成年後見制度まで理解できれば,この科目はOKなのかもしれませんが,もう一つ取り組んでいきたいと思います。
それは民法に規定された扶養と親権です。
そのうちの親権を学んでいきましょう。
民法が改正されて,成人年齢が20歳から18歳に引き下げられることになったことは記憶に新しいことでしょう。
2022年に施行されます。
いろいろな議論はあったと思いますが,新しいリスクが増えている現代社会に放り出されるのはかなり危険なことだと思います。
2019年6月から恋心を利用した契約を取り消すことができるように「消費者契約法」が改正されますが,そんなものだけではリスクを軽減することはできないのではないかと思っています。
何かの問題が起きてから法整備は行われます。
このように法整備は科学の発達よりも遅れます。これは「社会理論と社会システム」で学ぶ「文化遅滞」でしたね。
さて,未成年は親権の保護のもとにあります。
親権は,成年後見と同じ「財産管理権」&「身上監護権」があります。
ただし,内容がちょっと違います。
<財産管理権>
成年後見 → 善管注意義務
親権 → 自己におけるのと同一の注意義務
善管注意義務を怠ると責任が追及されますが,自己におけるのと同一の注意義務は,そこまでの責任は負いません。自己におけるのと同一の注意義務とは,例えば自分のお金をどこかに落として紛失した場合,とてもがっかりしますが,それによって誰かに責任を追及されることはありません。子のお金を紛失しても同様に責任は追及されません。それが「自己におけるのと同一」という意味です。
<身上監護権>
成年後見 → 生活や療養に関する法律行為
親権 → 法律行為に加えて,結婚などの身分行為に対する同意権,居所指定権,懲戒権,職業許可権など。
成年後見では,身分行為は同意の必要はなく,また取り消すことができません。
このように親権の範囲は広くなっています。
児童虐待への対応として,2016年児童福祉法で,児童のしつけに際して,監護・教育に必要な範囲を超えて児童を懲戒してはならないことが規定されています。
さて,親権に関する出題は,現行カリキュラムでは第23回,第27回,第28回に出題されています。
先述のように親権は児童虐待に関連していることもあり,確実に覚えておきたいものです。
それでは今日の問題です。
第23回・問題74 親権者に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。
1 父母の婚姻中,嫡出子の親権は,父又は母のいずれか一方が行う。
2 父母の離婚後,嫡出子の親権は,父母が共同して行う。
3 父母の離婚に際し,父母の協議で親権者を定めることはできない。
4 嫡出でない子の親権は,子を認知した父と母の協議で父が親権者となれば,父が行う。
5 嫡出でない子の親権は,子を認知した父と母とが共同して行う。
知識がなくても,一般常識の範囲で解ける問題でしょう。
こんな問題で不正解になるのは,もったいないです。
しかし,午前中の最後の科目であり,最後の最後の問題でもあるので,本当に疲れ切った頭で解かなければなりません。
そんなことで,正解するのは思うよりも簡単なことではありません。ある人は「脳の体力を鍛えよう」と言っていたことを思い出します。
この問題で引っかかるとすれば,「嫡出」という言葉でしょう。
嫡出子は,婚姻中に生まれた子
非嫡出子は,婚姻外で生まれた子
これを押さえたところで解説です。
1 父母の婚姻中,嫡出子の親権は,父又は母のいずれか一方が行う。
これは間違いです。
婚姻中の親権は両親が共同で行います。
2 父母の離婚後,嫡出子の親権は,父母が共同して行う。
これも間違いです。
離婚後の嫡出子の親権は,どちらか一方に決めなければなりません。
3 父母の離婚に際し,父母の協議で親権者を定めることはできない。
これも間違いです。
基本的に離婚後の親権は,両親の協議で決めます。
4 嫡出でない子の親権は,子を認知した父と母の協議で父が親権者となれば,父が行う。
これが正解です。
非嫡出子の親権は母親が行いますが,父親が子と認知し,協議での上で父親が親権者と定めることで父親が親権を行うことができます。
しかし,その場合は,婚姻中ではないので
共同で親権を行うことができないため,父親が単独で親権を行うことになります。
5 嫡出でない子の親権は,子を認知した父と母とが共同して行う。
これは間違いです。
先述のように,非嫡出子の親権は,原則的に認知するしないにかかわらず,母親が行います。協議の結果で父親が親権を行うこともできますが,共同で行うことはできません。
<今日の一言>
親権の行使について整理をしましょう。
両親が共同して親権を行使できるのは,婚姻中のみです。
逆に言うと,婚姻中でなければ,親権を共同して行うことはできません。
そのため,非嫡出子を父親が認知し,協議で親権者が父親となった場合は,母親は親権者になることができません。
父親が単独で親権を行使することとなります。もし共同して親権を行使したいのなら,婚姻しなければなりません。
今日の問題は,現行カリキュラム2回目の国試だったためか,旧カリ時代の「法学」の内容を引きずったものとなっています。
この後に親権が出題されるのは,第27回まで待たなければなりません。その問題は次回紹介したいと思います。
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