ICF(国際生活機能分類)は,WHO(世界保健機構)がそれまでのICIDH(国際障害分類)に代わって,作ったものです。
生活機能は
「心身機能・身体構造」
「活動」
「参加」
の3つの次元で構成され,これらに影響を及ぼす「背景因子」(環境因子と個人因子)で構成されています。
なお,環境因子には,促進因子と阻害因子があります。個人因子にはありません。
ICFで使われる用語の整理
生活機能
心身機能
身体系の生理的機能(心理的機能を含む)のこと。
身体構造
器官・肢体とその構成部分などの身体の解剖学的部分のこと。
活動
課題や行為の個人による遂行のこと。
参加
生活・人生場面への関わりのこと。
心身機能・身体構造の否定的側面
機能障害(構造障害を含む)
著しい変異や喪失などといった心身機能または身体構造上の問題のこと。
活動と参加の否定的側面
活動制限
個人が活動を行うときに生じる難しさのこと。
参加制約
個人が何らかの生活・人生場面に関わるときに経験する難しさのこと。
背景因子
環境因子
人々が生活し,人生を送っている物的な環境や社会的環境,人々の社会的な態度による環境を構成する因子のこと。
個人因子
個人の人生や生活の特別な背景のこと。
これを押さえたところで今日の問題です。
第32回・問題4
事例を読んで,国際生活機能分類(ICF)に基づいて分類する場合,正しいものを1つ選びなさい。
〔事 例〕
Aさん(50歳男性)は,脳出血により片麻痺を残したが,リハビリテーションによって杖と下肢装具を用いた自立歩行を獲得し,復職を達成した。混雑時の通勤の負担と,思うようにならない気分の落ち込みから仕事を休みがちとなったが,職場より出勤時間の調整が図られ,仕事を再開するに至った。
1 片麻痺は,「活動」に分類される。
2 歩行は,「心身機能・身体構造」に分類される。
3 歩行に用いた杖と下肢装具は,「個人因子」に分類される。
4 気分の落ち込みは,「活動」に分類される。
5 出勤時間調整の職場の配慮は,「環境因子」に分類される。
ICFは,最近はこのように事例問題のスタイルでも出題されています。
その分,問題の難易度が少し上がります。
落ち着いて考えてみることが大切です。
それでは,解説です。
1 片麻痺は,「活動」に分類される。
片麻痺は,身体の解剖学的部分なので,「心身機能・身体構造」に分類します。
2 歩行は,「心身機能・身体構造」に分類される。
歩行は,歩くという行為を遂行するので,「活動」に分類します。
3 歩行に用いた杖と下肢装具は,「個人因子」に分類される。
杖と下肢装具は,物的な環境なので「環境因子」に分類します。
4 気分の落ち込みは,「活動」に分類される。
気分の落ち込みは,気分という心理的機能なので,「心身機能・身体構造」に分類します。
5 出勤時間調整の職場の配慮は,「環境因子」に分類される。
これが正解です。
出勤時間調整の職場の配慮は,社会的環境を整えることなので,「環境因子」に分類します。
環境因子には,促進因子と阻害因子があります。
職場が配慮してくれれば,職場は促進因子となります。
職場の理解が得られなければ,職場は阻害因子となり得ます。
個人因子には,促進因子も阻害因子もありません。
そういったことも含めて個人だからでしょう。