2025年10月30日木曜日

障害者総合支援法における相談支援

 

今日のテーマは,「障害者総合支援法における相談支援」です。

 

同法に規定される相談支援機関の中心は,基幹相談支援センターです。

 


〈基幹相談支援センターの業務〉

 

・総合的・専門的な相談の実施

・地域の相談支援体制強化の取組

・地域の相談事業者への専門的な指導助言,人材育成

・地域の相談機関との連携強化

・地域移行・地域定着の促進の取組

・権利擁護・虐待の防止


同センターの設置は,市町村の努力義務です。



34回・問題57 

「障害者総合支援法」における相談支援などに関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。

1 サービス利用支援では,利用者の自宅を訪問し,身体介護や家事援助等の介助を行う。

2 地域相談支援では,地域生活から施設入所や精神科病院への入院に向けた移行支援を行う。

3 相談支援は,訓練等給付費の支給対象となる。

4 基幹相談支援センターは,地域における相談支援の中核的な役割を担う機関である。

5 指定障害福祉サービスの管理を行う者として相談支援専門員が規定されている。

 

 

 それでは,解説です。

 

1 サービス利用支援では,利用者の自宅を訪問し,身体介護や家事援助等の介助を行う。

 

相談支援の問題なのに,介助を行うのはおかしいです。

利用者の自宅を訪問し,身体介護や家事援助等の介助を行うのは,居宅介護です。

 

サービス利用支援は,サービス等利用計画案を作成してケアマネジメントを行います。

 

2 地域相談支援では,地域生活から施設入所や精神科病院への入院に向けた移行支援を行う。

 

地域相談支援には,地域移行支援と地域定着支援があります。

 

地域移行支援は

 病院・施設等 ➡ 地域生活

 

です。

 

3 相談支援は,訓練等給付費の支給対象となる。

 

訓練等給付費の支給対象となるのは,訓練等給付です。

 

相談支援では,地域相談支援には地域相談支援給付費,計画相談支援には計画相談支援給付費がそれぞれ給付されます。

 

4 基幹相談支援センターは,地域における相談支援の中核的な役割を担う機関である。

 

これが正解です。

 

基幹相談支援センターがよくわからなくても「基幹」という名称から正解できてしまいます。

 

5 指定障害福祉サービスの管理を行う者として相談支援専門員が規定されている。

 

指定障害福祉サービスの管理を行う者は,サービス管理責任者です。

相談支援専門員は,障害者に対する相談支援を行います。


2025年10月28日火曜日

精神保健福祉法に規定される入院形態

 

精神保健福祉法は,社会福祉士の国家試験ではあまり出題されて来なかった法制度です。

近年になってようやく出題されるようになってきています。

 

今日のテーマは「精神保健福祉法に規定される入院形態」です。

 

任意入院
任意入院は,看護職員によって入院患者が殺された宇都宮病院事件によって,精神衛生法が精神保健法に改正されたときにできた制度です。

本人の同意で入院するものです。それまで本人の意思で入院するというものがなかったというのはちょっとびっくりですが,精神障害者に対する施策は,隔離だったということなのでしょう。

