2021年5月5日水曜日

地域福祉に携わる専門職等~介護相談員は要注意

地域福祉に携わる専門職等はたくさんあるので覚えるのが大変かもしれませんが,国家試験で問われて,しかも正解となるのは,多くの人に知られていないようなものではなく,勉強した人なら知っているものです。


それでは今日の問題です。


第30回・問題36 認知症の人や家族の支援に関わる専門職とボランティアに関する次の記述のうち,最も適切なものを1つ選びなさい。

1 認知症サポーターは,地域包括支援センターから委嘱されて活動する。

2 日常生活自立支援事業における専門員は,原則として社会福祉士,精神保健福祉士等であって,一定の研修を受けた者である。

3 認知症地域支援推進員は,都道府県に配置され市町村の医療・介護等の支援ネットワーク構築の支援等を行う。

4 認知症ケア専門士は,認知症ケアに対する学識と技能及び倫理観を備えた専門の国家資格である。

5 介護相談員は,登録を行った後,介護相談員であることを証する文書が都道府県から交付される。


なかなか手ごわい問題です。その理由は,後で述べます。


それでは,解説です。


1 認知症サポーターは,地域包括支援センターから委嘱されて活動する。


日本国民の10人に1人はすでに認知症サポーターとなっています。オレンジリングを持っている人も多いのではないでしょうか。


しかし,どのような仕組みになっているのか詳しく知らない人も多いようです。


認知症サポーターは,講師役であるキャラバン・メイトが開催する認知症サポーター養成講座を受講すると,認知症サポーターとなります。


この一連を認知症サポーターキャラバンと呼んでいます。


もともとは,認知症サポーターを全国で100万人養成することを目指していたために,砂漠を横断するキャラバン隊になぞらえて,全国で認知症サポーターを養成するキャラバン隊という意味合いで「認知症サポーターキャラバン」と名付けられました。


認知症サポーターは,民生委員や保護司のように委嘱されて活動するようなものではありません。養成講座を受講することで誰もがサポーターとなります。



2 日常生活自立支援事業における専門員は,原則として社会福祉士,精神保健福祉士等であって,一定の研修を受けた者である。


これが正解です。


精神保健福祉士も含めて出題されているので,正解にしにくいのがこの問題のやっかいなところです。


しかし,これとそっくりな問題があります。

日常生活自立支援事業の徹底理解~その1

https://fukufuku21.blogspot.com/2018/12/1.html


ここで紹介しているものの中で,


5 日常生活自立支援事業において具体的な支援を行う生活支援員は,社会福祉士や精神保健福祉士の資格があって一定の研修を受けた者とされている。


生活支援員が専門職と変わっているだけで内容は同じです。


この問題は第23回に出題されたものです。多くの人はこんなに古い過去問を解く人はいないでしょう。だから,参考書などで基礎力を付けなければならないと思います。


3年間の過去問の知識で合格できるような国試ではありません。



3 認知症地域支援推進員は,都道府県に配置され市町村の医療・介護等の支援ネットワーク構築の支援等を行う。


認知症地域支援推進員は,介護保険法の地域支援事業の「認知症総合支援事業」によって配置されています。


介護保険法の地域支援事業は,障害者総合支援法の地域生活支援事業と異なり,都道府県の事業はありません。


つまり配置は,都道府県はあり得ないということです。


配置されるのは,市町村です。


4 認知症ケア専門士は,認知症ケアに対する学識と技能及び倫理観を備えた専門の国家資格である。


認知症ケア専門士は,認知症ケア学会が認定しているものです。つまり国家資格ではありません。


5 介護相談員は,登録を行った後,介護相談員であることを証する文書が都道府県から交付される。


もう一つやっかいなのは,介護相談員です。


介護保険法と同時にスタートした市町村が実施主体の制度ですが,実施している市町村がそれほど多くないため,あまり知られていません。


都道府県が実施する研修を受けて,市町村に登録して活動します。


介護相談員は市民による活動なので,登録が都道府県だと遠すぎるのでしょう。


介護相談員の詳細

https://fukufuku21.blogspot.com/2019/11/blog-post_14.html


介護相談員は,とにかくよく知られていないので要注意です。

2021年5月4日火曜日

2018年(平成30年) 社会福祉法の改正

法律は,時代に合わせた改正が随時実施されます。

 

