2019年3月2日土曜日

第31回国試で出題された質的調査(2)~データの収集方法

社会福祉調査の方法には,量的調査と質的調査があります。

それぞれの違いを押さえることが大切です。

第31回国試で出題された問題から,考えていきたいと思います。

第31回・問題90 質的調査の記録やデータの収集方法に関する次の記述のうち,最も適切なものを1つ選びなさい。

1 仮説検証などに必要な数量的なデータの収集を行う。

2 調査対象者を抽出する方法として,主に無作為抽出法を用いる。

3 音声データや映像データを用いることができる。

4 手紙や日記などの私的文書は除外する。

5 面接者は,インタビューの場において相手の発言内容の一言一句を正確にメモすることに専念する。


この類似問題は,第24回と第27回に出題されています。
直近の3年間の国試ではありません。。

問題自体はそれほど難しくはないですが,量的調査と質的調査の特徴を押さえておかなければ,思わぬ落とし穴にはまることでしょう。


それでは解説です。


1 仮説検証などに必要な数量的なデータの収集を行う。

これは間違いです。

仮説を立てるのは,量的調査です。

その仮説が正しいのか,正しくないのか,データを収集・分析して,その検証を行います。

質的調査の中にも仮説を検証するための手法があります。しかし量的調査と根本的に違うのは,質的調査は,質的データを取り扱うことです。

データ収集の方法としては,観察。面接,ドキュメント(記録)などがあります。

これらで得られたデータが質的データです。数量的に置き換えることができない,一つひとつが大切なデータです。

大切なAさんの記録,Bさんの記録です。言葉一つひとつ,身振り手振り一つひとつか貴重なデータです。


2 調査対象者を抽出する方法として,主に無作為抽出法を用いる。

これも間違いです。

社会福祉調査は,無作為抽出で行わなければならないと思っている人は間違えます。

無作為抽出を行う理由は,本来は全数調査を行いたいところを,手間もお金もかかるので,標本調査を行うからです。

本当に欲しいデータは,全数調査で得られるデータです。

全数調査で得られるデータと大きく違わないために行うのが無作為抽出です。

質的調査でも,無作為で調査対象者を抽出することがあるかもしれません。

例えば,年収●●万円で世田谷に持ち家がある4人家族という条件から,調査対象者を無作為抽出して,面接を行うという方法もあるでしょう。

しかし多くの場合は,興味のある対象に対して,観察を行ったり,面接を行ったりしているはずです。つまり有意抽出です。

大切なAさん,調べてみたいB集落です。これらは,無作為抽出されたものではありません。



3 音声データや映像データを用いることができる。

これが正解です。

これが正解選択肢になったおかげで,この問題の難易度が下がったと思います。

変に勘繰らなければ,知識ゼロでもこの選択肢を選ぶでしょう。


4 手紙や日記などの私的文書は除外する。

これも間違いです。

ドキュメント分析の対象となる記録物は,マスコミや公文書など,そして私的な手紙や日記などです。

これまで何度も出題されてきています。

家計簿でさえ,ドキュメント分析の対象となります。


5 面接者は,インタビューの場において相手の発言内容の一言一句を正確にメモすることに専念する。

これも間違いです。

これも何度も出題されてきましたが,一言一句正確にメモすることに専念する必要はありません。

今の時代は,録音や録画する機器は多く出回っています。

事前に承諾を得ておくことで,これらの機器は利用できます。


<今日の一言>

今日の問題は,決して難しくはありません。

しかしこういった問題でも,うっかりすると間違えます。

例えば選択肢2などがそうです。

勉強の仕方はいろいろあるでしょう。

しかし短期で詰め込みタイプの勉強は,知識を生きた知識として落とし込む余裕がないため,間違いやすくなります。


合格の条件は・・・

正解できる問題で確実に正解できること