入院は自分の意思で行われるので,退院も自分の意思でできます。

しかし,悲しいですが退院制限というものがあります。

精神保健指定医が退院制限する場合は,72時間が限度です。

精神保健指定医ではない場合は,12時間が限度です。

退院制限があるのは,任意入院のみです。

任意入院以外は,医師の判断で退院の可否が決まるからです。


医療保護入院
自傷他害の恐れはないものの入院が必要な時,本人の同意がなくても,家族等の同意で行う入院です。


措置入院/緊急措置入院
措置入院は,自傷他害の恐れがある場合,都道府県知事の措置による入院です。

ただし簡単に措置入院が行われるものではありません。

精神保健指定医が2人以上で診察を行ったうえで,その診察結果が一致して初めて実施されます。

緊急措置入院は,ライシャワー駐日大使が精神障害者によって刺された事件によって,精神衛生法が改正されてできた制度です。

措置入院の一形態で,緊急を要する時に,精神保健指定医の診断は1人で措置入院を行うことができますが,入院時間は72時間が限度です。




④応急入院
応急入院は,精神保健法の成立によってできた制度です。

入院治療が必要な場合,本人や家族等の同意がなくても,精神保健指定医が必要性を認めることで行われる入院です。

精神保健指定医が診断した場合は72時間を限度,精神保健指定医ではない場合は,12時間が限度です。



さて,ここで整理しましょう。


任意入院と医療保護入院
 本人あるいは家族等の同意で行う入院です。


措置入院,緊急措置入院,応急入院
 本人あるいは家族の意思とは別に行われる入院です。


退院制限があるのは,任意入院のみ。


入院に時間の制限があるもの
 緊急措置入院,応急入院。


措置入院に時間の限度が設けられていない
 理由は,精神保健指定医2人の判断が一致した場合に行われるからです。


時間の限度を整理すると,

72時間と12時間しかありません。

24時間,36時間といったものはありません。




72時間・12時間法則は,入院も退院も共通

時間の限度を精神保健指定医とそれ以外という視点で整理すると,

精神保健指定医  72時間

それ以外  12時間

 

それでは,今日の問題です。

 

35回・問題62 「精神保健福祉法」に規定されている入院に関する次の記述のうち,最も適切なものを1つ選びなさい。

1 任意入院では,入院者から退院の申出があった場合,精神保健指定医の診察により,24時間以内に限り退院を制限することができる。

2 応急入院では,精神科病院の管理者は,精神保健指定医の診察がなくても,72時間以内に限り入院させることができる。

3 医療保護入院では,精神保健指定医の診察の結果,必要と認められれば,本人の同意がなくても,家族等のうちいずれかの者の同意に基づき入院させることができる。

4 医療保護入院では,精神保健指定医の診察の結果,必要と認められれば,本人の同意がなくても,本人に家族等がいない場合は検察官の同意により入院させることができる。

5 措置入院では,本人に自傷他害のおそれがあると認めた場合,警察署長の権限に基づき入院させることができる。

 

なかなかの難問です。

 

早速解説です。

 

1 任意入院では,入院者から退院の申出があった場合,精神保健指定医の診察により,24時間以内に限り退院を制限することができる。

 

任意入院は,自分の意思により入院しますが,退院には制限があります。

 

精神保健指定医が診察した場合の退院制限は,72時間以内です。

 

2 応急入院では,精神科病院の管理者は,精神保健指定医の診察がなくても,72時間以内に限り入院させることができる。

 

応急入院は,精神保健指定医の診察がなくても入院させることができますが,その場合は12時間が限度です。

 

3 医療保護入院では,精神保健指定医の診察の結果,必要と認められれば,本人の同意がなくても,家族等のうちいずれかの者の同意に基づき入院させることができる。

 

これが正解です。

 

医療保護入院は,本人の同意がなくても,家族等の同意に基づき入院させることができます。

 

4 医療保護入院では,精神保健指定医の診察の結果,必要と認められれば,本人の同意がなくても,本人に家族等がいない場合は検察官の同意により入院させることができる。

 

医療保護入院は,家族等の同意に基づく入院形態です。

 

5 措置入院では,本人に自傷他害のおそれがあると認めた場合,警察署長の権限に基づき入院させることができる。

 

措置入院は都道府県知事の措置による入院形態です。

2025年9月28日日曜日

身体障害者福祉法

 

今回は,身体障害者福祉法を取り上げます。

 

身体障害者福祉法は,1949年(昭和24年)に作られた法律です。

 

成立当時の法の目的と現在の目的を比較してみます。

 

1949年当時

現在

身体障害者の更生を援助し,その更生のために必要な保護を行い,もって身体障害者の福祉の増進を図ること。

身体障害者の自立と社会経済活動への参加を促進するため,身体障害者を援助し,及び必要に応じて保護し,もつて身体障害者の福祉の増進を図ること。

 

成立当時は,「更生」という用語が使われていることが特徴です。

 

更生とは,リハビリテーションを意味し,この法律は,身体障害者の職業リハビリテーションを目的にしていることがわかります。

 

現在は,「自立」「社会経済活動への参加」を促進と変わっています。

 

「自立」とは,単に経済的自立を意味するのではなく,社会的自立や日常生活自立も含みます。

 