だからといってその改正は,国家試験ではすぐには出題されない傾向があります。

 

そのおかげで受験者は,国試勉強の過程で新しくできた法や改正された法を追いかけなく済みます。

 

もし出題されてもたったの1問か2問です。出るか出ないかわからないものに時間をかけるよりも出るものに時間をかけることが点数の底上げには重要です。

 

人によっては,新しい改正が出題されて,それが解けたから合格できたという経験をもつ人もいるかもしれません。

 

しかしながら国試問題全体から見ると,ほかの部分で十二分にカバーできます。

 

追いかけるべきものは,数年前です。

 

そういったものは,参考書などにはすでに記載されているはずなので,個人で追いかける必要はないように思います。

 

さて,今回は,2018年(平成30年)の社会福祉法の改正を取り上げます。

 

この改正は,地域共生社会の実現に向けた改正となっています。


地域福祉の推進

第四条 地域福祉の推進は、地域住民が相互に人格と個性を尊重し合いながら、参加し、共生する地域社会の実現を目指して行われなければならない。

2 地域住民、社会福祉を目的とする事業を経営する者及び社会福祉に関する活動を行う者(以下「地域住民等」という。)は、相互に協力し、福祉サービスを必要とする地域住民が地域社会を構成する一員として日常生活を営み、社会、経済、文化その他あらゆる分野の活動に参加する機会が確保されるように、地域福祉の推進に努めなければならない。

3 地域住民等は、地域福祉の推進に当たつては、福祉サービスを必要とする地域住民及びその世帯が抱える福祉、介護、介護予防(要介護状態若しくは要支援状態となることの予防又は要介護状態若しくは要支援状態の軽減若しくは悪化の防止をいう。)、保健医療、住まい、就労及び教育に関する課題、福祉サービスを必要とする地域住民の地域社会からの孤立その他の福祉サービスを必要とする地域住民が日常生活を営み、あらゆる分野の活動に参加する機会が確保される上での各般の課題(以下「地域生活課題」という。)を把握し、地域生活課題の解決に資する支援を行う関係機関(以下「支援関係機関」という。)との連携等によりその解決を図るよう特に留意するものとする。

国・地方公共団体の責務

第六条 国及び地方公共団体は、社会福祉を目的とする事業を経営する者と協力して、社会福祉を目的とする事業の広範かつ計画的な実施が図られるよう、福祉サービスを提供する体制の確保に関する施策、福祉サービスの適切な利用の推進に関する施策その他の必要な各般の措置を講じなければならない。

2 国及び地方公共団体は、地域生活課題の解決に資する支援が包括的に提供される体制の整備その他地域福祉の推進のために必要な各般の措置を講ずるよう努めるとともに、当該措置の推進に当たつては、保健医療、労働、教育、住まい及び地域再生に関する施策その他の関連施策との連携に配慮するよう努めなければならない。

3 国及び都道府県は、市町村(特別区を含む。以下同じ。)において第百六条の四第二項に規定する重層的支援体制整備事業その他地域生活課題の解決に資する支援が包括的に提供される体制の整備が適正かつ円滑に行われるよう、必要な助言、情報の提供その他の援助を行わなければならない。

市町村による包括的な支援体制の整備

第百六条の三 市町村は、次条第二項に規定する重層的支援体制整備事業をはじめとする地域の実情に応じた次に掲げる施策の積極的な実施その他の各般の措置を通じ、地域住民等及び支援関係機関による、地域福祉の推進のための相互の協力が円滑に行われ、地域生活課題の解決に資する支援が包括的に提供される体制を整備するよう努めるものとする。

一 地域福祉に関する活動への地域住民の参加を促す活動を行う者に対する支援、地域住民等が相互に交流を図ることができる拠点の整備、地域住民等に対する研修の実施その他の地域住民等が地域福祉を推進するために必要な環境の整備に関する施策

二 地域住民等が自ら他の地域住民が抱える地域生活課題に関する相談に応じ、必要な情報の提供及び助言を行い、必要に応じて、支援関係機関に対し、協力を求めることができる体制の整備に関する施策

三 生活困窮者自立支援法第三条第二項に規定する生活困窮者自立相談支援事業を行う者その他の支援関係機関が、地域生活課題を解決するために、相互の有機的な連携の下、その解決に資する支援を一体的かつ計画的に行う体制の整備に関する施策

