2017年7月30日日曜日

市町村の役割と都道府県の役割の違い

法制度に関連した科目の出題基準には,ほとんどの科目に,

国の役割

都道府県の役割

市町村の役割

というものがあります。


都道府県と市町村の役割は,正しいものを間違ったものに入れ替えてしまえば,間違い選択肢の作成は一丁上がり。

作成は結構簡単ですし,しかも不適切問題にはなりにくいです。

従って,国試ではかなりの頻度で見られます。


しっかり覚えておかないともったいないです。


一つひとつの科目に限定して勉強していると他の科目との関連が見えづらいですが,意識して関連するように見てみると,他領域であっても仕組み自体は似ているものがあることに気が付くことでしょう。



逆に他では見られないその領域の特徴というものも見られます。


例えば・・・共通するものには・・・


都道府県

・サビ管やケアマネなどの研修事業を行なう。
・事業者の指定。
・不服申立て先。
・市町村の支援的立場。


市町村

・介護保険サービスや障害福祉サービスなどの利用申請窓口。
・要介護認定,障害支援区分認定の実施。
・サービスの実施。



その領域の特徴

介護保険
・指定は都道府県。ただし地域密着型は市町村。
障害福祉
・精神通院医療の支給決定は都道府県。育成医療と更生医療は市町村
・指定一般相談支援事業者の指定は都道府県。指定特定相談支援事業者の指定は市町村。

共通するものは,共通する原則を覚えること。応用が効きます。



その領域の特徴は,しっかり違いを覚えましょう。特に狙われやすいです。

いずれもしっかり押さえておくことで,得点力はぐ~んと上がります。



さて,それでは今日の問題です。


26回・問題133 

介護保険制度における保険者としての市町村の役割に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。


1 要介護認定において,限界集落や離島,豪雪地帯などの地理的特性や,同居家族の有無などの家庭環境,所得などの経済的状況等に配慮した独自の認定基準を,地域ごとに条例により定めることができる。


2 地域支援事業の任意事業として,介護方法の指導,介護者の健康相談実施,認知症見守り支援事業等の家族介護支援事業を実施することができる。


3 地域密着型サービスに関し,その適正な事業運営に資するとともに,地域に開かれたサービスとすることでサービスの質の確保と向上を図るために,運営適正化委員会を設置しなければならない。


4 介護保険施設に入所している低所得の要介護者等について,入所中の居住費及び食費の負担に関し, 一般会計を財源として特定入所者介護サービス費(いわゆる補足給付)の給付を行うことができる。


5 介護保険財政の安定化を図るため,財政安定化基金を設置して,保険料未納により収入不足が生じた場合に交付金を交付したり,給付費の増大のために収支不均衡が生じた場合に資金を貸与したりするなどの事業を行うことができる。


介護保険の保険者としての問題です。


介護保険の保険者は,市区町村,あるいは複数の市町村による広域連合です。

地方自治法によると,広域連合になると,特別地方公共団体となります。

これは福祉行財政と福祉計画で学びます。

介護保険は,わが国5つめの社会保険として創設されたものです。

家族などが担っていた介護を社会連帯の考え方に基づき社会保険制度にして,介護の社会化(家族労働から解放)を目指しました。

しかも国の保険ですから,どこでサービスを受けようとも,同じ基準で実施されることに特徴があります。

それでは詳しく見ていきましょう。


1 要介護認定において,限界集落や離島,豪雪地帯などの地理的特性や,同居家族の有無などの家庭環境,所得などの経済的状況等に配慮した独自の認定基準を,地域ごとに条例により定めることができる。



介護保険は法定受託事務ではなく自治事務ですが,全国一律の基準が定められています。

要介護認定が条例によって独自に定めることが出来ると,どこでも同じサービスが受けられるという介護保険の大前提が崩れてしまいます。

例えば・・・

特養の入所基準は,要介護3以上ですが,同じ身体状況にもかかわらず,A市では要介護2B市では要介護4,となってしまえば,B市に住んでいれば利用可能ですが,A市では利用はできないこととなってしまいます。

よって×。


2 地域支援事業の任意事業として,介護方法の指導,介護者の健康相談実施,認知症見守り支援事業等の家族介護支援事業を実施することができる。



介護保険は,先述のように自治事務です。


これだけがっちり制度が決められているにもかかわらず,自治事務である理由は,保険者で独自に実施することができる事業があるからです。


その一つは市町村特別給付,そして地域支援事業です。

地域支援事業の中でも必須事業がありますが,それ以外にも任意事業として独自に行うことができるようになっています。

よって正解です。


3 地域密着型サービスに関し,その適正な事業運営に資するとともに,地域に開かれたサービスとすることでサービスの質の確保と向上を図るために,運営適正化委員会を設置しなければならない。



運営適正化委員会は,社会福祉法に規定されています。


そのため,この科目よりも「地域福祉の方法と理論」で問われることが多いと思います。

しかもかなり頻出です。


運営適正化委員会が設置されるのは,都道府県社協です。


介護保険の不服申し立ては,都道府県の介護保険審査会

障害福祉サービスは都道府県(障害者介護給付費等不服審査会を設置している場合は同委員会に事務を行わせることができる。ただし窓口は都道府県)。


介護保険の苦情は国保連。

地域密着型サービス事業者の指定は市町村が行いますが,サービスの質確保に関するものは,先述のように都道府県レベルです。


市町村レベルではそこまでの体力がないからだと言えます。

よって×。


4 介護保険施設に入所している低所得の要介護者等について,入所中の居住費及び食費の負担に関し, 一般会計を財源として特定入所者介護サービス費(いわゆる補足給付)の給付を行うことができる。


介護保険や国民健康保険の会計については,一般会計と切り離して,特別会計を組まなければなりません。

よって×。


5 介護保険財政の安定化を図るため,財政安定化基金を設置して,保険料未納により収入不足が生じた場合に交付金を交付したり,給付費の増大のために収支不均衡が生じた場合に資金を貸与したりするなどの事業を行うことができる。



財政安定化基金は,介護保険特別会計が赤字になった際に,一般会計から繰り越さなくても良いように都道府県に設置された機関です。

財源は,国,都道府県,市町村がそれぞれ3分の1ずつ負担しています。

よって×。


因みに国民健康保険は,来年度から都道府県も保険者になります。
※まだ実施されないものはまず出題されないので,覚える必要はありません。


どんなに勉強しても,知らない問題は出題されます。


丸暗記で勉強していたら,国試当日・・・


分からない,どうしよう・・・



と思考が停止してしまいます。


知っている知識をフル活用して,足りないピースを埋めていくこと。

これができるように勉強している人は合格します。

これができるように勉強していない人は,合格するのに苦労します。


似たような制度を整理して覚えることは,知らないものが出題されても,そこを手掛かり・足掛かりにして,壁をよじ登って行くことが出来ます。


手掛かり・足掛かりは,多ければ多い方が壁を登りやすくなるのは言うまでもありません。


今,このサイトで提案していることは,試験当日の手掛かり・足掛かりをたくさん用意することに他なりません。

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