2018年12月12日水曜日

成年後見制度の徹底理解~その3

最近の国試問題は,日本語的には解けない

勘の良さで解けるものは国試問題にふさわしくない!!

これがチームfukufuku21の結論です。

それでは今日の問題です。

第30回・問題82 次のうち,民法上,許可の取得などの家庭裁判所に対する特別な手続を必要とせずに,成年後見人が単独でできる行為として,正しいものを1つ選びなさい

1 成年被後見人宛ての信書等の郵便物の転送

2 成年被後見人が相続人である遺産相続の放棄

3 成年被後見人の遺体の火葬に関する契約の締結

4 成年被後見人の居住用不動産の売却

5 成年被後見人のための特別代理人の選任

日本語の言い回しで正解できない問題です。
厳しいですね。知識だけが頼りとなります。

2016年民法改正を踏まえた出題になっています。

しかしそんなところが正解選択肢になることはめったにありません。良いセンスの問題だと思います。

それでは解説です。


1 成年被後見人宛ての信書等の郵便物の転送

これは間違いです。

2016年改正で加わったもので,家庭裁判所の許可があれば,信書の転送が認められるようになりました。


2 成年被後見人が相続人である遺産相続の放棄

これが正解です。

財産管理は後見人の本来業務です。


3 成年被後見人の遺体の火葬に関する契約の締結

これは間違いです。

これも2016年改正で加わったものです。

ネットで検索すると分かりますが,以前はこれが結構問題となっていたものなのです。
というのは,後見人は被後見人死亡によって後見人ではなくなるので,死後の事務は後見人は行えなかったのです。そのためにこの規定が加わって,家庭裁判所の許可があれば死後事務も行えるようになったのです。ただし葬式の契約は行うことはできません。

4 成年被後見人の居住用不動産の売却

これは間違いです。

過去にも出題されたように,居住用不動産の売却は家庭裁判所の許可が必要です。


5 成年被後見人のための特別代理人の選任

これも間違いです。

特別代理人とは,後見人と被後見人の利益が相反する場合,後見監督人が選任されていない時に,家庭裁判所に請求を行うことで選任されます。


<今日の一言>

2016年の法改正は,今後も出題されるでしょう。

センスの良い問題だと書いたのは,制度改正で新しく加わったものを正しい文章で出題しながら,設問によって間違いになっていることです。

内容に誤りはないのに正解ではないという問題は,なかなか作れるものではありません。

この作問センスによって,初めて出題したものを正解選択肢にすることなく,正しい文章として出題できたのです。

次に出題される時は必ず正解選択肢となるはずです。

・成年被後見人宛ての信書等の郵便物の転送
・成年被後見人の遺体の火葬に関する契約の締結

ただし,これらは後見人だけに認められるもので,保佐人,補助人には認められていません。

<おまけ>

一般センスで今日の問題をリメイクしてみると・・・

2016年の民法改正によって,許可の取得などの家庭裁判所に対する特別な手続で行うこと成年後見人ができるようになった行為に関する次の記述のうち,正しいものを2つ選びなさい。
1 成年被後見人宛ての信書等の郵便物の転送
2 成年被後見人が相続人である遺産相続の放棄
3 成年被後見人の遺体の火葬に関する契約の締結
4 成年被後見人の居住用不動産の売却
5 成年被後見人のための特別代理人の選任

正解は,1と3です。同じ内容でありながら,新しい制度改正を正解にする問題なので,正解できる人はかなり減ることでしょう。

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