社会福祉士の国試を何度も受験しても合格できないという方がいらっしゃると思います。
そういった方は次の2つのタイプに分かれると考えられます。
①11月頃から過去問をちょこっと取り組むだけで国試に臨むタイプ
知識不足は否めません。
国試の出題範囲は広いので,過去3回国試で出題された内容では合格する知識には足りまん。
同じパターンを繰り返していれば結果は同じです。どこかで切り替えないといけません。
「運」で合格をつかむのは難しいです。
このタイプの人はおそらくこの学習部屋を目にすることは少ないはず。もし読んでするとしたら,今回は合格する可能性が大いにあります。それだけのノウハウを紹介してきました。
最後の最後まで頑張りましょう。
②落ち着いて問題を解けば毎年合格点に達していたという方
毎年,あと数点の差で不合格になるタイプです。理論的には,毎年勉強を続けていれば,その分の知識は増えるはずです。
しかし,実際の国試では,例えば,前回は1点差だったのに,今回は5点差になった,ということもあります。
これは国試突破には知識のほかには,別の要素があることを示しています。
②のタイプの方が合格をつかむのが,実は大変です。
この学習部屋は,そういった人が合格するために始めたものです。
別な要素とは
知識を超えた想像力
もその一つです。
試験委員の出題意図を考えるというのもあるでしょう。
これらを規定時間内に行うには,思考訓練が必要です。
②のタイプの方は,とにかく真面目なタイプに多いです。
そのため,国試会場では緊張感のあまり,柔軟な思考ができなくなってしまうのです。
今日の問題も,想像力を発揮することが必要なタイプの問題です。
第30回・問題88
質問紙調査の方法に関する次の記述のうち,最も適切なものを1つ選びなさい。
1 郵送調査法は,返送時に氏名を記入する必要があるため,匿名性を確保するのが難しい。
2 訪問面接調査法は,プライバシーに関わる質問をするのに適している。
3 複雑で難しい質問には,自記式で質問紙に記入する方法が適している。
4 留置調査法は,他記式なので,記入漏れや記入ミスを抑制できる。
5 調査対象者本人の回答であるかを確認するには,他記式による記入が望ましい。
緊張する国試会場で,普段通りの力を発揮するのは決して簡単なことではありません。
それでは解説です。
1 郵送調査法は,返送時に氏名を記入する必要があるため,匿名性を確保するのが難しい。
これは誤りです。
郵送調査には様々な方法があります。もちろんその中には,返送時に指名を記入する必要があるものもあるかもしれません。そうなると匿名性はなくなってしまいます。
しかし,すべての郵送調査で指名を記入しなければならないという決まりはありません。
郵送調査のメリットは経費と労力をあまりかけないで実施できることです。その反面,デメリットとしては,回収率が低いことがあります。
記名式の調査票では本音はかけませんし,それでなくても回収率は低いものをさらに低くしてしまう恐れがあります。
2 訪問面接調査法は,プライバシーに関わる質問をするのに適している。
これも誤りです。
第26回,第28回国試で同じようなスタイルの問題が出題されています。
第26回国試問題
https://fukufuku21.blogspot.com/2019/01/25.html
第28回問題
https://fukufuku21.blogspot.com/2019/01/35.html
想像力を発揮する時のポイントは,極端な例を挙げて考えることです。
第26回では以下のような問題が出題されています。
犯罪や性行動など,多くの調査対象者が自分からは答えたがらない質問内容については,郵送法よりは調査員が訪問して質問する訪問面接法の方が適している。
これを参考に極端な例を考えてみると
犯罪では
「あなたは今まで万引きをしたことがありますか」
性行動では
「あなたはどのような頻度で性交を行いますか」
といったことです。
こういった質問は,訪問面接調査には向かないことがわかるでしょう。
無記名式の郵送調査でも答えにくいかもしれませんが,これらの質問が必要な調査であれば,訪問面接調査では本当の話は聞くことは難しいです。
このことについては<今日の一言>で解説します。
3 複雑で難しい質問には,自記式で質問紙に記入する方法が適している。
これも誤りです。
自記式(自計式),他記式(他計式)が理解できていないとこれを正解にしてしまうかもしれません。
間違いやすいものがねらわれます。
