今回は,アタッチメント(愛着理論)を取り上げます。
アタッチメントとは,子どもと養育者のこころの結びつきのことをいいます。
この知識だけで,今日の問題を解いてみましょう。
第32回・問題10
愛着理論に関する次の記述のうち,適切なものを1つ選びなさい。
1 乳幼児期の愛着の形成により獲得される内的ワーキングモデルが,後の対人関係パターンに影響することは稀である。
2 ストレンジ・シチュエーション法では,虐待など不適切な養育と関係のある愛着のタイプを見いだすことは難しい。
3 愛着のタイプに影響を及ぼす要因には,養育者の子どもに対する養育態度だけでなく,子ども自身の気質もある。
4 子どもの後追い行動は,愛着の形成を妨げる要因になる。
5 乳幼児期の子どもの愛着対象は,母親に限定されている。
難しい用語が含まれていますが,この問題を正解すること自体はそれほど難しくはありません。
しかし,過去問を解くときは正解できれば良いというものではありません。出題されているものを一つひとつ覚えていくという作業が必要です。
この問題で言えば,内的ワーキングモデルとストレンジ・シチュエーションです。
今後,同様の問題が出題される場合は,これらの本当の知識を聞いてくるはずです。
国家試験はこのように少しずつ成長・変化していくものです。
それでは,解説です。
1 乳幼児期の愛着の形成により獲得される内的ワーキングモデルが,後の対人関係パターンに影響することは稀である。
内的ワーキングモデルは,乳幼児の愛着形成が,その後の対人関係にも影響を与えると考えるものです。
親に愛されているということを実感して成長した人は,対人関係でも安定します。
反対に親に愛されているということを実感できずに成長した人は,対人関係では試し行動をとるという人もいるでしょう。
2 ストレンジ・シチュエーション法では,虐待など不適切な養育と関係のある愛着のタイプを見いだすことは難しい。
ストレンジ・シチュエーション法は,親との愛着関係の形成を観察するものです。
虐待など不適切な養育は,マルトリートメントといいます。
ストレンジ・シチュエーション法では,乳幼児の行動をA~Dタイプに分けますが,マルトリートメントを受けた乳幼児は,Dタイプを示すことが多いとされています。
タイプのそれぞれの内容は,余裕があれば覚えても良いと思いますが,必ずしも覚えていなくても国家試験では何とかなるように思います。深い知識が求められるほど頻出ではないからです。
3 愛着のタイプに影響を及ぼす要因には,養育者の子どもに対する養育態度だけでなく,子ども自身の気質もある。
これが正解です。
愛着形成には養育者の態度は大きな影響を与えますが,それだけではなく,子どもの気質も影響します。理屈はわからなくても,何となくわかるでしょう。
4 子どもの後追い行動は,愛着の形成を妨げる要因になる。
子どもの後追い行動とは,養育者がいなくなると不安になり,養育者の後を追うことをいいます。
後追い行動は,愛着が形成されているからこそ生じる行動です。
愛着が形成されていない子どもは,養育者がいなくなっても不安に思うことなく,そのために後追い行動も行わないと言えるでしょう。
5 乳幼児期の子どもの愛着対象は,母親に限定されている。
乳幼児期の子どもが愛着形成の対象とするのは,母親が多いかもしれません。
しかし,対象は,決して母親に限定されるものではなりません。
養育者全般がその対象となり得ます。
〈今日の重要ポイント〉
今日の問題の正解は,
3 愛着のタイプに影響を及ぼす要因には,養育者の子どもに対する養育態度だけでなく,子ども自身の気質もある。
知識がなくても正解できそうな文章です。
あいまい表現に正解多し
「もある」は正解になることが多い「こともある」の変形バージョンです。
めったにないことでも,稀に生じればその文章は成立します。
言い切り表現に正解少なし
逆に「ことはない」は正解になることが少ないものです。
めったにないことでも,稀に生じればその文章は成立しません。