2025年2月28日金曜日

措置に関する類似問題

 

今回は,第37回国家試験に出題された「措置」に関する類似問題です。


第37回・問題25

福祉の措置に関する次の記述のうち,最も適切なものを1つ選びなさい。

1 福祉サービスにかかる費用は全額国の負担となる。

2 被措置者とサービス提供事業者との間で,サービス提供に関する契約を結ばなければならない。

3 行政処分として福祉サービスの提供が決定される。

4 介護保険法の施行により,老人福祉法による措置入所は廃止された。

5 「障害者総合支援法」の施行に伴い,身体障害者福祉法及び知的障害者福祉法にかかる施設入所の措置を都道府県が採ることとなった。

(注) 「障害者総合支援法」とは,「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律」のことである。


正解は,選択肢3です。

3 行政処分として福祉サービスの提供が決定される。


類似問題


第35回・問題22

次の記述のうち,近年の政府による福祉改革の基調となっている「地域共生社会」の目指すものに関する内容として,最も適切なものを1つ選びなさい。

1 老親と子の同居を我が国の「福祉における含み資産」とし,その活用のために高齢者への所得保障と,同居を可能にする住宅等の諸条件の整備を図ること。

2 「地方にできることは地方に」という理念のもと,国庫補助負担金改革,税源移譲,地方交付税の見直しを一体のものとして進めること。

3 普遍性・公平性・総合性・権利性・有効性の五つの原則のもと,社会保障制度を整合性のとれたものにしていくこと。

4 行政がその職権により福祉サービスの対象者や必要性を判断し,サービスの種類やその提供者を決定の上,提供すること。

5 制度・分野ごとの縦割りや,支え手・受け手という関係を超えて,地域住民や地域の多様な主体が我が事として参画すること等で,住民一人ひとりの暮らしと生きがい,地域をともに創っていくこと。


正解は,選択肢5です。

5 制度・分野ごとの縦割りや,支え手・受け手という関係を超えて,地域住民や地域の多様な主体が我が事として参画すること等で,住民一人ひとりの暮らしと生きがい,地域をともに創っていくこと。


措置に関するものは,選択肢4です。

4 行政がその職権により福祉サービスの対象者や必要性を判断し,サービスの種類やその提供者を決定の上,提供すること。


これが,措置そのものの仕組みです。


なお,行政処分と措置は,ほぼ同じ意味です。


今の国家試験は,5肢で構成され,正しいもの(適切なもの)を選ぶものです。


正解以外は,当然ながら誤りです。問題を正解することを目的とした勉強は不適切です。今日の類似問題でわかるように,せっかくの情報が埋もれてしまいます。

2025年2月27日木曜日

大正期は特別な時代

 近代日本は,明治維新から始まります。


明治期は,民間の篤志家が慈善事業を担います。


国が積極的に関与するようになったのは,大正期の米騒動です。


大正期は,第一次世界大戦により,日本はうるおい,その後の不況を体験した時期です。


大正期には,現在の厚生労働省の起源となる内務省に救護課が設置されています。


こういった意味で,大正期は転換点と言えるでしょう。


第37回・問題20

大正期の社会事業に関する次の記述のうち,最も適切なものを1つ選びなさい。

1 感化法が制定された。

2 中央慈善協会が設立された。

3 恤救規則が制定された。

4 大阪府で方面委員制度が創設された。

5 石井十次によって岡山孤児院が設立された。


正解は,選択肢4の方面委員制度です。


この問題の元ネタ的なものはたくさんありますが,以下の問題もその一つでしょう。


第19回・問題1 

我が国の慈善事業,社会事業に関する次の記述のうち,誤っているものを一つ選びなさい。

1 明治初年に政府がキリスト教の布教を許すと,キリスト教の影響を受けた慈善事業が活発に行われた。岩永マキの浦上養育院,石井十次の岡山孤児院,原胤昭の免囚保護所など,先駆的な実践が行われた。

2 明治20年代になると産業化が進み,労働者の貧困や都市下層社会の問題が発生した。こうした問題に対して,野口幽香らの二葉幼推園,片山潜のキングスレー館,山室軍平をリーダーとする救世軍による事業が展開された。

3 日露戦争後の社会不安の高まりに対して,内務省は感化救済事業講習会の開催を行う一方,中央慈善協会を設立させ,民間の慈善事業の育成と組織化を行った。

4 大正時代後半になると,デモクラシーの思潮が高まり,東京帝国大学セツルメント,恩賜財団済生会の設立,石井亮一による知的障害児施設の設立などが行われ,社会連帯を基盤とする新たな社会運動や社会事業が展開された。

5 日中戦争下の昭和13年に社会事業法が成立した。社会事業法により,民間の社会事業家が要望していた政府からの補助金が制度化されたが,その一方で政府の規制が強められるという側面もあった。


現在には存在しない「誤っているもの」を選ぶ問題です。


誤っているものは,選択肢4です。

石井亮一が滝乃川学園を設立したのは,明治期です。


4 大正時代後半になると,デモクラシーの思潮が高まり,東京帝国大学セツルメント,恩賜財団済生会の設立,石井亮一による知的障害児施設の設立などが行われ,社会連帯を基盤とする新たな社会運動や社会事業が展開された。

2025年2月26日水曜日

サッチャー首相に関する類似問題

今回は,第37回国家試験に出題されたサッチャー首相に関する類似問題を見ていきたいと思います。

 

37回・問題19

次の人物のうち,英国において「福祉国家」から「小さな政府」への転換を図った首相として,最も適切なものを1つ選びなさい。

1 ウィンストン・チャーチル(ChurchillW.

2 クレメント・アトリー(AttleeC.

3 マーガレット・サッチャー(ThatcherM.