「社会経済活動への参加」は,もともとの「更生」を意味していると考えられます。

 

1949年当時は,戦争で傷ついた人が多かったために,「更生」を強調したと考えられます。

 

身体障害者の努力義務についても比較します。

 

1949年当時

現在

(更生への努力)

すべて身体障害者は,自ら進んでその障害を克服し,すみやかに社会経済活動に参与することができるように努めなければならない。

(自立への努力)

すべて身体障害者は,自ら進んでその障害を克服し,その有する能力を活用することにより,社会経済活動に参加することができるように努めなければならない。

 

「更生への努力」が「自立への努力」に変更されています。

 

「すみやかに」が「その有する能力を活用することにより」に変更されています。

 

かなり,法律の性格が変わっていることが理解できるのではないでしょうか。

 

それでは,今日の問題です。

 

35回・問題61

身体障害者福祉法に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。

1 身体障害者福祉法の目的は,「身体障害者の更生を援助し,その更生のために必要な保護を行い,もって身体障害者の福祉の増進を図ること」と規定されている。

2 身体障害者の定義は,身体障害者手帳の交付を受けたかどうかにかかわらず,別表に掲げる身体上の障害がある18歳以上の者をいうと規定されている。

3 身体障害者手帳に記載される身体障害の級別は,障害等級1級から3級までである。

4 都道府県は,身体障害者更生相談所を設置しなければならない。

5 市町村は,その設置する福祉事務所に,身体障害者福祉司を置かなければならない。

 

この問題で出題されている内容は,とても重要です。

 

きちっと覚えたいです。

 

それでは,解説です。

 

1 身体障害者福祉法の目的は,「身体障害者の更生を援助し,その更生のために必要な保護を行い,もって身体障害者の福祉の増進を図ること」と規定されている。

 

この目的は,当初のものです。

 

〈現在の法の目的〉

 身体障害者の自立と社会経済活動への参加を促進するため,身体障害者を援助し,及び必要に応じて保護し,もつて身体障害者の福祉の増進を図ること。

  

2 身体障害者の定義は,身体障害者手帳の交付を受けたかどうかにかかわらず,別表に掲げる身体上の障害がある18歳以上の者をいうと規定されている。

 

〈身体障害者の定義〉

 別表に掲げる身体上の障害がある18歳以上の者であって,都道府県知事から身体障害者手帳の交付を受けたもの。

 

3障害のうち,障害者手帳の交付を受けることで障害者と定義されるのは,身体障害者のみです。

 

知的障害者は,法で定義さえされていません。

  

3 身体障害者手帳に記載される身体障害の級別は,障害等級1級から3級までである。

 

別表には,1~7級までありますが,身体障害者手帳に記載されるのは。,1~6級までです。

 

1級から3級まであるのは,精神障害者保健福祉手帳です。

 

4 都道府県は,身体障害者更生相談所を設置しなければならない。

 

これが正解です。

 

身体障害者更生相談所は,都道府県が設置します。

 

〈身体障害者更生相談所の業務〉

 ・専門的な知識及び技術を必要とする相談及び指導

・身体障害者の医学的・心理学的及び職能的判定

・補装具の処方及び適合判定

 

身体障害者の医学的・心理学的及び職能的判定とは,身体障害者手帳の交付にかかわる判定のことです。

 

この判定によって,都道府県知事が身体障害者手帳を交付します。

 

身体障害者更生相談所は,都道府県が設置するので,住民にとって物理的距離が遠くなります。

 

そのため,法には,前記の業務を必要に応じて巡回して行うことができると規定しています。

 

この規定があるため,身体身体障害者は,自分から出向くことがなくても,身近なところまで来てくれて判定を受けることができます。

 

5 市町村は,その設置する福祉事務所に,身体障害者福祉司を置かなければならない。

 

身体障害者福祉司を配置することが義務づけられているのは,身体障害者更生相談所です。

 

市町村福祉事務所への配置は,努力義務です。

2025年9月21日日曜日

地域相談支援

 

地域相談支援は,精神科病院や入所施設で生活している精神障害者などが地域で生活するための相談支援です。

 

地域相談支援には,地域移行支援と地域定着支援があります。

 

