コミュニティとアソシエーションは,今までに何度か取り上げてきたテーマです。
国家試験に出題されたものでそのまま表現すると,以下のようになります。
コミュニティは,地理的・文化的な地域性を結合要素とした社会集団です。
アソシエーションは,特定の関心を共同して追求するために設立された,人為的な機能集団です。
ヒラリーは,種々あるコミュニティの定義を整理し,コミュニティには「社会的相互作用」「空間の限定」「共通の絆」があることを見出しました。
しかし,通信・交通手段が発達する現代社会では,地域に限定されない新しいコミュニティが展開されています。
それをウェルマンは「コミュニティ開放論」と名付けています。
アソシエーションは,組織,会社などが分類され,家族もアソシエーションに含まれます。
テンニースが提唱したゲマインシャフト(本質意思に基づく集団)とゲゼルシャフト(選択意思に基づく集団)と重ね合わせると以下のようになります。
コミュニティ ≒ ゲマインシャフト
アソシエーション ≒ ゲゼルシャフト
自然科学系のものは,誰が見ても同じです。
例えば,1+1=2 というのは,世界共通でしょう。
それに対して,自然科学系ではないものは,誰かが提唱して初めて存在するので,「〇〇によると」というような条件をつけなければ,確実性に欠けることになります。
本当は「〇〇によると」をつけることが大切なのかもしれませんが,広く浸透しているものは,共通認識になっているので,要件をつけなくとも意味が通ります。
今日の問題は,いかにもそういった問題です。
第28回・問題19 社会集団に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。
1 ゲマインシャフトとは,本質意思に基づく結合が解体した,近代以降の社会集団である。
2 インフォーマルグループとは,メンバーの親密な相互関係を通じて形成される集団である。
3 第一次集団とは,家族や親族などの第二次集団とは異なる,会社や学校などの社会集団である。
4 コミュニティとは,特定の関心を共同して追求するために設立された,人為的な機能集団である。
5 アソシエーションとは,地理的・文化的な地域性を結合要素とした社会集団である。
この中で,提唱者が明確ではないのは,インフォーマルグループでしょう。
それ以外は,以下のようになります。
1 テンニースが提唱したゲマインシャフトとは,本質意思に基づく結合が解体した,近代以降の社会集団である。
3 クーリーが提唱した第一次集団とは,家族や親族などの第二次集団とは異なる,会社や学校などの社会集団である。
4 マッキーバーが提唱したコミュニティとは,特定の関心を共同して追求するために設立された,人為的な機能集団である。
5 マッキーバーが提唱したアソシエーションとは,地理的・文化的な地域性を結合要素とした社会集団である。
人名は覚えないよりも覚えたほうがよいことに決まっていますが,特に社会学に関して言えば,大御所以外は覚える優先度はかなり低いです。
社会学は,極端なことを言えば,ほとんどすべての問題に「〇〇によると」をつけることになってしまいます。
問題を作る技術で言えば,人名を入れ替えるのは,かなり低俗なものだと言えます。
人名を覚えたければ覚えたらよいですし,覚えたくなければ覚えなくてもよいと言えるのがこの科目の特徴です。
それでは,解説です。
1 ゲマインシャフトとは,本質意思に基づく結合が解体した,近代以降の社会集団である。
ゲマインシャフトは,本質意思に基づく集団です。
太古の昔からおそらく存在します。
2 インフォーマルグループとは,メンバーの親密な相互関係を通じて形成される集団である。
これが正解です。
インフォーマルとは「非公式の」という意味です。フォーマル(公式の)にインをつけて否定形にしたものです。
3 第一次集団とは,家族や親族などの第二次集団とは異なる,会社や学校などの社会集団である。
第一次集団は,仲間などの対面的な関係の集団です。
第二次集団は,会社や学校など非対面的な集団です。
4 コミュニティとは,特定の関心を共同して追求するために設立された,人為的な機能集団である。
5 アソシエーションとは,地理的・文化的な地域性を結合要素とした社会集団である。
この2つは,コミュニティとアソシエーションを入れ替えたものです。
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