難しい問題が正解できても,正解できる問題,つまり,後から読めば解ける問題が正解できなければ,ざるから水がこぼれ落ちるようなものです。

合格基準点に到達することは難しいです。

何度も受験して,不合格になっている人は,特に注意です。
合格できないのは,知識不足もあるかもしれませんが,それ以外の理由が必ずあるはずです。

2019年3月1日金曜日

第31回国試で出題された質的調査(1)~面接法


第31回国試の「社会調査の基礎」の問題構成

出題基準にあてはめると以下のようになります。

問題84 社会調査の意義と目的&観察法のミックス(観察法はアクションリサーチの部分)
問題85 自計式調査と他計式調査
問題86 測定
問題87 量的調査の集計と分析
問題88 量的調査の集計と分析
問題89 面接法
問題90 質的調査における記録の方法と留意点&質的調査のデータの整理と分析のミックス



今回は,このうち面接法の問題を取り上げます。


第31回・問題90 調査方法としての面接法に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。

1 非構造化面接では,調査者が事前に定めた質問項目の順序で調査を進める。

2 半構造化面接では,準備した質問項目のうち半数を質問する。

3 非構造化面接では,通常,回答の選択肢を印刷した回答票を提示して調査を進める。

4 構造化面接では,事前に準備をせず,調査対象者が自由に語りやすいように調査を進める。

5 半構造化面接では,面接中に新たな質問項目を追加することがある。


この問題との類似問題の一つです。
https://fukufuku21.blogspot.com/2019/01/blog-post_31.html

ここに書いた「引っ掛け」がそのまま出題されていますね。

勉強をしっかりしてきた人は引っ掛けられることは少ないと思いますが,勉強不足の人にとっては,かなり難しいものだと思います。

それは半構造化面接は,文字のもつイメージからその内容を推測しにくいからです。


それでは解説です。


1 非構造化面接では,調査者が事前に定めた質問項目の順序で調査を進める。


これは間違いです。

構造化とは,事前に質問項目をつくっておくことです。
構造化面接は,その質問項目に沿って,面接を進めていきます。

非構造化面接は,構造化されていない面接です。

つまり,自由に語ってもらう面接です。


2 半構造化面接では,準備した質問項目のうち半数を質問する。

これも間違いです。

第26回国試に出題されたものと同じようなスタイルです。

半構造化面接は,構造化面接と非構造化面接の中間に位置する面接法です。

つまり,構造化した質問をいくつかしてから,そのあとは自由に語ってもらう面接法です。


3 非構造化面接では,通常,回答の選択肢を印刷した回答票を提示して調査を進める。
これも間違いです。


非構造化面接は,自由に語ってもらう面接法です。

事前に印刷した回答票を掲示するのは,構造化面接です。


4 構造化面接では,事前に準備をせず,調査対象者が自由に語りやすいように調査を進める。


これも間違いです。

自由に語ってもらうのは,非構造化面接です。


5 半構造化面接では,面接中に新たな質問項目を追加することがある。

これが正解です。

半構造化面接は,構造化した質問をいくつかしてから,そのあとは自由に語ってもらう面接法です。

自由に語ってもらいながら,深く聞きたいこと,語ったことの確認などの質問をすることがあります。

たとえば,

「それはどういうことですか」
「これはつまり●●ということでしょうか」

といった質問です。



<今日の一言>

「構造化」という意味を押さえていれば,決して難しくない問題です。

しかし,「社会調査の基礎は難しい」というイメージが先行するので,勉強にあまり時間をかけない傾向にあります。

しかし,出題基準に沿ってまんべんなく出題される科目なので,実は対策が取りやすい科目なのです。

そのため,他の受験者と差をつけやすい科目だと言えます。

2019年2月28日木曜日

エスノグラフィって何?