地域移行支援は,病院や施設から地域生活に移行するための支援を行います。

 

地域定着支援は,地域生活を継続するための支援を行います。

 

地域相談支援は,指定一般相談支援事業者が行います。

 

指定するのは都道府県です。

 

それでは,今日の問題です。

 

35回・問題60

 事例を読んで,この段階においてU相談支援事業所のM相談支援専門員(社会福祉士)が行う支援の内容として,次のうち最も適切なものを1つ選びなさい。

〔事 例〕

 U相談支援事業所のM相談支援専門員は,V精神科病院の地域医療連携室に勤務するA精神保健福祉士から,精神障害者のBさん(50歳代)の今後の生活について,相談を受けた。Bさんは,V精神科病院において約10年にわたって入院生活を送ってきた。現在,症状は安定しているが,身寄りもなく,帰る場所もない状態であり,聞かれれば,「可能なら就労したい」と答える。そこで,M相談支援専門員は,A精神保健福祉士と連携しつつ,Bさんとの定期的な面接による相談を行い,これからの生活を一緒に考えることになった。

1 地域移行支援による退院支援

2 地域定着支援による退院支援

3 公共職業安定所(ハローワーク)を利用した求職活動の支援

4 障害者就業・生活支援センターによる職業準備訓練を受けるための支援

5 後見開始の審判申立て支援

 

事例問題は,事例の中に答えにつながる情報があります。

 

それを押さえることが大切です。

 

Bさんは,精神科病院に10年以上入院しています。

 

このことから,絶対に対象にならないのは,「2.地域定着支援」です。

 

地域定着支援は,地域生活を継続するための支援だからです。

 

5 後見開始の審判申立て支援」は,Bさんの症状は安定しているという情報やBさんの受け答えの様子から,この時点で必要ないと考えられます。

 

地域移行支援と就労支援ではどちらが「この段階において」最も適切なものとなるでしょうか。

 

正解は,地域移行支援です。

 

病院に入院しながらの就労はあり得ないからです。

 

ということで,正解は1 地域移行支援による退院支援」です。

 

なお,障害者就業・生活支援センターは,地域生活している人に対して,就業面と生活面の一体的な支援を行います。入院中の障害者は対象となりません。

 

〈障害者就業・生活支援センターの業務〉

 

就業面での支援

生活面での支援

○就業に関する相談支援

 ・就職に向けた準備支援(職業準備訓練,職場実習のあっせん)

 ・障害者の特性、能力に合った職務の選定

 ・就職活動の支援

 ・職場定着に向けた支援

○雇用管理についての事業所に対する助言

○日常生活・地域生活に関する助言

 ・生活習慣の形成,健康管理,金銭管理等の日常生活の自己管理に関する助言

 ・住居,年金,余暇活動など地域生活,生活設計に関する助言

 


2025年9月16日火曜日

児童発達支援管理責任者

 

児童発達支援管理責任者(児発管)とは,障害児通所支援及び障害児入所支援で,個々のこどもや家族のニーズに応じた一連のサービス提供プロセスを管理する支援提供の責任者です。


