2021年6月5日土曜日

福祉事務所を設置していない町村の役割・機能

福祉事務所を設置しなければならないのは,都道府県と市です。

町村の設置は任意です。

 

現時点(令和3年)で福祉事務所を設置している町村は,全国で45町村にとどまります。

 

 

福祉事務所を設置していなくても,町村には役割・機能があります。

 

福祉事務所を設置していない町村の役割・機能 

社会福祉法 第十八条

 2 福祉事務所を設置していない町村は,社会福祉主事を置くことができる。

 


生活保護法 第十九条

 7 町村長は,保護の実施機関又は福祉事務所の長(以下「福祉事務所長」という。)が行う保護事務の執行を適切ならしめるため,次に掲げる事項を行うものとする。

一 要保護者を発見し,又は被保護者の生計その他の状況の変動を発見した場合において,速やかに,保護の実施機関又は福祉事務所長にその旨を通報すること。

二 第二十四条第十項の規定により保護の開始又は変更の申請を受け取つた場合において,これを保護の実施機関に送付すること。

三 保護の実施機関又は福祉事務所長から求められた場合において,被保護者等に対して,保護金品を交付すること。

四 保護の実施機関又は福祉事務所長から求められた場合において,要保護者に関する調査を行うこと。

 

第二十四条

 10 保護の開始又は変更の申請は,町村長を経由してすることもできる。町村長は,申請を受け取つたときは,五日以内に,その申請に,要保護者に対する扶養義務者の有無,資産及び収入の状況その他保護に関する決定をするについて参考となるべき事項を記載した書面を添えて,これを保護の実施機関に送付しなければならない。

 

 

福祉事務所を設置していなくても,やるべきことはたくさんあります。

 

それでは,今日の問題です。

 

第30回・問題66 福祉事務所を設置していない町村の役割・機能に関する次の記述のうち,最も適切なものを1つ選びなさい。

1 町村は,社会福祉主事を置くことができる。

2 町村は,生活保護法における保護の変更の申請を受け取ったときは,保護の変更を決定することができる。

3 保護の実施機関は,町村に対し被保護者への保護金品の交付を求めることはできない。

4 町村は,被保護者に対し必要な指導又は指示をすることができる。

5 保護の開始の申請は,町村を経由して行うことができない。

 

答えは,すぐわかるかもしれませんが,一応解説します。

 

1 町村は,社会福祉主事を置くことができる。

 

これが正解です。

 

社会福祉主事は福祉事務所に配置されるという固定観念があると正解できないかもしれません。

 

社会福祉主事は,福祉事務所には配置しなければなりません。

 

しかし,福祉事務所を設置していない町村も任意で配置することができます。

 

何を行うかと言えば,

 

老人福祉法,身体障害者福祉法及び知的障害者福祉法に定める援護又は更生の措置に関する事務

 

この三法は,市町村が取り扱っているためです。

 

2 町村は,生活保護法における保護の変更の申請を受け取ったときは,保護の変更を決定することができる。

 

町村は,生活保護法における保護の変更の申請を受け取ったときは,保護の実施機関に送付します。

 

3 保護の実施機関は,町村に対し被保護者への保護金品の交付を求めることはできない。

 

保護の実施機関は,町村に対し被保護者への保護金品の交付を求めることはできます。

 

例えば,公営住宅への入居などです。

 

4 町村は,被保護者に対し必要な指導又は指示をすることができる。

 

被保護者に対し必要な指導又は指示を行うことはできません。

 

保護の実施機関が行うことです。

 

指導又は指示を市町村も行うことになると,保護の実施機関と重なってしまいます。

 

法制度は,絶対にこういったことはありません。

 

これは,ウェーバーが示した官僚制の特徴でもあります。

担当する部署が最も専門性が高いのです。

 

そのため,法を飛び越えることもありません。だから制度のすき間が生じることもあります。

既存の制度では想定していなかった新しい福祉ニーズが生じた場合,従来の枠組みでは対応が困難になるのは,こういった理由からです。決して職務怠慢だからではありません。

 

5 保護の開始の申請は,町村を経由して行うことができない。

 

保護の開始又は変更の申請は,町村長を経由してすることもできます。

2021年6月4日金曜日

生活保護法~原理・原則

今回は,生活保護法の原理・原則を取り上げます。

 

今まで何度も取り上げてきたとおり,出題頻度はかなり高いものです。

 

