社会福祉士の国試の特徴は・・・
出題範囲がとても広いこと。
出題範囲がとても広いこと。
これは勉強する上でデメリットでもありますが,メリットにもなり得ます。
デメリット・・・覚えなけければならないものが多い。
メリット・・・・苦手な科目があっても,1科目4~10問。覚えられない領域があってもダメージは少ない。
苦手だと思う心は,国試会場での萎縮につながります。
国試当日で一番大事なのは・・・
少しでも自信を持って強い気持ちで臨むことです。
苦手だと思うと,実力よりも力が発揮できなくなってしまいます。それは実にもったいないです。
苦手科目だと思っていても,その中の領域には,それほど苦手ではない部分も含まれていることがあります。
これから国試までは何度も何度も繰り返して勉強していくことと思いますが,その中で,ぜひそのような領域を見出していきたいところです。
さて,科目は今日から,「福祉サービスの組織と経営」に入ります。
この科目は,理論と法制度がミックスしたような科目です。
理論が苦手でも法制度でカバーできますし,法制度が苦手でも理論でカバーできます。
それでは,まず出題基準から見て行きましょう。
福祉サービスの組織と経営 |
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大項目 | 中項目 | 小項目(例示) |
1 福祉サービスに係る組織や団体 | 1)社会福祉法人制度 | 定義、役割、税制、実際 |
その他 | ||
2)特定非営利活動法人制度 | 定義、役割、税制、実際 | |
その他 | ||
3)その他の組織や団体 | 医療法人、公益法人、営利法人、市民団体、自治会 | |
その他 | ||
2 福祉サービスの組織と経営に係る基礎理論 | 1)組織に関する基礎理論 | |
2)経営に関する基礎理論 | ||
3)管理運営に関する基礎理論 | ||
4)集団の力学に関する基礎理論 | ||
5)リーダーシップに関する基礎理論 | ||
3 福祉サービス提供組織の経営と実際 | 1)経営体制 | 理事会の役割 |
その他 | ||
2)財源 | 自主財源、寄付金、補助金、介護報酬 | |
その他 | ||
3)福祉サービス提供組織のコンプライアンスとガバナンス | ||
4)福祉サービス提供組織における人材の養成と確保 | 社会福祉事業に従事する者の確保を図るための措置に関する基本的な指針 | |
その他 | ||
5)福祉サービス提供組織の経営の実際 | 財務諸表の理解 | |
その他 | ||
4 福祉サービスの管理運営の方法と実際 | 1)適切なサービス提供体制の確保 | スーパービジョン体制 |
サービスマネジメント | ||
チームアプローチ | ||
苦情対応、リスクマネジメントの方法 | ||
その他 | ||
2)働きやすい労働環境の整備 | キャリアパス | |
OJTやOFF-JT | ||
育児・介護休業 | ||
メンタルヘルス対策 | ||
その他 | ||
3)福祉サービスの管理運営の実際 |
「1 福祉サービスに係る組織や団体」が法制度の領域になります。
それ以外は,理論系ということになります。
理論系の方が多いですが,その中に比較的得意そうな領域を見つけ出しましょう。
それでは,今日の問題です。
第26回・問題119
社会福祉法人又は医療法人の経営に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。
1 社会福祉法人は,病院や診療所を開設することはできない。
2 社会福祉法人は,介護老人保健施設を開設することはできない。
3 医療法人は,障害福祉サービス事業を経営することはできない。
4 医療法人は,保育所を経営することはできない。
5 医療法人は,特別養護老人ホームを経営することはできない。
法制度は,知っているか知らないかの違いです。
引っ掛けを作ろうとすればいくらでもできますが,この科目は得点出来ない受験生が多いので,今まで傾向を見ていると大胆な仕掛けは少ないようです。
この問題は,「1.福祉サービスに係る組織や団体」です。
出題基準にはいろいろな組織・団体が例示されています。
実際に出題されるのは・・・
社会福祉法人
NPO法人
医療法人
の3つに集約されます。
勉強する時は,この3つのそれぞれに共通するものや違いなどを意識して覚えていくとよいと思います。
3つのうちの柱は「社会福祉法人」です。これを中心に据えて,関連させながら覚えるが良いでしょう。
それでは,詳しく見ていきましょう。
1 社会福祉法人は,病院や診療所を開設することはできない。
身近に社会福祉法人があれば分かりやすいと思いますが,社会福祉法人は病院や診療所を開設しています。全国にはたくさんあるでしょう。
よって×。
2 社会福祉法人は,介護老人保健施設を開設することはできない。
これも1と同じように知っていれば分かると思いますが,老健を開設している社会福祉法人はたくさんありますね。
よって×。
3 医療法人は,障害福祉サービス事業を経営することはできない。
医療法人は社会福祉法人から比べると行える事業は少ないです。
最も新しい類型である「社会医療法人」になるとかなり行える事業は増えますが,それであっても社会福祉法人ほどは事業を展開できません。
例えば,社会福祉法人は,生活保護法に規定される保護施設を開設することができますが,医療法人は保護施設を開設することができません。
医療保護施設はどこが開設するのだ? という疑問も生じるかもしれません。
しかし,医療法人でなくても,日赤でも地方自治体でも社会福祉法人でも開設できるのであえてそこに医療法人を入れる必要はありません。
さて,問題に戻ります。
医療法人は,第一種社会福祉事業は実施できませんが,第二種社会福祉事業の一部は実施することはできます。
よって×。
4 医療法人は,保育所を経営することはできない。
以前は保育所を開設できるのは市町村,あるいは社会福祉法人に限定されていましたが,現在は規制緩和で株式会社でさえも開設できるようになりました。
医療法人は,以前から無認可保育所を開設してマンパワーを確保して来ました。
この問題は認可保育所と限定していないので,無認可保育所とも受け取れます。
しかし現在は先述のように規制緩和されているので,認可保育所,無認可保育所ともに開設できます。
よって×。
5 医療法人は,特別養護老人ホームを経営することはできない。
先述の社会医療法人に認定されると一部の第一種社会福祉事業も経営することができるようになります。
しかしその中に特別養護老人ホームは含まれていません。
よって正解です。
社会医療法人と限定せずとも,一般の医療法人は第一種社会福祉事業は経営できません。
社会医療法人は,救急医療,へき地医療などを担うことで認可されます。
救急医療やへき地医療を担ってもらうだけなら,誰もやりたがらないでしょう。
国の役人は頭が良いので,社会医療法人になるとたくさんのメリットをつけたのです。その中には収益事業が行えることもあります。
社会福祉法人は収益事業が行えますが,医療法人は行えません。
社会医療法人に認定されると,アパート経営,駐車場経営,コンビニ経営などいろいろなものが行えるようになります。
更なるメリットとしては,公立病院に割り当てられていて開設していないベッドを優先的に割り当てられるようになる,一部は免税になるなど,とてもメリットがありますが,認定されるハードルが高いので,現時点では全国でも300あまりの法人が認定されているだけです。