2023年9月11日月曜日

アタッチメント(愛着理論)

今回は,アタッチメント(愛着理論)を取り上げます。


アタッチメントとは,子どもと養育者のこころの結びつきのことをいいます。


この知識だけで,今日の問題を解いてみましょう。


第32回・問題10 

愛着理論に関する次の記述のうち,適切なものを1つ選びなさい。

1 乳幼児期の愛着の形成により獲得される内的ワーキングモデルが,後の対人関係パターンに影響することは稀である。

2 ストレンジ・シチュエーション法では,虐待など不適切な養育と関係のある愛着のタイプを見いだすことは難しい。

3 愛着のタイプに影響を及ぼす要因には,養育者の子どもに対する養育態度だけでなく,子ども自身の気質もある。

4 子どもの後追い行動は,愛着の形成を妨げる要因になる。

5 乳幼児期の子どもの愛着対象は,母親に限定されている。


難しい用語が含まれていますが,この問題を正解すること自体はそれほど難しくはありません。


しかし,過去問を解くときは正解できれば良いというものではありません。出題されているものを一つひとつ覚えていくという作業が必要です。


この問題で言えば,内的ワーキングモデルとストレンジ・シチュエーションです。

今後,同様の問題が出題される場合は,これらの本当の知識を聞いてくるはずです。


国家試験はこのように少しずつ成長・変化していくものです。


それでは,解説です。


1 乳幼児期の愛着の形成により獲得される内的ワーキングモデルが,後の対人関係パターンに影響することは稀である。


内的ワーキングモデルは,乳幼児の愛着形成が,その後の対人関係にも影響を与えると考えるものです。


親に愛されているということを実感して成長した人は,対人関係でも安定します。


反対に親に愛されているということを実感できずに成長した人は,対人関係では試し行動をとるという人もいるでしょう。


2 ストレンジ・シチュエーション法では,虐待など不適切な養育と関係のある愛着のタイプを見いだすことは難しい。


ストレンジ・シチュエーション法は,親との愛着関係の形成を観察するものです。


虐待など不適切な養育は,マルトリートメントといいます。


ストレンジ・シチュエーション法では,乳幼児の行動をA~Dタイプに分けますが,マルトリートメントを受けた乳幼児は,Dタイプを示すことが多いとされています。


タイプのそれぞれの内容は,余裕があれば覚えても良いと思いますが,必ずしも覚えていなくても国家試験では何とかなるように思います。深い知識が求められるほど頻出ではないからです。


