2018年12月10日月曜日

成年後見制度の徹底理解~その1

「権利擁護と成年後見制度」は,旧カリキュラムの「法学」に変わって,現行カリキュラムで新しく加わった科目です。

法学時代と重なる出題ものもありますが,大きな違いは,権利擁護が強く打ち出されてことです。

そのため,出題される範囲は,かなり限定されています。

難しいという思いが先に立つ科目だと思いますが,攻略ポイントはいくつもあります。

その一つが今日から取り組む「成年後見制度」です。介護保険導入と同時に制度ができたもので,その当時は「車の両輪」と呼ばれていたものです。

法定後見の「後見」「保佐」「補助」,任意後見,そして未成年後見があります。


それでは早速今日の問題です。

第22回・問題73 成年後見に関する次の記述のうち,正しいものを一つ選びなさい。
1 成年被後見人が建物の贈与を受けたとき,成年後見人はこれを取り消すことができない。

2 保佐開始の審判を受けていた者が,事理弁識能力を欠く常況になった場合には,家庭裁判所は,職権で後見開始の審判を行うことができる。

3 成年被後見人が成年後見人の同意を得ないでした婚姻は,これを取り消すことができる。

4 自己の所有する不動産を売却した成年被後見人は,成年後見人の同意を事前に得ていた場合には,これを取り消すことができない。

5 成年被後見人が自己の所有する不動産を売却したとき,その時点で意思能力を有していた場合でも,成年後見人は契約を取り消すことができる。


知識ゼロの人がこの問題で正解できる確率は5分の1の20%です。

しかしこの当時は言い回しに気がつけた人は,正解率を上げることができました。それは国試としては適切ではありません。

それはさておき,解説です。


1 成年被後見人が建物の贈与を受けたとき,成年後見人はこれを取り消すことができない。

これは間違いです。後見人には取消権が付与されているので,取り消すことができます。


2 保佐開始の審判を受けていた者が,事理弁識能力を欠く常況になった場合には,家庭裁判所は,職権で後見開始の審判を行うことができる。

これも間違いです。

職権で審判を行うのではなく,請求権者の申立てによって後見開始の審判が行われます。
「職権」で行われるのは,後見人の選任です。


3 成年被後見人が成年後見人の同意を得ないでした婚姻は,これを取り消すことができる。

これも間違いです。

後見人には取消権が付与されていますが,身分行為と呼ばれる婚姻などには取消権が及びません。


4 自己の所有する不動産を売却した成年被後見人は,成年後見人の同意を事前に得ていた場合には,これを取り消すことができない。

これも間違いです。

後見人には取消権が付与されているので,取り消すことができます。


5 成年被後見人が自己の所有する不動産を売却したとき,その時点で意思能力を有していた場合でも,成年後見人は契約を取り消すことができる。

これが正解です。

後見人には取消権が付与されているので,取り消すことができます。


<今日の一言>

後見人にはすべての法律行為について,取消権があります。

ただし,除外されているものがあります。

・婚姻などの身分行為。
・日用品の購入その他日常生活に関する行為

特に,「日用品の購入その他日常生活に関する行為」は取り消すことができないことはしっかり覚えておきましょう。

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