2 厚生労働大臣は、次条第二項に規定する重層的支援体制整備事業をはじめとする前項各号に掲げる施策に関して、その適切かつ有効な実施を図るため必要な指針を公表するものとする。

市町村地域福祉計画

第百七条 市町村は、地域福祉の推進に関する事項として次に掲げる事項を一体的に定める計画(以下「市町村地域福祉計画」という。)を策定するよう努めるものとする。

一 地域における高齢者の福祉、障害者の福祉、児童の福祉その他の福祉に関し、共通して取り組むべき事項

二 地域における福祉サービスの適切な利用の推進に関する事項

三 地域における社会福祉を目的とする事業の健全な発達に関する事項

四 地域福祉に関する活動への住民の参加の促進に関する事項

五 地域生活課題の解決に資する支援が包括的に提供される体制の整備に関する事項

2 市町村は、市町村地域福祉計画を策定し、又は変更しようとするときは、あらかじめ、地域住民等の意見を反映させるよう努めるとともに、その内容を公表するよう努めるものとする。

3 市町村は、定期的に、その策定した市町村地域福祉計画について、調査、分析及び評価を行うよう努めるとともに、必要があると認めるときは、当該市町村地域福祉計画を変更するものとする。


それでは,今日の問題です。

 

第30回・問題35 社会福祉法の規定に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。

1 市町村は,地域福祉計画の策定において,福祉サービス利用者の意見聴取をしなければならない。

2 地域住民,社会福祉を目的とする事業を経営する者及び社会福祉に関する活動を行う者は,相互に協力して地域福祉の推進に努めなければならない。

3 市町村社会福祉協議会は,地域福祉コーディネーターを配置しなければならない。

4 市町村社会福祉協議会は,社会福祉を目的とする事業を経営する者又は更生保護事業を経営する者の3分の2以上が参加していなければならない。

5 共同募金会は,共同募金を行うには,市町村社会福祉協議会の意見を聴き,配分委員会の承認を得て,共同募金の目標額を公告しなければならない。

 

 

この問題は,近年の改正は含まれない極めてオーソドックスな内容となっています。

 

きちっと勉強した人なら,必ず正解できるでしょう。

 

こういった問題を正解できるかできないかが合否を分けると言っても決して過言ではありません。

 

正解は,選択肢2です。

 

2 地域住民,社会福祉を目的とする事業を経営する者及び社会福祉に関する活動を行う者は,相互に協力して地域福祉の推進に努めなければならない。

 

社会福祉に関する活動を行う者には,ボランティア等が想定されています。

 

この三者を合わせて,地域住民等といいます。

 

要注意なのは,この「地域住民等」です。

 

地域住民等は、地域福祉の推進に当たっては、福祉サービスを必要とする地域住民及びその世帯が抱える地域生活課題を把握し、支援関係機関との連携等によりその解決を図るよう特に留意するものとする。

 

このように出題されると違和感があるかもしれませんが,正しい文章です。

 

それでは,ほかの選択肢も確認します。

 

1 市町村は,地域福祉計画の策定において,福祉サービス利用者の意見聴取をしなければならない。

 

市町村が地域福祉計画の策定・変更にあたっては,以下のように規定されます。

 

あらかじめ、地域住民等の意見を反映させるよう努める。

 

地域住民等の中には,福祉サービス利用者も含まれるでしょう。

 

しかし,このような規定はありません。

 

 

3 市町村社会福祉協議会は,地域福祉コーディネーターを配置しなければならない。

 

市町村社会福祉協議会には配置義務のある職員は,地域福祉コーディネーターを含めていません。

 

4 市町村社会福祉協議会は,社会福祉を目的とする事業を経営する者又は更生保護事業を経営する者の3分の2以上が参加していなければならない。

 

市町村社会福祉協議会に社会福祉を目的とする事業を経営する者又は更生保護事業を経営する者が参加していなければならないのは「過半数」です。

 

ここが「3分の1」になったり,「3分の2」になったりして出題されますが,正しくは「過半数」です。

 

5 共同募金会は,共同募金を行うには,市町村社会福祉協議会の意見を聴き,配分委員会の承認を得て,共同募金の目標額を公告しなければならない。

 

