2023年9月5日火曜日

ICF(国際生活機能分類)の徹底理解

 ICF(国際生活機能分類)は,WHO(世界保健機構)がそれまでのICIDH(国際障害分類)に代わって,作ったものです。


生活機能は

「心身機能・身体構造」

「活動」

「参加」


の3つの次元で構成され,これらに影響を及ぼす「背景因子」(環境因子個人因子)で構成されています。


なお,環境因子には,促進因子と阻害因子があります。個人因子にはありません。


ICFで使われる用語の整理


生活機能

心身機能

 身体系の生理的機能(心理的機能を含む)のこと。

身体構造

 器官・肢体とその構成部分などの身体の解剖学的部分のこと。

活動

 課題や行為の個人による遂行のこと。

参加

 生活・人生場面への関わりのこと。


心身機能・身体構造の否定的側面

機能障害(構造障害を含む)

 著しい変異や喪失などといった心身機能または身体構造上の問題のこと。


活動と参加の否定的側面

活動制限

 個人が活動を行うときに生じる難しさのこと。

参加制約

 個人が何らかの生活・人生場面に関わるときに経験する難しさのこと。


背景因子

環境因子

 人々が生活し,人生を送っている物的な環境や社会的環境,人々の社会的な態度による環境を構成する因子のこと。

個人因子

 個人の人生や生活の特別な背景のこと。


これを押さえたところで今日の問題です。


第32回・問題4

事例を読んで,国際生活機能分類(ICF)に基づいて分類する場合,正しいものを1つ選びなさい。

〔事 例〕

 Aさん(50歳男性)は,脳出血により片麻痺を残したが,リハビリテーションによって杖と下肢装具を用いた自立歩行を獲得し,復職を達成した。混雑時の通勤の負担と,思うようにならない気分の落ち込みから仕事を休みがちとなったが,職場より出勤時間の調整が図られ,仕事を再開するに至った。

