何度も出てきました家庭裁判所ですが,今回は家庭裁判所の役割について出題されたことが1回あるのでそれを通して,整理してみましょう。
それでは今日の問題です。
第28回・問題81 家庭裁判所の役割に関する記述として,正しいものを1つ選びなさい。
1 成年後見人に不正な行為,著しい不行跡などの事実がある場合,家庭裁判所は,職権で成年後見人を解任できる。
2 成年後見人の業務に疑義があることを理由に,家庭裁判所が直接,成年被後見人の財産状況を調査することはできない。
3 成年後見人は,正当な事由がある場合,家庭裁判所への届出をもって,その任務を辞することができる。
4 成年後見人が成年被後見人を養子にする場合,家庭裁判所の許可は不要である。
5 成年後見人が成年被後見人の居住用不動産を売却する場合,家庭裁判所の許可は不要である。
今まで紹介してきたものをしっかり押さえていれば答えはすぐ分かる問題かもしれませんね。
それでは解説です。
1 成年後見人に不正な行為,著しい不行跡などの事実がある場合,家庭裁判所は,職権で成年後見人を解任できる。
これが正解です。
<整理ポイント>
職権で選任しているのかどうか
成年後見人等は,職権で選任するので職権で解任することができます。
成年後見監督人等は,職権で選任するので職権で解任することができます。
任意後見人は,職権で選任していていないので,職権で解任することはできません
任意後見監督人は,職権で選任するので職権で解任することができます。
職権で選任していないのは,「任意後見人のみ」ということになります。
なお,不行跡(ふぎょうせき)とは,不道徳な行為を指します。日常的に目にする言葉ではないので,読み方さえ分からない人もいると思います。
しかし,こんなところに引っ掛けはありません。
2 成年後見人の業務に疑義があることを理由に,家庭裁判所が直接,成年被後見人の財産状況を調査することはできない。
これは間違いです。
問題の作成の仕方がとても雑に思います。なぜ試験センターが修正することなく,この問題を出題したのかが分かりません。
明らかに元の文章は・・・
成年後見人の業務に疑義があることを理由に,家庭裁判所が直接,成年被後見人の財産状況を調査することができる。
最後を否定形に変えて一丁あがり!!
第28回はこのスタイルが多かったように思います。第29回はあまり見られなくなっています。試験センターでも問題になったのではないかと思いますが,第30回ではまたとんでもなくダメダメ問題が出題されています。これについては,後日お知らせしたいと思います。
ダメダメ問題はそれほど多く出題されることはないと思いますが,そんなところに気がつくことができれば,消去できる可能性が高まります。そうすると正解できる可能性も高まります。
国家試験は緊張した中で,問題を解かなければならないので,普段は絶対にしないようなミスをすることはよくあります。
過去問を解く時は,文章の組み立て方も意識することをおすすめします。それは国試会場で慎重に問題を読むことの訓練になるからです。
3 成年後見人は,正当な事由がある場合,家庭裁判所への届出をもって,その任務を辞することができる。
これも間違いです。
今まで何度も出てきたように,やめるときは,正当な理由があって,家庭裁判所が許可した場合です。
4 成年後見人が成年被後見人を養子にする場合,家庭裁判所の許可は不要である。
これも間違いです。
もちろん許可は必要です。
制度がどうのこうのいう前に,許可は不要であれば,わざわざ出題する意味はないと思いませんか?
すべての選択肢の表現がそろっていて「許可は不要である」という問題なら判断することは難しいですが,表現にばらつきがあると想像できてしまうのです。
そのため,今は表現は極力そろえて出題するようになっています。
そのため,表現のばらつきのある問題は出題されないと思います。しかし,ばらつきのある問題があった場合は,ちょっと意識してみるとよいと思います。そんなところにヒントがあるのです。
5 成年後見人が成年被後見人の居住用不動産を売却する場合,家庭裁判所の許可は不要である。
これも間違いです。
第30回・問題82でも出題されていたとおり,成年被後見人の居住用不動産の売却は,家庭裁判所の許可が必要です。
<今日の一言>
今日の問題は難しいと思いましたか?
知識が足りない人は,難しいと思います。
知識がある人は,簡単だと思います。
簡単だと思った人は,かなりよい感じで仕上がってきていると思います。自信をもって良いと思います。今までの勉強を継続して良いと思います。
難しいと思った人は,まだちょっと知識が足りないように思います。
しかしまだ時間はあります。決してあきらめることなく,出題基準で示されているものをひたすら覚えていけば,合格をつかむことができます。
勉強をこれから始めるという人もいるかもしれません。
合格するためには相当な覚悟が必要です。必死で勉強すればまだ間に合います。
しかし,薄い参考書の知識では合格をつかむことができないので,参考書選びは慎重にしなければなりません。
これは,第32回以降の国試を受験する人も同様です。
このブログでは,「●●がおすすめ」という無責任なことは絶対に言いません。多くの人が使っているからおすすめということもありません。
別な見方をすれば,最も多くの人が使っている参考書が良くないため,合格率30%ということになっている,とも言えるのではないでしょうか。
「●●がおすすめ」と言えないのは,個別性が極めて高いからです。
その逆に絶対におすすめしない勉強法はあります。
今まで一貫して主張してきた「3年間の過去問の知識では絶対に合格できる知識にはならない」ということです。
なぜ今も「3年間の過去問を3回繰り返せば合格できる」といったアドバイスをする人がいて,それを真に受ける人がいるのかが理解できません。
日本語的に解ける問題はほとんど存在しないので,得点するためには,基礎力を高めることは欠かせないのです。
国試問題が変化しているわけですから,勉強方法も変化するのが当然です。
「何を使うか」ではなく,「どのように使うか」がとても重要です。
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