2022年11月20日日曜日

タウンゼントはよく出題されます。

 試験対策の先生が「これはよく出題されます」と言うことがあります。このような話を聞くと,この「よく」というのは,出題回数が何回くらい以上だと「よく」と言えるのかと思います。


タウンゼントは,第4,10,14,19,20,23,26,27,30,34回に出題されています。


タウンゼントは,「超よく出題されます」と言えるでしょう。これを覚えずに何を覚えるのでしょう。


タウンゼントが提唱した「相対的剥奪」は,ブース,ラウントリーの絶対的貧困の概念と異なり,自分が生活している環境と比べて,劣っている場合に貧困となる相対的貧困に関連する概念です。


初めて国試に登場したのは,以下の問題です。


第4回・問題131 相対的剥奪(relative deprivation)の概念に関する次の記述のうち,正しいものに〇,誤っているものに×をつけた場合,その組み合わせとして正しいものを一つ選びなさい。

A 貧困理論で,P. B. タウンゼント(Townsend,P. B. )が提出した概念である。

B 社会で慣習になっているか,広く是認されている生活を営むのに必要な生活資源を欠いている状態である。

C 社会システム理論で,T.パーソンズ(Parsons,T.)が唱えた概念である。

D 人が自分の置かれている状態を,絶対的な水準ではなく,準拠集団との比較において劣っていると感じている状態である。


(組み合わせ)