4 トニー・ブレア(BlairT.

5 ゴードン・ブラウン(BrownG.

 

知識があれば,何の思考も必要としない「タクソノミーⅠ型」の典型的な問題です。

 

正解は,今日のテーマのサッチャー元首相です。

 

サッチャーの施策は,大きな政府から小さな政府への転換を図るものでした。

 

これは,新自由主義と呼ばれます。

 

経済学者のフリードマンやハイエクらに影響を受けたもので,このような政治哲学は新自由主義と呼ばれます。

 

類似問題を見ます。

 

35回・問題24

福祉政策に関する次の記述のうち,最も適切なものを1つ選びなさい。

1 アダム・スミス(SmithA.)は,充実した福祉政策を行う「大きな政府」からなる国家を主張した。

2 マルサス(MalthusT.)は,欠乏・疾病・無知・不潔・無為の「五つの巨悪(巨人)」を克服するために,包括的な社会保障制度の整備を主張した。

3 ケインズ(KeynesJ.)は,不況により失業が増加した場合に,公共事業により雇用を創出することを主張した。

4 フリードマン(FriedmanM.)は,福祉国家による市場への介入を通して人々の自由が実現されると主張した。

5 ロールズ(RawlsJ.)は,国家の役割を外交や国防等に限定し,困窮者の救済を慈善事業に委ねることを主張した。

 

この問題の正解は,選択肢3です。

3 ケインズ(KeynesJ.)は,不況により失業が増加した場合に,公共事業により雇用を創出することを主張した。

 

ケインズの福祉政策を批判するものとして,新自由主義が出張されます。

 

フリードマンは,福祉国家による市場への介入を小さくしていくことを主張しました。

 

これを実現していったのが,サッチャーです。徹底した福祉切り捨てを行い,その辣腕ぶりを「鉄の女」と呼ばれました。

 

イギリスの複製政策は,サッチャーとブレアの対比で覚えることが必要です。

 

第二次世界大戦後,「ゆりかごから墓場まで」で知られるベヴァリッジ報告を実現していたのが,大きな政府(社会民主的国家)です。

 

サッチャーは,小さな政府を目指す新自由主義を実践しました。

 

ブレアは,サッチャー以前の大きな政府でもなく,サッチャーの新自由主義でもなく,「第三の道」を目指しました。

 

ブレアに影響を与えたのは,ギデンズです。

 

首相名

影響を受けた学者

サッチャー

フリードマン,ハイエク

ブレア

ギデンズ

 


2025年2月25日火曜日

ニィリエの類似問題

  

ニィリエは,出題頻度が高いので当然類似問題もあります。

 

37回・問題2 

次の記述のうち,ニィリエ(NirjeB.)が示したノーマライゼーションの考え方に基づく支援として,最も適切なものを1つ選びなさい。

1 知的障害者と知的障害児を同じ施設で生活できるように支援する。

2 要保護児童に対しては,大規模な入所型施設で専門的なケアを提供する。

3 障害のある成人は,同性だけで生活するように支援する。

4 知的障害者の生活を,ノーマルな生活状態に近づけることを目指す。

5 知的障害者の自己選択よりも,支援者の決定を優先する。

 

正解は,選択肢4です。

4 知的障害者の生活を,ノーマルな生活状態に近づけることを目指す。

 

一番似ていると言えば,以下の問題でしょう。

 

26回・問題93 

ノーマライゼーションの理念に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。

1 すべての人間とすべての国とが達成すべき共通の基準を宣言した世界人権宣言の理念として採用された。

2 1950年代のデンマークにおける精神障害者本人の会の活動を通して生み出された。

3 ニィリエ(Nirje,B)が唱えた原理には,ライフサイクルにおけるノーマルな発達経験が含まれる。

4 バンク-ミケルセン(Bank-Mikkelsen,N.)らの働きにより,スウェーデンにおいて世界で初めて法律の基本的理念として位置づけられた。

5 全米ソーシャルワーカー協会の倫理綱領(1996 年採択,2008 年改定)において,倫理的原理の一つとして明記された。

 

正解は,選択肢3です。

3 ニィリエ(Nirje,B)が唱えた原理には,ライフサイクルにおけるノーマルな発達経験が含まれる。

 

この時もニィリエが正解となっています。

2025年2月24日月曜日

ちょっとかすった問題

今回も第37回国家試験の類似問題シリーズですが,かなり難しいです。

 

37回・問題17 

差別や偏見に関する次の記述のうち,適切なものを2つ選びなさい。

1 ゴッフマン(GoffmanE.)は,主に身体に付随し,それが他者にとっての偏見を呼び起こす「印」として機能するものをスティグマと呼んだ。

2 オルポート(AllportG.)は,民族的偏見を「誤った,柔軟性のない一般化に基づいた反感」と定義づけた。

3 リップマン(LippmannW.)は,人々の知覚や認識を単純化して理解することをダブル・コンティンジェンシーと呼んだ。

4 コールマン(ColemanJ.)は,政治・経済・軍事などの分野のトップが社会の権力を握るとするパワーエリート論を展開した。

5 ミルズ(MillsC.)は,一次的逸脱と二次的逸脱という概念を用いて,逸脱的アイデンティティが形成されるメカニズムを説明した。

 

近年の過去問の知識を使えるのは,選択肢1のスティグマと選択肢3のダブル・コンティンジェンシーしかありません。

 

正解は,選択肢1と選択肢2です。

1 ゴッフマン(GoffmanE.)は,主に身体に付随し,それが他者にとっての偏見を呼び起こす「印」として機能するものをスティグマと呼んだ。

2 オルポート(AllportG.)は,民族的偏見を「誤った,柔軟性のない一般化に基づいた反感」と定義づけた。

 