1 片麻痺は,「活動」に分類される。

2 歩行は,「心身機能・身体構造」に分類される。

3 歩行に用いた杖と下肢装具は,「個人因子」に分類される。

4 気分の落ち込みは,「活動」に分類される。

5 出勤時間調整の職場の配慮は,「環境因子」に分類される。


ICFは,最近はこのように事例問題のスタイルでも出題されています。


その分,問題の難易度が少し上がります。


落ち着いて考えてみることが大切です。


それでは,解説です。


1 片麻痺は,「活動」に分類される。


片麻痺は,身体の解剖学的部分なので,「心身機能・身体構造」に分類します。


2 歩行は,「心身機能・身体構造」に分類される。


歩行は,歩くという行為を遂行するので,「活動」に分類します。


3 歩行に用いた杖と下肢装具は,「個人因子」に分類される。


杖と下肢装具は,物的な環境なので「環境因子」に分類します。


4 気分の落ち込みは,「活動」に分類される。


気分の落ち込みは,気分という心理的機能なので,「心身機能・身体構造」に分類します。


5 出勤時間調整の職場の配慮は,「環境因子」に分類される。


これが正解です。


出勤時間調整の職場の配慮は,社会的環境を整えることなので,「環境因子」に分類します。

環境因子には,促進因子と阻害因子があります。

職場が配慮してくれれば,職場は促進因子となります。

職場の理解が得られなければ,職場は阻害因子となり得ます。


個人因子には,促進因子も阻害因子もありません。

そういったことも含めて個人だからでしょう。

2023年9月4日月曜日

小腸と大腸

小腸は,消化と栄養分の吸収を行います。栄養分を吸収する際,水分も吸収します。体内に入った水分のほとんどは小腸が吸収しています。


大腸は,残りの水分を吸収するとともに便をつくります。


それでは,今日の問題です。


第32回・問題3 

消化器の構造と機能に関する次の記述のうち,適切なものを1つ選びなさい。

1 唾液には,消化酵素は含まれない。

2 胃粘膜からは,強アルカリ性の消化液が分泌される。

3 膵臓には,内分泌腺と外分泌腺がある。

4 小腸は,水分を吸収しない。

5 胆汁は,胆のうで作られる。


この問題の難易度はかなり高いです。


それでは,解説です。


1 唾液には,消化酵素は含まれない。


唾液には,炭水化物を消化するアミラーゼが含まれます。


ご飯をよく噛んで食べると甘味を感じるのは,アミラーゼの働きによるものです。


2 胃粘膜からは,強アルカリ性の消化液が分泌される。


胃酸と呼ばれるように,胃粘膜からは酸性の消化液が分泌されます。


3 膵臓には,内分泌腺と外分泌腺がある。


これが正解です。


膵臓には,内分泌腺と外分泌腺があります。


内分泌腺には,有名なランゲルハンス島があり,α細胞から血糖値を上げるグルカゴン,β細胞から血糖値を下げるインスリン,などが分泌されます。


外分泌腺からは消化酵素の膵液が分泌されます。


4 小腸は,水分を吸収しない。


水分を吸収するのは,大腸というイメージが強いので,小腸は水分を吸収しないと思ってしまうかもしれません。


しかし,消化管の中の水分のほとんどは,小腸で吸収されます。


大腸は,最後の水分を吸収しています。


5 胆汁は,胆のうで作られる。


この問題が難しいのは,この選択肢です。

胆汁が作られるのは,肝臓です。


胆のうは,胆汁をためておくところです。


もし,胆汁が作られるのが,単一の臓器だったとしたら,胆のうという名称ではなく,「胆臓」という名称になるのではないでしょうか。


しかし,そんな臓器はありません。

2023年9月3日日曜日

高齢者の脱水

ヒトの体には,水分が多く含まれます。


高齢者になると,細胞内の水分量が減少します。若い時に比べると肌が乾燥するため,水分量の減少を実感することができます。


それでは,今日の問題です。


第32回・問題2 高齢者の脱水に関する次の記述のうち,適切なものを1つ選びなさい。

1 体全体の水分量は,若年者と変わらない。

2 喉の渇きを感じやすいため,脱水になりにくい。

3 1日の水分摂取量は,若年者より多い。

4 降圧利尿薬の服用は,脱水の原因にならない。

5 腎臓による水の再吸収能力が,低下している。


この問題は,知識がなくても正解できそうな問題でしょう。

いわゆる消去法によって,正解にアプローチすることが可能だからです。


それでは,解説です。


1 体全体の水分量は,若年者と変わらない。


前説に書いたように,高齢者の体の水分量は,若年者よりも減少します。


2 喉の渇きを感じやすいため,脱水になりにくい。


加齢によって,様々な感度が低下します。


その中には喉の渇きもあります。暑さにも鈍くなります。


そのため,夏でも厚着をしている人もいます。


3 1日の水分摂取量は,若年者より多い。


水分摂取量は,若年者よりも減少します。


4 降圧利尿薬の服用は,脱水の原因にならない。


降圧利尿剤が作用する機序(メカニズム)はよくわからなくても,この問題でわざわざ出題しているので,脱水の原因にならないということはなさそうだと判断することが可能です。


5 腎臓による水の再吸収能力が,低下している。


これが正解です。


尿意を我慢していると,急に尿意が収まることがあります。


それは,尿を腎臓が吸収するためです。


尿をそのまま体外に排出するのは,動物にとってはかなり危険なことです。


水分をいつも摂取できる環境にいるとは限らないからです。そこで,尿を吸収して,腎臓で濾過し,もう一度利用しています。


尿のリサイクルです。


高齢になると頻尿傾向になりますが,その理由の一つには,腎臓による水の再吸収能力の低下も関係しています。

2023年9月2日土曜日

大脳の機能

今回から,第32回国家試験で出題された150問を通して解説していきます。

 

第1回は,大脳の機能です。

 

 大脳の機能

前頭葉

思考など

頭頂葉

体性感覚など

後頭葉

視覚など

後ろ

側頭葉

聴覚など

大脳辺縁系

記憶,感情などの本能など

 

覚え方のコツとポイント

 

前頭葉

最もヒトらしい部分をつかさどる。サルと比べるとヒトの額(ひたい)は発達している。


頭頂葉

体のバランスをつかさどる。自動車の機能で,車の位置を車の上部から映し出す「インテリジェントアラウンドビューモニター」(日産自動車)があるが,それをイメージすると良い。上から見て,体の動きを司令する。