自記式(自計式) → 調査対象者が調査票に記入するもの
他記式(他計式) → 調査者(調査員)が調査票に記入するもの
この場合,「自」が誰のことなのかが言葉だけでは推測することができないために,ねらわれるのです。
「自」は調査対象者
しっかり覚えておきましょう。
解説に戻ると,複雑で難しい質問は,他記式が適しています。なぜなら調査対象者が答えにくそうにしている様子を見ながら,質問の補足説明などができるからです。
自記式の調査の代表は,郵送調査と留置調査です。もし質問の意味がわからなければ,連絡先に聞くこともできるかもしれませんが,多くの人はそんなことはしないので,答えないか適当に答えることになるでしょう。
4 留置調査法は,他記式なので,記入漏れや記入ミスを抑制できる。
これも誤りです。
先に書いたように,留置調査は,郵送調査と並んで自記式の代表的なものです。
記入漏れや記入ミスのことは「測定誤差」といいます。
全数調査であっても標本調査であっても測定誤差は生じます。他記式でも測定誤差は生じますが,一般的には調査対象者が記入する自記式よりも調査者(調査員)が記入する他記式の方が測定誤差の発生は抑制できると考えられます。
5 調査対象者本人の回答であるかを確認するには,他記式による記入が望ましい。
これが正解です。
他記式は,調査者(調査員)が,調査対象者から聞き取って記入するものです。そのため,誰の回答なのかが確認できます。
自記式の代表である郵送調査も留置調査も,調査者(調査員)の目の前で回答するわけではないので,誰が回答したものかわかりません。
そのために,第26回国試で出題されたように,留置調査では,回収の時に誰が記入したまのか確認することも行われます。
<今日の一言>
国試の合格基準は,6割程度です。6割と明示できないのは,問題の難易度によって点数が上下させるからです。
勉強していると覚えきれていないことで,焦りや不安が高まっていきます。しかし今まで勉強してきたことは,必ず身についています。
理解しにくいものは,ほかの受験生も同じです。国試ではおそらくそういったものが出題された問題の正解率は低いはずです。
合格基準が7割程度だとすれば,国試の難易度は何倍にも高まります。
しかし6割程度なら,今まで覚えてきたもので十分に戦えるはずです。
後は「セット入れ替え手法」に気を付けるために,知識を整理していくことでしょう。
セット入れ替え手法対策
https://fukufuku21.blogspot.com/2019/01/blog-post_5.html
知識が不足していれば,知識はしっかりつけなければなりません。
今日の問題で正解できるための必要条件は,自記式と他記式の違いがわかっていることです。
逆にこれがわかっていないと正解するのはかなり難しいです。想像力を発揮するためには,適切な知識がベースにあることが必要だからです。
今日の問題で,試験委員が隠したメッセージは,
2 訪問面接調査法は,プライバシーに関わる質問をするのに適している。
のように思います。
この試験は社会福祉士になるための試験です。
社会福祉調査の中にもソーシャルワーク要素を含ませていると考えられます。
訪問面接調査は,利用者宅に訪問しての訪問調査,アセスメント,モニタリングなどソーシャルワークでは多くの場面で行われるものです。
試験委員が隠したメッセージは,訪問面接でご利用者,あるいは家族が本音を話してくれるのは決して簡単なものではないということなのではないでしょうか。
ご利用者,家族は,援助者が聴くので仕方なく答えているのかもしれません。クライエント―ワーカーという関係性だからようやく成り立っているものです。
ソーシャルワーク専門職としては,クライエントが話したがらない内容についても知らなければならないことがあります。
例えば,医療ソーシャルワーカーの業務指針にある「受療援助」などがそれに当たります。なぜ受療を拒否しているのか,その本音を知ることです。
「社会福祉調査の基礎」を苦手としている人が多いようですが,突破口は必ず開けます。
想像してごらん
ジョン・レノンは言いました。
想像した先には,正解が待っています。さらにその先には,念願の国家資格が待っています。
資格を得た自分の姿を想像してごらん
今まで自分を応援してくれた人から「おめでとう」と言われたときのことを想像してごらん
今は辛いときだからこそ,明るい未来を想像することが必要です。
それが,あと数点アップするための究極のコツです!!