1942年につくられたベヴァリッジ報告は,イギリスの福祉国家構想の礎となったものです。
〈ベヴァリッジ報告で示された社会保障計画の方法〉
①社会保険(基本ニーズに対応するもの) ※財源は保険料
②国家扶助(特別なニーズに対応するもの) ※財源は税
③任意保険(社会保険と国家扶助を補完するもの) ※民間保険
社会保障制度が,社会保険と国家扶助で構成されるのは,日本の社会保障制度に相通じるものがありますが,任意保険を位置づけたのは,慈善活動が盛んなイギリスらしい感じがします。
それでは,今日の問題です。
第32回・問題25
「ベヴァリッジ報告」に関する次の記述のうち,最も適切なものを1つ選びなさい。
1 福祉サービスの供給主体を多元化し,民間非営利団体を積極的に活用するように勧告した。
2 従来の社会民主主義とも新自由主義とも異なる「第三の道」路線を選択するように勧告した。
3 ソーシャルワーカーの養成・研修コースを開設して,専門性を高めるように勧告した。
4 衛生・安全,労働時間,賃金,教育で構成されるナショナル・ミニマムという考え方を示した。
5 社会保障計画は,社会保険,国民扶助,任意保険という三つの方法で構成されるという考え方を示した。
答えはすぐわかると思いますが,それ以外のものも合わせて解説します。
1 福祉サービスの供給主体を多元化し,民間非営利団体を積極的に活用するように勧告した。
のちの福祉多元主義につながる考え方を打ち出したのは,「ウルフェンデン報告」です。
福祉サービスの供給主体を多元化して,民間非営利団体を積極的に活用するように勧告したのは,グリフィス報告です。
2 従来の社会民主主義とも新自由主義とも異なる「第三の道」路線を選択するように勧告した。
第三の道を提唱したのは,ギデンズです。
3 ソーシャルワーカーの養成・研修コースを開設して,専門性を高めるように勧告した。
これは,ヤングハズバンド報告の内容です。
ヤングハズバンド報告が国家試験で出題されたのは,本当に久しぶりです。過去の出題を調べたら,第18回に出題されたのが最後で,約15年ぶりに出題されたことになります。
お久しぶり~という感じです。
4 衛生・安全,労働時間,賃金,教育で構成されるナショナル・ミニマムという考え方を示した。
ナショナル・ミニマムという考え方を示したのは,ウェッブ夫妻の「産業民主制論」です。
5 社会保障計画は,社会保険,国民扶助,任意保険という三つの方法で構成されるという考え方を示した。
これが正解です。
〈ベヴァリッジ報告で示された社会保障計画の方法〉
①社会保険
②国家扶助
③任意保険