2024年12月8日日曜日

ソーシャルアクションについて

 

今日のテーマは,ソーシャルアクションです。


ソーシャルアクションを直訳すると


ソーシャル=社会


アクション=行動,活動


合わせて,社会行動,あるいは社会活動という意味となります。


社会行動,あるいは社会活動という言葉からその内容を推測するのはとても難しいことでしょう。


勘のよい人なら,見当をつけることができるかもしれません。


それでは,ソーシャルアクションとは,どのような意味なのでしょうか。


ソーシャルアクションとは,社会問題の解決のために制度の創設などを求める活動のことを言います。


つまり,外向きの活動です。


第33回国家試験では,民生委員の前身である方面委員が救護法の実施を求めた活動のことが出題されています。


これがまさにソーシャルアクションです。


ソーシャルアクションとは,おおよそどんなことなのか理解できましたか?


社会福祉士の国試は,丸暗記がそのまま使える問題はそれほど多くはありません。大多数は,その意味を知っていることを前提にして正しく答えさせるものが基本です。


それでは,今日の問題です。


第28回・問題113 

ソーシャルアクションに関する次の記述のうち,適切なものを1つ選びなさい。

1 目的には,社会参加の促進は含まれない。

2 対象には,個人は含まれない。

3 内容には,ソーシャルアドミニストレーションが含まれる。

4 展開過程には,学習会や調査などによる問題と要求の明確化が含まれる。

5 形態には,自らの課題を克服し要求を実現する組織化は含まれない。


「含まれる」と「含まれない」が混在している問題は,あまり良い出来ではありません。


なぜなら,「含まれる」のほうに正解があることが多いからです。


それでは解説です。


1 目的には,社会参加の促進は含まれない。


これは意味がわかりにくいものかもしれません。


社会参加の促進とは,たとえば,合理的配慮を求めて,会社に交渉することなどです。


それによって,障害があっても働きやすい職場となります。


まさに社会参加の促進です。


2 対象には,個人は含まれない。


ソーシャルアクションは,社会を対象にしていることが多いですが,個人の権利擁護を通して,ソーシャルアクションにつながることはよくあります。


古くは,朝日訴訟で知られる朝日茂さんには,多くの支援者が集まりました。


この活動を通して,生活保護費の給付額の見直しがされるようになったのです。


まさにソーシャルアクションだと思いませんか。


3 内容には,ソーシャルアドミニストレーションが含まれる。


カタカナの用語が出てきました。今日の問題の中で最も手ごわいものでしょう。


言葉を知らないと推測することができません。勉強不足の人は,こういうものに引っ掛けられて間違います。


アドミニストレーションとは,運営管理のことです。


運営管理は,既にある制度を実行する過程なので,ソーシャルアクションとは逆向きです。


この制度が良くないから,法令遵守はしない,なんてことになったら制度の運営ができません。


最悪の場合は,指定取消しもあり得ます。


4 展開過程には,学習会や調査などによる問題と要求の明確化が含まれる。


これが正解です。


学習会や調査などによる問題と要求の明確化は,要求する内容に説得力が生まれることでしょう。


主観(時には情熱)も重要ですが,多くの人を動かすには,客観的に説得力があると良いです。


そのための準備が,勉強会の開催やデータの集積です。


5 形態には,自らの課題を克服し要求を実現する組織化は含まれない。


一人では,難しい活動でも支援者を募ることで,社会の関心を集めることができます。



<今日の一言>


今日の問題は,勉強不足の人にとって,少しハードルが高いです。


だからこそ,国家試験で出題されます。誰もが簡単に解ける問題ばかりだと,受験生に差がつかないので,ほんの少しハードルを上げた問題の出題が必要です。


しかし決して難しいものではありません。こういう問題を確実に正解する力が必要です。

最新の記事

障害福祉サービスの覚え方

 日本の障害者福祉は,障害種別ごとに発展してきたことが特徴です。 2005年(平成17年)の障害者自立支援法(現・障害者総合支援法)は,障害種別をなくした障害福祉サービスに一元化したのが特徴です。 障害者福祉になじみがないとそれでも複雑に思うかもしれません。 高齢者福祉と異なり,...

過去一週間でよく読まれている記事