2024年12月25日水曜日

リーダーシップ理論~パス・ゴール理論

 今回がリーダーシップ理論の最終回です。


今回は,コンティンジェンシー理論の一つである「パス・ゴール理論」と行動理論の一つである「マネジリアル・グリッド」を紹介したいと思います。

まずは,パス・ゴール理論です。

ブルームらの期待理論に基づき,魅力的なゴール(目標)に至る明確なパス(経路)を示すことがリーダーの役割だとします。

ブルームらの期待理論
https://fukufuku21.blogspot.com/2019/08/20190808.html
https://fukufuku21.blogspot.com/2019/08/20190809.html


パス・ゴール理論は,コンティンジェンシー理論です。
変化する状況として「環境的要因」と「個人的要因」を挙げています。

























パス・ゴール理論では,リーダーの行動をこの図のように「指示型リーダーシップ」「参加型リーダーシップ」「支援型リーダーシップ」「達成志向型リーダーシップ」に分類していますが,現時点では,ここまで詳しく覚える必要性はないと言えます。

さて,次はマネジリアル・グリッドです。

マネジリアル・グリッドは,「人に対する関心」と「業績に対する関心」の2軸でリーダーシップのスタイルを分析するものです。




























マネジリアル・グリッドでは「9・9型」が最も優れたリーダーシップであるとしています。「グリッド」は「格子」を意味しています。

PM理論を格子状に細かくしたものが,マネジリアル・グリッドだと押さえるとよいでしょう。


それでは,今日の問題です。


第31回・問題120 

リーダーシップの理論に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。

1 パス・ゴール理論では,メンバーの目標達成のための道筋を明示することが,リーダーシップの本質であるとしている。

2 フィードラー理論に代表される「条件適合理論」において,リーダーの行動は「構造づくり」と「配慮」に集約される。

3 三隅二不二は,リーダーシップの行動面に注目して,集団の「目標達成行動」と「集団維持機能」の2次元で類型化したSL理論を示した。

4 カリスマ的リーダーシップでは,リーダーのスタイルを任務実行志向と人間関係志向に分類する。

5 マネジリアル・グリッドでは,「人に対する関心」と「業績に対する関心」の2軸で類型化し,「1・1型」が最も理想的なリーダーシップのスタイルであるとしている。



バランスのよい問題だと思います。

勉強不足の人は,まったく解けない問題でしょう。

難易度が高いので,勉強をしっかりした人でも正解するのは大変です。

しかし,こういった問題であっても,落ち着いてさえいれば,糸口は見つけられるので,決して焦ることはないです。焦ると問題文が正しく読めなくなるので要注意です。



さて,正解は,選択肢1


1 パス・ゴール理論では,メンバーの目標達成のための道筋を明示することが,リーダーシップの本質であるとしている。


パス・ゴール理論を述べたそのままズバリの内容です。


それでは,ほかの選択肢はどこが間違っているのかを確認していきましょう。


2 フィードラー理論に代表される「条件適合理論」において,リーダーの行動は「構造づくり」と「配慮」に集約される。

条件適合理論=コンティンジェンシー理論では,リーダーの行動は,それぞれ異なります。


理論

状況

リーダーの行動スタイル

フィードラー理論

人間関係,タスク内容,リーダー権限

仕事志向型(タスク志向型)

人間関係志向型

SL理論

メンバーの習熟度,意欲

教示的リーダーシップ

説得的リーダーシップ

参加型リーダーシップ

委任的リーダーシップ

パス・ゴール理論

環境的要因,個人的特性

指示型リーダーシップ

参加型リーダーシップ

支援型リーダーシップ

達成志向型リーダーシップ




このようにまとめることができますが,リーダーの行動スタイルまでは覚えなくても,それぞれはコンティンジェンシー理論であることが理解できていれば,おそらく国試では答えられるはずです。

リーダーシップを「構造づくり」と「配慮」に分類したのは,オハイオ州立大学研究です。


3 三隅二不二は,リーダーシップの行動面に注目して,集団の「目標達成行動」と「集団維持機能」の2次元で類型化したSL理論を示した。

故・三隅先生の理論は,PM理論です。今は落ち着いて問題文を読んでいるので,SL理論をPM理論に読み間違うことはないと思います。

しかし,国試会場では,普段はしないようなミスをします。

この問題もPM理論と読み間違う恐れは十二分にあります。


4 カリスマ的リーダーシップでは,リーダーのスタイルを任務実行志向と人間関係志向に分類する。



任務遂行志向とは,おそらく仕事志向型(タスク志向型)と同意語です。

そうすれば,この2つに分類したのは,フィードラー理論だということになります。

しかしそれを正確にわかっていなくとも,カリスマ的リーダーシップは,もともとはウェーバーの支配システムであり,リーダーシップ理論ではないので,このような分類はしないだろうと想像することができるでしょう。


5 マネジリアル・グリッドでは,「人に対する関心」と「業績に対する関心」の2軸で類型化し,「1・1型」が最も理想的なリーダーシップのスタイルであるとしている。


マネジリアル・グリッドは,この時が初めての出題でした。

1のパス・ゴール理論を正解にできないとこの選択肢の正否を判断できないので,消去法で正解にたどり着くことができません。

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