業務には,個別支援計画があります。


障害者総合支援法に規定されるサービス管理責任者(サビ管)に相当します。


それでは,今日の問題です。


第35回・問題59

「障害者総合支援法」等に基づく専門職などに関する次の記述のうち,最も適切なものを1つ選びなさい。

1 居宅介護従業者は,指定障害福祉サービスの提供に係る管理を行う者として配置されている。

2 相談支援専門員は,指定特定相談支援事業所において指定計画相談支援を行う者として配置されている。

3 相談支援専門員は,モニタリングに当たっては,1年に1回,利用者宅を訪問し面接を行わなければならない。

4 児童発達支援管理責任者は,指定障害児相談支援事業所において障害児支援利用計画の作成を行う者として配置されている。

5 居宅介護従業者は,病院又は障害福祉施設への紹介その他の便宜の提供を行う者として配置されている。


今日のテーマの児童発達支援管理責任者は,選択肢4に出題されています。


指定障害児相談支援事業所で障害児支援利用計画の作成を行う者は,相談支援専門員です。


相談支援専門員は,指定障害児相談支援事業所のほかに,地域相談支援を行う一般相談支援事業所と計画相談支援を行う特定相談支援事業所にも配置されます。


それでは,解説です。


1 居宅介護従業者は,指定障害福祉サービスの提供に係る管理を行う者として配置されている。


指定障害福祉サービスの提供に係る管理を行う者として配置されているのは,サービス管理責任者(サビ管)です。


2 相談支援専門員は,指定特定相談支援事業所において指定計画相談支援を行う者として配置されている。


これが正解です。


3 相談支援専門員は,モニタリングに当たっては,1年に1回,利用者宅を訪問し面接を行わなければならない。


モニタリングの頻度は,通常6か月1回(新規の場合は1か月)です。


4 児童発達支援管理責任者は,指定障害児相談支援事業所において障害児支援利用計画の作成を行う者として配置されている。


児童発達支援管理責任者は,障害児通所支援及び障害児入所支援で,個々のこどもや家族のニーズに応じた一連のサービス提供プロセスを管理する支援提供の責任者です。


5 居宅介護従業者は,病院又は障害福祉施設への紹介その他の便宜の提供を行う者として配置されている。


居宅介護従業者は,居宅介護(ホームヘルプサービス)等に携わります。又は障害福祉施設への紹介その他の便宜の提供を行う者として配置されているのは,相談支援専門員です。


2025年9月13日土曜日

障害福祉サービス~特に「就労選択支援」

今回は,障害福祉サービスを取り上げます。

















出典:厚生労働省ホームページ「障害福祉サービスについて」

https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/shougaishahukushi/service/naiyou.html


2025年10月,訓練等給付に「就労選択支援」が加わります。


就労選択支援とは

短期間の生産活動その他の活動の機会の提供を通じて,就労に関する適性,知識及び能力の評価並びに就労に関する意向及び就労するために必要な配慮その他の事項の整理,評価及び整理の結果に基づき,適切な支援の提供のために必要な障害福祉サービス事業を行う者等との連絡調整その他を行います。


具体的には,障害者本人が就労先・働き方についてより良い選択ができるように就労アセスメントの手法を活用して、本人の希望、就労能力や適性等に合った選択を支援する事業です。


それでは,今日の問題です。


第35回・問題58

事例を読んで,これからの生活においてLさんが利用可能な「障害者総合支援法」に基づく障害福祉サービスとして,適切なものを2つ選びなさい。

〔事 例〕

 Lさん(30歳)は,視覚障害により障害等級1級の身体障害者手帳の交付を受けている。慣れた場所では白杖を利用し単独で歩行でき,日中は一般就労に従事している。これまで実家暮らしで家族から介護を受けてきたが,職場近くの賃貸住宅を借り,そこで一人暮らしをしようと準備している。これからは,趣味や外食のため,行ったことがない所にも積極的に外出したいと考えている。Lさんの障害支援区分は3で,調理,洗濯,掃除等の家事援助を必要としている。