3 愛着のタイプに影響を及ぼす要因には,養育者の子どもに対する養育態度だけでなく,子ども自身の気質もある。


これが正解です。


愛着形成には養育者の態度は大きな影響を与えますが,それだけではなく,子どもの気質も影響します。理屈はわからなくても,何となくわかるでしょう。


4 子どもの後追い行動は,愛着の形成を妨げる要因になる。


子どもの後追い行動とは,養育者がいなくなると不安になり,養育者の後を追うことをいいます。


後追い行動は,愛着が形成されているからこそ生じる行動です。


愛着が形成されていない子どもは,養育者がいなくなっても不安に思うことなく,そのために後追い行動も行わないと言えるでしょう。


5 乳幼児期の子どもの愛着対象は,母親に限定されている。


乳幼児期の子どもが愛着形成の対象とするのは,母親が多いかもしれません。

しかし,対象は,決して母親に限定されるものではなりません。

養育者全般がその対象となり得ます。


〈今日の重要ポイント〉


今日の問題の正解は,


3 愛着のタイプに影響を及ぼす要因には,養育者の子どもに対する養育態度だけでなく,子ども自身の気質もある。


知識がなくても正解できそうな文章です。


あいまい表現に正解多し

「もある」は正解になることが多い「こともある」の変形バージョンです。

めったにないことでも,稀に生じればその文章は成立します。


言い切り表現に正解少なし

逆に「ことはない」は正解になることが少ないものです。

めったにないことでも,稀に生じればその文章は成立しません。

2023年9月10日日曜日

パーソナリティ理論とビッグファイブ

パーソナリティ理論を分類すると,類型論と特性論に分けられます。


類型論は,人のパーソナリティを類型化するものです。


あなたは,〇〇タイプです。


とタイプ分けするのが,類型論だと覚えると良いでしょう。


代表的な類型論

ユング リビドーの方向によって,外向型と内向型に分けました。

クレッチマー 体格と気質を結び付けてタイプ分けしました。


特性論は,パーソナリティをいくつかの因子(特性)が組み合わさって作り上げられると考えます。


今日の特性論の代表は,ビッグファイブです。


ビッグファイブでは,パーソナリティの因子を5つに分けています。

そのためにビッグファイブと呼ばれます。


ビッグファイブの5因子

 ・外向性

 ・神経症傾向

 ・誠実性

 ・調和性

 ・開放性


これらの強弱によって,パーソナリティは作られていると考えるのが,ビッグファイブです。


代表的な特性論者には,オールポートとキャッテルがいますが,これについては今日の問題の解説で紹介します。


それでは,今日の問題です。



第32回・問題9

パーソナリティの理論に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。

1 クレッチマー(Kretschmer,E.)は,特性論に基づき,体格と気質の関係を示した。

2 ユング(Jung,C.)は,外向型と内向型の二つの類型を示した。

3 オールポート(Allport,G.)は,パーソナリティの特性を生物学的特性と個人的特性の二つに分けた。

4 キャッテル(Cattell,R.)は,パーソナリティをリビドーにより説明した。

5 5因子モデル(ビッグファイブ)では,外向性,内向性,神経症傾向,開放性,協調性の5つの特性が示されている。


憎らしいほど引っ掛けポイントがうまく仕込まれている問題です。


かなり注意しないとその引っ掛けの餌食になりそうです。


それでは,解説です。


1 クレッチマー(Kretschmer,E.)は,特性論に基づき,体格と気質の関係を示した。


クレッチマーが体格と気質の関係を示したのは適切です。


しかし,クレッチマーのパーソナリティ理論は,特性論ではなく,類型論です。


2 ユング(Jung,C.)は,外向型と内向型の二つの類型を示した。


これが正解です。


ユングは,リビドーの向きによって,パーソナリティを外向型と内向型に分けました。


タイプ分けしているところからわかると思いますが,ユングの理論は類型論です。


3 オールポート(Allport,G.)は,パーソナリティの特性を生物学的特性と個人的特性の二つに分けた。


オールポートの理論は,特性論です。


パーソナリティの特性を,多くの人に共通している「共通特性」とその人の個人的なものである「個人的特性」の2つに分けています。


その特性の組み合わせによって,パーソナリティは成り立っていると考えました。


4 キャッテル(Cattell,R.)は,パーソナリティをリビドーにより説明した。


キャッテルの理論は,特性論です。


キャッテルは,辞書からパーソナリティに関する用語を抜き出し,それを分析して,12の因子にまとめました。


5 5因子モデル(ビッグファイブ)では,外向性,内向性,神経症傾向,開放性,協調性の5つの特性が示されている。


一見するとこれが正解に見えそうです。


しかし,外向性と内向性は,よくよく考えると同じファクターです。

その強弱によって,特性の一つとなります。


ビッグファイブの5因子

・外向性

・神経症傾向

・誠実性

・調和性

・開放性


現在のパーソナリティ理論では,パーソナリティの因子は,この5つにほぼ集約されると考えられています。

2023年9月9日土曜日

心理学~馴化と鋭敏化

馴(じゅん)化は,刺激に慣れていくこと。


鋭敏化は,刺激に対して反応しやすくなること。


この知識を頼りに今日の問題です。


第32回・問題8 

次のうち,馴化による行動の記述として,適切なものを1つ選びなさい。

1 同じ大きな音が繰り返されるにつれて,驚愕反応が小さくなった。

2 乳児に新しいおもちゃを見せたら,古いおもちゃよりも長く注視した。

3 まぶたにストローで空気を吹き付けると,思わずまばたきした。

4 食あたりした後に,その食べ物を見るだけで吐き気がするようになった。

5 うまくできたら褒めることで,ピアノの練習に取り組むようになった。


馴化を知らなくても,「馴」の字は「なれる」と読むことがわかれば正解できる問題です。


それでは,解説です。


1 同じ大きな音が繰り返されるにつれて,驚愕反応が小さくなった。


これが正解です。


刺激 → 大きな音

反応 → 驚愕反応が小さくなった


逆に,驚愕反応が大きくなれば,鋭敏化です。


2 乳児に新しいおもちゃを見せたら,古いおもちゃよりも長く注視した。


馴化であれば,いつも遊んでいるおもちゃに興味を興味を示さなくなります。


3 まぶたにストローで空気を吹き付けると,思わずまばたきした。


まばたきは,反射です。


4 食あたりした後に,その食べ物を見るだけで吐き気がするようになった。


一度条件づけられたものと同じようなものに対しても反応するようになることは,般化といいます。


5 うまくできたら褒めることで,ピアノの練習に取り組むようになった。


これは,オペラント条件づけです。その中でも正の強化にあたります。

うまくできた ➡ 自発的な行動

褒める    ➡ 正

ピアノの練習に取り組むようになった(練習量が増える) ➡ 強化


〈今日の注意ポイント〉


オペラント条件づけは,自発的な行動に対して,ほめたり,叱ったり,といったものにより,その後の行動が多くなったり,少なくなったりするところがポイントです。


うまくできたら褒めることで,ピアノの練習に取り組むようになるのは,正の強化です。

うまくできなくて叱ることで,ピアノの練習に取り組むようになるのも,正の強化です。


ほめること,しかること → 正

ほめないこと,しからないこと → 負


その後の行動が


増える → 強化

減る →  罰


ほめることは正,しかることは罰ではないことに注意が必要です。


〈オペラント条件づけのバリエーションの整理〉


うまくできたことで,叱らなくなって,その結果として,練習量が増えた。

➡ 負の強化


うまくできなかったことに対して,叱ることで,その結果として,練習量が増えた。

➡ 正の強化


うまくできなかったことで,褒めなくなって,その結果として,練習量が減った。

➡ 負の罰


うまくできなったことに対して,叱ることで,その結果として,練習量が減った。

➡ 正の罰


〈おまけ〉

叱ることによる正の強化の例

いたずらに対して,叱ることで,いたずらが減った。

これも正の強化ですが,一般的なソーシャルワーク場面では,叱ることはめったにないでしょう。

社会福祉士の国家試験という性格上,叱るというのはあまり考えられないので,出題の中心は,基本的にほめること(あるいはそれに類似した)による正の強化となるのではないかと思います。




2023年9月8日金曜日

包括的リハビリテーションとは?

