2017年7月19日水曜日

理論系科目は難しいが,覚える意義は深い!!

バートレットが「ソーシャルワーク実践の共通基盤」を提唱したのは,1970年のことです。この辺りからソーシャルワークはどんどん進化していきます。

今,取り上げているのは,理論系科目である「相談援助の理論と方法」です。

何度も同じことを書きますが,「価値」「知識」を身につけるのは,避けて通れません。

頑張りましょう。


さて,今日の問題です。


第26回・問題101 

相談援助におけるエンパワメントアプローチに関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。


1 ソロモン(SolomonB.)は,問題の外在化を中心にしたエンパワメントアプローチを提唱した。


2 シュワルツ(Schwartz,W.)は,ストレングスはエンパワメントの燃料であると述べた。


3 グテイエレス(Gutierrez, L.)は,エンパワメントアプローチでは集団を通しての体験が重要であると述べた。


4 フレーレ(Freire,P.) は,エンパワメントアプローチに影響を与えたコンピテンスの概念を提唱した。


5 デュボイス(Dubois,B.)とミレイ(Miley,K.)は,問題解決モデルの援助過程に基づいてエンパワメントアプローチを示した。



エンパワメントアプローチの問題です。


26回国試ではこの問題は最も難しいものだったのではないかと思います。


エンパワメントアプローチは,以前に書いたようにポストモダンに属するものです。ソロモンが1976年に提唱しました。

195060年代は,キング牧師に代表される公民権運動が吹き荒れた熱い時代です。

それよりもちょっと遅い感じがすると思いますが,抑圧されたパワーレス状態の黒人がその状況に気づき支援することを求めて提唱したものです。

少し遅めに出てきたというのは,問題は根強く残っていることを裏付けるものと言えます。

さて,それでは詳しく見ていきましょう。


1 ソロモン(SolomonB.)は,問題の外在化を中心にしたエンパワメントアプローチを提唱した。



ソロモン=エンパワメントアプローチという単純化した知識だと引っ掛けられてしまう問題です。

「問題の外在化」という技法を用いるのは,エンパワメントアプローチとともにポストモダンに位置付けられる「ナラティブアプローチ」です。

ナラティブは「語り」を意味し,語りの中から新しい世界を見出すものです。

問題の外在化とは・・・

問題は自分が原因ではなく,自分の外にあるように置き換える技法です。


例えば,うつの患者が「私はうつでやる気ができない」と考えているとします。
外在化すると「うつが私からやる気を奪っていきます」といった語りになります。

かなり気が楽になると思いませんか?

このように問題の外在化はエンパワメントアプローチではないので×。


2 シュワルツ(Schwartz,W.)は,ストレングスはエンパワメントの燃料であると述べた。



シュワルツは現行カリキュラムになってからは,この回が唯一の出題ですが,旧カリ時代はシュワルツが提唱した「相互作用モデル」が盛んに出題されてきた人で,グループワーク理論を提唱した人です。

そこからストレングスのことは言わないだろうとは想像はつけられるかもしれませんが,かなり難しいものだと思います。


「ストレングスはエンパワメントの燃料である」と述べたのはコウガーという人らしいです。

今のところはまだ国試にコウガーそのものの名前が直接出題されたことはないですが,これからは「常連さん」に変わっていく可能性があります。

クライエントにストレングス(強味)を見出すことはとても重要なので,しっかり覚えておきましょう。


3 グテイエレス(Gutierrez, L.)は,エンパワメントアプローチでは集団を通しての体験が重要であると述べた。



グテイエレスは,女性のエンパワメントに着目し,小集団活動が重要であると述べています。

よって正解です。

グテイエレスは今のところは「一見さん」です。

しかしコウガーとともに「常連さん」に変わっていく可能性があります。

せっかくですから覚えておきましょう。


4 フレーレ(Freire,P.)は,エンパワメントアプローチに影響を与えたコンピテンスの概念を提唱した。



フレーレも「一見さん」ですが,コウガーやグテイエレスのように常連さんになっていくようには思えないのです。

エンパワメントアプローチに影響を与えた人には間違いないのですが,福祉そのものの人ではなく,教育分野の人だからです。

フレーレのブラジルでの活動は,貧しい農民にその境遇を教えて,読み書き教育を行いました。読み書きができないことは次世代にも貧困が引き継がれる「貧困の再生産」につながります。

彼の活動は資本家から疎まれ一時は国外追放になりますが,その後帰国してスラム街でも識字教育を行いました。

ブラジルが最貧国の一つですが,目先の利益に目を奪われ国外追放してしまうようなところに問題の根源の深さを感じてしまいます。


コンピテンス概念を提唱したのはマルシアという人らしいです。

よって×。

コンピテンスとは能力のことを言います。

マルシアが提唱したコンピテンス概念は,クライエントが周りの環境に適応する能力のことです。


5 デュボイス(Dubois,B.)とミレイ(Miley,K.)は,問題解決モデルの援助過程に基づいてエンパワメントアプローチを示した。



先に答えを述べると,デュボイスとミレイは,問題解決モデルの援助過程に基づいてエンパワメントアプローチを示していません。

よって間違いです。


デュボイスとミレイをネットで調べてもほとんどヒットしません。

ヒットするのは,国試のこの問題に関するものばかりです。

ということはほとんど日本では知られていない人で,間違い選択肢を作るために出題した人と考えるのが妥当です。覚える優先度は極めて低いです。


26回国試は,第30回国試では要注意の回です。もし第30回国試で,デュボイスとミレイが出題されなかったら,もうそのあとは出題されることはないと考えてよいでしょう。

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