1 居宅介護

2 重度訪問介護

3 同行援護

4 行動援護

5 重度障害者等包括支援


事例のポイントは,


・視覚障害

・趣味や外食のため,行ったことがない所にも積極的に外出したい。

・調理,洗濯,掃除等の家事援助を必要としている。


この2つのニーズを充足するものを選びます。


外出支援のためのサービスは


・同行援護

・行動援護


この2つのうち,視覚障害のある人を対象とするのは,同行援護です。


家事援助をしてくれるサービスは


居宅介護


ということで,正解は,選択肢1と3です。

1 居宅介護

3 同行援護


なお,障害支援区分に言及すると


居宅介護は,1以上

重度訪問介護は,居宅にいる場合は4以上,入院等をしている場合は6以上です。


同行援護は,障害支援区分にかかわりなく,視覚障害があれば利用できます。


行動援護は,3以上


重度障害者等包括支援は,6以上


これでわかるように,重度は,4以上であることが必要だと押さえておけば良いと思います。重度障害者等包括支援は,さらに重度状態だと押さえておけば,十分です。

2025年9月9日火曜日

障害支援区分認定

法制度は,その適用範囲を明確に定めるところに特徴があります。


そうでなければ法を適切に運用することができないからです。


障害者総合支援法に規定される障害福祉サービスには,大きく分けると介護給付と訓練等給付があります。


介護給付の利用を希望する場合は,障害支援区分認定を受けなければなりません。


訓練等給付の利用を希望する場合は,障害支援区分認定は基本的に受けなくても利用できます。


「基本的に」というのは,訓練等給付の一つである共同生活援助(グループホーム)で身体介護を必要とする場合は,障害支援区分認定が必要だからです。


これはおそらく障害者自立支援法の時に存在していた介護給付の一つである共同生活介護(ケアホーム)を障害者総合支援法で共同生活援助に一元化した時の名残ではないかと思います。


それでは今日の問題です。


第35回・問題57 

「障害者総合支援法」における介護給付費等の支給決定に関する次の記述のうち,適切なものを2つ選びなさい。

1 市町村は,介護給付費等の支給決定に際して実施する調査を,指定一般相談支援事業者等に委託することができる。

2 障害児に係る介護給付費等の支給決定においては,障害支援区分の認定を必要とする。

3 就労定着支援に係る介護給付費等の支給決定においては,障害支援区分の認定を必要とする。

4 市町村は,介護給付費等の支給決定を受けようとする障害者又は障害児の保護者に対し,支給決定後に,サービス等利用計画案の提出を求める。

5 障害支援区分は,障害の多様な特性その他の心身の状態に応じて必要とされる標準的な支援の度合を総合的に示すものである。


注意が必要なのは,正解を2つ選ぶことを忘れないことです。

そんなミスで,1点足りなくて不合格になるということもあります。

思うよりも多いミスです。


それでは解説です。


1 市町村は,介護給付費等の支給決定に際して実施する調査を,指定一般相談支援事業者等に委託することができる。


これが1つめの正解です。


2 障害児に係る介護給付費等の支給決定においては,障害支援区分の認定を必要とする。


障害児の場合は,障害支援区分の認定は行いません。


障害者総合支援法は,18歳以上の障害者を対象とした法制度なので,制度の組み立てが児童を対象にするには向いていません。


そのため,児童の専門機関である児童相談所が対応しています。


3 就労定着支援に係る介護給付費等の支給決定においては,障害支援区分の認定を必要とする。


就労定着支援は訓練等給付なので,障害支援区分の認定は必要としません。

障害支援区分の認定が必要なのは,介護給付を利用する場合です。


4 市町村は,介護給付費等の支給決定を受けようとする障害者又は障害児の保護者に対し,支給決定後に,サービス等利用計画案の提出を求める。


サービス等利用計画案を提出するのは,支給決定前です。

支給決定後に提出するのは,サービス等利用計画です。


5 障害支援区分は,障害の多様な特性その他の心身の状態に応じて必要とされる標準的な支援の度合を総合的に示すものである。


これが2つめの正解です。


障害支援区分は,障害者自立支援法ができた時に,障害程度区分として誕生したものです。

その後,障害者総合支援法になったときに,障害支援区分に変更されています。

2025年9月5日金曜日

障害者福祉の歴史

 

今回は,わが国の障害者福祉の歴史を取り上げます。


わが国の障害者福祉の始まりは,1949(昭和24)年の身体障害者福祉法だと言えるでしょう。


それ以前は,救貧制度の対象でした。


障害者の入所施設の始まりは,1960(昭和35)年の精神薄弱者福祉法(現在の知的障害者福祉法)です。


それでは,今日の問題です。


第35回・問題56

障害者福祉制度の発展過程に関する次の記述のうち,最も適切なものを1つ選びなさい。

1 1960年(昭和35年)に成立した精神薄弱者福祉法は,ソーシャルインクルージョンを法の目的とし,脱施設化を推進した。

2 1981年(昭和56年)の国際障害者年では,「Nothing about us without us(私たち抜きに私たちのことを決めるな)」というテーマが掲げられた。

3 2003年(平成15年)には,身体障害者等を対象に,従来の契約制度から措置制度に転換することを目的に支援費制度が開始された。

4 2005年(平成17年)に成立した障害者自立支援法では,障害の種別にかかわらず,サービスを利用するための仕組みを一元化し,事業体系を再編した。

5 2013年(平成25年)に成立した「障害者差別解消法」では,市町村障害者虐待防止センターが規定された。

(注) 「障害者差別解消法」とは,「障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律」のことである。



