2018年12月20日木曜日

成年後見制度の徹底理解~その11(任意後見2)

前回から任意後見制度を取り上げています。

任意後見制度が現行カリキュラムで出題されたのは,第23,26,30回の3回のみです。

前回取り上げた問題が第26回,今回取り上げる問題は第30回の国試です。

第26回はこんな問題でした。

1 任意後見契約は,事理弁識能力喪失後の一定の事務を委託する契約書が当事者間で作成されていれば効力を有する。
2 任意後見契約では,本人の事理弁識能力が不十分になれば,家庭裁判所が職権で任意後見監督人を選任する。
3 任意後見人と本人との利益が相反する場合,任意後見監督人があっても特別代理人を選任しなければならない。
4 任意後見人の配偶者は任意後見監督人になることができないが,兄弟姉妹は任意後見監督人になることができる。
5 任意後見監督人の選任後,任意後見人は,正当な理由がある場合,家庭裁判所の許可を得れば任意後見契約を解除できる。


それでは今日の問題です。

第30回・問題79 任意後見契約に関する次の記述のうち,最も適切なものを1つ選びなさい。

1 任意後見契約は,任意後見契約の締結によって直ちに効力が生じる。

2 任意後見契約の締結は,法務局において行う必要がある。

3 任意後見契約の解除は,任意後見監督人の選任後も,公証人の認証を受けた書面によってできる。

4 任意後見人と本人との利益が相反する場合は,特別代理人を選任する必要がある。

5 任意後見人の配偶者であることは,任意後見監督人の欠格事由に該当する。


試験委員は,明らかに第26回・問題81を下敷きにして作成していることがうかがわれます。

第26回と重なっていない問題は,選択1のみです。

しかし,第30回国試が下敷きにしたと思われる第26回国試は,4回前のものなので,一般的に使っている過去3年分の問題では学びきれないものです。なかなか憎いですね。

それでは,解説です。


1 任意後見契約は,任意後見契約の締結によって直ちに効力が生じる。

これは間違いです。

任意後見制度の特徴は,任意後見監督人が選任された時点で効力を生じることです。

任意後見契約を締結は本人が元気な時に行うので,このようなスタイルが必要なのです。


2 任意後見契約の締結は,法務局において行う必要がある。

これも間違いです。

契約の締結は,公証人役場で公正証書によって行われる必要があります。これは毎回出題されているものです。

法務局は,後見契約を登記する場所です。法定後見,任意後見ともに共通です。


3 任意後見契約の解除は,任意後見監督人の選任後も,公証人の認証を受けた書面によってできる。

これも間違いです。

契約解除は,正当な理由があって,家庭裁判所の許可が必要です。そのうえで法務局の任意後見契約終了の登記をします。


4 任意後見人と本人との利益が相反する場合は,特別代理人を選任する必要がある。

これも間違いです。

法定後見制度では,成年後見監督人は必ずしも選任されていません。そのために法定後見制度では特別代理人の選任が必要です。

一方,任意後見制度では,必ず任意後見監督人が選任されます。任意後見監督人が本人側につくので,改めて特別代理人を選任する必要はありません。


5 任意後見人の配偶者であることは,任意後見監督人の欠格事由に該当する。 

これが正解です。

任意後見監督人になれないのは,後見人の配偶者,直系血族,兄弟姉妹です。

第26回が間違いで,第30回が正解になっています。

この問題自体の難易度はそれほど易しいものではありません。しかし第26回での出題実績があるので,欠格事由を正解選択肢にすることができたと考えます。


<今日の一言>

初めて出題したものを正解選択肢にすることはかなりの冒険です。極端に正解率が低下するからです。

本試験では,0点科目になると不合格になってしまいます。

模擬試験は,0点が続出したとしても別に不合格になるわけではありません。

本試験で科目0点の人が多いとおそらく試験センターでは大きな問題となります。場合によっては内定取り消しになるからです。

勉強不足の人が不合格になるのは致し方ないところです。

しかし,勉強をコツコツ行ってきた人でも解けない問題を出題したために,0点科目で不合格になってしまうのは極めて不適切な国試です。

しっかり勉強した人は解ける,勉強が不足している人は解けない。

これが理想の国家試験です


<おまけ>

現行カリキュラムは第22回から実施されています。

第22~25回 模索期
第26~30回 充実期
第31回~  転換期

第25回は,合格基準点が最も低くなった回です。

第30回は,合格基準点が最も高くなった回です。

第31回は,第30回と大きく変わることはないと思いますが,今後予定されているカリキュラム改正に向けた新しい段階に突入していくことは間違いありません。

5年後にどんな分析ができるのか,今から楽しみです。

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