基本原理

①国家責任の原理
②無差別平等の原理
③最低生活の原理
④保護の補足性の原理



基本原則
①申請保護の原則
②基準及び程度の原則
③必要即応の原則
④世帯単位の原則

 

 

言葉は難しいですが,しっかり押さえて得点したいです。

 

まずは,以下の過去記事を押さえましょう。

 

生活保護の原理・原則~その1

https://fukufuku21.blogspot.com/2018/09/1_9.html

 

それでは,今日の問題です。

 

第30回・問題65 現行の生活保護法に関する次の記述のうち,最も適切なものを1つ選びなさい。

1 保護は,個人を単位として行われるが,特別の場合には世帯を単位として行うこともできる。

2 補足性の原理により,素行不良な者は保護の受給資格を欠くとされている。

3 保護の基準は,国会の審議を経て,法律で定めることとなっている。

4 「要保護者」とは,現に保護を受けている者と定義されている。

5 最低限度の生活を保障するとともに,自立を助長することを目的としている。

 

この問題の正解は,かなりわかりやすいものです。

そのために難易度はそれほど高くはないでしょう。

 

こういったところに,第30回の国家試験のいわゆるボーダーラインが99点となった理由があるように思います。

 

それでは,解説です。

 

1 保護は,個人を単位として行われるが,特別の場合には世帯を単位として行うこともできる。

 

「世帯単位の原則」です。

 

保護の基本は,世帯単位です。

 

特別な場合に,個人を単位として保護を行うことができます。

 

2 補足性の原理により,素行不良な者は保護の受給資格を欠くとされている。

 

補足性の原理

保護は,生活に困窮する者が,その利用し得る資産,能力その他あらゆるものを,その最低限度の生活の維持のために活用することを要件として行われる。

2 民法に定める扶養義務者の扶養及び他の法律に定める扶助は,すべてこの法律による保護に優先して行われるものとする。

3 前二項の規定は,急迫した事由がある場合に,必要な保護を行うことを妨げるものではない。

 

重要なのは,「無差別平等の原理」です。

 

素行不良な者は保護の受給資格を欠くなら,無差別平等の原理に反してしまいます。

 

無差別平等は「原理」なので,例外はありません。無差別平等はとことん無差別平等です。

 

3 保護の基準は,国会の審議を経て,法律で定めることとなっている。

 

「基準及び程度の原則」です。

 

保護の基準は,厚生労働大臣が定めます。

 

4 「要保護者」とは,現に保護を受けている者と定義されている。

 

要保護者は,現に保護を受けているといないとにかかわらず,保護を必要とする状態にある者をいいます。

 

5 最低限度の生活を保障するとともに,自立を助長することを目的としている。

 

これが正解です。

 

生活保護の目的は「最低限度の生活保障」&「自立の助長」です。

2021年6月3日木曜日

生活保護の動向

今回は,「生活保護の被保護者調査」を取り上げたいと思います。


これに限らず,社会福祉士の国家試験の出題には,ある基本ルールがみられます。


・年度によって順位が入れ替わるものは,出題されない。

・年度によって大きく数値が変わるものは,出題されない。

・小さな差を問う出題はされない。


ごくたまに基本ルールを無視したものもありますが,めったにみられないレアケースです。


基本ルールを知らないのか,めったにみられないレアケースに着目しているためなのか,よくわかりませんが,「変化があったところは要注意」と言う先生がいます。


しかし,はっきり言えば,逆にそういったものは,覚える優先度は限りなく低いものです。


社会福祉士の国家試験では,傾向が明確なものを選んで出題しています。


それでは,今日の問題です。


第30回・問題64 「生活保護の被保護者調査(平成27年度(月次調査確定値))」(厚生労働省)による次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。

