今回は,片麻痺と対麻痺を押さえたいと思います。
片麻痺 |
対麻痺 |
左右のどちらかの半身に起きる麻痺。 |
両下肢に起きる麻痺。 |
このように,並べて出題されればわかりやすいですが,国家試験は,片麻痺,あるいは対麻痺のどちらかを出題されると難しくなります。
それを私たちは「セット入れ替え作問法」と呼んでいます。
片麻痺とは,両下肢に起きる麻痺である。
あるいは,
対麻痺とは,左右のどちらかの半身に起きる麻痺である。
どちらも間違いだということになります。
それでは,今日の問題です。
第35回・問題6 事例を読んで,Aさんの症状として,最も適切なものを1つ選びなさい。
〔事 例〕
Aさん(55歳)は,出勤途中に突然歩けなくなり,救急病院に運ばれた。脳梗塞と診断され,治療とリハビリテーションを受けたが,左の上下肢に運動麻痺が残った。左足の感覚が鈍く,足が床についているかどうか分かりにくい。歩行障害があり,室内は杖歩行又は伝い歩きをしている。呂律が回らないことがあるが,会話,読み書き,計算は可能である。食事は右手で箸を持って問題なく食べることができる。尿便意はあるが,自分でトイレに行くのが難しいため,間に合わず失禁することがある。
1 失語症
2 対麻痺
3 感覚障害
4 嚥下障害
5 腎臓機能障害
ICF(国際生活機能分類)に従えば,「脳梗塞」は「健康状態」,「左の上下肢に運動麻痺」は「心身機能・身体構造」,「杖歩行又は伝い歩き」は「活動」にそれぞれ分類されます。
なお,「歩行障害」は「活動制限」と表現されます。
それでは,解説です。
1 失語症
「呂律が回らないことがあるが,会話,読み書き,計算は可能である」という情報から,失語症ではないと判断できます。
2 対麻痺
「左の上下肢に運動麻痺が残った」という情報から,対麻痺ではなく,片麻痺だと判断できます。
3 感覚障害
これが正解です。
感覚障害は,身体の感覚が鈍くなる障害です。
「左足の感覚が鈍く,足が床についているかどうか分かりにくい」という情報から,感覚障害だと判断できます。
4 嚥下障害
「食事は右手で箸を持って問題なく食べることができる」という情報から,嚥下障害はないと判断できます。
5 腎臓機能障害
腎臓機能障害は,腎臓機能が低下する障害です。
腎臓機能障害に当てはまる情報はありません。
なお,「尿便意はあるが,自分でトイレに行くのが難しいため,間に合わず失禁することがある」というタイプの失禁は,「機能性尿失禁」といいます。
〈今日のおまけ〉
今日のような事例問題は,事例の中にある情報だけで考えて答えます。
事例にはない情報を想像して付け加えて考えるのはミスの原因となります。