2018年12月26日水曜日

親権の徹底理解~その2

今日も親権を取り上げます。

まずは,親権の復習です

親権には,財産管理権と身上監護権があります。

身上監護権には,結婚などの身分行為に対する同意権,居所指定権,懲戒権,職業許可権などがあります。

さて今日の問題です。

第27回・問題78 親権者の行為に関する次の記述のうち,正しいものを2つ選びなさい。

1 子どもの監護教育に必要な範囲内で,その子どもを懲戒することができる。

2 未成年の子どもの携帯電話サービス契約を取り消すことはできない。

3 未成年者が結婚すると,居所を指定することはできない。

4 未成年者に代わって,労働契約を締結できる。

5 子どもと利益が相反する法律行為であっても,自ら子どもを代理して行うことができる。


前回の問題と違い,子どもの権利擁護の視点に立った問題になっていることが分かるでしょう。

その分,難易度はぐ~んと高くなっていますね。

2つ選ぶ問題はもともと難易度が高いことに加えて,知識なしで消去できる選択肢が少ないです。

それでは解説です。


1 子どもの監護教育に必要な範囲内で,その子どもを懲戒することができる。

これは正解です。

親権者には懲戒権があります。ただし「必要な範囲内」と限定されています。


2 未成年の子どもの携帯電話サービス契約を取り消すことはできない。

これは間違いです。

未成年者がなした法律行為は,親権者が取り消すことができます。

2022年に成人年齢が18歳に引き下げられると,今まで民法の規定で取り消すことができた18歳・19歳の法律行為を親権者は取り消すことができなくなります。


3 未成年者が結婚すると,居所を指定することはできない。

これは正解です。

親権者には「居所指定権」があります。

親権者が指定した居所に明確な理由なしに寄り付かない場合は,虞犯行為とみなされることもあるくらい重要なものです。

未成年が結婚すると成人とみなされます(みなし成人)。そのため,居所指定権は及びません。

離婚してもみなし成人は引き続きます。

民法改正で男女ともに結婚可能年齢が成人年齢の18歳となるので,みなし成人は2022年までということになりますね。

この問題に意味があるのは,2022年までということになります。


4 未成年者に代わって,労働契約を締結できる。

これは間違いです。

親権者には代理権がありますが,労働契約には代理権を行使することができません。だからと言って,未成年者は労働契約を自由にできるわけではありません。

親権者の許可が必要です。


5 子どもと利益が相反する法律行為であっても,自ら子どもを代理して行うことができる。

これも間違いです。

今までこの「学習部屋」を継続して見ていただいた方はおなじみ「利益相反」は成年後見制度のところで何度も出てきたのでおなじみですね。


利益相反する場合

成年後見人 vs 成年被後見人 → 特別代理人の選任
保佐人 vs 被保佐人 → 臨時保佐人の選任
補助人 vs 被補助人 → 臨時保佐人の選任
子 vs 親権者 → 特別代理人の選任

つまり特別代理人の選任を請求しなければなりません。


<今日の一言>

親権者は,未成年者の労働契約に代理権を行使することができない

なぜなのだろうと思う人もいるかもしれません。

これはとても重要なことなのです。代理権と本人に代わって法律行為を行うことです。もし代理権を行使できると,未成年者が望まない労働をしなければならなくなってしまうことにもなりかねません。

親権者が「A社と労働契約を結んだので,A社で働きなさい」と未成年者に言います。

そのA社は親権者と結託して,未成年者の賃金をピンハネして,親権者に渡すということも起こり得ます。

このような労働契約を認めさせないために親権者に労働契約の代理権は行使できないように規定されているのです。

これに対して,職業許可権の場合は

未成年者が「A社で働きたいのだけれど良い?」と親権者に言います。

全く違いますね。主体が未成年者にあるのが分かります。

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