社会調査の方法には,量的調査と質的調査があります。

量的調査は,アンケートなどで得られたデータを分析していきます。

質的調査は,インタビューや観察で得られたデータを分析していきます。

今回も質的調査を取り上げます。

質的調査で得られたデータ(質的データ)の整理と分析には,様々な方法がありますが,社会福祉士の国家試験で取り上げられる中心をなしているのは「KJ法」と「グラウンデッド・セオリー・アプローチ(GTA)」です。

これをしっかり押さえておけば,多くの問題は正解できますが,ほかの手法も押さえておけば,正解にたどり着く確率は上がります。

今回は,今まで何度か出てきているエスノグラフィを取り上げたいと思います。

量的調査では,社会の動向を数値的に理解することができます。

数値は客観性を持ちますが,適切に取り扱うことでさらに説得力を持つでしょう。

質的調査は,量的調査ではつかむことができない個別の理解をしていくための手法といってもよいでしょう。

例えば,量的調査で,車の販売台数の中で,赤い車がよく売れていることがつかめたとします。

質的調査は,赤い車を購入する人を分析します。

エスノグラフィは,文化人類学の中から創出されたもので,直訳すると民族の記録で,「民族誌」と呼ばれるものです。

当初は,参与観察によって,民族を研究するところから始まりました。

現在は,文化人類学にとどまらず,観察から得られる質的データ全体を指します。

エスノグラフィによく似た言葉にエスノメソドロジーがあります。

エスノメソドロジーは,人の行為を理解するため人の行為を分析する方法です。
エスノメソドロジーの方法の一つに会話分析があります。

会話は,その内容だけではなく,出てくる頻度,相手との掛け合いなどに意味があります。

以前から気になっているのは,テレビなどの天気予報で「雨降りそうです」など,「が」が抜けることが多いことです。

普段の会話では抜けることはないのに,天気のことになると抜けることが多いようです。地域性も関連しているかもしれません。

こんなことも会話分析すれば,見えてくるのかなぁと思ったりもします。

それでは今日の問題です。


第30回・問題90 質的調査に関する次の記述のうち,最も適切なものを1つ選びなさい。

1 エスノメソドロジーの会話分析は,民族の文化を描きだす方法である。

2 グラウンデッド・セオリー・アプローチでは,分析を進めた結果としてこれ以上新しい概念やカテゴリーが出てこなくなった状態を,理論的飽和と呼ぶ。

3 非構造化面接とは,インタビューの質問項目をある程度計画しておき,話の流れに応じて柔軟に聞き取りをしていく方法である。

4 トライアンギュレーションとは,調査者と調査対象者が協力して行う調査方法である。

5 フォーカスグループインタビューとは,無作為に選ばれた調査対象者を集め,グループで聞き取りを行う方法である。


ここ数日書いてきたことをしっかり覚えている人は,この問題を見た時,消去法ではなく答えがすぐわかることでしょう。

国試は難しく感じるかもしれませんが,多くの問題はしっかり覚えておけば解けるようになっています。

しかし,勉強が足りない人は,ちんぷんかんぷんなはずです。

資格試験は,それでよいと思います。

勉強した人が解けて,勉強が足りない人は解けない。

これが理想形です。

勉強した人が解けなくて,勉強が足りない人でも解ける。

難易度が高い問題は,往々にしてこのようなことが起きます。

それではだめなのです。

それでは解説です。


1 エスノメソドロジーの会話分析は,民族の文化を描きだす方法である。

これは間違いです。

この文章を読むと「エスノメソドロジーの会話分析」という手法があるように思われるかもしれませんが,そのようなものはありません。

正確にいうと,「会話分析によるエスノメソドロジー」,あるいは「エスノメソドロジーのうちの会話分析」といった方が適切でしょう。