 A B C D

1 〇〇〇×

2 〇〇×〇

3 〇×〇〇

4 ×〇〇×

5 ×〇×〇


今はない〇×式の組み合わせ問題です。選択肢C以外はすべて正しいと考えられるので,正解は2ということになるでしょう。


これをもとに今日の問題です。


第30回・問題28 貧困に関する次の記述のうち,最も適切なものを1つ選びなさい。

1 ポーガム(Paugam,S)は,車輪になぞらえて,経済的貧困と関係的・象徴的側面の関係を論じた。

2 タウンゼント(Townsend,P)は,相対的剥奪指標を用いて相対的貧困を分析した。

3 ピケティ(Piketty,T.)は,資産格差は貧困の世代間連鎖をもたらさないと論じた。

4 ラウントリー(Rowntree,B.S)は,ロンドン市民の貧困調査を通じて「見えない貧困」を発見した。

5 リスター(Lister,R.)は,社会的降格という概念を通して,現代の貧困の特徴を論じた。



多くの人が苦手とする人名問題です。


今となってはいずれの人名も参考書に書かれていると思いますが,ポーガムとピケティはこの時初めて出題した人名です。


リスターは,第27回に出題されて2回目の登場です。


しかし,そんなよく知らない人は正解ではなく,「よく出題されています」のタウンゼントが正解です。


社会福祉士の国家試験は,多くの人が思うほど意地悪ではない,というのが私たちチームfukufku21の見解です。


それでは解説です。


1 ポーガム(Paugam,S)は,車輪になぞらえて,経済的貧困と関係的・象徴的側面の関係を論じた。


ポーガムが論じたのは,社会的降格という概念を通した現代の貧困の特徴です。


2 タウンゼント(Townsend,P)は,相対的剥奪指標を用いて相対的貧困を分析した。


前説のとおり,これが正解です。


第4回国試の問題に従えば,相対的剥奪は,社会で慣習になっているか,広く是認されている生活を営むのに必要な生活資源を欠いている状態です。


自分が身を置いている社会によって貧困のレベルが異なるのが,相対的貧困です。


3 ピケティ(Piketty,T.)は,資産格差は貧困の世代間連鎖をもたらさないと論じた。


ピケティは知らずとも,貧困の世代間連鎖があるのは経験的にわかるはずです。


貧乏な家庭はそこから這い上がるのはなかなか難しいことです。


そのために,生活困窮者自立支援法によって「子どもの学習・生活支援事業」が実施されています。


4 ラウントリー(Rowntree,B.S)は,ロンドン市民の貧困調査を通じて「見えない貧困」を発見した。


ロンドン市民に対して貧困調査を行ったのは,ブースです。ラウントリーが行ったのは,ヨーク市です。


5 リスター(Lister,R.)は,社会的降格という概念を通して,現代の貧困の特徴を論じた。


リスターが論じたのは,貧困には,物質面の欠乏と非物質的な欠乏があることです。

2022年11月19日土曜日

資源の配分における貢献原則とニーズ原則~その2

今回も貢献原則とニーズ原則に関する問題です。


まずは,前回のものを復習です。

前回の問題

https://fukufuku21.blogspot.com/2022/11/blog-post_18.html


それでは今日の問題です。


第22回・問題26 福祉政策における需要とニーズ(必要)の概念に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。

1 ニーズ(必要)に応じた分配とは,人々の出身,能力,貢献などとは無関係に,各人が必要とする資源を分配することを意味する。

2 福祉サービスの需要のうち,その存在が気付かれていないものを無効需要ないし潜在需要といい,気付かれているものを有効需要という。

3 必要即応の原則とは,福祉サービスは,年齢や性別など個人や世帯の相違を考慮して有効かつ適切に提供すべきことを意味し,社会福祉法で定められている。

4 福祉サービスに対する行政需要とは,国民の政府に対する要求や要望のうち,市場を通じて供給することが特に可能な消費者の需要のことである。

5 ブラッドショー(Bradsbaw,J.)のいう「エクスプレスト・ニード」とは,専門家が自らの経験に基づいて感じとったニーズ(必要)のことを意味する。


答えはすぐわかると思いますが,決して簡単なものではありません。


なぜなら,消去法では正解することができないからです。


それでは解説です。


1 ニーズ(必要)に応じた分配とは,人々の出身,能力,貢献などとは無関係に,各人が必要とする資源を分配することを意味する。


これが正解です。


ニーズ原則(必要原則)について述べたものです。


ニーズ原則(必要原則)は,必要としている人に資源を配分する原則で,社会扶助,特に公的扶助がその代表です。


2 福祉サービスの需要のうち,その存在が気付かれていないものを無効需要ないし潜在需要といい,気付かれているものを有効需要という。


これは,その後は一度も出題されていないものです。


潜在需要は,その存在が気付かれていないものであることは適切ですが,有効需要は,その存在が気付かれているだけではなく,利用することが可能なことをいいます。


3 必要即応の原則とは,福祉サービスは,年齢や性別など個人や世帯の相違を考慮して有効かつ適切に提供すべきことを意味し,社会福祉法で定められている。


必要即応の原則が定められているのは,生活保護法です。必要即応の原則は,保護の原理・原則の一つです。


4 福祉サービスに対する行政需要とは,国民の政府に対する要求や要望のうち,市場を通じて供給することが特に可能な消費者の需要のことである。


行政需要は,行政に対する要望のことです。


5 ブラッドショー(Bradsbaw,J.)のいう「エクスプレスト・ニード」とは,専門家が自らの経験に基づいて感じとったニーズ(必要)のことを意味する。


ブラッドショーのニーズの分類は,このように英語でも出題されるので要注意です。


エクスブレスト・ニードは,表出されたニードのことです。つまりニーズを感じ取るのは専門家ではなく,本人だということになります。その上で,ニーズを充足するために行動することが表出されたニードです。

