最近の国試問題は,日本語的には解けない
勘の良さで解けるものは国試問題にふさわしくない!!
これがチームfukufuku21の結論です。
それでは今日の問題です。
第30回・問題82 次のうち,民法上,許可の取得などの家庭裁判所に対する特別な手続を必要とせずに,成年後見人が単独でできる行為として,正しいものを1つ選びなさい
1 成年被後見人宛ての信書等の郵便物の転送
2 成年被後見人が相続人である遺産相続の放棄
3 成年被後見人の遺体の火葬に関する契約の締結
4 成年被後見人の居住用不動産の売却
5 成年被後見人のための特別代理人の選任
日本語の言い回しで正解できない問題です。
厳しいですね。知識だけが頼りとなります。
2016年民法改正を踏まえた出題になっています。
しかしそんなところが正解選択肢になることはめったにありません。良いセンスの問題だと思います。
それでは解説です。
1 成年被後見人宛ての信書等の郵便物の転送
これは間違いです。
2016年改正で加わったもので,家庭裁判所の許可があれば,信書の転送が認められるようになりました。
2 成年被後見人が相続人である遺産相続の放棄
これが正解です。
財産管理は後見人の本来業務です。
3 成年被後見人の遺体の火葬に関する契約の締結
これは間違いです。
これも2016年改正で加わったものです。
ネットで検索すると分かりますが,以前はこれが結構問題となっていたものなのです。
というのは,後見人は被後見人死亡によって後見人ではなくなるので,死後の事務は後見人は行えなかったのです。そのためにこの規定が加わって,家庭裁判所の許可があれば死後事務も行えるようになったのです。ただし葬式の契約は行うことはできません。
4 成年被後見人の居住用不動産の売却
これは間違いです。
過去にも出題されたように,居住用不動産の売却は家庭裁判所の許可が必要です。
5 成年被後見人のための特別代理人の選任
これも間違いです。
特別代理人とは,後見人と被後見人の利益が相反する場合,後見監督人が選任されていない時に,家庭裁判所に請求を行うことで選任されます。
<今日の一言>
2016年の法改正は,今後も出題されるでしょう。
センスの良い問題だと書いたのは,制度改正で新しく加わったものを正しい文章で出題しながら,設問によって間違いになっていることです。
内容に誤りはないのに正解ではないという問題は,なかなか作れるものではありません。
この作問センスによって,初めて出題したものを正解選択肢にすることなく,正しい文章として出題できたのです。
次に出題される時は必ず正解選択肢となるはずです。
・成年被後見人宛ての信書等の郵便物の転送
・成年被後見人の遺体の火葬に関する契約の締結
ただし,これらは後見人だけに認められるもので,保佐人,補助人には認められていません。
<おまけ>
一般センスで今日の問題をリメイクしてみると・・・
2016年の民法改正によって,許可の取得などの家庭裁判所に対する特別な手続で行うこと成年後見人ができるようになった行為に関する次の記述のうち,正しいものを2つ選びなさい。
1 成年被後見人宛ての信書等の郵便物の転送
2 成年被後見人が相続人である遺産相続の放棄
3 成年被後見人の遺体の火葬に関する契約の締結
4 成年被後見人の居住用不動産の売却
5 成年被後見人のための特別代理人の選任
正解は,1と3です。同じ内容でありながら,新しい制度改正を正解にする問題なので,正解できる人はかなり減ることでしょう。
最新の記事
障害者総合支援法に規定される障害福祉サービスの実施主体
障害者総合支援法に規定される障害福祉サービスの実施主体は,市町村です。 同法における都道府県の役割は,障害福祉計画の作成,地域生活支援事業の実施,障害福祉サービス事業者等の指定などに限られます。 なお,自立支援医療には,育成医療,更生医療,精神通院医療の3種類がありますが,このう...
過去一週間でよく読まれている記事
-
問題解決アプローチは,「ケースワークは死んだ」と述べたパールマンが提唱したものです。 問題解決アプローチとは, クライエント自身が問題解決者であると捉え,問題を解決できるように援助する方法です。 このアプローチで重要なのは,「ワーカビリティ」という概念です。 ワー...
-
ソーシャルワークは,ケースワーク,グループワーク,コミュニティワークとして発展していきます。 その統合化のきっかけとなったのは,1929年のミルフォード会議報告書です。 その後,全体像をとらえる視座から問題解決に向けたジェネラリスト・アプローチが生まれます。そしてシステム...
-
今回は,ロールズが提唱した「格差原理」を学びましょう。 格差原理とは,格差(社会的や経済的に不平等があること)は,最も恵まれない人に用いられる場合にのみ認められること。 格差があることを認めないのではなく,格差があっても,それがその社会の中で最も恵まれない人の利益になるような仕組...
-
システム理論は,「人と環境」を一体のものとしてとらえます。 それをさらにすすめたと言えるのが,「生活モデル」です。 エコロジカルアプローチを提唱したジャーメインとギッターマンが,エコロジカル(生態学)の視点をソーシャルワークに導入したものです。 生活モデルでは,クライエントの...
-
今回から,質的調査のデータの整理と分析を取り上げます。 特にしっかり押さえておきたいのは,KJ法とグラウンデッド・セオリー・アプローチ(GTA)です。 どちらもとてもよく似たまとめ方をします。特徴は,最初に分析軸はもたないことです。 KJ法 川喜多二郎(かわきた・...
-
ホリスが提唱した「心理社会的アプローチ」は,「状況の中の人」という概念を用いて,クライエントの課題解決を図るものです。 その時に用いられるのがコミュニケーションです。 コミュニケーションを通してかかわっていくのが特徴です。 いかにも精神分析学に影響を受けている心理社会的ア...
-
歴史が苦手な人は多いですが,イギリスの歴史は覚えておきたい歴史の代表です。 今回のテーマは,ブース,ラウントリーの貧困調査です。 第34回国家試験までの出題回数を調べてみると ブース 12回 ラウントリー 16回 どちらの出題頻度も高いですが,ラウントリーのほうがより出題頻度が...
-
19世紀は,各国で産業革命が起こります。 この産業革命とは,工業化を意味しています。 大量の労働力を必要としましたが,現在と異なり,労働者を保護するような施策はほとんど行われることはありませんでした。 そこに風穴を開けたのがブース,ラウントリーらによって行われた貧困調査です。 こ...
-
1990年(平成2年)の通称「福祉関係八法改正」は,「老人福祉法等の一部を改正する法律」によって,老人福祉法を含む法律を改正したことをいいます。 1989年(平成元年)に今後10年間の高齢者施策の数値目標が掲げたゴールドプランを推進するために改正されたものです。 主だった...
-
イギリスCOSを起源とするケースワークは,アメリカで発展していきます。 1920年代にペンシルバニア州のミルフォードで,様々な団体が集まり,ケースワークについて毎年会議を行いました。この会議は通称「ミルフォード会議」と呼ばれます。 1929年に,会議のまとめとして「ミルフ...
0 件のコメント:
新しいコメントは書き込めません。