エスノメソドロジーという言葉で,この問題から跳ね返されてしまった人は多かったと思いますが,民族の文化を描きだす方法は,エスノグラフィです。


2 グラウンデッド・セオリー・アプローチでは,分析を進めた結果としてこれ以上新しい概念やカテゴリーが出てこなくなった状態を,理論的飽和と呼ぶ。

これが正解です。

GTAは,データの収集と分析を繰り返していきます。

これ以上何も出てこない状態が理論的飽和です。GTAでは,この状態を目指していきます。

思いつくままにコード化する「オープン・コーディング」とともに「理論的飽和」はGTAを行うときに重要なものです。



3 非構造化面接とは,インタビューの質問項目をある程度計画しておき,話の流れに応じて柔軟に聞き取りをしていく方法である。

これは間違いです。

インタビューの質問項目をある程度計画しておき,話の流れに応じて柔軟に聞き取りをしていく方法は,半構造化面接です。

非構造化面接は,あらかじめ質問項目を決めないで,面接を進めていく方法です。

構造化面接は。あらかじめ決めておいた質問項目沿って面接を進めていく方法です。

選挙の後に行われる出口調査は,構造化面接で行われます。

半構造化面接は,その中間にあります。

半構造化面接は,言葉からイメージすることができないので,国試では間違い選択肢として出題されることが多い傾向にあります。


4 トライアンギュレーションとは,調査者と調査対象者が協力して行う調査方法である。
これも間違いです。

トライアンギュレーションは,調査の妥当性を高めるために,違う切り口で調査を行う方法です。

別な調査者が同じ調査を行う方法もあります。


5 フォーカスグループインタビューとは,無作為に選ばれた調査対象者を集め,グループで聞き取りを行う方法である。

これも間違いです。

フォーカスグループインタビューは,ある傾向をもったグループに対して行う面接法です。

フォーカスグループインタビューに限らず,グループインタビューは,多くの場合,有意抽出で行います。

量的調査の場合,母集団の様子を正しくとらえるために無作為抽出が必要です。

しかし,質的調査は,母集団の性質を探るための調査手法ではありません。

そのために,無作為抽出を行う意味がないからです。

フォーカスグループインタビューの場合は,例えば,クラスの中で,宿題を忘れてくる人たちに集まってもらって,面接をすすめます。

他の人が質問に答えるのを聞くことによって,新たな気づきが得られることが期待されます。

グループワークもグループインタビューも集団力学(グループダイナミクス)の効果を期待するものですが,合意形成を目指すものではないことを覚えておきたいです。


<今日の一言>

社会福祉士の国試は,決して簡単なものではありません。

しかし,一つひとつを分析するとそれほど難しくないことがわかります。

国試当日,大切なことは,ヒントや解説なしで問題が解ける力をもつことです。

それには,確かな知識が必要です。

先輩などのアドバイスでは,参考書は新しいものが良い,という人もいるでしょう。
しかし,最新の参考書でなくても,去年のものでも十分使えます。

もう少しすると,国試の合格発表があります。
その後に中古市場にたくさん出てくるでしょう。

6月まで待って勉強するか,今勉強を始めるか。

3か月の違いはとても大きいです。

確かな知識は,反復勉強を行うことで身につけられます。

2019年2月27日水曜日

KJ法の進め方例~グラウンデッド・セオリー・アプローチとの共通点と相違点

「質的データの整理と分析」では,グラウンデッド・セオリー・アプローチ(GTA)とKJ法が中心となって出題されています。

KJ法は,故・川喜田二郎先生のイニシャルから名づけられたものです。GTAと時を同じくして,1960年代後半に日本で産声を上げました。

GTAとKJ法の共通点は,最初に仮説や分析軸などを持たずに,分析を進める作業を通して新しい発見をすることです。


KJ法の手順(概略)