選択肢1は,参考書や過去問の知識で選べますが,選択肢2は無理です。消去法でも選ぶことができません。

 

まずは,スティグマです。

 

34回・問題21 

他者や社会集団によって個人に押し付けられた「好ましくない違いを表わす印」に基づいて,それを負う人々に対して様々な差別が行われることをゴッフマン(Goffman,E.)は指摘した。次のうち,この「好ましくない違いを表わす印」を示す概念として,最も適切なものを1つ選びなさい。

1 自己成就的予言

2 マイノリティ

3 スティグマ

4 クレイム申立て

5 カリスマ

 

正解は,選択肢3の「スティグマ」でした。近年の過去問なので,多くの人は目にして国家試験に臨んだことでしょう。

 

次は,ダブル・コンティンジェンシーです。

 

34回・問題19 

社会的行為に関する次の記述のうち,最も適切なものを1つ選びなさい。

1 パーソンズ(Parsons,T.)は,相互行為における無意識的,習慣的な行為に着目し,そうした行為において利用される個人の文化的な蓄積を「文化資本」と呼んだ。

2 ハーバーマス(Habermas,J.)は,個人に外在して個人に強制力を持つ,信念や慣行などの行為・思考の様式,集団で生じる熱狂などの社会的潮流を「社会的事実」と呼び,社会学の固有の領域を定式化した。

3 ブルデュー(Bourdieu,P.)は,相互行為が相手の行為や期待に依存し合って成立していることを「ダブル・コンティンジェンシー」と呼んだ。

4 ヴェーバー(Weber,M.)は,社会的行為を四つに分類し,特定の目的を実現するための手段になっている行為を「目的合理的行為」と呼んだ。

5 デュルケム(Durkheim,E.)は,言語を媒介とした自己と他者の間で相互了解に基づく合意形成を目指す行為を「コミュニケーション的行為」と呼んだ。

 

パーソンズ

ダブル・コンティンジェンシー

ハーバマス

コミュニケーション的行為

ブルデュー

文化資本

ヴェーバー

目的合理的行為

デュルケム

社会的事実

 

ということで,ダブル・コンティンジェンシーは,パーソンズが提唱したものでした。

 

この問題が第37回の問題と根本的に違うのは,すべて入れ替えになっていて,正解は,超頻出のものであることです。

 

こういったところが,第34回の合格基準点が7割(105点)となった理由の一つでしょう。

 

37回の問題のパワーエリート論を提唱したのは,ミルズです。

 

これは,遠い過去に一度出題されたことがあります。

 

19回・問題52 

社会的性格に関する次の記述のうち,適切なものを一つ選びなさい。

1 フロム(Fromm,E.))は,ナチズムを支持したドイツ下層中産階級の分析から,彼らに典型的に見られる社会的性格を上位への服従と下位への軽蔑によって特徴づけた。

2 ミルズ(Mills,C.W.)は,第二次世界大戦にかかわって日本社会の研究を行い,その著「菊と刀」では,西欧の「罪の文化」に対して,日本を「恥の文化」であると位置づけた。

3 ホワイト(Whyte,W.)は,その著「孤独な群衆」のなかで,20世紀において「内部指向型」から「他人指向型」へと社会的性格の変化が見られたと唱えた。

4 リースマン(Riesman,D.)は,自分の全人格を過剰に組織に帰属させている人々を「オーガニゼーション・マン(組織人)」と名付けた。

5 ベネディクト(Benedict,R.)は,大衆社会における社会的性格は,一部のパワー・エリートによって操作されやすいものになると指摘した。

 

この問題の正解は,選択肢1です。

1 フロム(Fromm,E.))は,ナチズムを支持したドイツ下層中産階級の分析から,彼らに典型的に見られる社会的性格を上位への服従と下位への軽蔑によって特徴づけた。

 

この問題に出題された人は,ミルズ以外に一人もいません。つまり,覚えるべき優先度はかなり低いと言えます。

 

この問題自体もその当時の人にとっては,とても難しい問題だったと思います。

 

因みに第19回のボーダーラインラインは,150点満点のうち,81点でした。得点率は,54.0%,合格率はわずか27.5%です。

 

37回国家試験は,タクソノミーⅡ型,タクソノミーⅢ型が増えたことにより,簡単に得点できない手ごわい問題が多く出題されましたが,出題された内容自体の難易度はそれほど高くありません。

 

現在の国家試験は,かつてよりも合格しやすい試験になっていることは間違いありません。

なお,今後,出版される参考書には,第37回の問題で出題されたものが掲載されていきますが,それらが第38回の国家試験に出題されることは,ほぼありません。

これが嘘,偽りではないことは,1年後に証明されることでしょう。

2025年2月23日日曜日

都市社会学の類似問題

 

心理学と心理的支援は,繰り返しの出題が多い科目です。

 

あえてここで紹介するまでもないでしょう。

 

今回は,一つとばして,社会学と社会システムの問題を見たいと思います。

 

37回・問題14 

都市に関する次の記述のうち,最も適切なものを1つ選びなさい。

1 サムナー(SumnerW.G.)は,都市に特徴的な生活様式をアーバニズムとした。

2 ジンメル(SimmelG.)は,都市では多様な下位文化が形成されるとした。

3 フィッシャー(FischerC.)は,都市を人間生態学的に分析した。

4 倉沢進は,都市は同心円状的に形成されるとした。

5 鈴木榮太郎は,都市は結節機関を持つ聚落社会であるとした。

 

この中で,最も出題頻度が高いのは,ジンメルです。

 

第3回以降では,第5,7,8,9,131922263437回に出題されています。

あまりよく知らない人も多いと思いますが,鈴木榮太郎も第7回の再試験,第10回,第18回に出題されています。

 

