの履行を求めて,事業者を監督する行政庁に行政不服審査法に基づく不服申立てを行うことができる。

4 Jさんは,要介護認定の結果について介護保険審査会に審査請求をすることができる。

5 Jさんは,行政上の不服申立てを経ることなく要介護認定の取消しを求めて行政訴訟を提起することができる。

整理しておけば,そんなに難易度は高くはないでしょう。

それでは解説です。



1 Jさんは,介護保険審査会に置かれている専門調査員に事業者のサービス内容について調査を求めることができる。

これは間違いです。

介護保険サービスに不満がある場合は,国民健康保険団体連合会に苦情を申し立てます。

都道府県におかれる介護保険審査会は,要介護認定等の行政処分に対して不服を申し立てる機関です。


2 Jさんは,国民健康保険団体連合会に苦情を申し立てた上で,苦情の解決に向けて「あっせん」を行うことを同連合会に対して求めることができる。

これも間違いです。

介護保険サービス等の苦情の申立ては国民健康保険団体連合会に対して行うのは正解です。

しかし,国保連が行うのは,指導&助言であり,あっせんは行いません。


3 Jさんは,契約どおりのサービスの履行を求めて,事業者を監督する行政庁に行政不服審査法に基づく不服申立てを行うことができる。

これも間違いです。

介護保険サービス等に不満がある場合は,不服申立てではなく,国保連に苦情申立てを行います。


4 Jさんは,要介護認定の結果について介護保険審査会に審査請求をすることができる。

これが正解です。

要介護認定は,行政処分です。苦情申立て機関は,都道府県に設置される介護保審査会です。


5 Jさんは,行政上の不服申立てを経ることなく要介護認定の取消しを求めて行政訴訟を提起することができる。

これは間違いです。

法制度によっては,不服申立てを経ることなく行政訴訟を提起できるものがありますが,介護保険や生活保護は,不服申立て(審査請求)を経た後でなければ行政訴訟を提起できない審査請求前置主義をとっています。


<今日の一言>

行政処分への不満 → 不服申立て
サービスへの不満 → 苦情申立て

不服申立て機関はそれぞれ整理しておきましょう。

苦情申立ては,

介護保険サービスは,国保連

社会福祉サービスは都道府県社協に設置される運営適正化委員会

です。

そのほかの科目で出題されたものも確認しておきたいです。

https://fukufuku21.blogspot.com/2017/12/25.html

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