グループで行う場合は,ブレインストーミングなどの方法で意見やアイディアをカードや付箋に書き出します。

ブレインストーミングを行うときのルールは,人の意見を批判しない,質よりも量,などがあります。

似たような内容のカードをグループ化(小グループ)し,見出しをつけます。

グループ化できなかったカードがあっても,それは一つの島にしておきます。

この時点ではまだざっくりしたグループ化で良いです。

さらに中グループに再編成し,見出しをつけます。

中グループができたら,相互参照を行いながら,大グループに再編成し,見出しをつけます。大グループの段階でも,一枚だけの島が残っていても,それは残しておきます。

大グループが出来上がったところで,大グループの関連などを考えながら,模造紙やホワイトボードなどを使って,配置します。


KJ法では出てきたカードはすべて使わなければなりませんが,GTAではラベルを必ずしもすべて使わなくてもよいことになっています。

こんなところに日本生まれのKJ法の生真面目さ,川喜田二郎先生の生真面目さを感じますね,

KJ法もGTAのように厳密なルールがありますが,社会福祉士の国試に必要な知識はこの程度で良いと思います。

それでは今日の問題です。


第29回・問題90 Q市の社会福祉協議会では,住民座談会で地域の福祉ニーズを把握するため,参加者にブレインストーミング形式で話合いを行ってもらい,そこで得られた意見についてKJ法を用いて整理することにした。