社会福祉法では,共同募金に関して市町村社協の役割は規定されていません。

 

共同募金会が意見を聴かなければならないのは,都道府県社協です。

 

2021年5月3日月曜日

民生委員制度・児童委員制度

民生委員制度

 

民生委員は,岡山県の済世顧問制度,大阪府の方面委員制度を源流とする制度です。

 

1948年(昭和23年)の民生委員法に規定されます。

 

民生委員法は,わずか30条しかない法律です。しかも一部は削除されています。

 

1936年(昭和11年)の方面委員令では,方面委員は名誉職である,と規定されました。

 

この規定は民生委員法にも受け継がれ,削除されたのは,2000年(平成12)年の改正です。現在は,「民生委員には、給与を支給しないものとし」と規定されます。

 

そのほか大きく変化してきたのは,その職務です。

  

法成立当時の職務

現在の職務


第十四条 民生委員の職務は、左の通りとする。

 

一 常に調査を行い、生活状態を審かにして置くこと。

 

二 保護を要する者を適切に保護指導すること。

 

三 社会施設と密接に連絡し、その機能を助けること。

 

2 民生委員は、前項の職務を行う外、必要に応じて、生活の指導を行う。


十四条 民生委員の職務は、次のとおりとする。

一 住民の生活状態を必要に応じ適切に把握しておくこと。

二 援助を必要とする者がその有する能力に応じ自立した日常生活を営むことができるように生活に関する相談に応じ、助言その他の援助を行うこと。

三 援助を必要とする者が福祉サービスを適切に利用するために必要な情報の提供その他の援助を行うこと。

四 社会福祉を目的とする事業を経営する者又は社会福祉に関する活動を行う者と密接に連携し、その事業又は活動を支援すること。

五 社会福祉法に定める福祉に関する事務所その他の関係行政機関の業務に協力すること。

2 民生委員は、前項の職務を行うほか、必要に応じて、住民の福祉の増進を図るための活動を行う。

 

以前は,「指導」であったものが,現在は「援助」に置き換わっていることに着目です。

現在は,指導は行いません。行うのは援助です。

 

〈民生委員の定員〉

 

厚生労働大臣の定める基準を参酌して、前条の区域ごとに、都道府県の条例で定める。

 

参酌とは,参考にするという意味です。

 

以前は,定員に関しては,児童相談所の児童福祉司も「参酌して」でしたが,現在は,昨今の児童虐待の増加によって「基準を標準として」に変更されています。

 

この変更によって,定員に関して社会福祉士の国試に出題されるもので,「参酌して」は民生委員のみとなっています。

 

児童委員制度

 

児童委員は,児童福祉法で規定されている制度です。

 

児童福祉法では,「民生委員法による民生委員は、児童委員に充てられたものとする」とされ,民生委員は自動的に児童委員となります。

 

現在は,主任児童委員という制度もあります。

 

〈主任児童委員の職務〉

 

児童の福祉に関する機関と児童委員との連絡調整を行うとともに、児童委員の活動に対する援助及び協力を行う。

前項の規定は、主任児童委員が第一項各号に掲げる児童委員の職務を行うことを妨げるものではない。

 

民生委員・児童委員を指揮監督する者は誰?

 

どこかに配置される職員なら,その所属長が指揮監督します。

 

しかし,民生委員・児童委員はどこかの機関に所属して活動しているわけではありません。

 

さて,それでは誰が指揮監督するでしょう?

 

答えは,今日の最後にあります。

 

それでは,今日の問題です。

 

第30回・問題34 民生委員・児童委員に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。

1 民生委員の任期は5年である。

2 民生委員の職務に関する規定では,その職務に関して必要と認める意見を直接関係各庁に具申することができる。

3 民生委員の推薦は,各市町村に設置された民生委員推薦会が厚生労働大臣に対して行う。

4 主任児童委員は,児童委員の職務とともに,児童福祉の機関と児童委員との連絡調整を行う。

5 児童委員は,児童福祉法に基づく推薦委員会により選任され,それに基づき厚生労働大臣が委嘱する。

 

制度をつかむのに良い問題だと思います。

 

こういった問題を作るのは,高い問題作成能力を必要とします。

 

それでは,解説です。

 

1 民生委員の任期は5年である。

 

民生委員の任期は,3年です。

 

