2018年12月31日月曜日

日常生活自立支援事業の徹底理解~その2

現在の「日常生活自立支援事業」は,2000年の介護保険法,社会福祉法により,サービス利用が「措置」から「契約」になることから,サービス利用者の権利擁護のために導入されたものです。


福祉サービスの利用援助は,社会福祉法で,第二種社会福祉事業に規定されています。

当初は「地域福祉権利擁護事業」と呼ばれたものが,利用者に分かりにくいなどの理由で2007年に現在の名称になりました。

援助内容は
・福祉サービスの利用援助 
・日常的金銭管理サービス 
・書類等預かりサービス

です。

福祉サービスの利用援助には,苦情解決制度の利用援助,日常生活上の消費契約,住民票の届出等の援助等が含まれます。


日常生活自立支援事業の担い手は次の2つです。

まず1つめは,原則常勤の専門員です。専門員は,相談受付,支援計画作成,契約締結業務を行います。

もう1つは,原則非常勤の生活支援員です。生活支援員は,具体的な支援を行っています。

生活支援員が原則非常勤となっているのは,実際の援助は頻繁にあるわけではないからです。

たとえば,「日常的金銭管理サービス」は,金融機関からお金を引き出し,振込や支払いなどを行いますが,月1~2回程度でしょう。

それでは,今日の問題です。

第27回-問題82 日常生活自立支援事業に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。

1 精神障害者保健福祉手帳を所持していなければ,この事業を利用することができない。

2 この事業の実施主体は,利用者が不適切な売買契約を実施した場合,それを取り消すことができる。

3 この事業の契約期間を定めた場合,利用者は期間の途中で解約できない。

4 住民票の届出に関する援助は,この事業の対象外である。

5 福祉サービスについての苦情解決制度の利用援助を行うことは,この事業の対象となる。

前説をしっかり覚えていれば,簡単でしょう。

社会福祉士の国家試験は,合格率が25~30%なので,とても難易度が高いものだと思われがちです。

難易度が高い理由は,出題範囲が広いため,ヤマを張った勉強では対応できるものではないからです。

しかし,一つひとつの問題は,決して難易度が高いものではなりません。

こういった問題をいかに正解できるかが,合否を分けると言っても決して過言ではないでしょう。

それでは解説です。


1 精神障害者保健福祉手帳を所持していなければ,この事業を利用することができない。

これは間違いです。

日常生活自立支援事業の対象は,

精神上の理由(認知症高齢者,知的障害者,精神障害者等)により日常生活を営むのに支障がある者

です。

精神障害者保健福祉手帳を所持していることは利用の要件にはなりません。

詳しい理由は,<今日の一言>に書きました。


2 この事業の実施主体は,利用者が不適切な売買契約を実施した場合,それを取り消すことができる。

これも間違いです。

日常生活自立支援事業は,成年後見制度のように,取消権も同意権も付与されません。


3 この事業の契約期間を定めた場合,利用者は期間の途中で解約できない。

これも間違いです。

途中解約することができます。


4 住民票の届出に関する援助は,この事業の対象外である。

これも間違いです。

福祉サービス利用援助に,住民票の届出に関する援助が含まれます。


5 福祉サービスについての苦情解決制度の利用援助を行うことは,この事業の対象となる。

これが正解です。

福祉サービス利用援助に,福祉サービスについての苦情解決制度の利用援助が含まれます。


<今日の一言>

3障害のうち,手帳を所持することで,障害者だと認定されるのは,身体障害者のみです。

身体障害者福祉法では,

「身体障害者」とは,身体上の障害がある十八歳以上の者であって,都道府県知事から身体障害者手帳の交付を受けたもの。

と規定されています。

知的障害者,精神障害者はいずれも手帳の所持を障害者の認定要件としていません。

このような問題が出題されたことがあります。

身体障害者が「障害者総合支援法」のサービスを利用する場合には,身体障害者手帳の交付を受ける必要がある。(第29回問題60選択肢3)

これは正解です。

障害者走行支援法では,

「障害者」とは,身体障害者福祉法第四条に規定する身体障害者,知的障害者福祉法にいう知的障害者のうち十八歳以上である者及び精神保健及び精神障害者福祉に関する法律第五条に規定する精神障害者(発達障害者支援法(平成十六年法律第百六十七号)第二条第二項に規定する発達障害者を含み,知的障害者福祉法にいう知的障害者を除く。以下「精神障害者」という。)のうち十八歳以上である者並びに治療方法が確立していない疾病その他の特殊の疾病であって政令で定めるものによる障害の程度が厚生労働大臣が定める程度である者であって十八歳以上であるものをいう。

と規定されているからです。

そのため,

身体障害者は,身体障害者手帳の交付を受けないと身体障害者にはなりません。


間違い問題としては以下のようなものが考えられます。

精神障害者が「障害者総合支援法」のサービスを利用する場合には,精神障害者保健福祉手帳の交付を受ける必要がある。

これが間違いになる理由は,精神障害者は,精神障害者保健福祉手帳所持の有無を問わず,精神疾患の有無によって,精神障害者となるからです。

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