歴史は,ポイントを押さえれば得点しやすいので,最後の実力アップに向きます。


それでは,解説です。


1 1960年(昭和35年)に成立した精神薄弱者福祉法は,ソーシャルインクルージョンを法の目的とし,脱施設化を推進した。


前説のとおり,精神薄弱者福祉法は,障害者の入所施設の始まりです。


障害児施設は児童福祉法が規定しているので,障害児は18歳になると退所することが求められます。


そこで,親亡き後も安心して生活できる施設の設立が求められるようになりました。そこで成立したのが精神薄弱者福祉法です。同法によって精神薄弱者援護施設が規定されました。


これが障害者施設の始まりです。

日本で脱施設化の流れが出てきたのは,1990年代のことです。


2 1981年(昭和56年)の国際障害者年では,「Nothing about us without us(私たち抜きに私たちのことを決めるな)」というテーマが掲げられた。


国際障害者年のテーマは「完全参加と平等」でした。


「Nothing about us without us(私たち抜きに私たちのことを決めるな)」というテーマを掲げられたのは,障害者権利条約の策定過程においてです。


3 2003年(平成15年)には,身体障害者等を対象に,従来の契約制度から措置制度に転換することを目的に支援費制度が開始された。


2003~2005年の間にあった支援費制度は,「契約制度から措置制度に転換」ではなく,「措置制度から契約制度に転換」です。


4 2005年(平成17年)に成立した障害者自立支援法では,障害の種別にかかわらず,サービスを利用するための仕組みを一元化し,事業体系を再編した。


これが正解です。それで現在に続きます。


5 2013年(平成25年)に成立した「障害者差別解消法」では,市町村障害者虐待防止センターが規定された。


市町村障害者虐待防止センターの根拠法は,障害者虐待防止法です。

2025年8月1日金曜日

消費者契約法

 契約を取り消すことができる制度として,クーリング・オフ制度があります。


しかし,利用できるのは,訪問販売や電話に勧誘などによって契約したものに限られます。


消費者契約法は,以下のような場合に取り消すことができます。


























出典:消費者庁「知っていますか? 消費者契約法―早わかり!消費者契約法―」

https://www.caa.go.jp/policies/policy/consumer_system/consumer_contract_act/public_relations/assets/consumer_system_cms101_231107_01.pdf


それでは今日の問題です。


第35回・問題83

事例を読んで,消費者被害に関する次の記述のうち,X地域包括支援センターのC社会福祉士の対応として,最も適切なものを1つ選びなさい。

〔事 例〕

 Dさん(70歳)は,認知症の影響で判断能力が低下しているが,その低下の程度ははっきりしていない。宝石の販売業者Yは,Dさんが以前の購入を忘れていることに乗じ,2年にわたって繰り返し店舗で40回,同じ商品を現金で購入させ,その合計額は1,000万円に及んでいた。E訪問介護員がこの事態を把握し,X地域包括支援センターに所属するC社会福祉士に相談した。 

1 Dさんのこれまでの判断を尊重し,Dさんに対し,今後の購入に当たっての注意喚起を行う。

2 Dさんの意向にかかわりなく,宝石の販売業者Yと連絡を取り,Dさんへの宝飾品の販売に当たり,今後は十分な説明を尽くすように求める。

3 Dさんの判断能力が著しく不十分であった場合,C社会福祉士自ら保佐開始の審判の申立てを行う。

4 クーリング・オフにより,Dさん本人にその購入の契約を解除させる。

5 これらの購入につき,消費者契約法に基づく契約の取消しが可能かを検討するため,Dさんのプライバシーに配慮して,消費生活センターに問い合わせる。



それほど難しくない問題ですが,気を付けなければならないのは,選択肢4です。


クーリング・オフ制度が使えるのは,契約書が交付されてから8日以内です。

この事例でも同制度が使える契約もあるとは思いますが,40回のうちのほんの一部でしょう。


正解は,選択肢5です。


この場合は,過量契約によって契約を解除することができそうです。

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