2017年7月18日火曜日

相談援助の理論と方法を制するものが国試を制する!!

今日から,「相談援助の理論と方法」に移ります。

この科目は実に21問もあります。

国試で合格基準点を上回るためには,この科目の攻略が欠かせません。

しかし事例が多いので安心するためなのか,あまり勉強しない傾向があります。

「相談援助の基盤と専門職」と合わせて20点は取りたい!!


20点以上を取るためにはこの科目で最低でも14点,できたら17点くらい取ることが必要です。

それでは,当該科目の出題基準です。



相談援助の理論と方法


大項目 中項目 小項目(例示)
1 人と環境の交互作用 1)システム理論 一般システム理論、サイバネティックス、自己組織性
その他
2 相談援助の対象
1)相談援助の対象の概念と範囲
 
3 様々な実践モデルとアプローチ 1)治療モデル 効果と限界の予測
2)生活モデル 効果と限界の予測
3)ストレングスモデル 効果と限界の予測
4)心理社会的アプローチ 効果と限界の予測
5)機能的アプローチ 効果と限界の予測
6)問題解決アプローチ 効果と限界の予測
7)課題中心アプローチ 効果と限界の予測
8)危機介入アプローチ 効果と限界の予測
9)行動変容アプローチ 効果と限界の予測
10)エンパワメントアプローチ 効果と限界の予測
4 相談援助の過程

1)受理面接(インテーク)
インテークの意義、目的、方法、留意点
その他
2)事前評価(アセスメント) アセスメントの意義、目的、方法、留意点
その他
3)支援の計画(プランニング) プランニングの意義、目的、方法、留意点
効果と限界の予測
支援方針・内容の説明・同意
介護予防サービス計画
居宅サービス計画
施設サービス計画
サービス利用計画
その他
4)支援の実施 支援の意義、目的、方法、留意点
その他
5)経過観察(モニタリング)と評価 モニタリングと評価の意義、目的、方法、留意点
その他
6)支援の終結と効果測定 支援の終結と効果測定の目的、方法、留意点
その他
7)アフターケア アフターケアの目的、方法、留意点
その他
5 相談援助における援助関係
1)援助関係の意義と概念
 
2)援助関係の形成方法 コミュニケーションとラポール、自己覚知
その他
6 相談援助のための面接技術
1)相談援助のための面接技術の意義、目的、方法、留意点
 
7 ケースマネジメントとケアマネジメント 1)ケースマネジメントとケアマネジメントの意義、目的、方法、留意点  
8 アウトリーチ 1)アウトリーチの意義、目的、方法、留意点  
9 相談援助における社会資源の活用・調整・開発 1)社会資源の活用・調整・開発の意義、目的、方法、留意点  
10 ネットワーキング(相談援助における多職種・多機関との連携を含む。) 1)ネットワーキング(相談援助における多職種・多機関との連携を含む。)の意義、目的、方法、留意点  
2)家族や近隣その他の者とのネットワーキング、サービス提供者間のネットワーキング、その他  
3)ケア会議の意義と留意点  
11 集団を活用した相談援助 1)集団を活用した相談援助の意義、目的、方法、留意点  
2)グループダイナミックス、自助グループ、その他  
12 スーパービジョン 1)スーパービジョンの意義、目的、方法、留意点  
13 記録 1)記録の意義、目的、方法、留意点  
14 相談援助と個人情報の保護の意義と留意点 1)個人情報の保護に関する法律(個人情報保護法)の運用  
15 相談援助における情報通信技術(IT)の活用 1)IT活用の意義と留意点  
2)ITを活用した支援の概要  
16 事例分析 1)事例分析の意義、目的、方法、留意点  
17 相談援助の実際(権利擁護活動を含む。) 1)社会的排除、虐待、家庭内暴力(DV)、ホームレスその他の危機状態にある事例及び集団に対する相談援助事例(権利擁護活動を含む。)  



それでは今日の問題です。



第26回・問題99 相談援助のアプローチに関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。


1 バンデューラ(Bandura,A.)は,行動変容アプローチに取り入れられた社会的学習理論を提唱した。


2 ピンカス(PincusA.)とミナハン(MinahanA.)は,一般システム理論に基づいてユニタリー・アプローチを提唱した。


3 ロビンソン(RobinsonV.)は,地域精神医学研究などの成果を取り入れた危機介入アプローチを提唱した。


4 バーク(Berg,I.)は,社会構成主義を基盤としたナラティブ・アプローチの発展に寄与した。


5 スモーリー(Smalley. R.)は,生態学に基づく機能的アプローチを体系化した。


今日の問題でもある「様々な実践モデルとアプローチ」は,出題率100%です。


ソーシャル・ケースワークは,イギリスで生まれ,アメリカで発展しました。

そのため,開発者はすべて外国人となります。

外国人アレルギーのある人にはちょっと嫌だなぁ,と感じるところかもしれません。


しかし,「価値」「知識」を身につけるためには避けて通れませんし,最も重要なものとなります。

頑張って覚えましょう。


話は変わりますが,近代化は科学の時代です。

19世紀から20世紀は科学技術が大きく進化した時代です。

そのため,20世紀はモダニズム(近代化)の時代と言えるでしょう。


ソーシャルワークもモダニズムの流れに沿って進化していきます。

最初に出てきたものは,フロイトの精神分析理論を基盤とする「診断主義アプローチ」です。このアプローチはその後ホリスの「心理社会的アプローチ」に引き継がれて今に至ります。


学習理論を基盤とする「行動変容アプローチ」,プラグマティズム(道具主義)を基盤とする「課題中心アプローチ」,危機理論を基盤とする「危機介入アプローチ」など,それこそさまざまなアプローチが開発されてきました。


モダニズムは,誤解を恐れずに言えば「こうやればこうなる」といったものと言えます。

実に科学の時代とともに発展したという感じがしませんか?