2022年11月18日金曜日

資源の配分における貢献原則とニーズ原則

今回は,資源の配分における「貢献原則」と「ニーズ原則(必要原則)」を取り上げたいと思います。


貢献原則は,多く貢献した人に多くの資源を配分する原則です。


ニーズ原則(必要原則)は,必要としている人に資源を配分する原則です。


貢献原則は,社会保険,特に厚生年金がその代表です。

多く拠出した(つまり多く貢献した)人は,多く給付されます。


ニーズ原則(必要原則)は,社会扶助,特に公的扶助がその代表です。


拠出せずとも困窮の事実に基づいて(つまりニーズに応じて)給付されます。


どちらが優れていて,どちらが劣っているというものではありません。制度に応じてより適切な配分の方法を考えます。


それでは,今日の問題です。


第28回・問題25 福祉サービス利用者のニーズに関する次の記述のうち,適切なものを1つ選びなさい。

1 政府による資源配分では,ニーズ原則が貫かれている。

2 ニーズの質や水準にかかわりなく,サービスに定額の負担を課すことを,普遍主義という。

3 ニーズ充足の評価には,主観的評価も含まれる。

4 サービス情報が公開されていれば,ニーズが潜在化することはない。

5 その人の主観的な欲求が表現されたもの以外は,ニーズとはみなせない。


内容がわからなくても,正解するのは,それほど難しくない問題かもしれません。


正解は,選択肢3です。


3 ニーズ充足の評価には,主観的評価も含まれる。


主観的評価とは,「満足した」「良かった」というようなものです。


たとえば,身体の清潔が保てないというニーズがある場合,清潔になればそれだけで良いわけでありません。


清潔になっても,乱暴に扱われては良くないですね?


サービスには,どのようにサービスが提供されたのか,というプロセス評価が求められます。


その時の評価軸に「主観的評価」が必要です。


それでは,そのほかの解説です。


1 政府による資源配分では,ニーズ原則が貫かれている。


早速今日のテーマが登場しました。


資源配分には,ニーズ原則(必要原則)のほかに,貢献原則があります。


2 ニーズの質や水準にかかわりなく,サービスに定額の負担を課すことを,普遍主義という。


普遍主義とは,資力調査(ミーンズテスト)を行わずにサービスを提供することをいいます。


普遍主義の対義語は選別主義です。


ニーズの質や水準にかかわりなく,サービスに定額の負担を課すことは,応益負担だと言えます。


応益負担は,サービスを利用するとそれに応じた対価を負担するものです。


応益負担の対義語は応能負担です。応能負担は所得に応じて対価を負担します。


4 サービス情報が公開されていれば,ニーズが潜在化することはない。


サービス情報が公開されていても,サービスがあることが周知されていないとニーズがあることに気がつかないかもしれません。


5 その人の主観的な欲求が表現されたもの以外は,ニーズとはみなせない。


ブラッドショーが論じたニーズでは,その人の主観的な欲求が表現されたものとして,感得されたニードと表出されたニードがあります。


それだけではなく,他者からの視点である「比較ニード」と「規範的ニード」もあります。


「比較ニード」と「規範的ニード」もニードです。

2022年11月17日木曜日

ブラッドショーの論じたニードの分類

ブラッドショーは,ニーズを4つに分類しています。













これをもとに,今日の問題です。

 

第31回・問題105 ブラッドショウ(Bradshaw,J.)のニード類型論に関する次の記述のうち,最も適切なものを1つ選びなさい。

1 規範的ニードは,同じ特性を持つ別の人や地域などとの比較により明らかにされる。

2 規範的ニードは,「望ましい」基準との対比において,専門家や行政官などが存在を認めたニードを指す。

3 規範的ニードは,クライエントとの契約によってその内容が定まる。

4 比較ニードは,クライエントによって体感的に自覚される。

5 比較ニードは,その存在が社会的に認知されているニードを指す。

 

なかなかの難問です。

 

正解は,選択肢2です。

 

2 規範的ニードは,「望ましい」基準との対比において,専門家や行政官などが存在を認めたニードを指す。

 

こういった問題の難易度が高いのは,問題によって表現が変わるからです。

 

「言い回しが変わるとわからなくなる」と言う人がいますが,それは理解不足を示しています。

 

「比較ニード」と「規範的ニード」は,専門職がニードを判定するための物差しです。

関連記事

https://fukufuku21.blogspot.com/2020/06/blog-post_22.html

 

それではほかの選択肢も確認します。

 

1 規範的ニードは,同じ特性を持つ別の人や地域などとの比較により明らかにされる。

 

これは,比較ニードについて述べたものです。

 

3 規範的ニードは,クライエントとの契約によってその内容が定まる。

 

規範的ニードの内容は,社会的に望ましい状態(社会規範)に照らしてみて,不足している部分です。

 

4 比較ニードは,クライエントによって体感的に自覚される。

 