次のうち,その際の参加者によるKJ法の進め方として,最も適切なものを1つ選びなさい。

1 KJ法に必要な器具として,話合いにおける発言を一字一句正確に記録するためのビデオカメラとICレコーダーを購入した。

2 意見を付箋紙に記録する際,ソーシャルワークの専門用語を用いて表現した。

3 意見が記録された付箋紙をグループ編成する際,Q市社協の重点目標に即して大まかにグループ分けした上で,徐々に小分けにしていった。

4 付箋紙をグループ編成する際,1枚だけで残るものがないように,まんべんなく全ての付箋紙をいずれかのグループに含めた。

5 付箋紙のグループ編成を何段階か行った後,話合いの内容に基づく複数のユニットができたので,それらを模造紙上に再配置していった。



KJ法は各種研修で実施されるので,一度でも行ったことがある人は,「ああ,こんなことをしたことがある」と思うことでしょう。

しかし,KJ法のルールが入っているので,慎重に考えなければ間違えます。

事例問題は,そんなところに落とし穴があるので,注意が必要です。

解説していきますね。


1 KJ法に必要な器具として,話合いにおける発言を一字一句正確に記録するためのビデオカメラとICレコーダーを購入した。

これは間違いです。

KJ法は,観察法や面接法と違い,一字一句正確に記録する必要はありません。
したがって,ビデオカメラとICレコーダーは必要ありません。

2 意見を付箋紙に記録する際,ソーシャルワークの専門用語を用いて表現した。

これも間違いです。

付箋紙に記録する時は,発言者が使った言葉をそのまま使います。

GTAのインビボ・コーディングによく似ていますね。

KJ法に限らず,一般住民に理解しやすい言葉を使うことが必要です。

一般の人や他職種に対して,ソーシャルワークの専門用語を使うのは極めて不適切だと言えるでしょう。

難しい言葉を使うと周りの人が「よく知っている」と思ってくれると思う人もいるみたいですが,十分理解しないで使うととても滑稽なものになってしまいます。

「それはどういうことですか?」と質問されて,わかりやすく説明できなければ,よくわかっていないことになります。


3 意見が記録された付箋紙をグループ編成する際,Q市社協の重点目標に即して大まかにグループ分けした上で,徐々に小分けにしていった。

これも間違いです。

ここが重要点です。

KJ法もGTAもあらかじめ分析軸をもたずに整理するのが特徴です。

この場合「Q市社協の重点目標」が分析軸となります。

こういった縛りがあると,自由な発想ができなくなることがよくわかることでしょう。

これが「あらかじめ分析軸をもたない」という理由です。

仮説ももたないのは同じ理由です。


4 付箋紙をグループ編成する際,1枚だけで残るものがないように,まんべんなく全ての付箋紙をいずれかのグループに含めた。


これも間違いです。

グループに入らない1枚だけの島があっても,それを残しておくのが,KJ法の特徴です。

GTAの場合は,グループ化できないラベルがあった場合は,必ずしも使わなくてもよいことになっています。


5 付箋紙のグループ編成を何段階か行った後,話合いの内容に基づく複数のユニットができたので,それらを模造紙上に再配置していった。


これが正解です。

大グループができたら,模造紙などを使って再配置します。

これとこれは関連している,これとこれは逆の概念である,などストーリーを考えながら,再配置とともに図式化します。



<今日の一言>

第22回に現行カリキュラムが始まって,第31回で10回を数えます。

この10回の国試の中で,どのようなものが重要なのか,一見さんで終わってしまうのか,といったものが整理できるくらいの回数です。

もし機会があったら,現行カリキュラムによる国試問題を見てみると良いです。

そこから今までの国試につながる内容が出題されていることに驚くことでしょう。

国試が終わると「今年の国試の傾向が変わった」「今までの中で最も難しい試験だった」という感想を持つ人はたくさんいます。

しかし,第22回国試と第31回国試を比べてみると,どこがどう違っているかわからないくらいに, 10年も違うのに同じように見えるでしょう。

第22回国試の出題(社会調査の基礎)
https://fukufuku21.blogspot.com/2019/02/blog-post_24.html


しかし,実際に国試を受験すると,初めて見たような錯覚に襲われるのです。

これはとても重要なことです。

しっかり頭に焼き付けておいていただきたいと思います。

2019年2月26日火曜日

質的データの整理と分析で確実に得点する!!

「社会調査の基礎」が難しいと思っている人は多いと思います。

確かにこの科目が加わった初期には,難しい問題もありました。

しかし現在は回を重ねてきているので,繰り返し出題されるものも増えてきたこともあり,初期に比べると問題自体の難易度はかなり下がっていると言えます。

だからと言って,受験生が簡単に解けるとは限りません。

社会福祉士の国試は,この科目に限らず,多くの科目がそうなっています。

しかし,一つひとつを確実に覚えてきた人は,突破口を多く持っているので,正解にたどり着きやすくなります。

難しいものがあっても,消去法が使えるからです。

今日の問題もそんな問題です。


第26回・問題90 質的調査データの整理と分析に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。

1 インタビュー記録やフィールドノーツを1行ずつ読み込みながら,思いつくままにコードを書き込んでいくことをプリコーディングという。

2 研究がある程度進展した段階で,比較的少数の概念的カテゴリーにコードを割り振っていくことをオープン・コーディングという。

3 インタビュー等において対象者が使っている言葉をそのままコードとして用いることをインビボ・コーディングという。

4 グラウンデッド・セオリー・アプローチにおいてデータの分析を行う際には,事前に設定した仮説や既存の理論に沿って進めることが重要である。

5 量的調査データの分析とは異なり,質的調査データにはコンピューターを使った分析はなじまない。 



この問題の難易度はかなり高いです。

勉強が不十分で国試に臨んだ人は,まったく歯が立たない問題だと言えます。

しかし確実に覚えてきた人は,何とか正解にたどりつくことができることができるでしょう。


それでは解説です。


1 インタビュー記録やフィールドノーツを1行ずつ読み込みながら,思いつくままにコードを書き込んでいくことをプリコーディングという。

これは間違いです。

コーディングは,得られたデータの内容をコード化していくことです。

コーディングには,プリコーディングとアフターコーディングがあります。

プリコーディングの「プリ」は「前に」を意味し,あらかじめコード化しておくことを指します。

量的調査の場合では,「1.はい」「2.いいえ」「3.どちらでもない」といったものです。

アフターコーディングは,得られたデータをコード化するものです。

量的調査の場合では,自由記載に書かれた回答をカテゴリー化して,コード化します。

プリコーディングの意味はわからなくても「プリ」という意味から,インタビュー記録やフィールドノーツを1行ずつ読み込みながら,思いつくままにコードを書き込んでいくことはプリコーディングではないと見当がつけられそうです。