そのため,最近の参考書に掲載されているかはわかりませんが,古い参考書には掲載されていました。

ジンメルは形式社会学(上位,下位など)の提唱者であって,都市社会学ではありません。今回も数合わせの出題となりました。

 

なお,この問題の正解は,選択肢5です。

5 鈴木榮太郎は,都市は結節機関を持つ聚落社会であるとした。

 

さて,この問題の類似問題です。

 

33回・問題16

都市化の理論に関する次の記述のうち,最も適切なものを1つ選びなさい。

1 フィッシャー(Fiscer,C.)は,都市の拡大過程に関して,それぞれ異なる特徴を持つ地帯が同心円状に構成されていくとする,同心円地帯理論を提起した。

2 ワース(Wirth,L.)は,都市では人間関係の分節化と希薄化が進み,無関心などの社会心理が生み出されるとする,アーバニズム論を提起した。

3 クラッセン(Klaassen,L.)は,大都市では類似した者同士が結び付き,ネットワークが分化していく中で多様な下位文化が形成されるとする,下位文化理論を提起した。

4 ウェルマン(Wellman,.)は,大都市では,都市化から郊外化を経て衰退に向かうという逆都市化(反都市化)が発生し,都市中心部の空洞化が生じるとする,都市の発展段階論を提起した。

5 バージェス(Burgess,E.)は,都市化した社会ではコミュニティが地域や親族などの伝統的紐帯から解放されたネットワークとして存在しているとする,コミュニティ解放論を提起した。

 

37回の問題は,この問題の知識で答えられるように設計されたものです。

 

同心円地帯理論 → バージェス

 アーバニズム → ワース

下位文化理論 → フィッシャー

都市の発展段階論 フィッシャー

コミュニティ開放論 → ウェルマン

 

この知識から,

 

37回の問題の以下の選択肢は消去できます。

 

1 サムナー(SumnerW.G.)は,都市に特徴的な生活様式をアーバニズムとした。

  アーバニズム → ワース

 

2 ジンメル(SimmelG.)は,都市では多様な下位文化が形成されるとした。

  下位文化理論 → フィッシャー

 

3 フィッシャー(FischerC.)は,都市を人間生態学的に分析した。

  都市を人間生態学的に分析したのは,誰かわからないが,少なくともフィッシャーではない。

 

4 倉沢進は,都市は同心円状的に形成されるとした。

 

 同心円地帯理論 → バージェス

 

みごとに符合していることがわかるでしょう?

 

そして,残った選択肢5が正解です。

5 鈴木榮太郎は,都市は結節機関を持つ聚落社会であるとした。

 

ここから,都市を人間生態学的に分析したのは,倉沢進ではないかと推測できます。

 

都市社会学の主な理論と提唱者

理論

提唱者

アーバニズム論

ワース

同心円地帯理論

バージェス

下位文化理論

フィッシャー

都市の発展段階論

クラッセン

コミュニティ開放論

ウェルマン

結節機関

鈴木榮太郎

都市を人間生態学的に分析

倉沢進

第三の空間

磯村栄一

 

2025年2月22日土曜日

自意識過剰の類似問題

第37回国家試験を振り返ってみたいと思います。


第37回・問題1

思春期・青年期における心身の特徴に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。

1 思春期には,男女ともに緩やかな身体の変化がみられる。

2 思春期における心理的特徴としては,自意識過剰がある。

3 思春期には,アイデンティティは形成されている。

4 第二次性徴に性差はみられない。

5 青年期の死亡原因としては心疾患が最も多い。


トップバッターはこの問題でした。


正解は,選択肢2です。

2 思春期における心理的特徴としては,自意識過剰がある。


言われてみると,なるほどと思うでしょう。


しかし,国家試験会場では,自分の頭で考えて,答えなければなりません。

誰も教えてくれません。


不正が発覚すると悲惨です。


規定の時間まで退室が認められません。


その時間になるまで,教室の中で,ほかの受験生の冷ややかな視線を感じながら,自分の席に座り続けなければなりません。


不正した受験生は自己責任なので仕方ないと思いますが,同じ教室で受験している人もとてもいやな気分になります。


当然ですが,不正は絶対にしてはなりません。


さて,今日の問題の関する類似問題は,以下のとおりです。


第35回・問題1

 思春期に伴う心身の変化に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。1

1 この時期の心理的特徴として,自意識に乏しいことが特徴である。

2 女子では,初経から始まり,次いで乳房や骨盤の発育がみられる。

3 男子は,女子よりも早い時期から思春期が始まる。

4 身体の変化は緩徐な変化が多い。

5 第二次性徴という身体的な変化が始まる。


この問題の正解は,選択肢5です。

5 第二次性徴という身体的な変化が始まる。


さて,この問題を見て,気づくことはありませんか。


この問題の選択肢1は誤りですが,第37回では,正解となっています。


過去問を解きながら,試験に向けた仕上げをしていくと思いますが,その際,正解することを主眼に置くと,正解以外のものの知識はつかないことになります。


それでは,過去問を使った勉強の意味は半減してしまいます。


以前に合格された方のYouTubeを見ていたら,1年目は過去問を解くことに専念して失敗した。2年目は過去問にあるものを覚えていった,と述べていた方がいらっしゃいました。