前任者がやめたことで,途中から民生委員になった場合は,前任者の残りの任期が後任者の任期となります。

 

このことによって,3年に1回,全国一斉に民生委員が改選されます。

 

再任は妨げられませんが,一つ注意が必要です。

 

国の通知で,民生委員の年齢要件は「75歳未満」とされています。しかし,これは通知であり,法に規定されているものではありません。

 

現場を知る人は勘違いしがちなので注意が必要です。

 

2 民生委員の職務に関する規定では,その職務に関して必要と認める意見を直接関係各庁に具申することができる。

 

 民生委員の職務に関して必要と認める意見を関係各庁に具申することができるのは,民生委員が組織する「民生委員協議会」です。

 

民生委員が直接関係各庁に意見具申することはあり得ません。

 

3 民生委員の推薦は,各市町村に設置された民生委員推薦会が厚生労働大臣に対して行う。

 

これはものすごく重要です。

 

民生委員は,都道府県知事が推薦し,厚生労働大臣が委嘱します。

 

都道府県知事は,社会福祉の増進に熱意のある者を知りません

 

このために,都道府県知事は,市町村に設置された民生委員推薦会が推薦した者を推薦します。

 

重要なのは,市町村レベルが都道府県レベルを飛び越えて,中央官庁レベルとつながらないことです。

 

この基本ラインは確実に押さえておきたいです。

 

 

4 主任児童委員は,児童委員の職務とともに,児童福祉の機関と児童委員との連絡調整を行う。

 

これが正解です。

 

法規定そのものの出題です。

 

5 児童委員は,児童福祉法に基づく推薦委員会により選任され,それに基づき厚生労働大臣が委嘱する。

 

児童委員は,民生委員が充てられます。そのため,児童福祉法では,こういった規定をする必要はありません。

 

法は実に合理的にできています。

 

 

民生委員・児童委員を指揮監督する者は誰? の問いの答え

 

 

民生委員・児童委員を指揮監督するのは,都道府県知事です。指導訓練も行います。

2021年5月2日日曜日

第一種社会福祉事業と第二種社会福祉事業

社会福祉法は,社会福祉の基本法です。


もともとは,社会福祉事業法だったこともあり,社会福祉事業,社会福祉法人などの規定があります。


福祉のプロパーとしては,社会福祉法は必ず押さえておきたいものです。

とは言うものの法律に慣れていないとなかなか簡単に読み込めないかもしれません。


さて,今日のテーマは,第一種社会福祉事業と第二種社会福祉事業です。


学校の先生によっては,丸暗記させる人もいるかもしれませんが,国家試験ではそんなに細かくは出題されません。


基本的には


第一種社会福祉事業 → 入所系サービス

第二種社会福祉事業 → 通所系サービス


この理解で十分です。


ただし,この原則に合わないものがあります。


共同募金 → 第一種社会福祉事業


無料低額宿泊所 → 第二種社会福祉事業


第一種社会福祉事業の経営主体(原則)


・国

・地方公共団体

・社会福祉法人



それに対して,第二種社会福祉事業は多様な法人が経営することができます。


このために,共同募金は第一種社会福祉事業である必要があります。


ここで近年,問題となったのが,貧困ビジネスとしての「無料低額宿泊所」の悪用です。


第二種社会福祉事業は,事業開始の日から1か月以内に届けることで設置できて,事前の認可等は必要とされません。


そのため,法を改正して,無料低額宿泊所のように住居を用いる第二種社会福祉事業は,事業を開始する前に都道府県知事への届出を義務づけました。


それでは,今日の問題です。


第30回・問題33 地域福祉への参加に関する次の記述のうち,最も適切なものを1つ選びなさい。

1 住民主体の地域福祉活動は,専門機関の支援を求めないで進めることが望ましい。 

2 福祉公社などの住民参加型在宅福祉サービス団体は,介護保険制度を補完することを目的に設立された。

3 共同募金は,地域福祉の推進に関わる第一種社会福祉事業である。

4 特定非営利活動法人の活動分野は,「まちづくりの推進を図る活動」が最も多い。

5 介護保険制度の地域密着型サービスの運営推進会議は,都道府県が設置する。


ごちゃごちゃとさまざまなものが出題されていますが,正解はとてもシンプルです。


3 共同募金は,地域福祉の推進に関わる第一種社会福祉事業である。


共同募金が第一種社会福祉事業であるのか,第二種社会福祉事業であるのかを問う問題は,これまで何度出題されたかわからないくらいにとても多いです。おそらく10回以上はあるでしょう。