今回は,リハビリテーションがテーマです。


そのうちでも,包括的リハビリテーションとは,機能回復訓練などを行う医学リハビリテーションに,薬物療法や食事療法などを加えたリハビリテーションのことをいいます。


それでは,今日の問題です。


第32回・問題7

近年のリハビリテーションに関する次の記述のうち,適切なものを1つ選びなさい。

1 がんは,リハビリテーションの対象とはならない。

2 内部障害は,リハビリテーションの対象とはならない。

3 脳卒中のリハビリテーションは,急性期,回復期,生活期(維持期)に分けられる。

4 リハビリテーションは,機能回復訓練に限定される。

5 リハビリテーションを担う職種には,言語聴覚士は含まれない。


問題のつくり方があまりに下手なので,知識がなくても答えられる問題かもしれません。


それでは,解説です。


1 がんは,リハビリテーションの対象とはならない。


がんももちろんリハビリテーションの対象です。


リハビリテーションは,機能回復訓練だと思っているとがんは対象にならないと思うかもしれませんが,化学療法などの身体へのダメージを回復するためなどにリハビリテーションは必要です。


2 内部障害は,リハビリテーションの対象とはならない。


〈身体障害者福祉法が規定する内部障害〉

  心臓機能障害

  腎臓機能障害

  呼吸機能障害

  膀胱・直腸機能障害

  小腸機能障害

  ヒト免疫不全ウイルス(HIV)による免疫機能障害

  肝臓機能障害


この中で,特にリハビリテーションが重要なのは,心臓機能障害に対する心臓リハビリテーション,呼吸機能障害に対する呼吸リハビリテーションです。


3 脳卒中のリハビリテーションは,急性期,回復期,生活期(維持期)に分けられる。


これが正解です。


これを知らなくても正解できるように設計された問題です。


4 リハビリテーションは,機能回復訓練に限定される。


ようやく今日のテーマが登場しました。


近年のリハビリテーションは,機能回復訓練などを行う医学リハビリテーションに,薬物療法や食事療法などを加えた包括的リハビリテーションといいます。


5 リハビリテーションを担う職種には,言語聴覚士は含まれない。


言語聴覚士は,理学療法士,作業療法士と並ぶリハビリテーション専門職です。

2023年9月7日木曜日

主な認知症とその症状

今回は,認知症を学びます。


主な認知症とその特徴的な症状

疾患名

特徴的な症状

アルツハイマー型認知症

早い段階からの記憶障害。

脳血管性認知症

感情失禁。

症状に波があるまだら認知症。

レビー小体型認知症

はっきりとした幻視。

パーキンソン症状。

前頭側頭型認知症

常同行動。

人格変化。


それでは,今日の問題です。


第32回・問題6

次のうち,脳血管性認知症の特徴的な症状として,適切なものを2つ選びなさい。

1 パーキンソン症状

2 まだら認知症

3 幻視

4 感情失禁

5 常同行動


この問題で重要なのは,正解を2つ選ぶのを忘れないことです。


問題は,脳血管性認知症なので,答えは,

2 まだら認知症

4 感情失禁


の2つです。


レビー小体型認知症

1 パーキンソン症状

3 幻視


前頭側頭型認知症

5 常同行動



〈今日の注意ポイント〉


レビー小体型認知症の特徴として,はっきりした幻視,パーキンソン症状があります。


以前,ある人が「レビー小体型認知症を調べると,幻聴もある,と書いてある。幻聴も正解ではないのか」と言っていたことがあります。


症状には傾向があっても個人差があります。


しかし,そういったところにこだわった覚え方をすると,ポイントがボケます。


第25回・問題5 認知症に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。

1 アルツハイマー型認知症では,感情失禁が特徴的な症状である。

2 脳血管性認知症では,まだら認知症が特徴的な症状である。

3 レビー小体型認知症では,幻聴が特徴的な症状である。

4 ピック病では,人格変化は生じにくい。

5 クロイツフェルト・ヤコブ病では,梅毒病原体が原因となる。


先ほどの人が言っていたような覚え方をすると,選択肢3も正解に思えてしまいます。


この問題では,「特徴的」と出題しているので,レアケースを考えるとミスのもとです。


この問題の詳しい解説の記事

https://fukufuku21.blogspot.com/2017/08/blog-post_15.html


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