1年目の失敗をすぐに取り戻すことができて本当に良かったと思います。


ただし,出題基準と見比べたとき,過去4年間の過去問を完璧に覚えても,合格する知識は不足します。


必ず,参考書などで知識をつけることを並行して行うことが必要です。

2025年2月21日金曜日

第37回国家試験の振り返り~その2

国家試験の問題は,難しそうでそれほど難しくない,簡単そうでそれほど簡単ではない。


哲学のような書き出しですが,落とし穴がたくさんあるのが,国家試験です。


簡単な問題だと言えるのは,客観的な立場で見ているから言えることです。


この時期には,問題に対してさまざまな講評が出ますが,「この問題はやさしいです」といったことを聞くととてもいやな気持ちになります。


同じように「ここは,直前対策でやったから,解けたでしょう」というのもいやな気持ちになります。


「来年,その悔しさをぶつけるとよいでしょう」という考えなのかもしれませんが,モチベーションを保ち続けるのはとても難しいものです。


国家試験で,ボーダーラインに届かない大きな理由は,勘違いなどによるミスが多発することです。


なぜ,そのようなミスが起きるのかを自分なりに考えることが,とても重要です。


国家試験には制限時間があります。

その中で,適切に問題を読むことは,はた目から見るよりもとても難しいものです。


時間を節約するために,簡単な問題は最後まで読まない,という戦術を使う人もいますが,そういった問題にも落とし穴があるものです。


また,問題構造であるタクソノミーⅠ型の問題数が減るので,そこで節約できる時間はそれほど多くないのが現実です。


地道ですが,どの問題も丁寧に読むというのが,正攻法のように思うのが,チームfukufuku21メンバーの結論です。


一事が万事


問題を読みながら,頭を切り替えるのは簡単ではないです。


第37回・問題19

次の人物のうち,英国において「福祉国家」から「小さな政府」への転換を図った首相として,最も適切なものを1つ選びなさい。

1 ウィンストン・チャーチル(Churchill,W.)

2 クレメント・アトリー(Attlee,C.)

3 マーガレット・サッチャー(Thatcher,M.)

4 トニー・ブレア(Blair,T.)

5 ゴードン・ブラウン(Brown,G.)


この問題は,知っていれば答えられる典型的なタクソノミーⅠ型です。


文章になっていないので,読み間違いはありません。


この問題の場合は,消去できる選択肢があるので,なおのこと,正解しやすいでしょう。


しかし,多くの問題は,ちょっと知らないものを入れることで複雑にすることが多いものです。


なお,この問題の正解は,選択肢3です。

3 マーガレット・サッチャー(Thatcher,M.)

2025年2月20日木曜日

国家試験の振り返りの重要性

国家試験が終わり,現在(2月下旬)では,合格発表を待っていることでしょう。


問題は,見たくもないというのが本音だと思います。


これまで,何度も受験しても合格できなかったという人もいるでしょう。


しかし,もし再受験することになったなら,今のこの時期の過ごし方がとても重要です。

今なら,問題を解いた時の状況や思考を覚えている可能性があるからです。


ある程度勉強した人なら,知識不足ということはなかったはずです。

それでも点数が伸びなかったのは,ほかのファクターがあるように思います。


いやかもしれませんが,一度,振り返ることを強くおすすめします。

ただ,その結論として「知識不足だった」と思うのは不適切です。


今,問題を見て「なぜ間違ったのだろう」と思う問題が多い人は,決して知識不足ではないからです。


それにもかかわらず,知識を増やそうと思うと同じ結果になるでしょう。


なぜ,正解できなかったのかを適切に振り返るのは簡単ではないですが,それが今の時期に行うことができれば,1年後の今は,笑顔で過ごせていることでしょう。


※今日の問題はお休みします。

2025年2月19日水曜日

ICFに関するタクソノミーⅢ型の問題

 今回は,前回に引き続き,国際生活機能分類(ICF)のタクソノミーⅢ型の問題を取り上げます。


第28回・問題-57 

事例を読んで,国際生活機能分類(ICF)の「参加制約」に該当するものとして,最も適切なものを1つ選びなさい。

〔事 例〕

 Eさん(49歳,男性)は,脳性麻痺で足が不自由なため,車いすを利用している。25年暮らした障害者支援施設を退所し1年がたつ。本日,どうしても必要な買物があるが,支援の調整が間に合わない。その場での支援が得られることを期待して,一人で出掛けた。店まで来たが,階段の前で動けずにいる。

1 脳性麻痺で足が不自由なこと

2 階段があること

3 支援なしで外出できること

4 店で買物ができないこと

5 障害者支援施設を退所したこと


この問題は,参加制約とは何かを知っていることが前提の問題です。


ただの事例問題ではなく,タクソノミーⅢ型です。


参加制約とは,「個人が何らかの生活・人生場面にかかわるときに経験する難しさ」です。


それでは解説です。


1 脳性麻痺で足が不自由なこと


脳性麻痺は「健康状態」,脳性麻痺で足が不自由なことは,「心身機能・身体構造」です。


2 階段があること


階段があることは,環境因子です。


環境因子には,促進因子と阻害因子があります。


階段があることは,阻害因子に属します。


3 支援なしで外出できること


外出することは,活動です。


支援は,環境因子です。


4 店で買物ができないこと


これが正解です。


歩くことは活動,買物は参加,買物ができないことは,参加制約です。


5 障害者支援施設を退所したこと


障害者支援施設を退所したことは,個人因子です。


環境因子と個人因子は,生活機能の背景因子です。

2025年2月18日火曜日

千歩の道も一歩から

大学生の場合,新卒で合格できないと,働きながら勉強することになります。


慣れない仕事を覚えながら,それと同時に勉強するのはとても大変なことです。


1年後の試験に向けて勉強を続けていくのは,先が見えない中,とても大変ですが,その努力の先には,念願の資格取得が待っていることでしょう。


今日から新しいスタートです。


第34回・問題2

事例を読んで,国際生活機能分類(ICF)のモデルに基づく記述として,最も適切なものを1つ選びなさい。

〔事 例〕

 Aさん(40歳)は,脳性麻痺のため,歩行訓練をしながら外出時は杖を使用していた。しかし麻痺が進行し,電動車いすを使用するようになり,電車での通勤が困難となった。その後,駅の階段に車いす用の昇降機が設置され,電車での通勤が可能となった。