これは,感得されたニードについて述べたものです。

 

5 比較ニードは,その存在が社会的に認知されているニードを指す。

 

これは,規範的ニードについて述べたものです。

2022年11月16日水曜日

福祉元年について

まずは戦後の社会保障制度の変遷を考えてみたいと思います。

 

昭和20年代は,国民全体が貧しく,救貧の時代です。救貧の中心的制度は,公的扶助です。

 

昭和30年代に入ると,高度経済成長の時代になり,防貧の時代になります。防貧の中心的制度は,社会保険です。

 

日本に限らず,世界の資本主義国家は,社会保障制度を整えて,福祉国家に変遷していきます。

もし,資本主義国家が福祉国家にならなかったとしたら,世界中が共産主義の国になっていたかもしれません。

 

昭和40年代に入っても,高度経済成長は続きます。

 

昭和48年(1973年)は,給付内容の拡大が図られ,「福祉元年」と呼ばれました。

 

この時に行われたもののうち,代表的なものは,以下の2つです。

 

①70歳以上の医療費の自己負担分を支給する「老人医療費無料化」。

②物価に合わせて年金の給付額が変動する「物価スライド」。

 

①「老人医療費無料化」は,昭和57年(1982年)の老人保健法成立に伴い,老人医療費の一部負担が導入されて終わりました。

 

②「物価スライド」は,平成16年(2004年)に,給付額を緩やかに変動させる「マクロ経済スライド」という仕組みに変更されています。

 

昭和50年代は,社会保障制度の見直しの時期に入ります。その一つが老人保健法による「老人医療費の一部負担」の導入です。

 

平成時代以降は,少子高齢化に対応する施策が実施されていきます。

 

それでは,今日の問題です。

 

第32回・問題26 1973年(昭和48年)の「福祉元年」に実施した福祉政策に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。

1 年金の給付水準を調整するために物価スライド制を導入した。

2 標準報酬の再評価を行い,厚生年金では「9万円年金」を実現した。

3 被用者保険における家族療養費制度を導入した。

4 老人医療費支給制度を実施して,60歳以上の医療費を無料にした。

5 老人家庭奉仕員派遣事業が法制化された。

 

聞いたことがないものが含まれるこの問題は,正解がわからないと消去法では答えられないというかなり難易度が高い問題だと言えます。

 

それでは,解説です。

 

1 年金の給付水準を調整するために物価スライド制を導入した。

 

これが正解です。

 

前説の通り,福祉元年では,物価スライドが導入されています。

 

物価スライドは,平成16年から,給付額を緩やかに変動させる「マクロ経済スライド」に変わっています。

 

2 標準報酬の再評価を行い,厚生年金では「9万円年金」を実現した。

 

「9万円年金」がよくわからないものでした。

 

当時の厚生省は,被用者の標準的なモデルの年金額(月額)を想定していました。

 

推移は以下のようになります。

 

年

モデル年金の月額

昭和40年(1965年)

1万円(1万円年金と呼ばれる)

昭和44年(1969年)

2万円(2万円年金と呼ばれる)

昭和48年(1973年)

5万円(5万円年金と呼ばれる)

昭和51年(1976年)

9万円

昭和55年(1980年)

13万円

平成元年(1989年)

20万円

 

福祉元年に実現したのは5万円年金,9万円(9万円年金と呼ばれたかは不明)になったのは,昭和51年(1976年)のことです。

 

3 被用者保険における家族療養費制度を導入した。

 

家族療養費は,家族に対する療養の給付(医療の現物支給のこと)です。

導入されたのは,昭和17年(1942年)の健康保険法の改正によるものです。

 

4 老人医療費支給制度を実施して,60歳以上の医療費を無料にした。

 

老人医療費支給制度を実施したのは適切ですが,年齢は70歳以上です。

 

5 老人家庭奉仕員派遣事業が法制化された。

 

老人家庭奉仕員派遣事業とは,現在のホームヘルプサービスです。

 

昭和30年代から先進的な自治体が実施していた事業を昭和38年(1963年)に老人福祉法で法制化しました。

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