インタビュー記録やフィールドノーツを1行ずつ読み込みながら,思いつくままにコードを書き込んでいくのは,アフターコーディングの一つであるグラウンデッド・セオリー・アプローチ(GTA)のオープン・コーディングです。

オープン・コーディングの「オープン」は,「思いつくままに」という意味から名づけられています。

思いつくままにコード化することが大切です。

「思いつくままに」が事前の分析軸をもつことなく,データの収集と分析の中から新しい発見(理論の生成)を目指すGTAの特徴です。

もし,思い込みや先入観があっても,何度も分析を繰り返すことで,新しい発見があるはずです。

勉強も同じです。

最初に参考書などにマーカーを引いてしまうと新しい発見を阻害してしまうこともあるので注意が必要です。


2 研究がある程度進展した段階で,比較的少数の概念的カテゴリーにコードを割り振っていくことをオープン・コーディングという。


これも間違いです。

研究がある程度進展した段階で,比較的少数の概念的カテゴリーにコードを割り振っていくことは,軸足コーディングといいます。

GTAは,グレイザーとストラウスによって開発された分析手法です。

軸足コーディングは,ストラウス派のみが使う手法です。

グレイザー派の流れをくむGTAを学んだ人は,軸足コーディングを使いません。

もちろん軸足コーディングも出題されているので覚えておかなければなりませんが,GTAで必ずしも使わないので,GTAをよく知っている人が出題する場合は,正解選択肢にしにくいと言えるでしょう。


3 インタビュー等において対象者が使っている言葉をそのままコードとして用いることをインビボ・コーディングという。

これが正解です。

この問題の難易度が高い理由は,初めて出題されたものが正解選択肢になったことです。

つまり,この国試を受験した人は,消去法でなければ正解にたどり着くことができないからです。


「インビボ」とは,「生体内で」を意味するラテン語です。反対の意味をもつのは「インビトロ」(試験管内で)です。

インビボは,「手をつけていない」「調整していない」といった意味から,インビボ・コーディングは,対象者が使った言葉をそのままコード化することをいいます。

対象者が「わくわくする」と言ったのを,調査者が「期待している」とコード化するのは,ソーシャルワークでは「言い換え」の技法ですが,言い換えることによって,対象者が言いたかったことが確実につかむことができまないかもしれません。

そのため,そのまま「わくわくする」とコード化するのが「インビボ・コーディング」です。


4 グラウンデッド・セオリー・アプローチにおいてデータの分析を行う際には,事前に設定した仮説や既存の理論に沿って進めることが重要である。


これも間違いです。

GTAは,事前に設定した仮説や既存の理論はもたずに,データの収集と分析を通して新しい理論をつくります。

ここがKJ法やGTAの特徴です。


5 量的調査データの分析とは異なり,質的調査データにはコンピューターを使った分析はなじまない。


これも間違いです。

量的データは数値化されているので,エクセルなどを使って,容易に分析することができます。難しい統計の知識がなくても,関数を使えばエクセル操作で検定もできてしまいます。

質的データは,文字で構成されたものです。エクセルでは分析できませんが,質的データを分析するテキストマイニングという方法があります。

文字化されているデータを単語などで区切ることによって,その出現度合いなどほかの単語などとの相関などを分析するものです。

現時点では,単語や文節などに区切るのは,調査者が手作業で行わなければなりませんが,近い将来は,AI(人口知能)を使って,自動的に分析してくれるかもしれませんね。


<今日の一言>

「社会調査の基礎」を攻略するために重要なことは尻込みしてしまわないことです。

今日の問題もまたまたGTAの知識が問われています。

実際に行うには訓練が必要ですが,用語を覚えておけば,国試で得点するのはそれほど難しくないでしょう。

最初は難しく思っても,繰り返し勉強していくことで,用語になじんでいくことができます。

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