1 疾患としての脳性麻痺は,「個人因子」に分類される。

2 電動車いす使用は,「心身機能・身体構造」に分類される。

3 杖歩行が困難となった状態は,「活動制限」と表現される。

4 電車通勤が困難となった状態は,「能力障害」と表現される。

5 歩行訓練は,「環境因子」に分類される。


ICFは,近年はこのようなタクソノミーⅢ型のスタイルで出題されるようになってきています。



それでは,解説です。


1 疾患としての脳性麻痺は,「個人因子」に分類される。


脳性麻痺は,健康状態に分類されます。


2 電動車いす使用は,「心身機能・身体構造」に分類される。


電動車いす使用は,環境因子に分類されます。


3 杖歩行が困難となった状態は,「活動制限」と表現される。


これが正解です。


歩行は,活動です。


活動が困難となった状態が活動制限です。


4 電車通勤が困難となった状態は,「能力障害」と表現される。


電車通勤は,活動です。


電車通勤が困難となった状態は,活動制限です。


5 歩行訓練は,「環境因子」に分類される。


歩行は,活動です。歩行ができるように訓練することも活動です。

2025年2月17日月曜日

どの法律に基づいているの?

国家試験では,根拠法が問われます。


 第37回・問題111

福祉職の任用または委嘱に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。

1 社会福祉主事は,社会福祉法に規定されている。

2 児童福祉司は,「児童虐待防止法」に規定されている。

3 身体障害者福祉司は,障害者基本法に規定されている。

4 知的障害者福祉司は,「障害者総合支援法」に規定されている。

5 母子・父子自立支援員は,児童福祉法に規定されている。 

(注)1 「児童虐待防止法」とは,「児童虐待の防止等に関する法律」のことである。

2 「障害者総合支援法」とは,「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律」のことである。


この問題には何のひねりもないので,正解しやすいでしょう。


正解は,選択肢1です。


1 社会福祉主事は,社会福祉法に規定されている。


以下のように出題されたらどうでしょう? 


第37回・問題55 

「障害者差別解消法」に関する次の記述のうち,最も適切なものを1つ選びなさい。

1 この法律が施行される前から,障害者基本法に「差別の禁止」の規定があった。

2 民間事業者の合理的配慮の提供は,努力義務である。

3 この法律に基づき,市町村障害者虐待防止センターが設けられている。

4 障害者差別をした事業者には,この法律に基づき科料が科される。

5 この法律に基づく障害者の定義は,障害者基本法に規定されている障害者の定義より狭い。

(注) 「障害者差別解消法」とは,「障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律」のことである。


正解は,選択肢1です。

1 この法律が施行される前から,障害者基本法に「差別の禁止」の規定があった。


第37回・問題56

「障害者雇用促進法」に関する次の記述のうち,最も適切なものを1つ選びなさい。

1 就労継続支援A型事業は,この法律に基づき就労支援サービスを提供するものである。

2 公共職業安定所(ハローワーク)は,就労を希望した障害者の就職後の助言,指導は行わない。

3 事業主は,障害者である労働者を雇用する事業所において障害者職業生活相談員を外部委託することができる。

4 雇用義務の対象となる障害者であるかどうかの確認は,精神障害者については,精神障害者保健福祉手帳により行う。

5 事業主は,障害者と障害者でない者との機会均等を図るために,過重な負担となるときであっても,合理的配慮を講じなければならない。

(注) 「障害者雇用促進法」とは,「障害者の雇用の促進等に関する法律」のことである。


正解は,選択肢4です。

4 雇用義務の対象となる障害者であるかどうかの確認は,精神障害者については,精神障害者保健福祉手帳により行う。


2025年2月16日日曜日

問題表現の揺らぎ

社会福祉士国家試験の在り方に関する検討会の報告書では,

 

試験センターにおいては、本検討会での議論や提言を踏まえ、新たな国家試験が適正かつ円滑に行われるよう必要な準備を行うとともに、試験問題の作問にかかる支援機能の強化を図ることが望ましい。

 

と提言しています。

 

社会福祉士国家試験の在り方に関する検討会報告書

https://www.mhlw.go.jp/content/000881634.pdf


国家試験では,この提言に従って,試験委員に対する支援が行われるものと考えられます。

 

受験生にとって,かなり手ごわくなりますが,支援が徹底されていないためなのか,表現に揺らぎが見られる問題があります。

 

以下は,その1つです。

 

37回・問題16 

次の記述のうち,2022(令和4)年の国民生活基礎調査の結果(「2022(令和4)年国民生活基礎調査の概況」(厚生労働省))についての説明として,最も適切なものを1つ選びなさい。

1 1世帯当たり平均所得金額は300万円を下回っている。

2 現在の暮らしの状況が「大変苦しい」「やや苦しい」とした世帯は,50%を超えている。

3 相対的貧困率は20%を超えた。

4 子ども(17歳以下)の相対的資困率は25%を超えた。

5 公的年金・恩給を受給している高齢者世帯の中で「公的年金・恩給の総所得に占める割合が100%の世帯」は,90%を超えている。

 

この問題の文末は,現在形と過去形が混じっています。

 

表現をそろえると,以下のようになります。

 

1 1世帯当たり平均所得金額は300万円を下回っている。

2 現在の暮らしの状況が「大変苦しい」「やや苦しい」とした世帯は,50%を超えている。

3 相対的貧困率は20%を超えている

4 子ども(17歳以下)の相対的資困率は25%を超えている

5 公的年金・恩給を受給している高齢者世帯の中で「公的年金・恩給の総所得に占める割合が100%の世帯」は,90%を超えている。

 