共同募金は,第一種社会福祉事業です。


一応そのほかの選択肢にも触れておきます。


1 住民主体の地域福祉活動は,専門機関の支援を求めないで進めることが望ましい。 


国家試験では,「望ましい」は,正解になりにくい傾向があるようです。


もちろんこんなことは望ましくはないです。必要なものは必要に応じて活用します。



2 福祉公社などの住民参加型在宅福祉サービス団体は,介護保険制度を補完することを目的に設立された。


福祉公社は,現在はだんだんなくなっていく傾向がありますが,1990年(平成2年)の福祉関係八法改正によって,在宅系サービスが第二種社会福祉事業に位置づけられたことで,この実施主体として,福祉公社は設立されていきました。


福祉公社は,老人福祉法によるサービスを提供しているので,現在は介護保険制度を補完しているような形になっていますが,設立はそれよりも前のことです。


介護保険制度ができて,結果的に補完するような形になっただけです。


4 特定非営利活動法人の活動分野は,「まちづくりの推進を図る活動」が最も多い。


NPO法人の活動分野は,現在のところ20分野に限定されています。


そのうち,最も多いのは「保健,医療または福祉の増進を図る活動」です。全体の6割がこの活動を定款に定めています。


参考書では,20分野の割合を記述しているものもありますが,2番目以下を問われることはまずないので,トップは「保健,医療または福祉の増進を図る活動」と覚えておけば十分です。



5 介護保険制度の地域密着型サービスの運営推進会議は,都道府県が設置する。


介護保険制度の地域密着型サービスの運営推進会議は,地域密着型サービス事業所が地域住民等に対してサービス内容を説明するために開催するものです。


同会議の設置は,事業所自らが行います。


ちょっと難しそうだと思う人もいるかもしれませんが,地域密着型サービスは,市町村が指定・監督するものです。


会議のことは知らなくても,地域密着型サービスは都道府県がかかわるものではないので,正解ではないだろうと推測することができるでしょう。

2021年5月1日土曜日

社会福祉協議会の歴史

社会福祉協議会は,社会福祉法が規定する組織です。

 

よく知らない人は,市町村の組織だと思っている人もいるようです。

 

しかし,社会福祉協議会の多くは,社会福祉法人という法人格をもつ民間組織です。

 

社会福祉協議会の活動の説明は,また別の機会に譲るとして,今回は歴史についてまとめていきたいと思います。

 

 

全国社協

都道府県社協

市町村社協

1908年

(明治41年)

中央慈善協会設立

初代会長は,渋沢栄一

 

 

1921年

(大正10年)

社会事業協会

 

 

1924年

(大正13年)

中央社会事業協会

 

 

1947年

(昭和22年)

日本社会事業協会

全日本私設社会事業連盟との合併による

 

 

1951年

(昭和26年)

中央社会福祉協議会

日本社会事業協会,全日本民生委員連盟,同胞援護会の合併による

都道府県社会福祉協議会設立

 

同年

社会福祉事業法によって,法制化

社会福祉事業法によって,法制化

 

1952年

(昭和27年)

全国社会福祉協議会連合会

 

厚生省通知によって,設立が始まる

1955年

(昭和30年)

全国社会福祉協議会

 

 

1962年

(昭和37年)

『社会福祉協議会基本要項』で「住民主体の原則」が示される

 

 

1983年

(昭和58年)

 

 

社会福祉事業法の改正で,法制化

1992年

(平成4年)

『新・社会福祉協議会基本要項』で,「公私協働の原則」が示される

 

 

 

救護法の創設,実施に尽力した渋沢栄一は,現在の全国社会福祉協議会(全社協)の源流である中央慈善協会の初代会長を務めています。

 

その他には,全国民生委員児童委員連合会の源流である全日本方面委員連盟の初代会長も務めました。

 

救護法と方面委員と渋沢栄一

https://fukufuku21.blogspot.com/2021/04/blog-post_30.html

 

社協の法制化は何度も出題されています。

 

それでは,今日の問題です。

 