1 保護率(人口百対)は,17.0%である。

2 被保護実人員数(保護停止中を含む)は,約80万人である。

3 保護の開始の主な理由のうち,「傷病」が最も多い。

4 保護の廃止の主な理由のうち,「死亡」が最も多い。

5 保護の種類別に扶助人員をみると,「医療扶助」が最も多い。


生活保護の動向は,「生活保護の被保護者調査」から出題されていますが,数値が明確なので,極めて覚えやすいものです。


しかも,先に述べたような基本ルールにのっとった出題がみられるので,この問題のようにかなり前の出題であっても,今もそのまま学べます。


つまり過去問を使った勉強が効果的になります。


それでは,解説です。


1 保護率(人口百対)は,17.0%である。


保護率の出題は,ちょっとだけ注意が必要です。古くは,パーミル(‰)で出題されてきましたが,この時からパーセント(%)で出題されています。


パーミルは,千分率と言って,1000分の1を単位とします。


パーセントは,なじみ深いものですが,百分率と言って,100分の1を単位とします。


現在の保護率は,だいたい1.7パーセントです。



2 被保護実人員数(保護停止中を含む)は,約80万人である。


この選択肢は特徴的です。


現在の被保護実人員数は,200万人を超えています。しかしこの選択肢は80万人というように大きく数値を変えて出題しています。


これでわかるように,覚えるべき数値は,ざっくりで良いです。


勉強中に,新しい報告書が出ると「どの数値を覚えたら良いの?」と焦る人はいますが,そんなことを気にすることはありません。


細かい数値まで問われる出題はされないからです。


被保護実人員数は,200万人を超えている


こういった覚え方で十分です。


3 保護の開始の主な理由のうち,「傷病」が最も多い。


この数値も特徴です。


かつては,傷病が最も多かったのですが,その後,順位が入れ替わり,現在は,「貯金等の減少・喪失」が最も多くなっています。


実は,これは久しぶりの出題でした。1位と2位の数値が大きく差がついたタイミングで出題されたのです。


4 保護の廃止の主な理由のうち,「死亡」が最も多い。


これが正解です。

保護の開始理由の順位は,入れ替わっていますが,廃止理由は,死亡がずっと1位です。


順位の2位を問う出題はないので,覚える時はひたすら順位の1位のものだけを覚えるようにします。


2位以下も覚えると混乱の原因となります。


5 保護の種類別に扶助人員をみると,「医療扶助」が最も多い。


医療扶助は要注意です。


医療扶助が最も多いのは,保護費です。費用全体の全体の半分を占めます。


しかし,扶助人員で最も多いのは,生活扶助です。


ここを整理して理解しておく必要があります。


2021年6月2日水曜日

生活困窮者自立支援法

今回は,生活困窮者自立支援法を取り上げたいと思います。


重要な制度ですが,覚えるポイントは少ないのできっちり押さえましょう。

   

 

目的

生活困窮者の自立支援体制を構築と自立促進

実施主体

福祉事務所を設置する自治体

必須事業

〈自立相談支援事業〉

生活困窮者等からの相談を受けて,自立プランの作成支援等。

 〈住居確保給付金の支給〉

離職などにより住居を失った者などに対する一定期間の家賃相当額の支給。

任意事業

・就労準備支援事業

・一時生活支援事業

・家計改善支援事業

・学習支援事業 その他

国庫負担率

4分の3

 

それでは,今日の問題です。

 

第30回・問題63 生活困窮者自立支援法に関する次の記述のうち,最も適切なものを1つ選びなさい。

1 住居の確保を目的とした給付金を支給する制度が設けられている。

2 一時生活支援事業とは,住居を有する生活困窮者に対して食事の提供を行う事業である。

3 自立相談支援事業は,相談支援を通して生活困窮者に就職のあっせんを行う事業である。

4 就労準備支援事業は,3年を限度として訓練を提供する事業である。

5 家計相談支援事業は,生活困窮者の家計に関する問題につき生活困窮者からの相談に応じ,必要な資金の貸付けをする事業である。

 

事業がたくさんあって覚えるのが大変だと思うかもしれませんが,重要なのは必須事業です。

 

そういったことを考えながら解くと精度が上がります。

 

それでは解説です。

 

1 住居の確保を目的とした給付金を支給する制度が設けられている。

 

これが正解です。

 

必須事業である「住居確保給付金の支給」が正解になっています。

 

2 一時生活支援事業とは,住居を有する生活困窮者に対して食事の提供を行う事業である。

 

一時生活支援事業は,「住居を有しない」生活困窮者に対して食事の提供を行う事業です。

 

正解がわかると,「住居を有する」というのは,「住居を有しない」よりもおかしな感じがしませんか?

 

「住居を有する人」を対象にするなら「住居を有しない人」に対しては,どんな制度があるのだろうと疑問がわいてきます。

 

一時生活支援事業は,ホームレスを対象とした事業なのです。

 

3 自立相談支援事業は,相談支援を通して生活困窮者に就職のあっせんを行う事業である。

 

自立相談支援事業では,就職のあっせんは行いません。

 

ここが法制度の特徴です。

 

何かというと,法制度は重ならないように作られるということです。

 

別な言い方をすれば,既存のもので対応できないことを新しい法制度を作って対応します。

 

就職のあっせんは,ハローワークが行いますね。それなのに別な制度は作らないということです。

 

4 就労準備支援事業は,3年を限度として訓練を提供する事業である。

 

就労準備支援事業を知らなくても,訓練を行うのに3年は長すぎると思う感性が必要です。

 

そんなに時間はかけません。正しくは1年です。

 

このように聞くと納得しませんか?

