2017年10月20日金曜日

やがて制度による縦割りの時代は終わりを告げる!!

日本の福祉制度は,これまでは,領域ごとに制度がつくられ,発展して来ました。

それはそれなりに効果を上げてきたと言えます。

しかし,時代は進み,福祉ニーズが多様化してくると既存の制度では対応しきれなくなってきます。

そんな中,厚生労働省は平成279月に


「誰もが支え合う地域の構築に向けた福祉サービスの実現―新たな時代に対応した福祉の提供ビジョン」


を発表しています。


このビジョンでは,

①新しい地域包括支援体制の構築

②効果的・効率的なサービス提供のための生産性向上

③総合的な人材の育成・確保

が示されています。


このビジョンでは,社会福祉士に大きな期待を寄せながらも,新しい地域包括支援体制の担い手としては,社会福祉士であれば担いうるとは考えていないのです。


このことは,多くの社会福祉士は,制度の枠の中で活動しており,今までの制度を超えた新しい地域包括支援体制を担うには,今までの社会福祉士像では心許ないと思われていることのように思います。


介護保険法に基づく地域包括支援センターは,社会福祉士が初めて必置となった機関です。

本来は,そのように新しい地域包括支援体制は社会福祉士が担う,ということに異論はないばすなのに,そうならないのはちょっと忸怩たる思いを感じざるを得ません。


チームfukufuku21は,21世紀の福祉は社会福祉士が切り開く,という意味で名付けたものです。


ぜひ皆さんで,そんな社会を作り出したいです。


さて,それでは今日の問題です。

25回・問題97

ジェネラリスト・アプローチに関する次の記述のうち,適切なものを1つ選びなさい。


1 生活上の逆機能が現れた問題の内的・心理的原因と外的・社会的原因の両方を認識し,個人が社会関係のなかで自らのニーズを充足することを目指す。


2 従来のソーシャルワークの分類の枠を超えて,社会構成主義の立場から包括的に援助を展開することを目指す。


3 ケアマネジメントと類似点が多いこともあって,我が国においては高齢者福祉分野に特化して用いられている。


4 総合的包括的な視点からのニーズの把握と生活への介入が,セルフアドボカシーなど当事者運動の立場からは,生活の管理統制につながるとして批判を受けることがある。


5 援助の過程においては,ミクロ,メゾ,マクロの各レベルごとに,それぞれ異なるジェネラリスト・アプローチ固有の方法が開発されている。


ジェネラリスト・アプローチとは,従来のケースワーク,コミュニティワーク,グループワークに共通基盤を見出し,それぞれを統合化したものです。


古くはミルフォード会議(1929)で提言された「ジェネリック」に起源を求めることができます。

統合化の動きが進んだのはシステム理論やエコロジカル・アプローチがソーシャルワークに取り入れられるようになった1980年代以降のことです。

そして,ジェネラリスト・ソーシャルワークが構築されて現在に続いています。


さて,ジェネラリスト・アプローチでは,クライエントとそれを取り巻く環境に介入していきます。

そういう面で,先述の「新しい新しい地域包括支援体制」では,ジェネラリスト・ソーシャルワークが展開していくはずです。

社会福祉士が何としてでも担いたいと思う理由はここにあります。


それでは,詳しく見て行きましょう。


1 生活上の逆機能が現れた問題の内的・心理的原因と外的・社会的原因の両方を認識し,個人が社会関係のなかで自らのニーズを充足することを目指す。



心理面に向けたものは,フロイトの精神分析に影響を受けた,診断主義アプローチ,あるいは環境との相互作用に焦点を当てて,診断主義アプローチを発展させた心理社会的アプローチです。


ここでは,理的原因と外的・社会的原因(つまり環境)と述べられているので,心理社会的アプローチだということが分かります。

よって×。


2 従来のソーシャルワークの分類の枠を超えて,社会構成主義の立場から包括的に援助を展開することを目指す。


29回国試でも出題されましたが,社会構成主義を基盤としているのは,ナラティブアプローチです。

よって×。

29回国試によると,社会構成主義は,「現実は社会的に構成されるという見方を示したもの」です。

う一歩踏み込むと,「人との対話によって現実は作られていく」というものです。


社会構成主義は,第25回,第28回,第29回と続けざまに出題されています。


社会構成主義 ➡ ナラティブ

はしっかり押さえておきたいです。


3 ケアマネジメントと類似点が多いこともあって,我が国においては高齢者福祉分野に特化して用いられている。


ジェネラリスト・アプローチは,ケアマネジメントと親和性が高いですが,もちろんさまざまな領域で用いられます。

よって×。



4 総合的包括的な視点からのニーズの把握と生活への介入が,セルフアドボカシーなど当事者運動の立場からは,生活の管理統制につながるとして批判を受けることがある。


ジェネラリスト・アプローチは,クライエントとその環境を把握して介入しますが,それは必ずしもクライエントの思いと一致しないこともあります。

よって正解です。


ケアマネジメントで分かるように,クライエントの希望だけでケアプランを作るのであれば,「御用聞きケアマネ」になってしまいます。

クライエントの思いと一致しない場合は,それをしっかり説明する力も持つことが求められます。


5 援助の過程においては,ミクロ,メゾ,マクロの各レベルごとに,それぞれ異なるジェネラリスト・アプローチ固有の方法が開発されている。


ソーシャルワークには,

ミクロ ➡ クライエントに対する働きかけ

メゾ ➡ 地域に対する働きかけ

マクロ ➡ 制度・政策に対する働きかけ


というレベルがあります。

しかし,それぞれ異なるジェネラリスト・アプローチ固有の方法が開発されているわけではありません。

よって×。


出題基準に今日の問題を含む「総合的かつ包括的な援助と多職種連携」が加わったのは,現行カリキュラムからです。

たかだか10年しか経っていないこととなります。

そのため,この領域を深めて行くのは,「まだまだこれからだ」と思う人もいるかもしれません。

しかしそれでは社会福祉士の聖域になるばすの領域をまた他の職種に奪われかねないことを心に留めておきたいものです。

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