その後,ポストモダン(脱モダニズム,あるいは反モダニズム)という潮流が生まれてきます。

エンパワメントアプローチ
エコロジカルアプローチ
解決志向アプローチ
ナラティブアプローチ


などがあります。


ポストモダンは科学的というよりは,「人間臭さ」の追求と言えるように感じています。


どのアプローチが優れていて,どれが劣っているというものではありません。

複数のアプローチをクライエントが置かれている状況に合わせて使い分ける知識と技術が必要です。

名前とアプローチ方法を丸覚えするのはもったいないです。

様々なアプローチは,出題率100%なので,素直には出題してくれません。

のようなものなのかを理解しながら覚えていくことが大切です。

それでは,詳しく見ていきましょう。


1 バンデューラ(Bandura,A.)は,行動変容アプローチに取り入れられた社会的学習理論を提唱した。



心理学理論の知識と見事にブレンドされた問題です。

不適切な行動は,未学習あるいは不適切な学習の結果だと考え,学習理論を使って再学習させる⇒行動変容アプローチ

この知識でたいていは解けるのですが,さすがは社会福祉士の国試。そんなに簡単には正解されてくれません。

学習理論には,パブロフ,スキナー,ソーンダイク,ケーラー,そしてバンデューラなどたくさんの人名や学習理論が出てきます。

そのうち,バンデューラは観察学習を提唱しました。

よって正解。

心理学理論で学習理論をしっかり勉強した人は,しっかり〇をつけられたと思います。


2 ピンカス(PincusA.)とミナハン(MinahanA.)は,一般システム理論に基づいてユニタリー・アプローチを提唱した。



ユニタリー・アプローチはこの時初めて出題されたものです。

受験した人は,おそらく正解かどうかはわからなかったと思います。

ここで少し解説すると,ピンカスとミナハンは,ソーシャルワークを構成するサブシステムについて言及しています。

このサブシステムは,一般システム理論に基づいています。

クライエントシステム
ワーカーシステム
ターゲットシステム
アクションシステム

のシステムです。

システム理論はとても重要です。なぜなら,それぞれはそれだけで存在しているわけではなく,周囲を含んで初めて成り立つものだからです。


システム理論と聞くと難しそう,と感じるかもしれません。

しかし社会はその構成要素そのもので機能するものではなく,周囲の構成要素と関連しながら機能します。

それらがどのように機能するのかを考えたのがシステム理論です。

勉強して損はないですよ。

話を戻します。

ユニタリー・アプローチを提唱したのは,ゴールドシュタインという人らしいです。


ユニタリー・アプローチは,先述のように初めての出題です。

もしかするとこの年の試験委員の中にユニタリー・アプローチを専門とする方がいらっしゃったのかもしれません。

しかし,問題のプール制があるので,問題は残っている可能性があります。

一応覚えておきましょう。


因みに,ユニタリー・アプローチは,戦略・ターゲット・段階を重視するアプローチです。


3 ロビンソン(RobinsonV.)は,地域精神医学研究などの成果を取り入れた危機介入アプローチを提唱した。



危機介入アプローチは,キャプランの危機理論を基盤として,リンデマンが提唱したものです。

よって×。

ロビンソンは,タフトとともに診断主義アプローチを批判して,機能的アプローチを提唱した人です。

なお「機能」とは相談機関の機能を活用するという意味です。


4 バーク(Berg,I.)は,社会構成主義を基盤としたナラティブ・アプローチの発展に寄与した。



ナラティブ・アプローチは何度も出題されていますが,提唱者が出題されたのはこの回が初めてです。

しっかり勉強した人は,1つめの選択肢が正解にできたと思うので,そのほかの選択肢はすべて今後の国試に備えて出題されています。


ナラティブアプローチは,ポストモダンに位置するものです。

今後も必ず出題されると思います。提唱者はホワイトとエプストンです。

バーグは,シェザーとともに解決志向アプローチを提唱しました。

解決志向アプローチは,ポストモダンに位置するものです。

解決志向アプローチはいろいろな質問技法を用います。面白いですよ。


5 スモーリー(Smalley. R.)は,生態学に基づく機能的アプローチを体系化した。



生態学=エコロジカル・アプローチです。生活モデルに立脚したものです。

代表的論者は,ジャーメインとギッターマンです。



スモーリーは,先述のロビンソンとタフトが提唱した機能的アプローチを発展させた人です。

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