第30回・問題32 社会福祉協議会の歴史に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。

1 1951年(昭和26年)に,現在の全国社会福祉協議会の前身となる中央慈善協会が設立された。

2 1962年(昭和37年)に,全国社会福祉協議会は「社会福祉協議会基本要項」の中で,社会福祉協議会の基本的機能はコミュニティ・オーガニゼーションの方法を地域社会に適用することであるとした。

3 1979年(昭和54年)に,全国社会福祉協議会は「在宅福祉サービスの戦略」の中で,ボランティアが行政サービスを代替すべきであると提言した。

4 1983年(昭和58年)に,都道府県社会福祉協議会による事業が拡大する中で,都道府県社会福祉協議会が法的に位置づけられた。

5 1992年(平成4年)に,全国社会福祉協議会は「新・社会福祉協議会基本要項」の中で,「住民主体の原則」を初めて明文化した。

 

 

この問題はなかなかの難敵です。その理由は,後で述べます。

 

それでは解説です。

 

1 1951年(昭和26年)に,現在の全国社会福祉協議会の前身となる中央慈善協会が設立された。

 

1951年(昭和26年)に設立されたのは,日本社会事業協会,全日本民生委員連盟,同胞援護会の三団体合併による「中央社会福祉協議会」です。

 

全社協は名称がころころ変わっているので,覚えるのが大変に感じると思います。

 

合併で名称が変わったという理由もありますが,それ以外に大きな理由があります。

 

それは現在では社会福祉事業と呼ばれるものが,時代とともに変わったことです。

 

大きく分けると

 

明治期 → 慈善事業

 

大正期~昭和初期 → 社会事業

 

昭和26年以降 → 社会福祉事業

 

途中,国では,感化救済事業(明治後期~大正期),軍事厚生事業(日中戦争期)と呼び変えた時代もあります。

 

感化救済事業に携わる職員のための講習会である「感化救済事業講習会」の第1回の終了日に設立されたのが,渋沢栄一が初代会長となった「中央慈善協会」です。

 

こういったことを覚えておけば,昭和期に「慈善」の名称がつく組織が創設されることはないと思えることでしょう。

 

つまらないミスを防ぐコツはこういうところにもあります。

 

2 1962年(昭和37年)に,全国社会福祉協議会は「社会福祉協議会基本要項」の中で,社会福祉協議会の基本的機能はコミュニティ・オーガニゼーションの方法を地域社会に適用することであるとした。

 

これが正解です。

 

この問題が難しい理由は,この選択肢が正解になったためです。

 

社会福祉協議会基本要項は,住民主体の原則を打ち出したことで知られており,それまではそのポイントでしか出題されたことがありませんでした。

 

ロスのコミュニティ・オーガニゼーション(地域組織化活動)の理論が,日本の社協の活動に影響を与えたという出題はありましたが,要綱で触れられていることに言及した出題はこの時が初めてだったのです。

 

だからといって,とんでもなく難しい問題だったか言えば,実はそうではありません。

 

つまらないミスをしなければ,ほかの選択肢はすべて消し込むことができるからです。ただし,それができるのは確実な知識がある人だけです。

 

3 1979年(昭和54年)に,全国社会福祉協議会は「在宅福祉サービスの戦略」の中で,ボランティアが行政サービスを代替すべきであると提言した。

 

 

落ち着いて考えると,ボランティアが行政サービスにとって代わるなんてことを提言するわけがないと思えるでしょう。

 

しかし,「在宅福祉サービスの戦略」なんてものは知らない,と思うと試験委員が仕掛けたわなにはまります。

 

こういった問題でミスする人の多くは,気持ちに余裕がなくてあわててしまうという傾向があるようなので,注意が必要でしょう。

 

4 1983年(昭和58年)に,都道府県社会福祉協議会による事業が拡大する中で,都道府県社会福祉協議会が法的に位置づけられた。

 

1983年(昭和58年)に法制化されたのは,市町村社会福祉協議会です。

 

5 1992年(平成4年)に,全国社会福祉協議会は「新・社会福祉協議会基本要項」の中で,「住民主体の原則」を初めて明文化した。

 

「新・社会福祉協議会基本要項」で示したのは「公私協働の原則」です。

 

「住民主体の原則」を初めて明文化したのは,「社会福祉協議会基本要項」です。

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