側頭葉

耳の近くにあるので,聴覚にかかわる。


後頭葉

後ろなのに視覚にかかることに注意。


大脳辺縁系

動物の脳。

 

それでは,今日の問題です。

 

32回・問題1

人体の構造と機能に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。

1 視覚は,後頭葉を中枢とする。

2 腸管は,口側より,空腸,回腸,十二指腸,大腸の順序である。

3 肺でガス交換された血液は,肺動脈で心臓へと運ばれる。

4 横隔膜は,消化管の蠕動に関わる。

5 副甲状腺ホルモンは,カリウム代謝をつかさどる。

 

医学概論は,とにかく覚える内容が多いのが特徴の科目です。

 

この問題は,知識がないと正解できませんが,特に勉強していなくても,日常生活で見聞きしたこと,昔習った知識などで正解できる問題も含まれます。

 

そういう回の問題を見ると,「なんだ,,簡単だ」と思うかもしれません。

 

しかし,そういった簡単な問題で正解できたとしても,勉強不足では点数は伸びないので,しっかりとした知識をつけることは欠かせません。

 

それでは,解説です。

 

1 視覚は,後頭葉を中枢とする。

 

これが正解です。

 

大脳の機能は,かなりの頻度で出題されていますが,確実な知識がないとおそらく解けないはずです。

 

しかし,福祉職である社会福祉士,精神保健福祉士は,医療職ではないので,決して深い知識は問われません。

 

先述の〈覚え方のポイント〉を参考に,知識を整理しておきましょう。

 

2 腸管は,口側より,空腸,回腸,十二指腸,大腸の順序である。

 

こういった問題があるととても難しいように思います。

 

しかし,ヒントはあります。それは十二指腸です。十二指腸潰瘍という疾患があることからわかるように,胃に近いところにあります。胃酸によって潰瘍が起きるからです。

 

わかりやすいものを組み入れて,この選択肢を消去しやすく組み立てています。

 

順番は,口側から,十二指腸,空腸,回腸,大腸(盲腸,結腸,直腸)です。

 

3 肺でガス交換された血液は,肺動脈で心臓へと運ばれる。

 

心臓の構造も出題頻度が高いものです。

 

動脈は,心臓から出ていく血管です。

 

静脈は,心臓に戻ってくる血管です。

 

肺でのガス交換(肺循環)は,右心室から肺動脈で肺に運ばれます。

肺で酸素を取り入れて,肺静脈を通って心臓に戻ります。

 

肺動脈には,酸素を含まない静脈血が流れます。

肺静脈には,酸素を含む動脈血が流れます。

 

4 横隔膜は,消化管の蠕動に関わる。

 

横隔膜が関わるのは,肺の動きです。

 

5 副甲状腺ホルモンは,カリウム代謝をつかさどる。

 

これは難しすぎです。

 

副甲状腺ホルモンがつかさどるのは,カリウム代謝です。

2023年9月1日金曜日

国家試験合格に必要なこと

国家試験合格に必要なことは何でしょうか?


ボーダーラインを超えること。


当然ですね。


国家試験合格に必要なことはたくさんあります。


その中で特に重要なのは・・・


受験申込みすること


この学習部屋を始めた当初の目的は,受験に失敗した人が,受験をあきらめることなく,受験して,合格をつかむためのお手伝いをすることでした。


第35回国家試験のボーダーラインを見ると,ほかの人よりも1点でも多く取らなければ合格できないというシビアな試験ではなくなりました。


基礎力があれば,少々ミスしても,合格できたと言えます。


何度も受験しても合格できなくて,受験をやめたという人は,今までどのくらいの数になるのでしょうか。

受験は1回だけと決めて,合格基準点が72点となった魔の第25回国試で泣いたという方もいました。その次の試験にチャレンジしていたら,資格はつかめたのではないかと思います。


今後の国家試験は,それほどシビアな試験ではなくなるでしょう。


少しくらいミスをしても,実力をしっかり蓄えた人は,合格できます。


「今日の問題」は,今日はお休みしますが,次回からは,第32回国家試験を問題1から順番に見ていきたいと思います。

基礎力をつけることにお役立てください。

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