しかし,そうしなかったのは,試験委員が「超えた」という表現を使って,かく乱するためです。

 

しかし,見る人が見れば分かります。

 

なお,正解は選択肢2です。「大変苦しい」「やや苦しい」と答えた世帯は,51.3%でした。

 

 

表現をそろえるのは簡単ではありませんが,今後は試験委員の作問技術が上がっていくはずです。

 

タクソノミーⅡ型,Ⅲ型の増加に加えて,受験生を苦しめることになるでしょう。

タクソノミー分類

https://fukufuku21.blogspot.com/2025/02/blog-post_4.html

 

今後,受験する人は,十二分に心しておくことが必要です。

 

しっかり勉強した人は解ける,勉強不足の人は解けない。

 

資格試験に理想的な問題が作り上げられつつあります。

2025年2月15日土曜日

国家試験で問われる推測力

 国家試験に出題される問題の中には一定程度,初出問題が含まれます。

受験者は,そういった問題を見ると,焦り,冷静になれなくなります。

実に怖いです。


それでは,法に関する前説なしに今日の問題です。


第31回・問題26 

「ヘイトスピーチ解消法」の内容に関する次の記述のうち,最も適切なものを1つ選びなさい。

1 外国人観光客に対する不当な差別的言動を規制することを目的としている。

2 不当な差別的言動に対する罰則が規定されている。

3 雇用における差別的処遇の改善義務が規定されている。

4 地方公共団体には,不当な差別的言動の解消に向けた取組を行う努力が求められている。

5 基本的人権としての表現の自由に対する制限が規定されている。

(注) 「ヘイトスピーチ解消法」とは,「本邦外出身者に対する不当な差別的言動の解消に向けた取組の推進に関する法律」のことである。


こういった問題の場合,どのように考えると正解に近づけると思いますか?


