今回は,グリーフケア(悲嘆に対するケア)を学びます。
前説なしに今日の問題です。
第34回・問題101
事例を読んで,Z障害者支援施設のF生活支援員(社会福祉士)が行ったこの段階におけるクライエントへの対応として,最も適切なものを1つ選びなさい。
〔事 例〕
Gさん(58歳)は半年前に脳梗塞を起こし左半身に障害がある。現在,社会復帰を目指しZ障害者支援施設に入所している。家族は夫だけだったがその夫は10日前に病死した。葬儀が終わり戻ってきたGさんは意気消沈し精神的に不安定な状態だった。さらに不眠も続き食事もとれなくなっていた。そこでF生活支援員はGさんの部屋を訪問した。するとGさんは,「退所後の夫との生活を楽しみに頑張ってきたのに,これから何を目標に生きていけばいいのか」と涙をこらえながら話してくれた。
1 不眠は健康に悪いので日中の活動量を増やすように指導する。
2 悲しみが溢れるときには,気持ちを抑えることはせず,泣いてもいいと伝える。
3 夫が亡くなった現実を直視し,落胆しすぎずに頑張るように励ます。
4 もう少し我慢し耐えていれば,きっと時間が解決してくれると伝える。
5 今までのリハビリの努力を認め,退所後に描いていた生活の一端をかなえるためにも,リハビリに集中するように伝える。
グリーフケアの基本は,ただ黙って話を聞くことです。余計な声掛けは必要としません。
それでは,解説です。
1 不眠は健康に悪いので日中の活動量を増やすように指導する。
不眠は健康に悪いのはもっともな話です。
しかし,日中の活動量を増やしても,Gさんの悲しみは解消されません。
2 悲しみが溢れるときには,気持ちを抑えることはせず,泣いてもいいと伝える。
これが正解です。
夫が亡くなる前から,ずっと気を張ってきたかもしれません。泣くという感情表出をうながすことで,背負っている荷物をおろすことが期待できます。
その時は,何の声掛けも必要としません。そっと肩を抱きしめてあげるだけで十分です。
3 夫が亡くなった現実を直視し,落胆しすぎずに頑張るように励ます。
4 もう少し我慢し耐えていれば,きっと時間が解決してくれると伝える。
この2つはいずれも最悪の対応です。
5 今までのリハビリの努力を認め,退所後に描いていた生活の一端をかなえるためにも,リハビリに集中するように伝える。
リハビリ中は,夫が亡くなった喪失感を紛らわすことができるかもしれません。
しかし,lリハビリが終わったら,また思い出すことでしょう。