2024年12月22日日曜日

リーダーシップに関する基礎理論~コンティンジェンシー理論

今回は,リーダーシップ理論を取り上げます。


特性論は,優れたリーダーシップを発揮できるのは,優れた素養を生まれ持ったリーダーである,という考え方です。


ところが,研究を進めても,優れた素養について,共通するものを見出すことができず,衰退します。


現代は,優れたリーダーシップは,行動によって決まるとされる行動理論に移ってきています。


さらに今日では,優れたリーダーシップ行動は,状況によって変わるとする「コンティンジェンシー理論」が提唱されています。

当然ながら,コンティンジェンシー理論は,「最も優れたリーダーシップ行動は〇〇である」といったことは言いません。


それでは,今日の問題です。


第29回・問題123 

リーダーシップに関する次の記述のうち,最も適切なものを1つ選びなさい。

1 コンティンジェンシー理論では,特定のリーダーシップ行動の普遍的有効性を重視する。

2 行動アプローチでは,リーダーシップという影響力の実体をリーダー個人の身体的・精神的資質として捉える。

3 変革型リーダーシップ論では,メンバー個々の動機づけや知的刺激を排除するリーダーの行動を重視する。

4 リーダーシップの特性論では,課題志向型と人間関係志向型の二つの行動を重視する。

5 フォロワーシップ理論では,フォロワーの自律性を引き出すリーダーの役割を重視する。


リーダーシップ理論の知識がないと,うんざりしてしまうような問題かもしれません。




正解は,


5 フォロワーシップ理論では,フォロワーの自律性を引き出すリーダーの役割を重視する。



改めて読むと「なるほど」と思うかもしれませんが,正解だと思うのはなかなか難しい問題です。



その理由は,以下です。これが混乱させる要因です。


4 リーダーシップの特性論では,課題志向型と人間関係志向型の二つの行動を重視する。



特性論は,リーダーシップ行動を重視するものではなく,優れたリーダーは優れた素養を生まれ持っていると考えるものです。


つまり,リーダーシップは学ぶものではなく,リーダーになるべき人がリーダーになると考えて良いでしょう。特性論は,あまりに前時代的だと思いませんか。



特性論を述べたものは,


リーダーシップという影響力の実体をリーダー個人の身体的・精神的資質として捉える。


よほどひねくれた試験委員でない限り,特性論を正解にする問題はないように思います。


特性論では,リーダーシップは学ぶことができないと考えます。


それよりは,コンティンジェンシー理論を学んでもらった方が良いです。


コンティンジェンシー理論には,


フィードラー理論


SL理論


パス・ゴール理論


などがあります。



コンティンジェンシー理論を押さえるポイントは,適切なリーダーシップは,状況によって変わるものであるというところです。


コンティンジェンシー理論にもかかわらず,唯一の方法がある,といったものは,すべて間違いとなります。最低でもこれだけは押さえておきたいです。


ほかの選択肢も一応確認します。


1 コンティンジェンシー理論では,特定のリーダーシップ行動の普遍的有効性を重視する。


もしこれが正解だと思ったとしたら,コンティンジェンシー理論の理解が不足していると言えるでしょう。


コンティンジェンシー理論は,状況に合わせて適切なリーダーシップは変わる,というものです。特定のリーダーシップ行動の普遍的有効性を重視しているのは,行動理論です。


PM理論ではあれば,PM型

マネジリアル・グリッドであれば,9・9型

レヴィンらのリーダーシップ理論であれば,民主型リーダーシップ


これらが最も優れたリーダーシップだと提唱しています。


コンティンジェンシー理論は,状況によって適切なリーダーシップ行動は変化するので,どの状況に対しても有効である普遍的な行動スタイルはありません。



2 行動アプローチでは,リーダーシップという影響力の実体をリーダー個人の身体的・精神的資質として捉える。


リーダーシップという影響力の実体をリーダー個人の身体的・精神的資質として捉えるのは「特性理論」です。特性理論ではリーダーシップ研究には限界があり,その後出てきたのが「行動理論」です。



3 変革型リーダーシップ論では,メンバー個々の動機づけや知的刺激を排除するリーダーの行動を重視する。


またまた変革型リーダーシップが出題されています。


リーダーシップ行動には,状況によって程度は変化しますが,動機づけや知的刺激への働きかけは,必ず存在します。


変化が大きければ大きいほど,その変化についていけず,反発する人も出てくるでしょう。


人はロボットではありません。外の変化にも対応しなければなりませんが,同時に内部環境にも目を向けることが大切です。



4 リーダーシップの特性論では,課題志向型と人間関係志向型の二つの行動を重視する。


特性論(特性理論)は,選択肢2で述べたように,リーダーシップという影響力の実体をリーダー個人の身体的・精神的資質として捉えるものです。

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