不法行為とは,他人の利益を侵すことです。
損害賠償請求の対象となるのは,故意もしくは過失による場合です。
損害賠償請求の対象とならないのは,不可抗力による場合です。
業務中の不法行為があった場合には,使用者,監督者も使用者責任を問われることもあります。
これを頭に入れて,今日の問題を解きましょう。
第24回・問題72事例を読んで,不法行為と損害賠償責任に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。
〔事 例〕
訪問介護事業者P法人の正職員であるA訪問介護員が,食事の準備ができたので,利用者Bさんをベッドのある居室から食卓のある居間に車いすで移動させたとき,利用者Bさんが転倒・骨折した。
1 P法人は,転倒・骨折が不可抗力であったとしても不法行為責任を負う。
2 P法人は,A訪問介護員に故意又は過失があれば不法行為責任を負う。
3 P法人がBさんとの契約で,A訪問介護員の故意又は過失を問わず一切の不法行為責任を免れると定めることは有効である。
4 P法人がBさんとの契約で,A訪問介護員に故意がある場合にのみ不法行為責任を負うと定めることは有効である。
5 Bさんは,A訪問介護員の故意又は過失を理由として,A訪問介護員の不法行為責任を追及していくことはできない。
ポイントが整理されていれば,答えをかぎ分けることができると思います。
それでは,解説です。
1 P法人は,転倒・骨折が不可抗力であったとしても不法行為責任を負う。
これは間違いです。
不可抗力の場合は,不法行為に対する責任は問われません。
2 P法人は,A訪問介護員に故意又は過失があれば不法行為責任を負う。
これが正解です。
不法行為が故意・過失の場合は,A訪問介護員は損害賠償請求の対象となります。P法人も使用者責任により不法行為責任があります。
3 P法人がBさんとの契約で,A訪問介護員の故意又は過失を問わず一切の不法行為責任を免れると定めることは有効である。
これは間違いです。
このような契約は認められません。労働契約は労使は対等な立場で結ばれるものであり,一方が有利になるようなものは無効です。
4 P法人がBさんとの契約で,A訪問介護員に故意がある場合にのみ不法行為責任を負うと定めることは有効である。
これも間違いです。
このような契約は認められません。労働契約は労使は対等な立場で結ばれるものであり,一方が有利になるようなものは無効です。
5 Bさんは,A訪問介護員の故意又は過失を理由として,A訪問介護員の不法行為責任を追及していくことはできない。
これももちろん間違いです。
ただしこれは民間法人の場合です。A訪問介護員が公務員の場合は,国家賠償法の対象となるので,BさんはA訪問介護員ではなく,国もしくは地方公共団体に損害賠償を行うことになります。
<今日の一言>
公務員本人が公務中の不法行為の責任を負わないのは,その責任を問われると公務員が委縮していまい,公務が適切に行えなくなるおそれがあるからだそうです。
この問題が,「P法人」ではなく,「町立の」といった出題だった場合は,選択肢5は正解となります。そこまでの引っ掛け問題は出題されないと思いますが,少なくても今日の問題では,P法人がこの問題を成立させるためのキーワードになっていることは事実として知っておきましょう。