 

5 家計相談支援事業は,生活困窮者の家計に関する問題につき生活困窮者からの相談に応じ,必要な資金の貸付けをする事業である。

 

この時は,「家計相談支援事業」と出題されていますが,その後,法改正があり,現在は,「家計改善支援事業」となっています。

 

もし,この時から現在の名称なら,この選択肢は別の内容になっていたでしょう。

 

これも選択肢4と同じです。

 

貸付けは,生活福祉資金貸付事業があります。

 

制度が重なる制度は作りません。それが法制度です。

2021年6月1日火曜日

知的障害者福祉法の規定

今回は,知的障害者福祉法を取り上げます。

 

三障害の法律で,障害者の定義が出題されたときは,知的障害者福祉法は要注意です。

 

というのは,知的障害者福祉法では,知的障害者の定義がなされておらず,療育手帳も法に規定されていません。


 さて,この法律で押さえておきたいのは,知的障害者更生相談所と知的障害者福祉司です。

 

知的障害者更生相談所

・都道府県は、知的障害者更生相談所を設けなければならない。

・知的障害者の福祉に関し、主として市町村の更生援護の実施に関し、市町村相互間の連絡及び調整、市町村に対する情報の提供その他必要な援助を行うこと並びにこれらに付随する業務を行う。

・知的障害者に関する相談及び指導のうち、専門的な知識及び技術を必要とするものを行う。

・十八歳以上の知的障害者の医学的、心理学的及び職能的判定を行う。

・知的障害者更生相談所は、必要に応じ、巡回して、前項の業務を行うことができる。

知的障害者福祉司

・都道府県は、その設置する知的障害者更生相談所に、知的障害者福祉司を置かなければならない。

・市町村は、その設置する福祉事務所に、知的障害者福祉司を置くことができる。

 

 

それでは,今日の問題です。

 

第30回・問題62 知的障害者更生相談所の業務などに関する次の記述のうち,最も適切なものを1つ選びなさい。

1 緊急時に知的障害者の一時保護を行う。

2 知的障害者の医学的,心理学的及び職能的判定を行う。

3 成年後見人の選任を行う。

4 社会福祉士を配置しなければならない。

5 精神保健福祉士を配置しなければならない。

 

 

国家試験では,1科目の問題数は少ないため,出題されるものは限られます。

 

現時点では「障害者」の科目は7問出題されているので,たとえ4年間の問題を完璧に覚えてもわずか28問しかありません。

 

そんな量では,出題基準に示される内容をカバーできるわけがありません。

 

知的障害者福祉法に関する出題は少ないので,過去問で勉強してもなかなか出てきません。

 

この問題は,そういった意味でレアケースのものなので貴重です。別な言い方をすれば,過去問で勉強していた人は,解けない問題です。

 

だから参考書に書かれたものを覚えていく勉強が欠かせません。

 

それでは解説です。

 

1 緊急時に知的障害者の一時保護を行う。

 

こんな規定はありません。勉強不足の人は,こういった記述があると慌てます。

そして混乱します。

 

そのため試験委員が意識してそう作っているかどうかはわかりませんが,難易度を高めます。

 

2 知的障害者の医学的,心理学的及び職能的判定を行う。

 

これが正解です。

 

知的障害者更生相談所の役割では,これが重要です。

専門機関でないと判定を行うことが難しいからです。

 

しかし,知的障害者更生相談所は,都道府県に設置されるので,住民にとって距離が遠すぎます。

そのために,巡回して業務を行うことができることをあえて法で規定しています。

 

これらの規定は,身体障害者更生相談所も同じです。

 

3 成年後見人の選任を行う。

 

成年後見人の選任は,申立権者の請求により,家庭裁判所が行います。

 

4 社会福祉士を配置しなければならない。

 

現在のところ,社会福祉士を配置しなければならないのは,地域包括支援センターしかありません。

 

この手の問題が出題されたらすぐ消去しなければなりません。

 

5 精神保健福祉士を配置しなければならない。

 

知的障害者更生相談所に配置しなければならないのは,知的障害者福祉司です。

 

社会福祉士の資格を持っている者は,実務経験なしで知的障害者福祉司として任用されます。

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