2025年1月29日水曜日

児童の権利に関する条約(子どもの権利条約)の重要ポイント

童の権利に関する条約(子どもの権利条約)は,国際連合によって,1989年に採択されたものです。日本は1994(平成6)年に批准しています。


批准とは,条約を国内に適用させます,と宣言するものです。

そのあと,条約を締結します。


このように,条約と批准と締結は,ちょっと違ったものですが,国家試験ではそこの違いを問われることは絶対にあり得ません。


それはさておき,日本が批准するまでに5年の歳月を要しています。


理由は,批准するためには国内法を整備する必要があるからです。

条約は,法的拘束力をもつので,国内法で条約の内容に反するものがあった場合,条約違反となってしまいます。


児童の権利に関する条約(子どもの権利条約)の特徴は,古典的な権利である「受動的権利」とともに「能動的権利」を児童に保障したことです。


受動的権利とは,児童は弱い存在なので,守られるべきである,というものです。

能動的権利
とは,児童が積極的に意見を述べることができる(意見表明権),結社の自由などを認める,というものです。

歴史としては,ホワイトハウス会議における声明などがありますが,それらは,受動的権利に言及したものです。

それらは,〇〇宣言などは,法的拘束力を持たないものであるのに対し,条約は,法的拘束力を持つものです。

歴史的にみると,受動的権利を法的拘束力をもつ条約として規定し直したものが,「子どもの権利条約」だということになります。

それでは,今日の問題です。

第30回・問題138 

児童が「自由に自己の意見を表明する権利を確保する」と明記しているものとして,正しいものを1つ選びなさい。

1 児童福祉法

2 児童の権利に関する条約

3 児童虐待の防止等に関する法律

4 児童権利宣言

5 児童憲章


正解は,選択肢2

2 児童の権利に関する条約


子どもの権利条約を受けて,現在の児童福祉法は以下のように規定されています。

第一条 全て児童は、児童の権利に関する条約の精神にのつとり、適切に養育されること、その生活を保障されること、愛され、保護されること、その心身の健やかな成長及び発達並びにその自立が図られることその他の福祉を等しく保障される権利を有する。

今日の問題で「1 児童福祉法」を正解だと思った人は,別の面ですごい人かもしれません。

現在の児童福祉法およびこども基本法には,子どもの権利条約の精神が流れています。条約を批准するというのは,こういうことです。


児童福祉法の理念に関する記事
https://fukufuku21.blogspot.com/2019/12/blog-post_4.html


こども基本法の目的
この法律は、日本国憲法及び児童の権利に関する条約の精神にのっとり、次代の社会を担う全てのこどもが、生涯にわたる人格形成の基礎を築き、自立した個人としてひとしく健やかに成長することができ、心身の状況、置かれている環境等にかかわらず、その権利の擁護が図られ、将来にわたって幸福な生活を送ることができる社会の実現を目指して、社会全体としてこども施策に取り組むことができるよう、こども施策に関し、基本理念を定め、国の責務等を明らかにし、及びこども施策の基本となる事項を定めるとともに、こども政策推進会議を設置すること等により、こども施策を総合的に推進することを目的とする。


<今日の一言>

国家試験は,きちっと覚えた者勝ちです。

こども権利条約に関しては,受動的権利とともに能動的権利を保障しているのが特徴である,というところがポイントです。

一つひとつをきっちり覚えて,得点力を伸ばしていきましょう。

国家試験は,基本をきちっと覚えた者が合格をつかみ取ります。


おまけの問題

第29回・問題138 

「児童の権利に関する条約」に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。

1 第1回ホワイトハウス会議で採択された。

2 日本政府は,この条約を批准するための検討を進めている。

3 児童の権利を,能動的権利と受動的権利に関する節に分けて規定している。

4 「児童とは,20歳未満のすべての者をいう」と規定している。

5 「自由に自己の意見を表明する権利の確保」について規定している。


正解は,選択肢5です。

5 「自由に自己の意見を表明する権利の確保」について規定している。

これが能動的権利そのものです。

ほかの選択肢のどこが間違っているのかは,次回で学んでもらうにして,間違えそうなものは,

3 児童の権利を,能動的権利と受動的権利に関する節に分けて規定している。

能動的権利と受動的権利を規定しているのは適切です。

おそらく,この問題は,

3 児童の権利を,能動的権利と受動的権利に関する節に分けて規定している。
5 「自由に自己の意見を表明する権利の確保」について規定している。

で迷う人がいたと思います。

しかし,ここで引っ掛けられてはいけません。

子どもの権利条約は,能動的権利を規定していることが特徴です。
「自由に自己の意見を表明する権利の確保」は,能動的権利そのものです。

これを自信もって正解にしなければなりません。

選択肢3を見たとき,子どもの権利条約を読んだことがない,わからない,と思ったら間違えます。
国家試験は,深い知識を求めるような出題はしません。
これは断言できます。

選択肢3が正解なら,

3 児童の権利として,能動的権利と受動的権利を規定している。

でよいはずです。

「節を分けて」という部分が余分です。

これが,チームfukufuku21が提唱している

人は,嘘をつくとき,饒舌になる

という解答テクニックです。

このテクニックを身につけることは難しいかもしれませんが,ここに気がつくことができれば,得点力は大幅にアップします。

3年の過去問を3回解いても,合格する知識は絶対につきません。これは断言します。
3年の過去問を3回解くことに意味があるとしたら,こういったところに気がつくことと言えるでしょう。

国家試験は人が作成します。そのため,よくよく問題文を見ると,間違い選択肢には,ほころびを生じていることがあるのです。

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