2018年12月23日日曜日

成年後見制度の徹底理解~その14(成年後見制度利用支援事業)

成年後見制度は,介護保険法の施行と同時にスタートしました。

そのため,最近はあまり聞かなくなりましたが,当初は「介護保険と成年後見制度は車の両輪」と言われていたものです。

成年後見制度をより使いやすくするため,2001年に認知症高齢者を対象として「成年後見制度利用支援事業」が始まりました。

その後,知的障害者と精神障害者を対象として現在に至ります。

同事業は,申立費用や後見人等の報酬を助成するものです。

介護保険法では,市町村の地域支援事業の任意事業,障害者総合支援法では,市町村の地域生活支援事業の必須事業に位置付けられています。


それでは,今日の問題です。

第26回・問題82 市町村が実施する成年後見制度利用支援事業に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。

1 市町村長申立て以外の場合を,対象とすることはできない。

2 申立て費用だけでなく,成年後見人等の報酬も対象とすることができる。

3 高齢者ではない知的障害者及び精神障害者を対象とすることはできない。

4 「後見」を対象とし,「保佐」「補助」を対象とすることはできない。

5 社会福祉法における第一種社会福祉事業と位置づけられている。


第26回国試は,現行カリキュラムでの試験の中期が始まった年です。この回から問題の文字数が急激に減少していきます。

先日の分け方では,第26~30回を安定期と位置づけたのは,文字数が少なくなったことで,言い回しで煙に巻くような問題ではなく,知識そのものが問われるようになったからです。

しかし,まだまだ荒々しさが見えます。

具体的には,文章がそろっていないことです。

1.できない。
2.できる。
3.できない。
4.できない。
5.位置づけられている。

今はこん問題はほとんど見られなくなっています。たった5年前にもかかわらず,ずいぶん脇の甘い問題を出題していたものです。

それでは解説です。


1 市町村長申立て以外の場合を,対象とすることはできない。

これは間違いです。

市町村長申立ては,4親等以内の親族などがいない場合,市町村長が成年後見開始等の審判の請求を行うものです。

ただし,4親等以内の親族がいたとしても,遠方に住んでいる,その親族も認知症である場合などに市町村長が申し立てる制度です。成年後見制度利用支援事業を市町村長申立てに限定する理由がないと思いませんか?


2 申立て費用だけでなく,成年後見人等の報酬も対象とすることができる。

これが正解です。

同事業は,申立て費用及び成年後見人等の報酬等を支払うことができない場合,市町村がそれらの費用を助成する制度です。


3 高齢者ではない知的障害者及び精神障害者を対象とすることはできない。

これは間違いです。

高齢者,知的障害者,精神障害者を対象としています。


4 「後見」を対象とし,「保佐」「補助」を対象とすることはできない。

これも間違いです。

後見だけではなく,保佐,補助も対象とします。


5 社会福祉法における第一種社会福祉事業と位置づけられている。

これも間違いです。

同事業は,第一種社会福祉事業ではなく,厚生労働省の事業です。


<今日の一言>

今は,表現をそろえて出題されるようになっていることは,何度かお伝えしてきました。

表現をそろえないと,そこがヒントになってしまうことがあるからです。

この問題の場合は,

1.できない。
2.できる。
3.できない。
4.できない。
5.位置づけられている。

となっています。

肯定表現と否定表現が混在しています。

この場合の傾向は,「できない」は正解になりなくいのです。

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