ヒントになるものには,法律名があります。


法律名は,この法律の目的,性格を表わしているからです。


「解消法」がついている法律でよく知っているものは「障害者差別解消法」があるでしょう。

この法律の場合,その内容には,国,地方公共団体,民間企業に対する義務や努力義務が含まれます。


この法律の正式名称は,「障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律」です。


障害者差別の解消を推進するものです。秘密保持義務以外に罰則は設けられていません。

差別があっても罰則が規定されていないのは,虐待防止法に似ています。


こういったところから,ヘイトスピーチ解消法にも罰則はないだろうというとあたりをつけることができそうです。


もう一つのポイントは,法律の正式名称です。


ヘイトスピーチ解消法の正式名称は


本邦外出身者に対する不当な差別的言動の解消に向けた取組の推進に関する法律


この名称から,法律の目的がわかります。


本邦外出身者とは,外国出身者,つまり外国から日本に来て生活している人を指します。


もう答えは見えてきたのではないでしょうか。


それでは,解説です。


1 外国人観光客に対する不当な差別的言動を規制することを目的としている。


外国人観光客に対するヘイトスピーチも不適切ですが,外国人観光客に限定した立法はあまりに不自然です。


本邦外出身者という法律名称から,外国人観光客を対象にしたものではないことは明らかにわかります。


外国人観光客を対象にした法律だとしたら,「外国人観光客に対する」といった文言が法律名に入るはずです。


2 不当な差別的言動に対する罰則が規定されている。


罰則はありません。


もし本当に罰則が規定されているなら,「〇〇の規定に違反した者は,〇年以下の懲役又は〇万円以下の罰金に処せられる」といったように,出題されるでしょう。


そもそも推進法に罰則はそぐいません。


3 雇用における差別的処遇の改善義務が規定されている。


雇用とヘイトスピーチに関連しないと考えられます。


4 地方公共団体には,不当な差別的言動の解消に向けた取組を行う努力が求められている。


これが正解です。


法律の正式名称は「本邦外出身者に対する不当な差別的言動の解消に向けた取組の推進に関する法律」です。


この法律名と同じく「不当な差別的言動の解消に向けた取組」という部分があります。


そこからこれが正解であると推測できそうです。


悩むとすれば,「努力」という部分かもしれません。しかし,こういった細かいところが問われるのは,出題基準に含まれ,過去に何度も出題されてきた法制度です。


ヘイトスピーチ解消法のように出題基準に含まれず,しかもこれまでに出題されたことのないような法制度は,重箱の隅をつつくような出題がされないものです。


こういった社会福祉士の国家試験の特徴を知っておくと得点力は確実にアップします。


5 基本的人権としての表現の自由に対する制限が規定されている。


選択肢4を正解にできなかった人は,この選択肢に引っ掛かりがちです。


しかし,ヘイトスピーチをわざわざ憲法が規定する「表現の自由」を引き合いに出さなくても,ヘイトスピーチは誰もが不適切な行為だとわかるでしょう。


この選択肢も本当に正しければ「不当な差別的言動は,基本的人権としての表現の自由に制限される」といったように,より具体的な表現で出題されるはずです。


現在のところ,直近の第37回では,以下のように出題されています。


第37回・問題23

多文化共生社会の実現に向けた取組に関する次の記述のうち,最も適切なものを1つ選びなさい。

1 「在留支援のためのやさしい日本語ガイドライン」では,外国人に情報を伝えるときは,外来語(カタカナ語)を多く使用するよう示している。

2 「地域における多文化共生推進プラン(改訂)」では,外国人材の都市部への居住を促すことを目指している。

3 多文化共生に取り組もうとする地方自治体への情報提供等のために,総務省は多文化共生アドバイザーの名簿を作成することとなっている。

4 災害時外国人支援情報コーディネーターは,外国語を母語とする者を充てることとされている。

5 「ヘイトスピーチ解消法」では,本邦外出身者も,日本文化の理解に努めなければならないと規定している。

(注)1 「在留支援のためのやさしい日本語ガイドライン」とは,出入国在留管理庁と文化庁が2020年(令和2年)8月に作成したガイドラインのことである。

 2 「地域における多文化共生推進プラン(改訂)」とは,総務省が2006年(平成18年)3月に策定し,2020年(令和2年)9月に改訂したプランのことである。

 3 「ヘイトスピーチ解消法」とは,「本邦外出身者に対する不当な差別的言動の解消に向けた取組の推進に関する法律」のことである。


第31回の問題を詳細に覚えてもこの問題は正解できません。

しかし,ヒントになるのは,ヘイトスピーチ解消法の正式名称です。

「本邦外出身者に対する不当な差別的言動の解消に向けた取組の推進に関する法律」です。

「ヘイトスピーチ解消法」では,本邦外出身者も,日本文化の理解に努めなければならないと規定している。

これが正しいとすれば,その論理には,外国人が差別されるのは,外国人が日本文化を知らないからだ,ということになってしまいます。

これは,いじめられるのは,いじめられる側にも原因があるという話とまったく同じです。

社会福祉の原理と政策では,「原理」を学びます。

原理は,根底に流れる思想になります。

さまざまな事象に応用的に出てくることでしょう。


なお,この問題の正解は,選択肢3です。

3 多文化共生に取り組もうとする地方自治体への情報提供等のために,総務省は多文化共生アドバイザーの名簿を作成することとなっている。


これを覚えても,おそらく二度と出題されないでしょう。

しかし,こういった問題を解く意味は,推測する力をつけていくためにほかなりません。


これを意識しない勉強では,得点力を高めることはできないでしょう。

2025年2月14日金曜日

レジリエンスの問題

第37回国家試験は,問題が重複して出題されたものが多く見受けられます。


なぜこのようなことが起きたのかは明らかにされることはないと思いますが,必ず問題視されるはずです。


そのために,今後はこのようなことが起きることはないと言えます。


レジリエンスも重複した内容の1つです。



第37回・問題10 

レジリエンスに関する次の記述のうち,最も適切なものを1つ選びなさい。

1 ストレスをもたらす原因となる出来事のことである。

2 強いストレスや心理的傷つきを伴う経験から,個人が持つ回復していく力のことである。

3 ストレスに伴って生じた不快な情動を,意識的に低減する方略のことである。

4 心的外傷となった過去の出来事を,あたかも今生じているかのように経験することである。

5 社会的な関係の中で行われる支え合いや支援のことである。


第37回・問題18

災害時におけるレジリエンスの意味として,最も適切なものを1つ選びなさい。

1 災害の発生から復旧・復興に加え,次の災害に備えていくための諸活動を一つのサイクルとして捉えることである。

2 支援ニーズに対して支援者側から積極的に働きかけて情報や支援を提供することである。

3 被災者並びに被災地が被害から立ち直っていく際に持つ力のことである。

4 予期しない出来事に遭遇した際に,事態が悪化しているにもかかわらず楽観的な見方を維持する態度のことである。

5 大規模災害の後に一時的な現象として発生する理想郷的コミュニティのことである。


この2つを並べてみると,共通した内容が存在していることに気がつくでしょう。


2 強いストレスや心理的傷つきを伴う経験から,個人が持つ回復していく力のことである。

3 被災者並びに被災地が被害から立ち直っていく際に持つ力のことである。


これらが正解です。


出題の重複が不適切なのは,この問題のようにほかの問題のヒントになってしまうからです。


2問にわたって出題されたレジリエンスはとても重要なものです。


精神保健福祉士の試験にはこれまでに何度も出題され,センター試験(現・共通テスト)でも出題されたことがあります。


今後,受験する人は,回復力を意味するレジリエンスは確実に覚えておきたいです。

2025年2月13日木曜日

国家試験に合格できる勉強法~エリクソンの発達理論

今回は,エリクソンの発達理論です。


エリクソンによる発達段階の発達課題vs危機

乳児期(01歳) 基本的信頼 vs 基本的不信

幼児前期(13歳) 自立性 vs 恥・疑惑

幼児後期(36歳) 自主性 vs 罪悪感

児童期(711歳) 勤勉性 vs 劣等感

青年期(1220歳) 同一性獲得vs 同一性拡散

前成人期(2030歳) 親密 vs 孤立

成人期(3065歳) 世代性 vs 停滞

老年期(65歳以降) 統合 vs 絶望

 

 

これを覚えたところで,今日の問題です。

 

37回・問題9

エリクソン(EriksonE.)の発達段階説における青年期の心理社会的危機として,正しいものを1つ選びなさい。

1 基本的信頼 対 基本的不信

2 同一性 対 同一性混乱

3 勤勉性 対 劣等感

4 自発性 対 差恥心

5 ジェネラティビティ 対 停滞

 

この問題が難しい理由は,「ジェネラティビティ」という聞き慣れないものが出題されているからです。

 

しかし,危機に「停滞」があるために,成人期だと推測することができます。

 

これさえ乗り越えたら,答えは,最も分かりやすい選択肢2に到達できます。

2 同一性 対 同一性混乱

 

この問題は,以下とスタイルは異なりますが,正解は同じく青年期となっています。

 

31回・問題1 

次の年齢のうち,エリクソン(EriksonE.)の発達段階に関する理論にいう「アイデンティティ」が発達課題となる年齢として,最も適切なものを1つ選びなさい。

1 3歳

2 7歳

3 15

4 30

5 50

 

正解は,「3 15」です。

 

国家試験勉強ではエリクソンは必ず出てくるはずです。

こういったものを確実に覚えていることが合格をつかみます。

とても地味な勉強だと思いますが,これを積み重ねられる人は必ず合格できます。

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