年金給付額として現役時代の6割を保障する施策が長く続きました。
それが変わったのは,2004年(平成16年)改正です。
それ以降は,5割ラインを維持する方針に変更されています。
さて,厚生年金で5万円が給付されるようになった,いわゆる「厚生年金の5万円年金」は,福祉元年と呼ばれた1973年(昭和48年)のことです。
この当時の給料の平均は,8.5万円程度だったことがわかります。
当時の厚生省は,被用者の標準的なモデルの年金額(月額)を想定していました。推移は以下のようになります。
年 |
モデル年金の月額 |
昭和40年(1965年) |
1万円(1万円年金と呼ばれる) |
昭和44年(1969年) |
2万円(2万円年金と呼ばれる) |
昭和48年(1973年) |
5万円(5万円年金と呼ばれる) |
昭和51年(1976年) |
9万円 |
昭和55年(1980年) |
13万円 |
平成元年(1989年) |
20万円 |
それでは,今日の問題です。
第32回・問題26
1973年(昭和48年)の「福祉元年」に実施した福祉政策に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。
1 年金の給付水準を調整するために物価スライド制を導入した。
2 標準報酬の再評価を行い,厚生年金では「9万円年金」を実現した。
3 被用者保険における家族療養費制度を導入した。
4 老人医療費支給制度を実施して,60歳以上の医療費を無料にした。
5 老人家庭奉仕員派遣事業が法制化された。
福祉元年に関する出題です。
福祉元年に関する出題は多いですが,この問題はとても難しいです。
よくわからない「9万円年金」というものが出題されているからです。
しかし,答えは,極めてスタンダートです。
それでは,解説です。
1 年金の給付水準を調整するために物価スライド制を導入した。
これが正解です。物価に合わせて年金給付水準を調整する物価スライド制を導入したのは,1973年(昭和48年)です。
2 標準報酬の再評価を行い,厚生年金では「9万円年金」を実現した。
9万円年金が実現したのは,1976年(昭和51年)のことです。
福祉元年は,5万円の時代です。
3 被用者保険における家族療養費制度を導入した。
扶養者に対する医療の現物給付である家族療養費制度は,1942年(昭和12年)に導入したものです。意外と古いです。
4 老人医療費支給制度を実施して,60歳以上の医療費を無料にした。
しかし,その対象となったのは70歳以上の高齢者です。
その後,1982(昭和57)年の老人保健法によって,無料化の時代は終わります。
5 老人家庭奉仕員派遣事業が法制化された。
老人家庭奉仕員派遣事業(ホームヘルパー)が法制化されたのは,老人福祉法が制定された1963年(昭和38年)です。