パターナリズムは,父権主義などと訳されます。
ソーシャルワークの場面では,クライエントよりもワーカーの方が情報もあるし,専門家としていろいろなことを知っているので,クライエントに変わって,ワーカーが判断するというようなことです。
国家試験の事例問題では,パターナリズムになっているようなタイプのものが正解になることはありません。
なぜだかわかりますか?
ケースワークの原則の1つである「自己決定の原則」から外れるためです。
国家試験では,さまざまに出題してきますが,パターナリズムの選択肢は,真っ先に消去しても良いでしょう。
それでは,今日の問題です。
第36回・問題106
ソーシャルワークの援助関係に関する次の記述のうち,最も適切なものを1つ選びなさい。
1 共感的理解とは,クライエントの世界を,あたかもソーシャルワーカーも体験したかのように理解することである。
2 目的志向性とは,クライエントを意図的に導くことにより,ソーシャルワーカーの自己覚知を促進することである。
3 パターナリズムとは,ソーシャルワーカーの権成と自由裁量を否定し,対等な立場を重視した援助関係のことである。
4 受容とは,クライエントの逸脱した態度や行動に対しても,同調した上で,それを許容することである。
5 ソーシャルワーカーの自己開示とは,クライエントの行動や感情における矛盾を指摘することである。
今日のテーマであるパターナリズムは,選択肢3に出題されています。
それでは,解説です。
1 共感的理解とは,クライエントの世界を,あたかもソーシャルワーカーも体験したかのように理解することである。
これが正解です。共感的理解を言葉で表現すると,こんな感じになります。
実にうまい表現です。
2 目的志向性とは,クライエントを意図的に導くことにより,ソーシャルワーカーの自己覚知を促進することである。
目的志向性は,クライエントを意図的に導くことであることは適切です。
しかし,異なるのは,ソーシャルワーカーの自己覚知を促進することを目的とするものではなく,ソーシャルワーカーの価値観にクライエントを導く傾向であるところです。
3 パターナリズムとは,ソーシャルワーカーの権成と自由裁量を否定し,対等な立場を重視した援助関係のことである。
これは,パターナリズムとまったく逆のことを述べています。
パターナリズムは,ソーシャルワーカーが,クライエントの意思に関わりなく,本人の利益のために,本人に代わって判断することです。
対等な立場ではありません。
4 受容とは,クライエントの逸脱した態度や行動に対しても,同調した上で,それを許容することである。
受容は,クライエントを受け入れることですが,クライエントの逸脱した態度や行動に対しても受容しなければならないものではありません。
もうそうだったら,カスタマーハラスメントを受けても受容しなければならないことになってしまいます。
5 ソーシャルワーカーの自己開示とは,クライエントの行動や感情における矛盾を指摘することである。
ソーシャルワーカーの自己開示とは,素の自分をそのまま見せることをいいます。自分をよく見せようとする自己呈示と言葉が似ていますので,間違わないようにしたいです。
クライエントの行動や感情における矛盾を指摘することは,対決の技法です。